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第1回蜃気楼大学に参加して-別個に進みともに撃て

橘川幸夫さん、田原真人さんが中心に参加型社会学会の皆さんが立ち上げた蜃気楼大学の第1回に参加してきた。八王子にある大学セミナー・ハウスで週末土曜日の朝9時からというなかなかのハードルだ。

この文章を書いていて、そもそも蜃気楼大学とはなにで、大学なのに第1回とはどういうことなのか読んでいる人はさっぱりだと気づいた。蜃気楼大学とは1日だけ開催されるイベント的なもので、解説ページには講義フェス&講義フリマとある。

これでもやはりよくわからないと思うのだけども、橘川さんが仕掛けるこういった機会にもふれて20年以上経つなのでそこはあまり深く考えないでおくのが大切だということはなんとか私が学べた1つなので一旦気にしないでほしい。

コスパ、タイパ、何が得られるかがわからないと参加しないということとは、まったくもって対極にあるのがこの会だ。良い匂いがするということを感じられるかが重要だ。

会場となった大学セミナーハウス。1965年のもの。目玉は写真を撮ってから気づいた

大学セミナー・ハウスのことは知らなかったのだが、ル・コルビュジエの元で修行した吉阪隆正のもので、異様な雰囲気だが現地に行くと自然と妙に溶け込む感じがする。

年明けにあった橘川さんのオンラインイベントで蜃気楼大学と大学・セミナーハウスのことを伺い、その後のポストを見ていたのだけど(ここしばらく事情があってお手伝いができず。年末もお手伝いに手を上げたものの、実際には物理的に対応できずご迷惑をかけてしまったので手を挙げられずにいた)、想像するだけでもなかなかの大変さだろうなと思う。

もう2010年とずいぶん前だけども、奇しくも同じ八王子で橘川さんに登壇してもらったWebSig1日学校。これも同じくボランティアベース、参加型、週末、リアル200人規模のイベントをいいだしっぺで主催し4年続けたので、表に立った田原さんと多くのスタッフの皆さんのこと想像すると胃がきゅっとなる。

今の自分の状況から本当に行けるかと不安だったが今回のようなものは第1回が一番面白く、第3回までがコンセプチャルな活動として一番濃くなるという実感があり、なんとか参加できたので記憶に残ったことを残しておきたいと思う。

マルチセッションなのですべては受講できない


橘川幸夫は「空」である 田口ランディ×橘川幸夫

橘川さんからずっと田口ランディさんの名前は聞いていたが、生でお話を聞いたことがなく話を伺ってみたいと思っていた。一番残った印象は「リアリティ」という感想だ。田口ランディさんの文章からも感じることだけど、話すことばにも圧倒的なリアリティがある。

橘川さんと田口ランディさん

プログラムが終わったあと、数人の方とランディさんを囲んで30分くらい会話をする機会に恵まれた。

最初は、場の開き方や閉じ方といったようなことを会話をしていたのだけれども、その後は、深いプライベートな会話をしてしまった。今考えると、自分がとっさに取り繕うことなくリアリティもって会話できることがそれしかなかったのだと思う。ランディさんは、困惑するでもなくすっと聞いていただいて感謝。さすがだ。

箱からの脱出 橘川幸夫

橘川さんが新刊を書くとのことでクラウドファンディングに参加していた。当日は出版記念パーティーも兼ねるからね!でも、まだ書き終えてないけれどね、と、これまためちゃくちゃなのだが、耐性ができてきた。出版記念パーティーをやるために本を書くと以前もいっていたくらいなので、正式に出版されたらもう1回やってもいいのではないでしょうか(笑)。

授業は何回も反芻していながら、苦しくなる「よはとつ」についても触れられた。よはとつとは橘川さんがつくった「よりそう」「はじける」「とどまる」「つながる」というメソッドだ。あらためて聞きつつ、西洋とは違う日本人としての個人、孤独や自律についてまた考える。まだ自分で「つながる」のイメージがずっと弱いのだろうと思う。

「蜃気楼大学はハレだ。日常は蜃気楼専門学校をやるんぞ」という。ほんとにすぐ次を考え、実践するのが早い。免許合宿からヒントを得たという。

反転学習が進みつつあり、大学は非常勤講師で多くの授業がなされるいま、リアルな学び体験のありようは変わってきてる。いま、たしかに免許合宿を思い起こすと、なんでかそこでぐっと近くなった人もいたし、リアルな場はおもいっきり濃密で短期間に寝泊まりするくらいは良いのは、今回もそんな気概で来たので納得。専門学校というネーミングはハテナも出たんだけど、知識獲得+合宿からの発想なんでしょうか。

参加型社会の鍵となる「Agency 」とは? 田畑智子

研究者で起業家やっている田畑と申します。私の研究とビジネス、この2つを結ぶテーマは、参加型社会の鍵となる「学習者のagency 醸成」です。さて、「agency 」ってなんでしょう?古代西洋哲学を源流とした、領域横断的な大きな概念である「agency 」をみんなでときほぐし、考えてみましょう。

プログラムから

「研究者で起業家」、「古代西洋哲学を源流とした、領域横断」といったキーワードが興味深くて、Agency?エージェンシー?代理店?といった想像をしちゃうほどまったく知らないのだけど参加した。田畑さんもはじめまして。

田畑さん授業。筑波にも縁を感じた

エージェンシーは、OECD(経済協力開発機構)がラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030という学習枠組みをつくるなかで中心的に添えている考え方らしい。

OECDが定義する日本語訳では、
「エージェンシーとは、自分の人生および周りの世界に対して良い方向に影響を与える能力や意志を持つことを示しています。」とある。

文部科学省の資料をみると、「自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく力」とあった。

もう少し調べると、以下のような解説も見つかった。
「生徒が自らの学習のエージェント(agents)である」という発想から、この言葉が使われています。よく似た概念として主体性やオーナーシップという言葉がありますが、これらが「自分で考えて、判断し、責任を持って行動できる能力や態度」を指すのに対し、エージェンシーは周囲との関係を重視しており、社会を理解し、自分がやるべきことに気づき、世界に影響を与えることまでをも含んだより大きな概念です。

なるほど、少し理解が進んだ。
ちなみに単語としてマッチする和訳はないらしい。

田畑さんの講義でも、エージェンシーの背景や基礎知識をインプットしてもらいつつ、「あなたが考えるエージェンシーを書いてみよう」というワークショップがあった。

わたしは、「自由と社会性のある規律のバランスが取れていること」と書いた。

橘川さん的にいうと、「自分の中に社会を内包していること」なのではないだろうか。

なんで私がこう考えたかはまた別で機会があれば書いてみたい。

授業後、田畑さんと立ち話で高速に15分くらい密に会話したのが面白かった。個人的にはこのテーマは抽象度をあげると幸福論だなぁと思う。ここは哲学、科学、歴史、宗教とどういったアプローチもあっておもしろい。ここも掘ってみたい。

「ご近所バース」がこれから来る!語り手:柳瀬博一 聞き手:平野友康

2000年の頃『国道16号線―「日本」を創った道』が出版される少し前に、橘川さんのオンラインイベントでお話を聞いて、興味深いなぁと思ってつながらせていただいていた柳瀬さんのプログラム。聞き手はハワイからオンラインで平野さん。

「柳瀬さんは何人いるんだ?」といわれたことがあると聞いたことがあるほど多忙というかアクティブな方なのだけども、どれだけ忙しくても、観察眼からの探索ということで、こんな世界の見方ができるという具体例が聞けたように思う。

この文章を書いている2023年2月22日、「タモリ倶楽部」が3月末で終了になるというニュースが流れてきた。思えば、多忙と毎日昼の12時に新宿ALTAに存在しなければならないというタモリの制約とそれと相反するような観察眼やアプローチも近いものがあるんだろうと思った。

このアプローチが以下の言葉で体験されていたように思う。

「他人や、他の生き物の環世界を自分の中に取り入れてみる」。うん。おもしろい。

参加型社会学校設立パーティー/橘川新刊出版パーティーからの3次会

できるだけ裏方のお手伝いをしつつ、リアルでは初めましての方々とやっとお会いできたり。誰がスタッフかがわからないくらい感じで会場の片付け、撤収するのとか、絶妙に難しいのだけどとてもいいですよね。

せっかくだから最後までと残った方々と話し込み、宿泊の方の部屋で3次会まで。1ルームの部屋に良い年齢の男8人ぎゅうぎゅうで深夜まで会話。まさに大学生のよう(笑)

しばらく話し込んで、てっきり、みんな長い付き合いの人たちにひとり飛び込んだ体だったのだけど、はじめましてです、という人たちも多く驚く。2,3クラスにひとりは異能がいるよねというような人たちと一気に会話した夜。やはり強行参加してよかった1日でした。

晴れた1日で景色がとても良かった
橘川さんとリアルも3,4年ぶり。相変わらずパワフル

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