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HipHopはTikTokでバズった方がいい

TikTokが登場してからというもの、日本のHipHopリスナー、ラップリスナー、さらにはHipHopの音楽シーン全体で考えても大きな影響を与えることとなりました。リスナーの間で切っても切り離せないものとなっているTikTokの存在について、本当にいろんな意見があると思います。自分なりの考えをまとめておこうと思ったので、メモブログのような形でまとめました。肯定的な方も否定的な方も、一度読んでから感想とかもらえたら嬉しいです。あとこのタイトル釣りです。ゴメンネ(。>ㅅ<。)՞՞

Twitter上やYouTubeのコメント欄で「TikTokでバズらないで欲しい」といった意見をここ2年毎日のように見ます。意見することに対して自分はなんとも思わないので「なるほどね〜」って感じですが、その理由が短略的であったり、飛躍しているものを見ると、「なるほどねぇ……」という気持ちになります。
実際アーティストにとって莫大な収入を与える結果となったTikTokバズではあるので、稼ぐという点に置いてはラッパーにとって相性が非常に良い可能性が大いにあります。ただそういうことを言うと、「流行り方が重要」とスッとどこからともなくリプライが飛んでくるんですね。ウザいですね。分かります。
これ書いてる2番目の目的はそういうTikTokを見てないのに、TikTokに対してのお気持ちを表明している人に向けてでもあります。

TikTokというプラットフォームから生まれたカルチャーがお金や影響、分断、ヘイト、様々な感情を産んでいる状況に対して自分なりの解釈をまとめています。

自分が1番狂ってた時は1日8時間くらいTikTokを見ていたんで、そのときから振り返りながらちょっとずつ順番に話していきます。レツゴー。


TikTokが流行る前

まずTikTokを最初に知ったきっかけですが、これは多くの人がWeb等の広告からではないでしょうか? おそらく当時は中学生くらいの子が机上でダンスをしたり、おふざけ系の動画であったと思います。今でもそのイメージが抜けていない人は流石にいないとは思いますが、TikTokで流行った楽曲へのコメントはそうした印象から来るネガティブなものが昔は多かったように感じます。

日本とアメリカという分かりやすい対象を置いて、そうしたTikTokへのイメージはどうだったかをまずは考えていこうと思います。

日本でTikTokの前に若者の間で流行っていたものは何かと言うと、Mix Channel略してミクチャです。ミクチャからの最大のバイラルはと聞かれたら、グッキーダンス双子ダンスなどではないでしょうか。8年くらい前ですね。当時はテレビでもよく見たかと思います。

Byte Danceが2017年にmusical.lyを買収してTikTokに改名したのが始まりなので、正式に伝えるとするとmusical.lyが前身ですが、カルチャー的な引き継ぎではミクチャで間違いないでしょう。ミクチャでの流行であったダンス、またはリップシンク、カップルの動画、歌詞動画等、学校と密接に関連のあるような、トレンドが非常に多くあったと思います。

そうした動画もYouTube上にあります

こうしたトレンドをそのまま流入したのがTikTokであり、初期の投稿や文化を支えたものでした。最初の話に戻りますが、TikTokとHipHopの間に距離があり、そうしたネガティブな感情が生まれるのは、こうした文化のズレから来たものであると考えます。TikTokは非常にローカライズされたプラットフォームであり、初期は海外のバイラルが日本に届くことも少なかったです。独特な文化の進化をした日本のTikTokが、ある意味外来種的な存在のように感じてしまったのかもしれません。

アメリカのTikTokはどうでしょう。当たり前ですがミクチャはアメリカのTikTokが流行る前の下地ではありません。よくここで名前を出されるのがDubsmashというアプリです。

Dubsmashからのヒットとして有名なのが、CalboyのEnvy Meでしょう。TikTokでバイラルしたラッパーとして語られることが多いですが、最初はこっちからです。懐かしいですね、この曲。自分もめっちゃハマってました。

Dubsmashはどういうアプリかというと、アフリカンアメリカンからの指示が非常に強く、特に女性のユーザーが多いものでした。
数値で言うと、10代のアフリカンアメリカンのうち25%が利用。7割が女性といった形です。Redditが2020年に買収した時に出したデータなので、実際にTikTokがバイラルする前のデータまでは正確に把握はできなかったのですが、そうしたところから文化が繋がってきました。

その後白人がTikTok上で人気になり、そのトレンドをバイラルさせていったことで、アメリカ人の若いHipHopカルチャーでもTikTokに対する固まった考えのネガティブ意見はありましたが、日本とは少し文脈が異なっていました。

またmusical.lyが初期に強化していたジャンルにリップシンクがあります(所謂口パク)。

この番組の放送後はmusical.lyのダウンロードが上がっていたことで、プラットフォームとしても強化したジャンルそうですが、動画を見ると非常に高いパフォーマンスでまるでショーのようであることがわかります。イメージに対する正確な違いを証明することはできませんが、リップシンクに対して日本とアメリカで違った捉え方をされていたと予想できます。

こうした文化の違いを含んだ中で2020年のコロナ禍へと突入、さらにそこからバイラルが生まれたことで、初期からTikTokに触れていないと全くもって文脈のわからない進化を遂げていったということです。

TikTokをインストールしていない人にとって机の上でダンスを踊っていることは正直何が楽しいのかわからないと思います。学校の授業が終わり、クラスの友達と流行のダンスにチャレンジするという楽しさは、共通のものではないからです。ただバイラルというものは目に見えて数字として共通認識できるものでした。その部分だけを見て、TikTokはこういうアプリだ、と決めつけてネガティブな意見を言うことは非常に簡単で、Twitterでも簡単にバイラルするジャンルになっていました。そういったコミュニティがTikTokから遠い文化圏で誕生していったことも一つ納得です。

2020年の目に見えるヒット

上の段落で目に見えて数字としてもわかるバイラルという書き方をしましたが、2020年コロナ禍になって、日本での楽曲がバイラルしたケースを見ていきましょう。ヒット曲というものは時代を変える力があります。

2020年の後半あたりからコピーライトに関しての問題がクリアになったので、そこから先はメジャーシーンからの参入が非常に多くなったように思います。

そこまではというものかなりランダムな音楽シーンの形成がTikTok内で行われていました。先ほどでも伝えたように、元々ミクチャの文化が強く日本に残っていたこともあり、そのころの文脈がバラバラに引き継いでいったようです。

バラバラとは言ったものの、ある程度のミクチャの文脈は繋がっています。先程の自分の文章で、「ダンス、またはリップシンク、カップルの動画、歌詞動画等、学校と密接に関連のあるような」がバズっていたと言いましたが、コロナ禍という時期もあり家での時間が増え、手の込んだアニメMADやイラスト動画、弾き語りなどの投稿も増えていきます。

またそのような動画をアップロードする上で、適した音楽もTikTok内で採用されていくようになります。新規性やオリジナリティを求める若者のアーリーアダプターたちは音楽等でその個性を差別化させていきました。香水が流行ったのも弾き語り文脈だったり、snow jamもカップルの動画の文脈だったり、アーティスト性やこれまでの活動とは全く異なる文化からそうしたヒットが生まれてきたというわけです。

こういった一連の流れですが、アーティストが全く関わっていないところから始まり完結まで持っていってしまう2020年より前だったらありえない状況が生まれます。聞いているリスナーにとってはアーティストの前情報が全くないため、非常に強い刷り込みがそこで行われ、アーティストに全く関係のないイメージが強くついてしまうということもあります。金銭的な面では数億円の利益をもたらす一方で、こうしたハンドルのない暴走トレンドが何台も突っ走ることになりました。

なんでTikTokだとそんなにバズるのか

Twitterでバズった曲はこれまでもいくつもありました。ただTikTokのように毎週のように日本のチャートに楽曲が送り込まれるような状況は今までなかったはずです。

なぜそうした世間のトレンドを一瞬にして染めてしまうような力があったのかを話していきましょう。

Twitterはフォローした人のみがタイムライン上に表示されます。ただTikTokは全く違いました。おすすめの表示しか存在しなかったのです。Twitterを見ている人はなんとなくわかるかと思いますが、アフィリエイト目的でバズツイートばかり引用しているアカウントありますよね。あれがTikTokというわけです。日本のTikTokに投稿されたもので人気だったものばかりがおすすめに表示されるというわけです。

フォローしている人やいいねした動画等、アルゴリズムがある程度その人のおすすめに影響しますが、共通して多くの人に表示される動画が多くありました。TikTokのアルゴリズムが詳しく知りたい方はググってみてください。

さらにTikTokのアプリそのものの仕様も関係しています。スマホユーザーのうち75%は音無しで閲覧しているそうですが、TikTokはアプリを開いた瞬間から音がなります。最初こそ事故が起きてめちゃくちゃ言われていましたが、最近は全く聞かなくなりましたね。どのSNSを比較しても音付きで見る割合は非常に高かったはずです。(グラフ昔見たんですけどインターネットの海に消えたのでデータ見つけた人ください)
つまり何が言いたいかというと、みんな音楽聴いてくれるってわけです。

さらにさらにさらに、ミクチャ文脈で話した部分と繋がりますが、ダンスやリップシンク、カップル動画など、一度どこかで流行ると違うジャンルの投稿にもドミノ式に影響していきます。

今の振り返りましょう。投稿が流行ると一気に日本中に知れ渡る、しかも音付きに見てくれる、流行った音楽を使ってさらに動画も増える、というね。
みなさん、聞いてください。若者の団結力とはすごいものなんですよ。一個のきっかけが一週間後TikTokで数億再生行っちゃうんですよ。

あなたが例えばアーティストだったとして、音楽を人に聞いてもらおうと広告を打つとしましょう。仮に1回再生してもらう広告費を1円としましょう。毎週1億円の広告を若者だけに向けて4週間出してくれるって考えたらどうですか。
実際こんなガバガバ計算がまかり通るわけないですし、実際はそんな簡単なことではありません。ただ若者の中で来週有名人になれる人が誕生したら、楽しいですよね。みんなTikTok始めるわけですよ。ミクチャ文化に近いところから。

「Twitterはフォローした人のみがタイムライン上に表示されます。」さっきわざとらしく太文字で書いたんですけど、これ読んで「いや、フォローしてない人もタイムラインに現れるんだが!?!?」って思った人、落ち着いてください。自分がもしTwitterの代表だとして、TikTokがグイグイ人気出てきている状況を考えたら、本質的な部分を真似ようと思いませんか。一度進んだ時代は戻らないのでね。

アメリカのラッパーはどうだってんだい!!

日本はミクチャカルチャーからなので、どうしても日本HipHopのカルチャーからは遠いジャンルでした。ラッパーが否定的な意見を持つのもわかります。正直影響力の増加と金銭的な面でのメリットはアーティスト側にとって相当なもので、0の数どころかカンマの数が変わるような時代でしたが、そうしたプラスの面での共有がされることはありませんでした。

一旦Future休憩を挟みまして、アメリカの例を見ていきましょう。昔の昔にLil Nas Xの記事を書いたのですが、まずは彼の例から見ていきましょう。

やはりジャンルの違いすぎるプラットフォームでの活動は軋轢が産まれるものでうまくいかないことも多々です。本人はやりたくてもシーンやリスナーが許さないことも多いです。

その点Lil Nas Xの立ち位置は絶妙でした。詳しくは自分が書いたもの読んで欲しいんですけど、元々音楽活動を本格的に始める前まではTwitterでバズりまくってたLi l Nas Xにとって、TikTokでバズることは他の人よりは簡単だったはずです。TikTokの仕様はTwitterのアフィリエイトアカウントを見ているようなものと先程書いたのですが、正しくそれを理解して運営していたのが彼というわけです。

ただ先程話したように、ハンドルの聞かない暴走トレンドがOld Town Roadで突っ走ったわけであって、一発屋になる可能性もあったのではないかという点ですが、そこは圧倒的なクリエイティブで上から自分のやりたいこと押し付けました。

フィーチャリングでCardi B呼んでBTS呼んで、ドンドン。ライブパフォーマンスもMVもドンドンと。自分がふざければふざけるほど、クリエイティブの反響も大きく、トレンドのハンドルがきかないことを逆手にとって盛り上げていきました。

まぁ実際のところLil Nas Xほど頭のいい人間はそんなにいないので、別のとこみましょう。

これまでのリスナーにとって、TikTokはアーティストの活動やブランドと関係なくバイラルを起こすものと言いました。古くからのリスナーはそうしたファッション的人気を嫌い「バズって欲しくない」という言葉で世間に伝えていた状況です。

これは日本だけでなくアメリカでも同じです。時には政治的利用やアーティストの本来の意味とは違う解釈がついてしまう例もありました。そうなってしまうともう手のつけようがありません。

ですが全くそうした影響を受けないアーティストもいました。TikTokカルチャー誕生と同時に生まれたアーティストたちです。Laroiの例を見ていきましょう。

今やTikTokで8800万フォロワーのいるAddison Rae、彼女みたいな女の子が必要だというとてもシンプルな曲です。

HipHop文化にとって、ビヨンセやリアーナがそうした男子が憧れる成功した女性像でしたが、15歳のLaroiにとっては全く時代が違います。HipHop文脈にとってさらに若い世代が誕生したことの現れでもありました。実際にレコーディング後Addison Raeがダンスした動画をポストし、それがバイラルしTikTok上での圧倒的人気も獲得します。後の「Stay」大ヒットにも間違いなく繋がっているラインがしっかりと引かれていきました。

そしてLil Nas Xのように、LaroiもまたJuiceやTecca、TJayともコラボし、リリカルレモネードからの継続的な動画のアップなど、バイラルを定着化させる動きもしっかりと出来ていたということです。

TikTokでバズらないで欲しい

一発屋というワードが出たので、この話もしましょう。TikTokでバズらないで欲しいというコメント、本当に多く見ます。一旦冷静にこのワードについて考えてみましょう。

なぜTikTokでバズらないで欲しいのかで最初によく見るのは、「好きなアーティストがTikTokの人だって思われたくない」「1曲しか知らずにファンにはならないから」という意見でしょうか。

「あ!〇〇のCMの曲だ」「(アニメ)の曲だ!」こうした話は多分一回は誰かとしたことがあるんじゃないでしょうか? なぜこれは良くて、TikTokはダメなんだ? と考えたときに皆さんそれぞれ答えは持ってますでしょうか。

これは独特に進化したTikTokの文化構成と、そこから距離の遠い人類と異文化交流においての嫌悪感であると感じます。そしてTikTokの文化は決まったルールがなく、常に変化しているものであり、歴史がありません。そこでの摩擦がまた一つでしょう。

またアルゴリズムによってアーティストではなく、楽曲そのものだけがブーストされる仕様になっていました。しかも本人が意図したタイミングでなく、です。もしどでかいアニメのタイアップが決まっていたら、当たり前ですがMVを用意するでしょう。次の曲の準備もするでしょう。本人もSNSでの投稿を積極的にするでしょう。

ただもしそれが自分の全く準備していないタイミングに来たらどうでしょうか。どんなにヒットした曲でも1年間通して数字が変わらないものなど、ほとんどありません。せいぜいアツいタイミングは1,2ヶ月だと思います。

何をしていいかわからず1ヶ月が経ち、楽曲の人気が落ちると、何も知らない世間から見ると一発屋に見えるというわけです。実際Lil Nas Xのようにバイラルを力に変えたアーティストもいました。LuckiのようにTikTokのバイラルがアーティストのアンセムになった例もあります。ただ本当に難しいです。理解していてもそれをアーティストの力に変えるのは難しいでしょう。

ただ世間から見るとTikTokヒットはイコール一発屋に見えるので、TikTokでバズらないで欲しいという意見になるかと思います。

Drakeの話をひとつまみ

アメリカでの意図的なTikTokヒットの話をする上で、Drakeの「Toosie Slide」のことが真っ先に思いつく人もいるでしょう。一回つまんどきましょう。
あくまで自分の考えなのでそこは気をつけて読んでねです。

Drakeの狙いとしてToosie SlideというTikTokでバズるような音楽を作ってバズった、という話ですが自分はこれだけだとDrakeの狙いの30%くらいしか掴めてないと思っています。ミームではDrakeのことをネタにしますが、実際みんなが思っている15倍は頭がいいです。

今でこそUnreleasedやSnippetと言われる音源が当たり前の世の中になりましたが、TikTokがよりそれを一般化させていきました。
日本だとLEX, Only U, Yung sticky womの「STRANGER」や韻マン、百足の「君のまま」といった楽曲が、リリース前からTikTok上でバイラルさせて世間での爆発的な認知を得た成功例として有名ですね。

Drakeが「Toosie Slide」を出した当時ですが、Lil Moseyの「Blueberry Faygo」やCarti & Young Nudyの「Pissy Pamper」といったまだリリースされていない楽曲がTikTokを中心とした世代でヒットしていました。(ちなみにPissy Pamperは山根麻衣「たそがれ」のサンプリングです)

そうしたリリースされていない楽曲が世間でバイラルしていた状況において、リリースの仕方を全く変更したのがDrakeです。アルバム『Dark Lane Demo Tape』がリリースされる前に動いていた複数の公開から読み取れます。
「When To Say When」「Chicago Freestyle」はYouTube上で公開、「Pain 1993」はSoundCloudで、「Desires」はインスタライブで先に公開されました。ストリーミングのリリースよりも先にです。そして「Toosie Slide」はTikTokで人気のダンサーAyo & Teoのアカウントから公開されました。もちろんリリースよりも先にです。

リリースについて考えた時にストリーミング上にアップされることが始まりだと考えている人が多くいるかと思います。そうした中で、いち早く時代の動きを嗅ぎ取ってリリースを別のプラットフォームから。さらには人単体からもリリースするという新たな考えを決行したのがDrake一連の動きでした。
アルバムのタイトルにもDemo Tapesともありますが、ミックステープ文化においては、ダウンロードを勝手してDJでかけるような。今のTikTok文化においても自由にリリース前から使用して動画を投稿するような。そうした解釈が取れるかと思いました。実際Toosie Slideが爆発的なヒットをしたことで、歴史は上塗りされましたが、別の曲がヒットしていたらこれはまた別の文脈が時代を作っていたでしょう。

世界が一つになりました✌️

クソ適当な小見出しすみません。今5:00AMなので。

ざっとここまでが2020年以前の話です。すべてのTikTokについての話をすることはできないので、ある程度大きなことだけですが、なんとなくの流れは汲めたと思います。

2020年はこのようなツイートがバズっていましたが、実際HipHop文化と根付いたようなダンスがTikTokで流行ることはありませんでした。何度も話してはいますが、ミクチャカルチャーからの引き継ぎがトレンドのジャンルわけなので、ミクチャカルチャーのダンスと結びついたMy Resortが、HipHop文化と結びつくにはあまりにも距離が遠かったということになります。ただこれも2020年までだったように感じます。

TikTokに対してアップデートをしていないとここで情報が止まっていることもあるかと思いますが、2021年ぐらいからガラッと変わります。それは海外からトレンドが入ってくるようになり、海外へもトレンドが発信されるようになったことです。

Laroiの「Stay」のような世界共通のトレンドも産まれるようになりました。これはあくまで体感の話ですが、そうしたカルチャーのミックスが起きたということです。Meganのどエロい歌詞が東京で流行ったかと思えば、楽天ポイントのダンスをロサンゼルスのインフルエンサーが踊るといったようなカオス期に突入します。

そうしたことでミクチャカルチャーは海外のトレンドと混ざり、日本オリジナルの独特な文化を形成していくことになります。アルゴリズムもより高度になり、TikTok内での細分化も起こるようになりました。

完全に独立した文化を形成していたTikTok文化において、流行る楽曲を作るにはかなり音楽もそこに寄せたものが好まれていましたが、自分のジャンルからTikTokの文化にギアを合わせることも容易になっていったというわけです。

どう投稿するか、どう振舞うか、どう世間の注目を集めるか、100個のバズったヒット曲があれば100通りそれが産まれるようになりました。

これはアーティストにとって良いことでもありますが、難しい面もあります。良い面は自分がどのようなアーティストでどのように見られたいかをトレンドに写しやすくなりました。2020年にはTikTokについて「ハンドルできないトレンドがうまれる」と言いましたが、実際Lil Nas XやLaroiのようにうまくコントロールが出来ていたケースもあります。ただそれはアーティストがジーニアス、もしくは新しい世代のアーティストに限られました。
Drakeのようなキャリアで成功したアーティストでさえも序盤は世間からのバックラッシュに苦しんでいたように思います。

HipHopはTikTokでバズった方がいい

さぁ1万字くらい書きましたが、タイトルの話して終わりましょう。

とその前に韓国のラッパーKid MilliがHIYADAMとの対談で話が印象に残っているのでその引用をします。

──今、韓国ではヒップホップが大衆化されたという話が出ましたが、お互いの国のヒップホップシーンについて思うことはありますか?

Kid Milli: 日本のほうが自由度が高いように感じます。韓国は芸能人みたいになっちゃったから。何かあれば謝罪しなきゃいけないとか、僕が元々知ってたヒップホップはそんなじゃなかったのに。そんな韓国から見ると、日本のほうがアメリカのヒップホップ精神に近いように見えます。韓国ではラッパーが芸能人になってしまって、それがすごく残念です。

https://ginzamag.com/categories/interview/99622

正直日本より韓国の方がHipHopが人気あるし、売れてるし、いいシーンが出来ているんじゃないの? と思いましたが、その中心であるラッパーはそう感じていないんだと意外でした。

改めて日本のシーンをと考えるとかなり自由度は高いかと感じます。ピュアなタレントでYouTubeから登場するスターもいれば、サバイバル番組で人気を得るアーティスト、またはバトルシーンなどでフリースタイルを中心に活動しているラッパー、他にもいろいろなタイプのアーティストが活躍しています。

リスナー全てがシーンに寛容である必要は全くないと思いますが、アーティストの才能に関して出自を気にして評価することは、自由度の高いカルチャーからより遠ざかることになるかと思います。

(ここでの出自は出身地ではなく、最初にシーンで注目を浴びた場所)

TikTokは一つのプラットフォームではありますが、確かにそこには文化が形成され新たなカルチャーが誕生する場に発展しました。学歴社会の日本において、アーティストの出自を気にして評価することはある種日本らしさではあると思います。

ただHipHopカルチャーの人はそうしたものがあまり好きではないはずです。文章途中でも書いたことですが、一度進んだ時代は戻ることはないので、改めて向き合い、さらにここから新しい文化や才能を産む方がより有益な時代になるんじゃないかと思います。

今後新たにプラットフォームが現れ、特殊な文化が生まれた時も同じだと思います。じゃあ寝ます。おやすみ。

written by yoshi 



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