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制作日記「コスメ部第27話掲載」

現在発売中のゲッサン9月号にて「中高一貫!!笹塚高校コスメ部!!」第27話掲載されております。
どうぞよろしくお願いします。

今回から重要そうなキャラが登場しました。とにかくとっても重要そうです。
この連載を始めて「なるほど、漫画ってこう描くのか。。。」と改めて勉強になっていることが色々あるのですが、その一つは「キャラの描き分け」です。
コスメ部第1話の頃はただの読切として描いていたこともあり、部員の5人も正直「似たような顔」にしてしまいました。
描き進めるにつれて、一応マイナーチェンジを繰り返していってそれぞれ個性っぽいものは出てきつつあるのですが、それでもまだ描き分けられていないなと思います。
もっと赤ちゃんが見てもそれぞれのキャラが誰が誰だかわかるように描かなければいけません。さらに、キャラを一目見ただけで、「こいつはなんかヤバそうなやつだ!」と興味を引くような見た目である必要もあるように思います。
そのキャラの造形の種類を引き出しに何個持っているか。というのも漫画家を続けていくなら大事なんだろうな。と日々思う次第です。
そんなことを考えながら描いたキャラが今回の新キャラです。
いかがでしょうか。ヤバそうでしょうか。

というようなことをnoteの下書きに入れたまま放置しておりまして、先ほど次の28話の作画が終わりました。お疲れ様です。
今は29話のネームに取り掛かっております。「ネームに取り掛かっております。」と言いつつ、買って観てなかったDVDを観たり、寝たり、鬼滅の刃を全巻読破したり、寝たり、来月のフルマラソンで死なないためにようやくトレーニングをし始めたりしております。ネームをやらなくてはいけません。この日記を書いたらやりましょう。

冒頭でも触れた通り、この「コスメ部」を描きながら、「なるほど、こうやるのか。」という発見がたくさんあって、この作品の売り上げは芳しくないんだけど、気を抜かず頑張ろうかなと思えるのは、そういう気づきが毎回あるからかもしれません。
「自分の絵でも上手く見える描き方」とか「白い紙を目の前にした時に焦らない方法」とか「ここは力を抜いた方が絶対いいコマ」とか締め切りのある実戦の中でしか感じられないものを、遅まきながら学んでいるところであります。
内容も個人的には「面白い」と思っており、自分で面白くないと思うものを描くことほど、漫画家を消耗させるものもないと思いますので、そこは何とか回避できていると言えるでしょう。
というわけで、「主観的」には毎回面白いなと思って描いてるわけですが、漫画家を生業としてやっていくためには「相対的に」面白くないといけないようです。

「ナンバーワンにならなくてもいい 元々特別なオンリーワン」

という名パンチラインがございますが、確かにナンバーワンにならなくてもいいんですけど、Kindleランキング300位くらいに入らなければ、やはり次の仕事は求められませんし、いち作家の心情としましても「おもろいと思ったけど、読者はピンと来なかったみたいだ…ということは…」と己のまんが道は本当に正しく「頂き」を目指せているのか、脇の変な藪の中のトゲトゲに入っていってしまってはいないか、真っ黒な不安が心の中で膨らんでいってしまうものです。
少年漫画ランキング20,000位ではダメなのです。
他の数多ある作品と「比べて」面白くなくてはいけないのです。
とにかく今は一つでも多くの技を磨き、ヒノカミ神楽12の舞を連続で夜明けまで舞い続けるしかないのです。
引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。


こんな感じです。

そんでもってサンデーうぇぶりさんで第21話も無料公開されております。

合わせてチェック&チェックよろしくお願い申し上げます。


節約生活〜黄金の父性〜

先日大阪に行った際に「中学の時の同級生」に十数年ぶりに会いまして、「お互い老けたなー。」などと言いつつ、彼の車で地元をドライブしてもらいました。
まず最初に連れて行かれたのは地元の激安スーパーです。
そこにはたこ焼きの出店があり、なんとたこ焼きが6個100円、ソフトクリームも100円で売られているのです。
太陽が我が物顔で真上を目指し、激安スーパーの巨大な駐車場にジリジリと日差しを注ぐ中、僕らは100円ソフトクリームを食べました。アイスが溶けてアスファルトに吸い込まれていくスピードと競争しながら。うまい。
その後、友人が「漫画を返しにいく」というので、地元のゲオに向かいました。
「キングダム」「呪術廻戦」「怪獣8号」「推しの子」など、彼はジャンプ作品を中心に、僕なんかよりもばっちり最新作をチェックしていて、そのほとんどはこのゲオでレンタルしているとのことでした。
レンタル料は1週間1冊90円。
「なるほど、10冊借りても900円か。」と僕が言いますと、「バカを言っちゃあいかんよキミ。クーポンがあるからね。おれは半額クーポンがなきゃ借りないね。」ということでした。
10冊借りて半額クーポンを使って450円。彼は借りていた漫画本を返却ボックスに入れると、3列ほどある漫画の棚からまた「葬送のフリーレン」「SAKAMOTO DAYS」などの最新刊を10冊ほど手に取り、セルフレジに半額クーポンのバーコードをかざし、レンタルをしていました。
僕はTwitterで気になったら、本や映画をすぐポチってしまうタイプだったので、これは衝撃でした。
これが一般的40代男性の感覚なのだと思いました。
漫画に使うのは1冊45円。自分の財布の紐のゆるさを恥じました。
そして漫画家としても衝撃を受けました。彼にとって漫画は買うものではなくレンタルするものであり、あのゲオの3列の棚に入らなければ、彼の目に入ることすらありません。当然「笹塚高校コスメ部」も「やれたかも委員会」もゲオには並んでいません。
他の数多ある作品を倒し、面白いと選別された作品だけがあの棚に並ぶことができるのです。
いわゆる「十二鬼月」です。
あのゲオの3列に入らなければ40代男性読者にはアクセスできないのです。

その後まだお腹も空いてないので「寺にでも行くか。」ということになり、山の中の寺に向かいました。
拝観料は500円。駐車場が500円。駐車場代を彼が払ってくれたので、代わりに彼の拝観料を僕が支払いました。
山の中の寺を1時間ほどかけてぐるりと回りました。緑のもみじの葉を抜けてきたお日様の光は、先ほどとは打って変わって心地よく、気分を良くした僕は柏手を打ったりしながら、お賽銭を投げ入れました。
賽銭箱を落ちる小銭が木にぶつかる音が、自分の心の奥深くをノックしているかのように響きました。

「ゴンゴン。おい、気づけよ。目を覚ますんだ。ゴンゴゴン。」

お寺をぐるりと回った後、お土産屋さんの自販機で僕は130円の水を買いました。2023年の夏は観測史上最も気温が高くなった夏でした。
ふと友人を見ると彼は自前のタオルで汗を拭いながら、自販機にもたれかけて、僕を見つめています。
「キミは水を買わないのかい?」僕が思わず尋ねると、「次のうどん屋に水があるからね。」という答えが返ってきました。
僕はまた衝撃を受け、同時にえもいわれぬ敗北感を感じました。
「確かに…。次にうどん屋に行くことはわかっていたのに、なぜおれは水を買ってしまったんだ…。あと20分。別に我慢できたはずじゃないのか…。僕は彼より欲望に弱いということか…。その130円を使うことに少しでも頭を働かせたか…?」
僕はなるべく敗北感を悟られないように水を飲みました。彼は何も気にするような素振りもなく、駐車場に向かいました。
僕らは山を降り、うどん屋に向かいました。肉うどん定食750円。
エアコンの効いた店内で食べる優しいうどんの出汁がさっきからうっすら心にとどまっている敗北感に染み入るようでした。
彼は肉そばにトッピングで半熟卵を付けていました。小皿に乗った半熟卵は何よりも黄金に輝いているように見えました。

その後向かったのは山の奥にある園芸ショップです。
3棟からなる大きなお店で、店内にはさまざまな観葉植物があり、無料で楽しめるのです。
「また…無料…。」
無料で観葉植物が発生させるマイナスイオンをたっぷり浴びることができ、観たこともない植物の名前も知ることができ、さらには裏庭で飼われているヤギに草をあげることもできる。
楽しい。そしてお金を使っていないということから湧き出てくる何にも変え難い充実感。お金を使うときに他の策を見つける楽しみ。
僕は彼のこの徹底したお金の使わなさぶりに、心底感動してしまい、ヤギに指先をねぶられながら考えていました。

これが真っ当な暮らしというものではないだろうか。
彼にも妻と子供がいて、家のローンがあります。
その重さは自分にもわかるため、彼の倹約精神に大いなるな黄金の「父性」、「頼もしさ」を強く感じたのです。
その後も彼は「大阪メトロから無闇に私鉄に乗り換えない」という術も披露してくれました。
僕はSuicaにチャージしたまま、路線案内に示された通りに来た電車に乗っていて、運賃について考えたこともありませんでした。
どんどん考えなくなってしまっているんだ。と思いました。

小銭が賽銭箱の柵にぶつかりながら落ちていく。
「ゴンゴン。いいかげん目を覚ませ。ゴンゴゴン。」

あるいは僕は個人事業主という眠りの中にいるのかもしれない。
何を見るべきか、何を聞くべきか、何に考えを巡らせるべきか、彼はそのヒントを与えてくれたように思う。
そしてまた僕は漫画を描き始めなければならない。
ゲオのあのわずか3列の棚を目指して。

<了>


単行本発売中!!


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