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制作日記「コスメ部第22話掲載」

現在発売中のゲッサン4月号に「中高一貫!!笹塚高校コスメ部!!」の第22話が掲載されております。
よろしくお願いいたします。


毎回思うことですが、ネームができた時が「めちゃくちゃ面白れえ〜。」という創作の喜びのピークで、今「はて?なんでこんなの描いたんだろう。。。」とすっかり冷めたモードになっております。
(しっかし老け顔描くの下手だなー。直そうかな。)
漫画描いてる人はみんなそうなのだろうか?自分の漫画を見返して毎回めっちゃ笑う人っているのだろうか。
これは地味にデビュー当時から悩んでることであり、特にギャグ漫画を描いていると、ネームを描いて編集者にダメ出しをされると、ウケたところまで修正したくなることが多かった。同じギャグをその人の前で何回もやるのが、とんでもなく恥ずかしく照れてしまうのです。
「一回見たから違うことした方がいいよね?」って思ってしまう。
なのでいつの日からか「ほぼ完成!」と思うところまで、誰にもネームを見せずに描くようになった。人によってはネームの叩き台みたいな段階で編集者から意見を聞いて作っていく人もいるようですが、そのやり方は僕には合っていなかったようです。

でも次回の23話のネームは久々に担当編集者からの指摘が入り、結構大幅に修正しました。それでとても良くなったので、中々新鮮な気持ちでした。「ああ、俺も指摘を受けて、その意図を噛み砕き、直せるようになったんだ。」と。
まあ今回たまたまうまくいっただけかも知れませんが。
というわけで次回の第23話は結構自信作です。今回の第22話はまあ普通くらいです。

今回は某喫茶店が舞台なので、例の如く写真を撮りにいったりしました。
上の扉ページ。
店に対して斜めにテーブルを置いているので、テーブルのパースと店自体のパースが違うんですね。
絶対揃えた方が描くのは楽なんですけど、めんどくさいけどスタッフの方に描いてもらいました。おかげさまで素晴らしい扉絵になりました。
(コーヒーカップ1個描くの忘れてました。。。単行本で修正します。)

巷ではAIで絵が描けるとか色々話題になり、僕としても興味があるんだけど、誰でも絵が描けるようになればなるほど、自分で描く意味が高まるような気がする。そんで絵を描くための便利な素材が増えれば増えるほど、それを楽するために使うのはあんまり意味がなく、それに何かを加えたり、どこまで壊して面白く使うのかが重要になるのではなかろうか。
誰にでもできるようになればなるほど、誰にもできないやり方を探さなきゃいけないというか。
そんな思いがこの扉ページには込められています。

いや、嘘です。
ちょっと思っただけです。
でも漫画を描くのはいつまでもめんどくさくないといけないんじゃないかと思います。めんどくさいけど。


さてさていつもはここからは「今月何があった」とか日記めいたものをつらつら書いているのですが、先月は特に面白いこともなかったし、少し趣向を変えまして、新企画を導入したいと思います。
それがこちらどどん!!!

ヒットを狙う自己分析

「成功は芸術だが失敗は科学である。」という言葉がある。
成功するのは運やら縁やらタイミングやらがあって再現性は低いが、失敗は同じことすると必ずまた失敗するという意味だそうだ。
「やれたかも委員会」がドラマ化もされてたくさん売れたにも関わらず、「コスメ部」が売れてないという現状から学んだことが色々あるので、ここに記しておきたいと思います。
自作を元にヒット作について考え、次作に活かす。
それが「ヒットを狙う自己分析」
第1回は「タイトルで読者を裏切らない。」です。

スーパーで豚肉を100グラムを買ったら必ずパックの中身は「豚肉100グラム」が入っている。鶏肉やサバが入っていたら大問題である。
しかし、本に関して言えば、そこが多少ズレてても商品として成り立つ場合が多々ある。漫画は特に自由度が高いので、「それはそれで面白い。」が成立しやすく、そこに失敗の要因があるのではないかと考えた。
特に僕はひらめきはあるけど、企画を整える力は弱いので、タイトルと内容がズレててもそれをギャグで誤魔化してしまう癖があると思う。
さらに若い頃は「ひねりたがり」でもあったので、とにかく人の裏をかけばいいと思っていたフシがある。「タイトルと中身」は裏をかかなくてよいのだ。

これまで僕が描いた漫画を挙げてみよう。
「フィンランド・サガ(性)」
「シェアバディ」(原作担当)
「やれたかも委員会」
「中高一貫!!笹塚高校コスメ部!!」

この中で売れたのは「やれたかも委員会」だけである。「やれたかも」の読者が「コスメ部」にもついてきてくれるかなと思っていたのだが、今現在のところどうやらついてきていないようである。僕は漫画家として作者買いをされるほど信用されていないということだ。算段が甘かった。

4つのタイトルを見て「やれたかも委員会」にあり、その他の作品にないものでパッと思いついたのが、今回のテーマである「タイトルと内容の一致」である。
タイトルを見た人が「こういう漫画かな。」と思った想像を裏切らない。これが大事なのではないだろうか。

各作品を細かく分析してみよう。

・「フィンランド・サガ(性)」
タイトルを見て率直に思い浮かぶことは「フィンランドの漫画?」「ロマサガと何か関係ある?」「サガってことは真面目な漫画ってこと?」という感じではないだろうか。
ところが中身は「サウナギャグ漫画」って!フィンランドでも真面目でもない。これは見事な「つかみ失敗」と言えるではなかろうか。
タイトルでひねってはいけない。豚肉は豚肉。サバはサバなのだ。
フィンランドの英雄譚につけるなら合っているタイトルだと思う。
(もちろん幸村誠先生の「ヴィンランドサガ」をパクってるわけですが、今回は「タイトルと中身の一致」の話なので、その問題には触れておりません。)

・「シェアバディ」
「バディもの?」「シェアハウスとか流行ってるけどそういう系?」「バディだからエロいやつ?」と想像したところに「非モテとイケメンが身体をシェアする漫画」。
これは結構タイトルと中身は合っている。「エロい」っていう要素も合っている。もしかしたら惜しかったのかもしれない。
内容が単に面白くなかったのだろうか。
たとえば「女の子のことを理解するためにはイケメンと非モテが合体しなければいけない。」とか言うマッドサイエンティストが出てくるとか、しっかり「身体をシェアする理由や経緯」を冒頭で明確にしておけば、「なるほど!だからシェアするのか!」と面白がってもらえたかもしれない。

・「やれたかも委員会」
「やれたってどういうこと?まさかSEXできたって意味じゃないよね?下品すぎない?」「そこまで言って委員会ってテレビ番組あったけど関係ある?」「委員会だから討論する漫画?」と想像してたところに本当に「やれたかやれてないのか判定する委員会」が登場するので、第1話を読んだ時点でタイトルに嘘偽りがなく、「なるほど!」と思う。騙してない。
合格だと思う。
さらにタイトルがゲスっぽいのに内容が爽やかだったところも加点されたのかもしれない。内容がタイトルを上回る不一致は歓迎されるということだろうか。

・「中高一貫!!笹塚高校コスメ部!!」
「中高一貫ってことは私立?私立高校の漫画?」「笹塚のことが知れる漫画?」「コスメ部ってことはコスメのことが知れるの?でも多分ギャグ漫画だよね。」と想像したところに「恋愛ギャグ漫画」。
「中高一貫校」と「笹塚」と「コスメ」について知れないところがトリプルで期待を裏切ってしまっている。
何度でも言おう。タイトルでひねってはいけないのだ。サバと書いているならサバを出さなければいけない。
でも全部を裏切ることによってギャグ漫画だということは伝わっているのかもしれない。にしても多分もっとタイトルと内容は一致した方がいいんだろう。

どれもそこそこ面白いと思うので「漫画ファン」にはウケるかもしれないが、目的を「ヒット」に絞るなら、「漫画ファン以外の人」に読んでもらう必要があり、そのためには「タイトルと内容の一致」は今後気をつけるべきではなかろうか。
誰もが言っていることですが、漫画とゲームと動画が世の中に溢れており、「可処分時間」なんて言葉が言われて久しい現在、漫画も「タイトルで想像したものを裏切らない。」あるいは「想像を飛び越えてきてほしい。」と読者は潜在的に思っているのかもしれない。
今後漫画を描くときは「タイトルと内容の一致」さらに「なるほどだからこのタイトルか!」と第1話を読んで腑に落ちる感覚があると尚良いと考える。

ヒット作を作る方法という本は世の中に沢山あり、みんな勝手なことを言っているが、そういうのを読むと、気になりすぎて描けなくなってしまうこともよくあるので、上記のことも気にして描けなくなるくらいであれば、全無視して次の作品を描くのがよいと思う。

(了)

ではまた来月。
単行本発売中です!


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