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あるインフルエンサーのフォローを外してわかったこと

「内輪盛り上がりがキモい」というコメントを目にして…

ここ最近ずっと、Twitterで広告業界の人たちの名前を目にする。同じ業界がだからフォローしているわけではなく、トレンドにも上がっていることがあるほどだ。同時にその人たちにつくコメントにも、目がいく。もちろんポジティブなコメントが多いが、ネガティブなコメントにはこんなものが多い。「電博とかの内輪の盛り上がりが、キモい。」厳密にいうと「キモい」の部分には、全てのコメントが「キモい」と書いてあるのではなくて、みんな思い思いの悪口となる形容詞を入れている。僕はスパイスボックスという会社に所属していて、一応博報堂グループなのだけど、残念ながらその内輪盛り上がりに入れてもらったことはない。社内には博報堂本体に常駐しているメンバーもいるし、そんなメンバーとも仲良く話すけど、内輪のその円の中に入っている人は誰も聞いたことがない。でも、別にだからって内輪盛り上がりはありませんよ、って話ではないし、スパイスボックスが博報堂グループの嫌われ者というわけでもないと願う。

フォロワーの多いクリエイターが増えた広告業界。

確かに最近、SNSのフォロワー数の多い広告業界の人は増えた。場合によっては、SNSのフォロワー数の多い人が広告業界に入って来たりもする。そういう人たちは、自分のインフルエンス力も使って、自分が行った施作を広げようとする。みんなが持ちつ持たれつ、その施作を広げようと“いいね!”し合うみたいにうつった時に、“内輪盛り上がり警報”が鳴っている気がする。でも#PRさえつけとけば、おおよそ問題にはならないし、単純に認知が広がることはいいことだ。

その“盛り上がり”については、ブランド視点で考えたい。

ちょっと話は変わるけど、昨今ブランドマネージャーとか雑誌編集長に会うと、みんなコミュニティの話をする。キングコングの西野さんのサロンの話から入る場合もあるし、少し前ならファンベースの本の話題から入ったこともあった…さて、ここで僕は困ってしまった。なぜなら僕はよく提案でブランドのコミュニティを形成し、その中でのコミュニケーションを活発にして、盛り上げていきましょうと話す。そんなことを言いながら同時に、さっきの内輪盛り上がりが…というツイートには、何か感じるものがあった。

あるインフルエンサーの、フォローを外してわかったこと。

つまり、何が困ったかというと、「コミュニティで盛り上がること」と「内輪盛り上がり」の違いがわからないのだ。全然違う響きだけど、同じような言葉に聞こえる。しばらく悶々としていたが、ある日、その違いを理解した。僕に何が起こったかというと、別に大したことはなくて、ただ単にあるインフルエンサーのフォローを外したのだ。そのインフルエンサーは若くして事業に成功した人で、自分の事業を様々な場所で展開する人だった。僕のタイムラインはその人の話題でいっぱい。その人の発言だけではなく、その人以外からの発言も出て来たし、それも全てその人の活動や思考、言動を肯定するものばかりだった。僕も好きでその人をフォローしていたし、その情報は心地よかった。が、ちょっと同じような内容のツイートが続いたので、退屈に思えて軽い思いつきでフォローを外してしまったのだ。すると、僕のタイムラインから、その人の気配はすっかりなくなってしまった。別のSNSを開いても出てこないし、(たまにウェブCMとかには出ていたが、その時期は出ていなかったので)全くいなくなってしまった。しかも、タイムラインどころか、僕の思考や行動にその人が出てくることさえなくなった。多分、全く影響を受けなくなってしまったのだと思う。打ち合わせで、「〇〇さんがこんなことを言っていて〜」という〇〇に、その人の名前が出てくることもなくなったのである。今思えば、その人以外の人から出ていた発言も、SNSの最適化だったし、下手したらその人自身のリツイートやいいね!、シェアやストーリーズでの展開を見ていただけだったのかもしれない。

自分と違う人を楽しませるのが、広告コミュニケーション。

これってどういうことなんだろう?と考えたが、意外と答えはシンプルなのかもしれない。僕はその人のコミュニティから出て行ったのだ。その人とその人のブランドや事業の周りを囲う、コミュニティから出て行ったのである。その時に「コミュニティで盛り上がること」と「内輪盛り上がり」の違いがわかった。(あくまでコミュニケーションにおいてだけど)、今コミュニティは細分化されているし、近しいコミュニティでない限り、コミュニティごとには全く別の人たちが存在している。だから、広告コミュニケーションをディレクションする人間は、全く別のコミュニティを作り出すことをしたとしても、そのコミュニティの真ん中には入れないのである。(もっと言うと、いてはいけないとまで言えるかもしれない)自分とは価値観も感性も意識も違う人間たちが、ここにいたいなぁと思う場所を作ること、そのブランドに対して本当に「いいね!」と思うコミュニケーション及びそれによって生まれるコミュニティをつくることが仕事であり、ミッションであるから。

ミイラ取りがミイラになりがちな、SNSのシステム。

結論、「コミュニティで盛り上がること」は、そのブランドの周りにコミュニティという場所を作り、そこにいる人たち(ブランドのファン)にこのブランドが好きでよかったぁと思われること。「内輪盛り上がり」はブランドを自分たちの場所に招き入れること、と言えるかもしれない。当然、そこにいた人たち(ブランドのファン)に、このブランドが好きでよかったぁとは思われない。施策を放ったその瞬間は、ブランドは確かに盛り上がったように見えるが、ブランド自体はずっとその場所にはいられない。瞬間的にそのブランドのことを口にする人がSNSに増えても、一瞬そのブランドがTwitterのトレンドに入っても、そのコミュニティは別の人たちが、その人たちのために作ったコミュニティで盛り上がるだけ盛り上がったら、次の場所へ移動してしまう。広告を生業にする人たちは、複数のクライアントを抱えるいわば遊牧民だ。そこに止まって、ずーっと一緒にブランドを盛り上げてくれる人は少ないのである…そう考えると、「コミュニティで盛り上がること」と「内輪盛り上がり」の答え合わせは、少し先の未来にあるのかもしれない。“内輪盛り上がり警報”を鳴らして批判した人たちは、その施策を行ったブランドを見続ける、必要と責任があると言ってもいい。コミュニケーションを行ったのは、そのブランドなのだから、広告の人たちだけでなく、そのクライアントたちのブランドをウォッチし続けて欲しい。広告の人たちへの批判だけを続けていると、それはつまり移動する内輪盛り上がりの、その輪のちょっと外側に、ずーっとついてくる外輪要員になるだけになる。むしろ内輪の盛り上がりを作っている要因となり、本当のコミュニケーションの価値を推し量る目を曇らせるだけだ。

バズったか?の議論では、たどり着けない価値へ。

そうやって、ソーシャル上での盛り上がりとブランドの関係を考えていると、デヴィッド・レターマンというアメリカの有名な司会者のNetflixの番組に、カニエ・ウェストが出た時のことを思い出す。カニエがインタビューでも、パンチラインを放っていた。「ある友人は僕には影響力があると言うが、僕の本当の力は“影響されないこと”にある。」この話を受けての僕の解釈はこうだ。最も大事なことは影響すること・させることの議論をする前に、何にも影響されない状態で物事を考えるべきだ、と言うこと。何にも影響されないと言うことは、そのブランドや人が、本来やるべき、もしくはやりたいと考えることを考え、形にしたいと思うことを形にして、実行していくことになる。ブランドはそうやって行動を通して、自ら人に語りかけるべきであって、人(ソーシャル)から語りかけられてばかりいてはダメだ、と言うことだ。だから、僕らは今日もブランドマネージャーなどのクライアントと話すとき、そのブランドの本質を明らかにすることから始めることにしている。「ソーシャルはこうなっています、だからこうしましょう!」ってだけでは、そのブランドはオリジナルにはなれない。本当の意味での差別化は計れないし、そんな風に実施した施策は生活者にとっても「ここじゃなきゃだめ」「このブランドを好きでよかった」と言う理由にはならない。影響力のある人の影響下から離れたことで、それが自分の世界の全て、もしくは大きな部分を占めていたことを知り、同時にその情報はこの広い世界のほんの一部でしかなかったことを実感した。その後に考えたことは、ブランドの価値である。影響すること、されることよりも、誰にも影響されない、誰にも侵すことのできないブランドの核へ、ブランドの方たちと共に行くために。僕は今日も、そんなミッションを背負ってソーシャルのことを、会社の戦略メンバーと共に研究するのだろう。それは影響するためにでも、影響させるためでもなく、影響されないために。そう結論することが出来た。

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コミュニケーションカンパニーを少しはみ出て、新しい庭(仏:Jardin)を作った。 その庭には考えごとをする縁側があり、誰かと話す憩いの椅子もある。 「君なら、どうする?」と聞いてくれるブランドの方のために、 仲間を集めてものづくりでお応えする作業をしていることが多い。 そういえば、こないだこんなことを考えて…と、 世間話程度にコミュニケーションの話をしていけたらと思います。 そうは聞こえないと思いますが、営業トークですので、悪しからず。

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