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「御社の商品、まずいですね。」と言う理由。

クライアントは、めんどくさい?

クライアントはいつだって、めんどくさいことを言うし、無茶難題を押し付けてくる。たったそれだけの予算で、こんだけのことをしろって言うんですか?と文句の一つも言いたくなるときがある…みたいな話だと、表題から思われるだろうが、そう言う話では全くない…が、確かにクライアントは少し厄介なことを言い出すことはある。そう言う時、僕はマイケル・ジョーダンのスピーチを思い出すようにしている。そんなバスケットボールの神様の話をする前に、ここで言う“クライアントワーク”の定義を話しておきたい。

“クライアントワーク”をやめる時が来た!

とうとう来たな、この時が!…例えば、僕らの仕事を2つに分けたとして、“クライアントワーク”と“そうではないもの”に分けることが出来る気がする。でも、どんな仕事にもクライアントはいる。確かにそうだが、広告の仕事は特にクライアントの商品をどうコミュニケーションして行くか、が重要になるからこそ、クライアントとの連携が求められ、御用聞きだと勘違いされていることも多い。そういう意味で、今の時代「クライアントワークを脱したい」と漠然とでも思っている人は多い気がする。かく言う私も、そう考える一人だ。でも別に、クライアントワークをしたくない、と言うことではない!ので、何かご用命の際には是非!w(https://www.spicebox.co.jp/)って感じなのだが、クライアントの商品を、ただ広告にしているだけの仕事には、少し違和感と疑問がある。もっと本音でクライアントと語り合うべきだし、本当に良いものだと思った商品を広告する時は、自然と良い仕事になるものだ。僕自身、商品自体の開発に関わったり、一緒に事業をやることが多くなったのは、そういう意識の表れかもしれない。

御社のお菓子、まずいですね。

実際、キャリアの出自がブランディング会社の僕としては、基本的に“答え”はクライアントの中にあると思うたちで、ヒアリングこそが仕事のほぼ全てだと思っているのだが…それでも「こんなに良い仕事をする人がいるのか!」とキャリア初期に衝撃を受けたAD(アートディレクター)は、クライアントの商品を食べて「まずいですね。」と正直に言っていた人だった。(ちなみにそのクライアントとそのADは、その後とても素晴らしい会社案内を作っていた。)弁明しておくが、僕はそんな風には言わない。理由は簡単で、ちょっとだけ育ちがいいから!…と冗談はさておき、つまり何が言いたいかと言うと、クライアントは絶対に敵ではないし、深くわかりあうことが良い仕事の第一歩だと思うのだ。でも、それでも感情的に、クライアントワークを脱したい!と思う瞬間は、あるにはある。一番多いのは、クライアントと「ベストな表現」について意見が分かれたときだ。だいたいクライアントが言いがちなのは、ムービーのCMの現場などで、「もっと商品の話をしてくれ」「もっとパッケージを出してくれ」ということ。(実際は、そんなクライアントは僕の周りにはあまりいないのだけど…)そう言う時は、じゃあ1本のムービーの予算で、何百本とバナー作った方がいいんじゃないですか?…とは言わずに、マイケル・ジョーダンの話を思い出すようにしている。(やっと冒頭の話に戻れた!)

1つにまとまったチームが勝つチームなのか?

バスケットの神様マイケル・ジョーダンが、バスケットボール殿堂入りを果たしたスピーチで放った名言が思い出すのだ。彼が話していたのは、ブルズのアシスタントコーチ テックス・ウィンターとの会話だった。トライアングル・オフェンスという理論で、チームの力を引き出して勝つことを目指していたテックス・ウィンター。彼は当時のブルズの名将フィル・ジャクソンのアシスタントコーチとして、チームに尽力していた。ブルズはその日、10点ほど負けていた。そんな状態に奮起したのが、バスケットボールの神様マイケル・ジョーダンだ。彼はそこから1人で25点をとり、逆転した。そんなMJに、試合後テックスは言った。「TEAMという単語に“I”はない。」途中から25点を一人で得点し、チームを逆転勝利に導いてしまうMJが、テックスには独りよがりに見えたのかもしれない。でも、ジョーダンはこう答えた。「WINという単語には“I”がある。」二人の価値観や主張は正反対だが、この二人が所属するチームは、NBA三連覇を二度成し遂げる伝説になる。

WIN(勝つ)TEAM(チーム)というコンセプト

「得点王は優勝できない」と言われ続けたマイケル・ジョーダンと、「トライアングル・オフェンスなんて意味のない理論だ」と言われ続けたテックス・ウィンター。彼らはブルズというチームを優勝させるというコンセプトの元に、集まったのだ。勝つ(WIN)チーム(TEAM)とはこういうものなのだろうな、とつくづく思う。全く同じような価値観や意見で何かを成し遂げることは難しい。自分と違う目で物を見て、意見を言う人が存在するチームであること。それが勝利につながるのだと、確信している。

クライアントと向き合うのではなく、クライアントになる。

実際、経験談としてクライアントの言った、(めんどくさい)要望は、やってみると、正しいことが多い。残念ながら、クライアントも僕らも、MJ以外は神様ではないから、なんでも可能な限り試してみて、ギリギリまで考えること、検証してみることが大切なのだと思う。だからこそ、ある種クライアントを信頼して、思いっきり対立してみるのも大事かもしれない。ちゃんと本音で向き合い、自分がブランドマネージャーだったらやるべきだ、と思うことを提案する。そこにビジネス的な計算は必要ないし、目の前の会社の利益をとって、自分たちのスタイルを崩すリスクを負う気はない。最終的には最も価値のあるものを提供するチームになるために、まさに勝つチームになるために、である。だから私たちは、クライアントの御用聞きである“クライアントワーク”はやらないと決めている。いろんな意味で、やめる時はとっくに来ていた。本音で仕事をする。すべては従事するクライアントのブランドに、最大限貢献するためだ、と確信している。

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