イスラエルは特別なのか?
ビニール袋に入れられた遺体を見たことがあるだろうか?それがいくつも積み重ねて置かれている光景を。ビニール袋の重さはそれぞれ70kg。男性の平均体重。その袋に入っているのは、避難所になっていたガザの学校のモスクで礼拝をしていた人たち。朝5時半、アメリカ製の爆弾を使ったイスラエル軍の空爆で殺された。体の一部が一つも欠けることなく見つかった遺体はなかった。体はバラバラになり、そこらじゅうに肉片が飛び散り、よって、ビニール袋である。亡くなった方の数は170名を超える。その犠牲者たちの家族はビニール袋に入れられた父や祖父、息子を受け取っていた。6歳の息子を探していた父親は18kgの袋を受け取った。それが自分の息子かさえも分からないまま埋葬しなければいけない。
前回のブログから今日までに起きた惨劇はこれだけではない。アルジャジーラのジャーナリスト、イスマイル・アル・グール氏とラミ・アル・レフィー氏が乗っていた車が襲撃され殺された。車の前席に座ったイスマイル氏の頭はなくなっていた。PRESSと書かれたベストを身につけ、戦争や紛争で守られるはずのジャーナリストがガザでは10月7日以降160人以上殺されている。海外の報道機関がガザに入れない中、ガザの中から真実を伝え、イスラエルのおぞましい行為を記録・報道するイスマイル氏のようなジャーナリストはイスラエルにとって標的なのである。
さらに、イスラエル兵士によるパレスチナ人の人質への強姦が明らかになった。強姦を受けたパレスチナ人男性の中には直腸裂傷や助骨骨折、腸破裂で入院し、最終的に亡くなった人もいる。このニュースがイスラエルで伝えられたときに何が起こったか?極右や入植者たちが一斉に拘束所に詰め寄り、レイプの罪で拘束されている兵士たちを解放するよう「レイプする権利」のために抗議したのである。結果、これらの兵士たちは何のおとがめなしに釈放。それどころか、その中の一人はイスラエルのテレビに出演し、自分のレイプする権利を主張していた。このニュースを聞いて、なんて壊れた社会なんだと思うのは私だけだろうか?
これだけの犯罪を300日間以上繰り返し、1日100人以上の一般市民を殺害してきた国が、世界の善良なる一員としてオリンピックに出場したり、広島平和記念式典に招かれたりしていることに疑問を持たずにはいられない。
先週の日曜日に閉会式を終えたフランス五輪。ロシアとベラルーシはロシアのウクライナ侵攻を理由に国を代表しての出場を禁止されていた一方で、イスラエルは何も疑問視されることもなく参加していた。ロシアとイスラエルの行為に違いがあるとすれぱ、ロシアは戦争を、イスラエルはジェノサイドを行っているということだろうか。五輪は平和の祭典と呼ばれる。その平和とは誰のためのものなのか。平和をうたいながら盛大な開会式や盛り上がりを見せる中、ガザでは爆撃音やドローンが飛び交う音が鳴り響き、人々は十回以上にもなる「安全な場所」を求めて強制移動させられていた。このあまりにも違いすぎるパラレルワールドに、平和の祭典五輪を見る私の目は永遠に変わってしまった。
イスラエルは広島の平和式典へも招待されていた。(ここでもロシアは招待されていない。)これに対して、日本中からかなりの反対の声が上がり、デモや署名活動も行われた。それでも広島の松井市長は「自分たちが心配すれば世の中思うように変えられるということではない」と招待を取り消すことはなかった。原爆で被爆した人たちに思いを馳せ二度と同じことを起こさないと誓いを新たにする場が平和式典ではないのか。その場所に、被爆者たちが受けた苦しみを今まさにガザの人たちに強いているイスラエルを招待することは、冒涜ではないのか。「二度と同じことを起こさない」とはそんな空虚な言葉だったのだろうか。
イスラエルはなぜこんなにも守られる存在なのか?
その最大の理由はアメリカの後ろ盾があることだろう。アメリカなしに、このガザの虐殺は成り立たない。アメリカが武器や資金を送ることを止めた瞬間からイスラエルは財政的に戦うことは不可能となる。数日前も35億ドルをイスラエルに送ったところである。
資金、武器だけではない。国際刑事裁判所(ICC)がイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を請求したことを受けて、アメリカの下院はICCへの制裁を下す法案を可決している。イスラエルを守るためなら国際法さえ無視する世界の警察である。
アメリカ政府のイスラエル愛はさらに深い。先日の長崎平和祈念式典、イスラエルが招待されなかったことを受け、(招待状の代わりに、停戦を促す書簡を送っている)アメリカのエマニュエル大使は式典を欠席した。アメリカだけではない、イギリス、フランス、オーストラリア、カナダ、EUが皆ボイコット。ロシアと同格に扱うことは侮辱的だと、イスラエルの自衛権を必死に擁護した。自分の国が落とした原爆で被爆した人たちに追悼の意を表すことよりも、今まさにジェノサイドを行っている国の尊厳(もし1ミリでも残っているなら)を守ることを選んだのだ。
米国そして西側のイスラエル愛は自分たちのモラルを最低レベルまで落としてまでなぜそんなに深いのか?
アメリカの議員の多くはイスラエルのロビー団体AIPACなどから多大な献金を受けっとっている。AIPACだけではない、他にもCUFIと呼ばれるイスラエルを支持するキリスト教団体などもいる。
政治の上だけではない、大手メディアや大手ブランド、ハリウッドなどの多くはイスラエルのシオニストとのかかわりが深い。あらゆる業界で力をはびこらせている。イスラエルの政策に批判的な立場をとったことで仕事を失った人、様々な機会を奪われた人たちはかなりの数いるだろう。英国の元労働者首相ジェレミーコービンもその一人。それだけ西側では影響力や力が圧倒的に強いのだ。
ここで私たちは騙されちゃいけない。いくら米国や英国、大手メディアがイスラエルの度をとおに通り越した「自衛権」を振りかざそうとも忘れちゃいけない。イスラエルは特別ではないということ。特別であってはならないということを。国際法は西洋人以外の罪を裁くために有るわけではない。地球に住む全てのひと、社会を守るためのもの。罪を犯せば裁かれる。そんな当たり前なことを、国際法を、たとえ西側のトップが無視しようとも、私たちは何が何でも守らなければいけない。人間の命の重さは人種、肌のカラー宗教に関わりなく同等であるべきだ。誰一人としてビニール袋の中で最後を迎えることがあってはいけない。
長崎平和祈念式典をボイコットしたG7の態度からはっきりしたのは、これらの国はイスラエルの野蛮な行為を止めるつもりはさらさらないということである。政治上での解決が望めないのであれば、あとは、私たちの手で止めるしかない。
もしあなたの近くでパレスチナのデモをしていたり、スタンディングをしている人がいれば、少しだけでも立ち止まってほしい。そしてビラを受け取るだけでも、話を5分聞くだけでもいい、どうか関心を持ってほしい。やり方は人それぞれでいい。「人を殺すな。子供を殺すな」と訴えることは恥ずかしいことでも、すごいことでもなんでもない。誰でもできること。今止めなければ、近い将来ビニール袋に入っているのはあなたの大切な家族かもしれない。
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