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331. 性的少数者に対する県の取組が何故必要なのかが分からない。敢えてやるから目立つのであって、「勝手にどうぞ」という姿勢で良いのでは?

323の記事で埼玉県で行われた令和2年の県民の「性的マイノリティ」についてのアンケート調査から自由記述の部分を取り上げました。

今回も同じ調査からの回答をもとに記事を書きます。

さて、「LGBTの人たちはどうぞご勝手に」といって、県が何も対策をとらなかったらどうなるか考えてみましょう。

埼玉県では県民講座などで性的マイノリティについて理解を深めてもらうように活動を行っているそうです。

しかし、そういうことを県が積極的にやらない、性的マイノリティについて県が何もしないと、埼玉県に住んでいる性的マイノリティが偏見や差別にあっても知らん顔をするということになります。

悩み事がある、いじめをうけている、SOGIハラを受けている、性的マイノリティであることが受け入れられなくて毎日が辛い等、性的マイノリティであることで抱える不自由さや悩みがあります。

前にもとりあげたことがありますが、トランスジェンダーの学生は自分の性自認に合った制服を着たいと思っても、学校側が戸籍上の性別で制服を着用することになっているとかたくなな態度だったらどうでしょうか?

上の記事は2年前のものですが、東京の江戸川区と教育委員会関係者にトランス男性の方が次のように語っています:

「中学校の三年間は、僕は自分が着るはずだった男子の制服を着れずに、辛い思いをしました。自認する性別に合わない制服を着させられている間、僕はいつも自分の心を押し殺していました」

BuzzFeedNews (2020.8.18)

「先生や周りの大人たちに理解されないことが多く、大人はだれもこの苦しみをわかってくれないと思っていました。なので、当時は大人になる前に、20歳になる前の19歳で死のうと考えていました」

BuzzFeedNews (2020.8.18)

沖縄では小中学校は各市町村の管轄、高校は県の管轄です(他の都道府県も同じだと思います)。トランス男性が「男性の制服を着たい」と言ったら、中学校なら市長や市の教育委員会にお願いをしなければなりません。東京は「区」ですから、ここでは江戸川区になっています。

高校はどうでしょう?都道府県の管轄なら、県の教育委員会でも審議をしなければなりません。そのとき、例えば埼玉県の方針として、「どうぞご勝手に」と言うでしょうか。

「大人になる前に死のうと考えていた」子ども(高校生)を県は救うことができないことになります。

トランス女性の場合はどうでしょう?「どうぞご勝手に」と言われたから昨日まで学ランを着ていたけれど、女子高生の制服を着て登校したら、周りはどう思うでしょうか?

県は「どうぞご勝手に」という方針なので、公務員である先生は何もしない。もしイジメが起きても何もしない。仲間外れになっていることがわかっていても校長をはじめとした教員が誰一人相談にものってくれない、保健室の先生も知らん顔。そんな中でその子は学校生活を続けていくことができるでしょうか。

沖縄県では昨年(2021年)3月に「沖縄県性の多様性尊重宣言(美ら島 にじいろ宣言)」を行いました。この宣言文を以下に引用します:

沖縄県性の多様性尊重宣言(美ら島 にじいろ宣言)
~誰もが自分らしく幸せに生きることのできる沖縄を目指して~
人は、みなそれぞれ違う存在であり、自分らしく幸せに生きる 権利を持っています。 人がどのような性を生きるか、どのような性を愛し、愛さない かなどの性のありようは、人権として尊重されるものです。 しかし、多様な性に関する無関心・無理解により、差別や偏見 にさらされ、生きづらさを感じたり、ありのままに生きられず、 時に、命まで失ってしまう事があります。 性の多様性を尊重するということは、全ての人の命を大切にし、 共に生きやすい社会を目指すことです。それはすなわち、私たち が、そして次代を担う子どもたちが、夢や希望を持って健やかに 生きられる社会を創ることに繋がります。 私たちはここに、性の多様性への理解を深め、互いの個性を認 めあい、誰もが自分らしく生きられる心豊かな沖縄を目指し、 以下のことに取り組むことを宣言します。 私たち沖縄県民は、
・自分の性と全ての人の性のありようを尊重します
・性に関する多様な声に耳をかたむけます
・多様な性を理由とする偏見・差別やあらゆる種類の暴力を許しません
・多様な性を理由とする困難を解消するために取り組んでいきます
                        令和3年3月 沖 縄 県

『沖縄県性の多様性尊重宣言(ちゅら島 にじいろ宣言)』について

性の多様性を大切にすると沖縄県がこういった宣言をしたことを私は沖縄県民として誇りに思います。

なぜなら、沖縄県は性的マイノリティに「どうぞご勝手に」とは言わないとこの宣言で約束しているからです。

全ての人の命を大切にする、と沖縄県は言っています。そして、私はこの「全ての人の命を大切にする」ということがとても重要だと考えます。

こういったことが全国に広がればいいなぁと思います。

「どうぞご勝手に」と突き放してしまったら、失われる命があるかもしれないのです。

大人になる前に死のうと考えている子どもに手を差し伸べることができるようにするのが行政(県や国)の役割の1つではないでしょうか。


参考資料


画像:UnsplashDaniel Abadiaが撮影した写真