理事長からの訓示

本日、研修の締め括りとして、これから働く大学の理事長からの訓示を受けた。

理事長は外部から選定されるのが通例だそうで、今の理事長は金融機関一筋でトップまで上り詰め退任、その後大学の理事長になったそうだ。

民間出身ということもあり、いい意味で保守的ではなく、60代中盤であっても前向きなポジティブさを感じる方だった。

何より、話の内容から察するに、さすがの視座の高さ・教養の深さを感じ、さすがは組織のトップを10年以上続けてきたというだけある。
また、外部出身であっても、大学の精神を物事の判断軸にされていることがわかり、バランスの取れたご意見をお持ちである。

理事長の訓示で述べられていたことで特に印象的だったのは以下。
・人類の歴史は、自然災害やウイルスとの戦いの歴史
・こうした戦いの中で、産業・文化・芸術に至るまで、多くのイノベーションが生まれてきた
・例として、14世紀のペスト流行によって、「祈っても神は助けてはくれない」という思想が広がり、キリスト教の求心力は衰退の危機にあった
・そんな中、ルネサンスという新しい考え方のもと、芸術分野でキリスト教は求心力を生み出すことに成功した
・日本では、「変化を是としない」「変化のリスクから現状を変えられない」「解決を先送りにする」といった傾向が強いが、そうした組織は長期的に見て持続しないことは、歴史が証明している。


この話を引用しながら、大学というフィールドを考えてみた。

withコロナにおける大学の学びは、オンラインという変化を遂げた。この流れはおそらく戦いが終結するまで変わらないだろう。だが、Afterコロナになった時、Beforeコロナの時代に揺り戻しが起こるのか、揺り戻していいのだろうか、を考える必要がある。
私見だが、Withコロナで得た教訓や経験をもとに、大学は進化をする必要があり、それは全世界の大学で起こる変革である。

オンラインという新たなツールを得た日本の大学は、以下のような変化が起こるかもしれない。そのための備えを今から考えておく必要があると思う。

①在学生には、時間や場所に拘束されない学びを提供する
キャンパスに関係なく、どの講義を受けることも可能。
さらに、海外にいる学生(日本への留学希望がある外国人含む)も日本の講義を受けることが可能。
結果的に学生の選択肢は大幅に増えることで、より「自分がどうありたくて、今何を学ぶべきか?」を自ら考えるようになるかもしれない。

②社会には、より開かれた学びを提供する
オンラインであれば、社会にいる誰もが大学の講義を受けることが可能になり、学生と一般人の垣根がなくなる可能性がある。一般人も参加すれば、より多様な聴講者を相手にするため、講義の質も上がるかもしれない。

③キャンパスのあり方が変わる
一方向の講義型授業はオンライン継続になった場合、キャンパスに来て受ける講義は「高い付加価値」を求められるようになる。
アクティブラーニングのような、FtFだからこそ提供できることに焦点を絞り、だらだらと講義を聞く場所ではなくなるかもしれない。
(結果的に教室の稼働率が下がり、いらないキャンパスは廃止となるかも)

④地方の学生がより都心の大学に進学しやすくなる
経済的な事情で地方の大学しか選択肢がない学生も、都心の大学に進学しやすくなる。オンライン講義の割合が8割程度になれば、FtFの授業は週1程度になり、その日は新幹線で講義を受けて帰る、といった流れだ。
(往復の交通費の方が下宿にかかる費用より安上がりになる場合に限るが)

そんなことを考えさせられた訓示だった。

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