那智勝浦町昔懐かし話 第60話


              第60話『フカヒレの天日干し』
 
はい、また゛まだ寒い日が続きますが、お元気ですか。日本海側では雪も降っており大変だと思います。お気をつけください。今回は、久々に食べ物の話でございます。僕の上京したときの話も少し書きます。前置きがながくなりそうなので早速行きますか。でわでわ第60話であります。
 
 
「たけひろくん、遠慮しないで食べてね。お気に召すかしら。さあ、私たちもいただきましょうよ」「おじさん、おばさん達、今日は、僕のために本当にありがとうございます。おいしいです。遠慮せずにいただきます。」「そうよ、親戚同士だから、遠慮なんかしたら行けないわよ。さあ、いただきましょ。あっ、たけひろくんからどうぞ。飲み物はビールでいいの」「すいません、いただきます」ここは、横浜のなんとか楼という高級中華料理店、僕が高校を卒業し上京してからしばらく経ったある日、親戚のおじさん達が、僕の上京歓迎会を高級中華店で開いてくれた。僕の実家は本家で、僕の祖父の兄弟、親父の兄弟は何故か横浜あたりに住んでいて大きな会社の社長とかしていた。その皆さんが僕を招待してくれたのだ。恥ずかしながら、円卓というものを初めて見て、ずらりと並んだ中華料理そればかりか、しばらくしたらまた別の料理が運ばれてくる。この時僕は生まれ初めてフカヒレというものを食べた。思わず「うま~、なんやこれ」と言いそうになつたが、お上品なおじさん、おばさんの手前「おいしいです。フカヒレ最高ですね」と標準語で答えた。「良かったわ、私たち、たけひろくんの近くにいるからこれから何かあったら遠慮しないでいつでも連絡や遊びに来てね」「ありがとうございます」「いいえ、あたりまえのことよ」それから何時間か僕たちは高級中華料理を堪能した。ほんま、うまかった。これが僕のフカヒレ初体験である。話変わってこのフカヒレ。実は那智勝浦町の冬の名物でもあった。過去形で書いたが後で理由を書こう。那智勝浦町の勝浦漁港は生まぐろの延縄漁法水揚げで有名たが、この延縄にはまぐろだけでなくサメも時々かかる。サメにはヨシキリ、イラギ(アオザメ)、ヒラガシラ、トキリなどの種類がありフカヒレには、ヨシキリやイラギが使われる。胸びれは、フカヒレスープでおなじみの細かくほぐれた繊維質になる。背びれと尾びれは、ほぐれていないヒレの形をした繊維質の固まりに加工され、胸びれの2倍以上の値がする。那智勝浦町にも、大正時代から約100年続いたM商店がある。1月の上旬から3月までフカヒレの間約2ヶ月かけて毎日早朝から夕方まで干す。フカヒレは主に関西の中華料理店などに出荷されていた。サメの身は干物等になりこれも絶品である。このフカヒレの天日干し何年か前より見なくなったので、女将さんに聞いたところ、3年前にワシントン条約によりサメの乱獲が規制されフカヒレが手に入らなくなり、やらなくなったそうだ。今は主に干物づくりを行っているそうだ。サンマの一夜干しの風景と並んで冬の風景だったフカヒレの天日干し、出来ることなら復活してほしい。
 
第60話 終わり

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