足が臭すぎて起きた悲劇〜さすらいのガンマン〜

オレは足が臭い。

いや、〝臭かった〟と言っておくのが正しいかもしれない。

年齢的な問題なのか、生活習慣が悪かったからか、昔はやたらと臭かった。

とにかく、今はなぜかそうでもなくなったのだけど、そんな臭かった時の話。

とはいえ、そんな話は信じがたいだろうし、そのことを信じてもらうためにこれを読んでくれている人の鼻先に今のオレの足を押し付けるわけにもいかないので、どれだけ言おうが一緒なのだけど、とにかく、何が言いたいかと言うとオレは足が臭かった。

それはそれは強烈な臭いを発していた。

異臭を察知する検知器がある建物などでは、オレが入るだけで警報器が鳴り響いていた。

と、それはウソだけど、それぐらい臭かった。

今回、何が書きたいかと言うと、そんな足が猛烈に臭かったピーク真っ盛りの時の話で、それを書くことによって今足が臭くて悩んでいる人に、

「足の臭さは食生活で変わるかもしれない」

という淡い期待と、

「その臭い足のまま放置していると、オレみたいな目に合うぞ」

という啓示めいたものを書きたい。

なんなら、足の臭い人は読み込んでほしい。

あぁ、オレもこうなるの嫌だから、なんとか改善しよう。

そう思ってくれる人がたくさん現れることを願って、書く。


あれは、オレの足がピークに臭かった頃。

そんなものにピークがあってたまるかよ、と思われの方も多いと思うが、それがあるから困る。

スポーツ選手にその選手なりのピークがあるように、足の臭い人にもそれなりにピークがある。

ましてや、スポーツの世界とは違い足の臭い選手権でやっかいなのは、スポーツ選手のピークが短いのとは違い、長い。

長ったらしく、それなりにずっと臭い。

とは言え、さっきも言ったようにそれはたぶん食で改善されるし、なんだったら、スポーツ選手と同じく、どうしようもなく誰も手がつけられないほどの強い時期のように、足の臭さが誰にも手がつけられない時期というのはあるのかもしれない。

あれは、足の臭さを競い合う「天下一武道会」ならぬ「天下一臭う(におう)会」があったならばきっとオレが優勝していたであろう、時のこと。

しかも、オレはそこで優勝するための下地が完璧に揃っていた。

季節は春。

臭いの季節と言いましょうか。

まぁ、冬も実はすごい臭くなるシーズンではあるのだけど、春というものはシーズン的に臭くなる季節。

冬の寒さから解放されたお日様が、アシクサ共の足に汗をかかせてくる季節。

アシクサたちは、この季節には家族からこのように言われているに違いない。

「アシクサ、家に入ってこないで」

まるでアレクサに「電気をつけて」と頼むかのように、自分の家への入室を拒まれているはず。

そんなアシクサたちには苦労が多い春という季節に加え、その時のオレは、先輩に付き添って一日中歩き回り、そのまま先輩と夜まで付き合って飲み明かし、そして、また翌日にはそのままの格好で付き添うという、足に負担のかかる行動をとりまくった、その夜だった。

もう、靴の上からでも匂ってきそうなほど、なんだったら、漫画でしかみないような臭いがプーンとしている時の「〜」模様が見えるのではないか、というほどの状態だった。

そんな状態のオレに先輩は酷にも、こんなことを言ってきた。

「よし、今日はサウナ行くか。な、今からサウナ入ったら気持ちいいぞ〜?」

オレは素直に思った。

〝逃げよう〟

だけど、その先輩はやたらに巨大なカラダを持ち、このコンプラ時代には珍しいほどの鉄拳制裁を食らわせてくる人だった。

そんなわけで、そんなことを言えるわけもなく、オレは黙ってサウナへとついていった。

というか、もうどうなっても知らねぇぞ?と開き直って向かうことにした。

そして、とうとうサウナの入り口を入った。
すると、一番最初の難関がやってきた。

サウナというのは基本、受付の前で靴を脱ぐ。

もう、そこでオレは一か八かの気持ちで靴を脱いでみた。

すると、強烈な臭いが炸裂していた。

〝あぁ、終わった、完全に終わった!完全試合、お疲れ様!〟

と自分でもアッパレなほど、その臭いは固形物として顔面に飛んできているのではないかというほど、臭かった。

先輩がオレの後ろをキョロキョロしてつぶやいてる。

「なんかクセェヤツいんな?なんだこの臭い、すげぇ臭ぇな」

犯人はオレだけど、オレは後ろを振り向いてつぶやいた。

「え、そうですか、すんません、鼻詰まっててにおわないっす」

こういう場合、「うわ、ほんとだ、クセェっすねぇ!」と返していると、本当に臭かったのはオレだったとバレた時にやたらと問い詰められることがあるので、オレはこう返した。

「臭わないっすけどねぇ」

自分の足の臭さにも気づかなかったっすわぁ、という逃げ口上である。

とにかく、先輩はオレの足だとは気づいていない様子。よしよし、ごまかせてる。

とにかくあと少しだ、あと少しでサウナまで行ける。サウナに行ったらこの靴下を捨てさえばすれば、なんとかなる!!

そう思い、明らかにクサイ匂いが自分達についてきているはずなのに全く気が付いていない先輩の背後を、のそり、のそりと歩いていると、オレの背後から何やら聞きなれない音が聞こえてきた。

「シュシュ、シュシュシュシュシュシュ!!!」

な、な、なんだ?

恐る恐る後ろを振り返ってみると、そこには店員さんがオレの通ったであろう動線に目を血ばらせながら何かをかけていた。

「シュシュ、シュシュシュシュシュシュ!!!」

え…り、り、リセッシュをかけまくってる!!!

驚くことに、店員さんはオレの足が臭いということにいち早く気がつき、オレが通った場所をすべてリセッシュ、いや、リセットしようとしていた・・・

左手で鼻を強くつまみ、そして、中腰になって右手に持ったリセッシュを力強く撃ち放つ姿は、さながら、荒野を一人で生き抜くさすらいのガンマンのようだった。


とにかく、その店員さんのリセッシュのおかげか、なぜかオレは先輩に足が臭いということがバレずに済んだんだけど、、、あの店員さんの必死の形相というか、今まで味わったのことのない臭いと格闘するあの悶絶するような表情を、リセッシュで消えた臭いとは違って未だにオレの脳裏にずーっとこびりついてる。

もう2度と、あんな思いをする店員さんを増やしたくないので、足が臭くて悩んでいる人は、どうか、食生活を改善してみてください。

そしてもし万が一、食生活を改善したオレの足が猛烈に臭かったのを見かけた時は、、、その時は、黙ってオレにリセッシュをかけてください。

では、また。

終わり



ー 告知 ー

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