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雨の桜とその道の先(「Run Girls, Run!FINAL LIVE ~新しい道の先へ~」の終演に寄せて)


2023年3月26日日曜日、午前11時過ぎ頃、レイトチェックアウトにしていた六本木のホテルを後にした僕は、駅とは反対方向に歩き始めた。ふと、歩いたことのない道を、ただ歩いてみようと思った。外はやや強めの雨が降っており、少し肌寒い。地元ではこんな天気ばかりなのだから慣れていると自分に言い聞かせ、買ったばかりの折り畳み傘を手に、ひとまず遠くに見える東京タワーを目印に進むことにする。新幹線の時間まではまだ少し余裕がある。

頭がぼうっとする。昨日の夜は、SNSで知り合ったフォロワーさん達にお誘いいただき、代々木の裏通りにあるこじんまりとした串揚げ屋(とても良い店だった)でライブの感想を思い思いに語り合った。その後、コンビニで缶ビールやサワーを買い込み、ホテルの部屋で一人二次会を始めた。特典のタペストリーを飾り、アクスタやブロマイドなどを机に並べ、酒を飲んでいたところ、気付いたら寝落ちしていた。目覚めると、なんと時計は午前10時を回っていた。基本的に不眠の気のある僕には非常に珍しい。体力的な疲労があったことはもちろんだが、一抹の安堵感もあったのかもしれない。

自身の都合と、奇跡的な縁に恵まれ、2023年3月25日に東京・山野ホールで開催された「Run Girls, Run!FINAL LIVE~新しい道の先へ~」に昼夜両部参加することができた。この道を歩きながら、ライブでみた情景や感じたことなどを自分なりに思い返していこうと思う。

(なお、ライブについての詳細はリスアニ!さんの記事を参照されたい)





雨の降りしきる中、ビル街を進んでいく。すぐに濡れて冷たくなってきた足先を紛らわすように、イヤホンを付け、スマートフォンのアプリで昨日の夜聴けなかったラジオ番組を再生する。いつも変わらずそこにいてくれるラジオという存在には安心する。昨夜の六本木の喧騒とは打って変わり、人の往来は疎らである。通りの右手に厳重な警備がされているロシア大使館が目に入る。少しずつ昨日のことを回想していく。


今回のライブの参加前、不安に思っていたことのひとつは「声出し」である。感染対策に関しては、会場のルールを遵守すれば滅多なことにはならないだろうと特に心配はしていなかったが、何といっても自分はRun Girls, Run!の声出し有のライブに参加したことがなかった。そもそもランガちゃん以外でも、声出し有のライブなんていつ以来ぶりか分からない。これまで参加してきたRun Girls, Run!のライブは、声出しなしでも、本当に楽しかったため、今回新たな要素が加わったことで、万一疎外感を感じてしまったらどうしようと、一抹の不安を覚えていた。(先日の「伊福部・向のラジオ☆スターダストボーイズ」という番組でも、一般的に、昨今、声出し有のライブに戸惑うオタクも居るのではというトークがされていて、自分にとってタイムリーな話題だった。)

昼の部の会場に無事着席し、程なくして前説のメンバーのアナウンスが響き渡った。「当然!」「待ってました!」「かしこまっ!」といった様子で、周囲の参加者達は大きな声援で応えていた。緊張し、少し委縮していた僕はまだ声を出すことが出来ず、ひとまず拍手で応えた。オープニング映像がスクリーンに流れ、美しい白い衣装に身を包んだ、林鼓子さん、森嶋優花さん、厚木那奈美さんが後ろ向きでステージに登場し、何度も何度も聴いてきたあのイントロが流れた。『カケル×カケル』だ!それを理解した瞬間、全てが吹っ飛び、反射的に声を張り上げていた。いける!彼女たちを全力で見届けられる!そう確信した瞬間だった。

結局のところ、確かに一般的な一昔前のパターンとは少しだけ違う感じもしたが、それでも各楽曲における声出しについて、特段戸惑いはなかった。おそらく普段ライブや音楽を聴いている中で、無意識に脳内でコールを入れていたのだと思う。自分は合いの手レベルで声を発しながら、簡単に手振りを一緒にやっているような感じだったが、思い思いの楽しみ方をしている観客をみて、いいぞもっとやれと思っていた。

また、周囲のランナーさんには、熱心なファンの方が多く、声出しやライブそのものの盛り上がりを先導していただきありがたかった(誰かは分からないけどおそらくみんなフォロワーさんかさらにそのフォロワーさんなのだろう)。自分も学生時代の部活・サークル活動で声出ししていたことを思い出しつつ、全力でライブに乗り込み、終盤披露された大事な大事な楽曲やアンコールでも悔いなく声を張り上げることができた。もう最後だ!何も気にするな!という思いで、推しの名前を叫ぶことができた。感謝の思いを叫ぶことができた。本当に最後に声出しが解禁されて良かった。




飯倉という交差点に差し掛かり、そのまま直進し、ゆるやかな坂道を登っていく。左手に教会があり、気品のある紳士や婦人が出て来て車に乗り込んでいく様を眺める。観光客らしき人通りが増えたなと思った矢先、東京タワーの真下に出た。見上げると、雲に覆われていてタワーの先端が見えない。なんだか不思議な光景だ。生憎の天気だが、観光客達は春休みの東京旅行を満喫している様子だ。僕は、立ち止まって一息つきながら、印象に残った楽曲を思い返していく。


披露された全ての楽曲が素晴らしく、思い返すと枚挙に暇がないが、とにかく久しぶりのRun Girls, Run!のライブということもあり、3人の躍動、パフォーマンスを堪能した。『カケル×カケル』『スライドライド』『キラッとスタート』という、はじまりの3曲を浴びながら、昼公演は、ああ、ほんもののらんがちゃんがステージで歌い踊っている…という感動を覚えつつ、ステージの2階部分も含め上下左右に移動し踊る3人をみて、自分はライブに参加しているんだという実感を徐々に得ていった。夜公演は、更に完璧なパフォーマンスで、特に『スライドライド』での静と動の激しい応酬、サビで3人と一緒に人差し指を突き上げるポーズをしていった時の、共にその瞬間を生きている!という感覚は、強く印象に残っている。(ちなみに厚木さんが昼のリカバリーをした時は、よし!と内心ガッツポーズをした。)

プリチャン楽曲について、あらためて言うまでもないかもしれないが、どの曲もイントロを聴くだけで心の奥底が持ち上げられ、気分が高揚し興奮する。一曲一曲イントロが流れる度に会場が揺れ、僕も歓喜の声を上げた。
特に、今回夜公演の『Go! Up! スターダム!』が特に印象に残った。「ゴアスタ一緒に!」という林さんの煽りを受け、会場全体が「ゴーゴア、ゴアスタ―ダム!!!」と手を掲げながら叫び、ランガちゃんとひとつになる感覚があり、さらにその煌びやかな曲・3人のパフォーマンスに没入した。プリチャンに精通している方にとっては今更何言ってんだという感じかもしれないが、今回のファイナルライブでこの曲のもつ奥底の本当の凄さに少し触れた気がした。
「ちゃらららら~ん♪」という音が鳴った瞬間、「うわああああ」と声に出して、膝に手をつき崩れ落ちてしまった。そして、この曲だけはサイリウムを片付け両手をフリーにし、すぐに気合を入れ直して立ち上がった。手を横に出してジョイマン的なポーズをしながら上体と腰の逆ひねりを使って3人同時に横にスライドしていく動きに関して、ステージの2階部分を使ったり、森嶋さんと厚木さんが移動しながら林さん単体で動いていたり(MCでも言及)と豪華仕様だった。そして涼しい顔して厚木さんの跳躍の打点が高い(凄すぎる)。森嶋さんのフォームとポジションが安定していて、少し肩が上がっているのがかわいい。林さんの満面の笑顔が輝く。『キラリスト・ジュエリスト』は本当に体力的にキツいらしく、ラストは確かに大変そうだったが、それ以上に3人と会場全体が輝く宝石のような笑顔に包まれていたに違いない。みんながキラキラのファイナリストだったんだ!

昼公演では「3月も終わりということで、街にピンク色が溢れているんじゃないですか?」という導入の元、四季曲が披露された。自分は薄いピンク、赤と緑(スイカモチーフ)、オレンジ、白とペンライトの色を変化させ、ランガちゃんと共に春夏秋冬を駆け抜けた。美しいステージのライトが各曲それぞれの雰囲気を作り上げ、全身で物語を表現したような目まぐるしく動くダンスに、ただ見惚れていた。特に、厚木那奈美さんの手足のメリハリのある所作に釘付けになっていた。物語の主人公自身なのか、それとも語り部として表現しているのか、解釈はそれぞれだろうが、とにかく4曲連続で四季曲の世界観にどっぷり浸かることができて良かった。




東京タワーを通り過ぎると、目の前が開けた。さて、どちらの方向に進もうか。そのまま大通りを横断し、由緒正しい雰囲気のある幼稚園の入り口に目をやりつつ、増上寺の脇の少し狭い道を進むことにする。そこには、雨に濡れた美しい桜木が、何本も連なっていた。本当は青空の下、春の生命力溢れる満開の桜を見たいと思うところかもしれないが、今の僕には、このしとしと感がちょうどいい。
厚木那奈美さんはSNSで、門出の日が雨になったことについて、「なんだかそれもRGRらしくてもはや良い」と言っていた。この5年半以上の間、本当に紆余曲折様々な出来事があり、色々な思いがあったことが表れた言葉なのかもしれないと愚考する。道が少し狭いので、通行人に気を付けつつ、少し立ち止まり、桜を眺める。いとおかし。そして、3人についてあらためて思いを馳せる。




林鼓子さん。今回ライブをみて、あらためて、パフォーマンスのセンターとして頼りがいがある、心を預けさせてくれるようなパワーがあると感じた。特にその唯一無二の力強い歌声、静寂を切り裂く、付いていこうと思わせるカリスマ性には脱帽だった。『りんごの木』、『点とミライ』での、はやまる上昇気流に乗った真っ赤な会場を最高潮に盛り上げ、自分の心は完全に林鼓子という存在ににひれ伏していた。(勢いそのままに『RADIANT』への突入も痺れた。)
持ち前のストイックさと、走り続ける、駆け抜けるというRun Girls, Run!のスローガンを体現するように、恐らく壁にぶつかり悩みながらも進んできた彼女。それが滅茶苦茶大変なことであったということは想像に難くない。
これから大きなステージに立っていくのだろうが、たくさんの人が彼女のパフォーマンスの虜になり、感動し、さらなる喝采を浴びることを確信している。これからの大活躍を心より願っております。


森嶋優花さん。多くの観客を魅了する、そのチャーミングな、パフォーマンス中の所作、歌声は健在で、何度も目を奪われた。そしてそのような自身のパフォーマンスもふまえつつ、リーダーとして全体の調和を図っている印象も受けた。随所で挟む「まだまだいくよ!」というような声かけやライブバージョンのあえて節を外した歌い方が心地よく、より一層会場が盛り上がっていた。そんな中、『Darling Darling』、『感情にダッシュ!』では森嶋優花が誇るもちもちパフォーマンス全開!といった感じで本当にべらぼうに楽しかった。
ステージ上でのリーダーとしてのしっかりとした、熱い姿、普段の愛嬌あるキュートな姿、そして天性の才能と努力で培ってきたその能力を存分に生かして、これからは自身の夢に向かって邁進してください。進め進めワンツー!


厚木那奈美さん。僕の水色のタオル、水色のリストバンド、そして掲げた水色のペンライトは彼女の目に届いていただろうか。
毎回ライブで思うが、その所作やステップの一挙手一投足が丁寧で華麗で、優雅さと激しさのメリハリがあり、髪の動きや衣装の翻りも含め、敬服する次第である。そしてその表情と、甘い高音の歌声が合わさり、さらに観客を魅了していた。『逆さまのガウディ』、『拝啓ディアナイト』では、水色に染まった世界で、あっちゃんの愛情が全てを包んでいた。
彼女はファンへの感謝の思いと、そのお返しがしたかったという思いを度々口にしていた。感謝と愛情が彼女の行動原理なのかもしれない。現実では、シビアなことも訪れるし、時には非人道的なことに巻き込まれることすらあり、僕自身、感謝と愛情とは正反対の思考にしばしば苛まれる。でも、あっちゃんのもつ感謝と愛情を突き詰めた結果のひとつが、このファイナルライブ、ファンとの空間なのかもしれないし、彼女のそんな可能性と世界をこれからも信じてみたくなる。次の季節がもう来ます。魅力いっぱいあっちゃんならきっとなんでもできます。彼女のこの先の人生に幸あることを祈念しています。




桜のトンネルを通過し、日比谷通りを右に折れると、赤色の大きな門が目に入った。地図アプリでみると、増上寺三解脱門というらしい。雨宿りも兼ねて、門の軒先で一息つく。さすがに少し疲れて来た。目線を下げると、今回のライブ参加のためにスニーカーに装着した、グッズの水色のシューレースが目に入る。そういえば、下を向いて歩いてばかりの人間にとって、輝いてくれるのは靴だけ、素敵な靴は素敵な場所に連れて行ってくれる、という旨のことを、誰かさんがみずいろのコラムで言っていたっけ。よし、浜松町駅までもう少し頑張ろう。



夜公演では、すべての楽曲プログラム終了後、ダブルアンコールが巻き起こった。綺麗事でも話を盛っているわけでもなんでもなく、恥ずかしながら自分はダブルアンコールの意味が分かっておらず、ただ最高のライブをみせてくれたRun Girls, Run!に喝采を送りたい、まだ最後の一瞬まで終わりたくない、まだ別れたくない、この大事な大事な時間を一緒に過ごしたい、という思いから、最後の挨拶をしてお辞儀をした彼女たちに、他の観客が声を上げたのと同時に、自分も「Run Girls, Run!Run Girls, Run!」と呼び掛けていた。

ここに至るまで、ライブ終盤、『Believer Switch』、『無限大ランナー』からは、客観的にパフォーマンスを分析するようなもう一人の冷静な自分は姿を消し、ただ感情のまま、ライブに乗り込んで行っていた。「ああ、もう終わるんだ…」「もう、彼女たちのこの盛り上がりのライブに参加することはないんだ…」「最後の、3人が3人である証であり、未来への希望を歌った、この曲たちを全力で盛り上げたい」「彼女たちと会場全体で一緒に全力で楽しみたい」といった感情がごちゃまぜになり、声をあげ、共に指を指し、腕を振った。
その結果、想定を超えるフィナーレを巻き起こす渦中に入り、本当の意味で彼女たちを見届けることができた。

『無限大ランナー』後のアンコールでは、頑張って「Run Girls, Run!Run Girls, Run!」と声を出し続けた。普段日常生活でそれだけの時間声を張り上げることはない。声を出すと感情的になる。目に込み上げてくるものを感じながら、ここで降りるわけにはいかないと、最後まで手を抜かなかった(立ち上がればよかったと少しだけ後悔もあるが、そうしていたら万一倒れていた危険もあるので、自分に出来る範囲のことをやったんだと納得することにする)。
そして、自分の着ているものと同じライブTで登場したランガちゃんは『never-ending!!』を披露した。再びステージに出てきてくれたという喜び、彼女たちのここまでの決して平坦ではなかった道のりへの回想(彼女たち自身や彼女たちと縁の深い方々はこの5年半の帰結を本心ではどのように思っているのだろう)、そしてこの曲の持つ未来への希望への感謝が溢れ、昼も夜も、感情が零れた。『ランガリング・シンガソング』では、最後にありったけの愛をぶつける時間をくれた。ゴールで死んでなんて絶対にない。それだけは絶対に断定できる。あの時の、あの空間が証明している。彼女たちの目に映るランナーが彼女たちをぎゅっと出来ていたのなら、これ以上の喜びはない。

ダブルアンコール後、披露されたのはやはり『カケル×カケル』だった。はじまりの曲であり、成長物語の曲であり、これからの新しい道の先への覚悟を歌った曲でもあるのではないか。もう思考は働かないし、言葉もない。今、この瞬間、生きているという実感だけがあった。本当にありがとう。Run Girls, Run!最高!!!




大門を潜り、飲食店や雑居ビルが立ち並ぶ通りを進むと、浜松町駅、文化放送が近付いてくる。いつもラジオを聴いている文化放送をゴールにするのも悪くない。せっかくここまで来たことだし、軽く寄って行くことにする。そういえば、今日は「鷲崎健のヒマからぼたもち」の放送日で、1年間アシスタントを務めた松井佐祐里アナウンサーの卒業回だ。帰りの新幹線でゆっくり聴くことにしよう。多くの人が、この春新しい道の先に進もうとしている。そしておそらく僕もそのうちの一人だ。



偶然なのか、必然なのか、ただ仕事の合間に片田舎で細々とラジオを聴いていただけの人間が、Run Girls, Run!と出会った。ただ、最初はあくまで、音楽を聴いたり、配信を見たりすることに留まっていた。それでも、配信などを見ていく中で、彼女たちの一生懸命な所、生真面目な所、ファン思いな所、良識のある所、優しい所、芯のある所、学ぼうとする所、かわいらしくわちゃわちゃしている所、先輩や共演者、仲間たち、作品、キャラクター、あらゆる人達の思いを背負って前に進もうとする所、色々な面が分かってきた。もちろん演者として発信している側面に過ぎないのかもしれないが、いつしか、僕の目に映るRun Girls, Run!というユニットが、かけがいのない大切な存在になっていた。そして、Run Girls, Run!に傾倒しなければ経験しなかったであろうことが、たくさんあった。
ただRun Girls, Run!に関してその領域に僕の精神性が達したのは、実はここ1年半くらいの間の話で、それまでずっと応援してきたランナーさんや、強い熱量で発信や行動を行ったランナーさん達には本当に尊敬と感謝をしています。

…ところで、『Wake Up, Girls!新章』で躍動した、「Run Girls, Run!」(速志歩、守島音芽、阿津木いつか)は、どのような物語を駆け抜けたのだろう。今も仙台の街をバタバタと走り回っている気もするし、やはり、この世界のRun Girls, Run!と同じく、綺麗な衣装を纏った少し大人びた姿で、花道を飾っている気もする。実際、「まゆ・あいり・みなみ・よしの・ななみ・かや・みゆ」から花も贈られていたしね。でも、それについて、自分で結論を出す必要はなく、いろいろな視点で思いを馳せることが、ひいてはRun Girls, Run!が生き続けているということの証左のひとつといえるのかもしれない。

終演後のステージから見た客席は、なんだか不思議だった。広いような気もするし、狭いような気もした。彼女たちにとってはどうだったのだろう。後悔はしていないか。一生に一度の時間を過ごせたのか。その一助に、ランナーは、自分はなれたか。少なくとも、ライブ最後のお別れのとき、観客全員に目を配って感謝を伝えられていたことは、良かったはずだ。まだまだ若輩者の僕でも、人生山あり谷ありということは実感しているが、たとえ彼女たちがこれから苦しいときがきても、この景色のことを、たくさんの「ランナー」が居たことを、忘れないで欲しいと思った。

思うことは尽きないが、それでいい。思考に結論を出す必要はない。


正午過ぎ、辿り着いた文化放送下のサテライトステージでは、たまたまアイドルグループのステージが行われており、数十人程度の観客が居た。吸い寄せられるように、少し離れたところから、どれどれと、そのステージを立ち見でみる。ぼうっと眺めていたが、雨で寒い中、その4人組のグループは、歌もダンスもレベルが高く見受けられ、目を引くステージのように思われた。


フォーメーションの中で、後ろ向きで一列になり、両手を上にして、観客のクラップを煽る振りがあった。その瞬間、昨日のライブの各シーンが鮮明に思い出される。歌も、ダンスも、ステージの眩いライトも、客席も、笑顔も、涙も。Run Girls, Run!は確実に僕の中に生きている。そしてこれからも一緒に進んでくれるみたいだ。逞しい彼女たちのように、すぐに走り出すことはまだ出来ないし、もうちょっとだけやるべきこと、行くべき場所が残っているけれども、Run Girls, Run!を心に宿しながら、僕自身も、新しい道の先に人生の歩みを進められるよう頑張りたい。

さて、これで東京での用は全て終わった。地元に帰ることにしよう。おそらく当分来ることはないだろう。ゴールはまた新たなスタートであり、僕も今後の人生のスタートを切りたいが、ただ、もう少しだけは余韻に浸らさせてほしい。





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