【寄せ場交流会2020第一部:アップデートする寄せ場】~大学生実行委員感想レポート~

寄せ場交流会2020第一部の様子や感想を大学生実行委員よりお届けします。お読みいただければ幸いです。

ページ下記には、当日使用した資料を添付しておりますので、ご参加されたみなさま、どうぞご確認ください。


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第一部:「アップデートする寄せ場」

第一部「アップデートする寄せ場」では3人のゲストスピーカーをお招きし、困窮者支援にかかわる各団体がコロナ禍の影響を受けて始めた新たな試みについて報告し、今後の支援のありかたについて議論しました。何が問題だったのか、そして、寄せ場をどのようにアップデートするべきなのか。

NPO法人ビッグイシューの川上翔さんは、コロナ困窮者の住居確保応援プロジェクトである「おうちプロジェクト」の実践について報告しました。「当事者をコロナから守るため、『個室』、つまり住居の確保をすべく奔走してきました」と川上さんは話す。具体的には、入居の際の初期費用を拠出するなどして困窮者を支援しました。
その際に重視されたのが「ハウジング・ファースト」モデルです。このモデルは、ホームレス状態からシェルターや一時的な住まいなどを段階的に経由して恒常的な住まいへとつなげる「ステップアップ」モデルという従来の主流派と異なり、ホームレス状態から恒常的な住まいへ直接つなげる点が特徴です。多くの人がいる環境に抵抗がある当事者など、従来の支援の網からこぼれてしまう層への支援に力を入れました。

釜ヶ崎支援機構事務局長の松本裕文さんは、当事者への特別給付金の配布に関する課題について話しました。特別給付金の配布については、住民票をおくことができる住まいをもたないホームレス生活者が給付から洩れてしまうという課題がありました。これに対し国・総務省は、マイナンバーと預金通帳の紐づけという解決策を提案し、人生のどこかでマイナンバーカードが発行されスマホか通帳が維持されていれば給付を受けられるような制度を目指しています。しかし松本さんは、「国による管理の強化との兼ね合いを考えなければならない」と懸念を示します。
ホームレス生活者が支援の網から洩れるという点は、今後進んでいくワクチン接種にも見受けられると松本さんは話す。今後も注意が必要な論点を提示してくださいました。

釜ヶ崎支援機構の小林大悟さんは「新型コロナ・住まいとくらし緊急サポートプロジェクトOSAKA」について話しました。「2020年の春頃は、新型コロナに関する情報がメディアを通じて毎日発信されており、どれを信じればよいか分かりにくくなっていました」と小林さんは話す。そこで、当事者が自分にとって本当に必要な情報にアクセスできるようにするための「大きな看板」を設置することを目的にこのプロジェクトは発足しました。合計12回開催した相談会でののべ相談件数は142件、食糧支援配食数は約5,000食など、多くの当事者への支援を実施しました。
また、20を超える団体が協力することでそれぞれの強みを活かすことができました。「結果的に、相談に来られる当事者の方も、対応する支援側にも、双方にとってメリットが多数ありました」と小林さんは話す。

今後寄せ場に求められるものはなにか。ディスカッションの時間では、困窮者へのアウトリーチが話題になりました。

小林さんは「ヨリドコonline」というサービスを始めました。若い世代にも興味をもってもらいやすいようにインターネットを通じてのアウトリーチを試みています。かつては寄せ場には人が集まっており困りごとも可視化され、当事者どうしも口コミで助け合っていました。しかしインターネット・スマホの普及で仕事はどこでも探すことができるようになり、「情報を求めている人を探しづらいという状況になった」と小林さんは話します。

川上さんもオンラインでのアウトリーチに注目しています。ビッグイシュー基金は『路上脱出・生活SOSガイド』という冊子を製作し、全国各地に合わせて炊き出しの場所や支援を受ける方法をまとめて当事者に渡しています。ビッグイシューのHPでは項目ごとに掲載されており、情報が更新されると1000回以上リツイートされ、10,000人以上にリーチしたこともあるそうです。川上さんは「僕たちが情報発信を頑張っているというよりは、力になりたいと思ってくれている人たちが情報を広げてくれている、というアウトリーチになっている」と話します。

オンラインでのアウトリーチ以外にも、西成での街づくりの試みも今後の寄せ場について語るうえで話題にあがりました。現在西成区では「西成版サービスハブ・構築運営事業」が進められています。「四角四面の就労支援を実施するのではなく、利用者それぞれにマッチした支援を実施する」と小林さんは話します。


「寄せ場には人が集まってくるのが前提だった」と話すのは司会を務める桃山学院大学准教授の白波瀬達也さん。就労機会の減少によって寄せ場は人が集まらない場所になりました。しかし寄せ場には長い年月をかけて形作られてきた強いセーフティネットがあるのも事実です。「これまで寄せ場が培ってきたものを今の時代にどんどん活かすことのできる伸び代があると僕は考えている」と白波瀬さんは話す。

今後の街づくりに関して松本さんは「就労と居住の再接近」が必要だと話しました。地域内での就労を重視し、地域内での人的交流を促進する。「ひとりひとりに寄り添える社会を作っていける。そういう意味では、寄せ場はこれから正念場を迎えるのではないか」と松本さんは話す。


コロナ禍によって寄せ場が本来持っていた強みを活かす機会が生まれたと考えることはできないでしょうか。支援団体による挑戦はこれからも続きます。


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