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ヨルノサンポ団第12回公演「なつみ」演出×脚本インタビュー

次回公演「なつみ」の上演を記念して、演出と脚本のお二人にインタビューしました!作品の見どころや稽古場の裏側などそれぞれの視点からお話しいただきました。(聞き手:平井・小栗)

左:飯田充(演出) 右:藤代耕平(脚本)

■インタビュー
小栗:今回の作品が高校の同窓会が舞台だと思うんですけど、それを題材にしようと思ったきっかけはありますか?

藤代:今回一番最初に戯曲で殺人計画を使おうっていうのがスタートであって。いつも脚本を書くときに、なるべくちょっとずれる二つの要素を組み合わせたいなっていうのは思ってて。例えばコンビニと宇宙とか、ホラーと夕食とか。ちょっと相反するものを合わせたいなっていつも思うんですけど、そのときに殺人と遠いものって何だろうってなったら、和気あいあいとしたエモい同窓会みたいな、その二つを合わせて話を作っていけないかなみたいな感じでしたね。そういう逆算っぽい感じで、同窓会やってみるかっていうのが今回の舞台を決めた理由ですね。

小栗:「殺人」ってワードが出てきてますけど、今回作品全体を通して何かテーマみたいなのが、お2人的にあるんでしょうか?

飯田:今思ってることは、今回「人を殺す」っていう話なんですけど、基本的に登場人物がずっと逃げ続けるというか。殺すということだけじゃなくて、いろんな状況とかから向き合わずにずっと逃げ続けていて。一番わかりやすいのは過去に逃げる、ノスタルジーな感傷みたいなものに逃げるとか、その場の空気感に逃げたりとか、自分の認識とかを曖昧にさせたりとか。"逃げる人間"みたいなことがテーマかなと思ってます。

藤代:僕は今回は書くときのテーマとして、もうちょっとざっくりと、世にも奇妙な物語みたいなことをテーマにしたくて。
 これまで何本か書いてるんですけど、毎回やっぱり物語作らなきゃってなると、こういうことが起きたら面白いよ!っていうアイディアに理由とか整合性を自分でつけ始める作業が始まって。脚本を書く人はみんなやってるんだろうけど、一方でなんか決して楽しい作業じゃないというか。何のためにやってるんだろうと思うとか、ちょくちょくあって。こういうときに演劇だったらギリギリ許してもらえるんじゃないか、定点観測だからこそ、曖昧というか理解できないものがスッと許容される世界なんじゃないかなって思って。で、殺した人が死んでないみたいな状況の時に、人はどうするんだろうみたいな。
 意外と世の中って人間が勝手に理由をつけているだけで、もう少し不条理に何かが起きているんじゃないか。フィクションだからこそ理由を求められるだけで、実はリアルの世界ではすごいサラッとしたものだったりするんじゃないかな。なんかそういうことをやってみたかったっていう感じですかね。

小栗:不条理とかいろんなことから逃げ続ける人とかみたいなのがそれぞれテーマであるっていう話だったんですけど、何か具体的にこんな人に見てもらいたいとかはありますか?

飯田:(年代とか性別とか関係なく)割と誰にでも見てほしいというか、若い人しか楽しめないとか、演劇やってる人しか楽しめないとかそんなことはない作品かなと思ってます。

小栗:いろいろテーマとかお聞きしたんですけど、作品の見どころというか、脚本面でもスタッフワーク面でもいいので今時点で何かあれば教えてください。

飯田:僕から言うと、ヨルノサンポ団って映像投影を今までずっとやってきて。スタッフは結構派手な団体という印象も持ってくださってる方もいるんじゃないかなと思うんですけど、今回映像投影がなくてですね。プロジェクションマッピングとか使わずに、俳優の体をできるだけメインにやろうみたいなことがあって。藤代がさっき言ってた言葉で説明できないものみたいなものを俳優の体で表そうみたいな。そういう表現に挑戦している感覚がすごくあるので、そこが一番見どころかなと思います。俳優の演技も含めた全体の空間、空気感であったりとか、俳優の体みたいなものが面白いっていうものになればいいかなと思って作っています。

小栗:確かに私も第一回通ししか見てないんですけど、もう1回目の時点で役者さんのパワーというか、結構すごく力のある方たちだなという印象があったので。たしかに役者さんの演技については見どころですね。

小栗:役者さんの話が出たので続けてお聞きしたいんですけど、今稽古中ということで何か稽古場の雰囲気とか役者さんの印象とか、もしあれば教えてください。

飯田:すごい積極的で、いろんなアイディアが出てくる稽古場かなと思うんです。みんな勝手に動くし、めちゃめちゃモチベーション高くやってくれてる感じがすごくあって。とても刺激的で楽しいなと思ってます。

小栗:今回の外部の方もすごくたくさん参加してくださってるので新鮮そうですね。

飯田:いつも出てくれてた有我くんと高谷さんが今回出なくて。団員でいうと硯矢だけなので、客演の方が多く、そこもまた今までとは違う部分ではあるんですけど。雰囲気も少し変わるかもしれないなという感じです。

平井:今回客演の方が多いってことでしたけど、これまでの稽古場の雰囲気と違うなという所があったら、もうちょっと深堀りしたいなと思ったんですがどうでしょう?

飯田:演出の付け方を変えていて、以前はかなり細かいこと言ってしまったりとかしてた部分があったんですけど、(今回は)できるだけ目指すところは伝えつつ、俳優さんの演技に任せている部分もかなり増やしてるつもりで。それで(俳優さん自身が)結構考えてくださる部分が多いところが、今までと変わった部分なのかなと思います。
 以前は自分の頭にあるものを具現化させようみたいな感覚でいてしまったと思っていたんですけど、それよりも俳優さんの体でできることを一緒に探す。セリフと本、セリフとか俳優さんがいて、それで面白いものをどうやって作るかみたいなことを一緒に稽古で探ってるみたいな空気感は今までと違うのかな。今までどうしても自分の中で「こうなって、こうなって、こうやったらこうや!」みたいな感じだったけど、というより、「これはどうやったら面白くなるかな?」とか、「このやり取りどうやっていこうか?」みたいなのを、一緒に考えてる感じですかね。

平井:今回脚本を作っていったり稽古を進めていく中で、ここはちょっと難しいなっていうところとか、なかなか課題だなって思った所があれば聞きたいなと思ってます。

藤代:難しいと感じるも何もなんならまだ完成してないんですけど(笑)、さっきの話とも続いてるんですけど、自分の中で理由を考えるとか、そこに後付けしていくのが馬鹿馬鹿しいなと思って、なるべくそっから離れたいなと思ったんですよ。
 戯曲には不条理っていう割とメジャーなジャンルもあるし、いけるんじゃないかなと思ってたんですけど、ガチガチな不条理ではないし。もっと言うと、やっぱ同窓会を選んだので、絶対に過去が絡んできたんですよね。ってなると、その人たちの属性とかを描かかざるを得なくなっちゃうし。という部分で、完全に理由とかなしでいいやって振り切れない部分もあって、最初の自分のスタートとずれが生じちゃったりとか。そういうのはこれまで作ってたものと、新しく作りたいなって思ったものの違いを改めて意識したというか。作り方変えるだけで全然難しくなったり不安になったりするんだなっていうのは難しいなって思いましたね。

平井:こういう難しさがあったって気づいて、工夫したりとかしたところとか、そういうのがあればお聞きしたいんですけど、どうでしょう?

藤代:どこだろうな、難しいな。でもなんかその、やってみたっていうだけなんですけど、いつもの書き方と変えるって話で言うと、いつもは結構ガチガチにプロットを作って書くんですよ。でもなんていうか文脈的な物語じゃないとこで作りたかったから、具体的なプロットを作らずにやってみようみたいなのも作り方としてあって。実験としてそういう書き方もちょっとやってみて、それはそれでめちゃくちゃ大変だなと思って。なんか、面白いですけど、面白いし難しいなみたいな発見はあったかなと思った。

飯田:よくわかんないんだけどいい!みたいなものを優先してやろうみたいなのが、自分の中であって。だけど、指標がないと思いつかないから結局理屈から考えて作ってるんだけど、そうすると無難というか、結局そういう選択肢を取りがちだと思っていて。1人でやってるならまだしも共同作業のときになぜそれがいいのかという事をちゃんと説明できないといけないのでその難しさがありますね。
 ただ特に演技に関して言うと、何だかよくわかんないけどいいは共有できたりするんです。「今のって何かうまいこといったよね!」みたいなことが稽古場で共有できたりする瞬間があったので、それはすごく楽しい部分だなと思います。それはまぁ戯曲の作り方の変化にも影響してるのかもしれないし。

平井:今回怖い話を作ろうみたいな事は結構前から出てたかなと思うんですよね。けど、お話とか稽古を見る感じ、クスッと笑えるようなところも多いのかなと個人的には思ったんですが、意図があったりするんでしょうか?

藤代:ホラーに限らずなるべく笑いがあった方がいいっていうのは、大前提として思ってるんですけど、やっぱり揺れやすいところに感情を置きたいってなったときに、笑うとかが一番いい手法だと思うので。
 怖いぞ怖いぞみたいなもので90分作っても、ここぞというとこで効かないのかなという感覚はあって。基本的には前のめりにただ楽しく見てもらったらいいというか、ふとしたところで「何か怖いな」っていうものがすっと入り込めればそれでいいという感覚があるので。今回すごく意識したわけじゃないけど。

平井:そういうふうにするには笑いっていうのがすごく効果的って、藤代の中で思ってるっていうことですね。

藤代:そういうものなのかなっていう気がします。他に替えの要素があんまりないというか。

平井:充さんにもお聞きしたいんですけど、笑いのシーンを演出してて、どういうふうに感じるかというのがもしあれば。

飯田:藤代の言った通りだと思うし、笑いが起きるって俳優が観客と直接的なコミュニケーションが取りやすい瞬間だから、そういう瞬間が当然あるに越したことはないと思う。ただ確かに笑いって言語化できない部分もあるから、「それは笑えないですよね」「それは笑えますよね」って俳優にフィードバックするときに難しいというか。このシチュエーションでこれはしませんよねとまたちょっと違うというか。
 あと別に戯曲上は笑いが書いてなくても、俳優の中でそういうものが生まれることもあるし、そんなに藤代との違いはないです。

平井:せっかくなので、最後に今回の作品について見てくださる人に何か言葉がございましたら。

藤代:ホラーみたいな言い方してますけど、笑いもあるし、怖いものが苦手という人も楽しめると思うので、演劇でホラーをやるならこんなのどうですか?みたいなものを作ったつもりなので、そういうのに興味ある方はぜひ見に来てほしいし、楽しんでほしいなと思います。

飯田:そうですね。いろんな楽しみ方ができる演劇だと思うので、最初から最後まで笑ってる人ももしかしたらいるかもしれないなと。それこそお笑い好きな人も、ホラー好きな人も楽しめる作品なんじゃないかな。暑い中劇場に行くのが億劫な方もいるかなと思うんですけど、来てもらって劇場に集まってみる楽しさがね、ホラーにせよお笑いにせよあればいいかなと思っています。

■公演情報
ヨルノサンポ団第12回公演「なつみ」
作:藤代耕平 演出:飯田充

【日時】
2024年
8月16日(金)19:00~
8月17日(土)13:00~
8月17日(土)18:00~ ★アフターイベントあり
8月18日(日)13:00~

・アフターイベント
…18:00の回公演終了後、観た作品について自由に感想を語り合うシアターカフェイベントを予定しています。参加費は無料です。

【あらすじ】
卒業から約10年が経ち、母校で開かれた高校の同窓会。食堂で卒業生たちが思い出話に花を咲かせている頃、少し離れた3年A組の教室では、かつてクラスの中心人物だった夏美(なつみ)を殺害する計画が実行されようとしていた……。
 
【出演】
青草猫(金木犀の肌)
山本魚
渡邉素弘
小山栄華(アナグマの脱却座)
硯矢千智
所美華(劇団なべあらし)

【場所】
THEATER E9 KYOTO

【ご予約】
https://askyoto.or.jp/e9/ticket/20240816

【チケット】
一般…早割3000円・前売3500円・当日4000円
学生…前売1500円・当日2000円
※早割は2024/7/16(火)18:00までにご予約いただいた方が対象。

脚本:藤代耕平
演出:飯田充
舞台監督:小沢佑太(劇団CLOUD9)
舞台:諏訪華奈子(劇団ホリック/劇団CLOUD9)
衣装:清水春香(Thenon works)
小道具:杏仁アニー
音響:松尾明
照明:深川大悟(劇団ホリック)
制作:小栗あかね、青梅ひさし、平井宏樹
宣伝美術:恵口愛実


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