将棋×サッカーコラボ/トークショー

2016年5月7日、モンテディオ山形のホームゲーム(vsザスパクサツ群馬)にて、将棋サッカーコラボイベントが開催されました。ここでは、3名のプロ棋士の先生方による指導対局、渡辺竜王と小村さんの特別公開対局に続いて行われたトークショーの様子をご紹介します。

■ トークショー出演者

渡辺明竜王

野月浩貴七段

村山慈明七段

小村徳男氏(元サッカー日本代表)

——まずはお一人ずつ紹介しながら一言ずついただいていきます。将棋サッカーコラボもここまで来たかと感激する大物ゲスト、渡辺明竜王です。

渡辺 以前から(将棋サッカーコラボの)イベントをやられているのは知っていたのですが、今回が4年目ですか? 野月さんが毎年プロデュースしてやっているのは知っていたものの、なかなか機会がなくて。というか僕は今、将棋関係者とサッカーをやっていて、今回は丁度いいタイミングで声をかけていただいて、今日はすごく楽しませていただいています。

——次に、将棋サッカーコラボといえばこの方、野月浩貴七段です。ゴールデンウィーク中にコンサドーレ札幌は首位に立ち、いい気分でおいでいただけたと思います。

野月 僕は札幌出身で札幌を応援していますが、モンテもここから上昇気流に乗って、一緒に上がれるよう待っています。期待しています。

——そして、サッカーコラボイベントへの参加は初という村山慈明七段です。

村山 そうですね、初めてです。私はサッカーはテレビではよく見ていますが、スタジアムで観たことはなかったんです。でも先月、小村さんに誘っていただいて、日産スタジアムで初めてサッカー観戦をさせていただきました。それから、5月3日に味の素スタジアムで東京ヴェルディ対山形の試合を渡辺さんと一緒に下調べも兼ねて観に行ったんですけど、それが2回目で今日が3回目。今まで観に行ったことがなかったのに、この2ヶ月で3回も見に行かせていただいているという濃密な2ヶ月で、楽しいです。

野月 (モンテディオのユニフォームを身につけた村山七段を指して)僕の私物(モンテユニとタオルマフラー)をあげたので、これからもっと応援してくれるはずです。

村山 応援します。がんばります。

——そして、元日本代表、小村徳男さんです。サッカースタジアムで対局をしたお気持ちは?

小村 勝ったので、格別です。

——この後、小村さんはスカパー!の解説をされるそうですが、将棋の方が先に決まって、ついでに解説をすることに?

小村 ついでじゃないですよ!なにをおっしゃいますか。

——普通はスカパー!のスタッフミーティングはスタメンが発表になる試合開始2時間前だそうですが、今回は小村さんの対局があるということで、3時間前に繰り上げになったとか。

小村 濃密な打ち合わせをさせていただきました(笑)。今日の解説をすることが決まってから、山形は勝っていなかったんですね。なので僕もすごく心苦しかったんですよ。でもこの2試合勝ってくれたので、気持ち良く今日来られました。

——先ほど少し話が出ましたが、渡辺竜王、日本将棋連盟のフットサル部の活動について伺えますか?

渡辺 もともと野月さんとかが、若い頃というと失礼ですけど、もう10年ぐらい前ですか? 東京にはサッカー部があったんですね。でも、僕もちょっとサッカーやりたいなと思った時に、周りの人に聞いたら今はサッカー部は活動休止というか、やっていないと言われちゃって。じゃあもう一回そういう人たちに声かけてやろうと。それで今、以前やっていた方とか20代の若手とかでやっています。

——チーム名は決まったのですか?

渡辺 センダガーヤ。これからユニフォームとか作ります。ちゃんと横文字表記でかっこいい感じのユニフォームに仕上がる予定です。

——ユニフォームを作るということは、対外試合もやるということですか?

渡辺 いや、対外試合はやらないです。怪我したら怖いので。あくまでも将棋界の中でやると。たとえば関東対関西とか。僕は東京なんですけど、大阪は大阪でサッカー部があったりしてやっているので。

——せっかく将棋サッカーコラボというものがあるので、ここ(NDソフトスタジアム山形)でやっていただいても……。

渡辺 ここで!?(スタジアムの)中で?(観客拍手)それは、天童市さんにご協力いただけるなら(笑)。将棋の棋士にとっては天童って第二の故郷みたいな場所なので。でもそれ実現するかな。ハードル高そうですけど(笑)。でも僕らもプロのスタジアムで一回でもできればいい思い出になるし。じゃあちょっと天童市長に(笑)。

——野月先生も、もちろんフットサル部員なんですよね?

野月 僕は顔を出すだけ。でも僕も、昔やっていた深浦康市九段も、渡辺さんがはじめてから10年ぶりくらいにフットサルに参加しました。でもダメです。見に行って、その後の宴会要員です。

——村山先生もされるのですか?

村山 はい、私もフットサル部に入っていまして、渡辺さんと一緒によく試合もやるんですけど。先ほどスタジアムでやるって話が出ましたけど、私たち、フットサルの狭いコートでやっていてもバテバテなので、あの広いところでは(笑)。そもそも棋士は座るのが仕事みたいなところがありますから(笑)。

——フットサル部の特別コーチが小村さんだそうですが、棋士の皆さんのプレーぶりはいかがですか?

小村 (目をぱちくりしながら黙ってニッコリ)

野月 それは聞いちゃダメ(笑)。

小村 対局姿と比べるとギャップがありすぎてですね。ここではちょっと……喋れないです。——ボール扱いなどを教えたりするのですか?

小村 ちょろっ、ちょろっと、ポイントでは教えさせていただいたり。股抜きはこうやってやるんですよ、とか。そういう技を少しは教えさせていただいたんですけど。

——見所のありそうな方はいらっしゃいますか?

小村 (目をぱちくりしながら黙ってニッコリ)

野月 でも、今、名人に挑戦している佐藤天彦さんがね、食い付いて、股抜きの練習していましたよね。

小村 そうですね。すごいんですよ、(佐藤天彦さんの)プレースタイルが。ウィングタイプみたいな、駆け抜けるみたいな。

——では棋士の先生方から見て、サッカーをしている小村さんはいかがですか?

渡辺 むちゃくちゃ上手いに決まってるじゃないですか! もう3回くらいご一緒させていただいたんですが、もちろんかなり手を抜いてやっていただいているんですけど、みんなで囲みに行くと、一瞬本気が出て。ちょっと力を出されただけでサササッと抜かれちゃいます。

小村 まあそこは、元プロとして負けられないです。

渡辺 数の攻めで、3、4人で囲めばいくら小村さんでも取れるかなと思って囲むんですけど、そうするともうパッとやられちゃいますね。

——そんな皆さんは、先ほども話に出たように、前節の東京ヴェルディ戦(1−0でモンテディオ山形が勝利)をご覧になられたとのこと。いかがでしたか?

渡辺 勝ててよかったですよね。だって順位表を見ていて、下の方にいると心配になるじゃないですか。今季は再昇格を目指す年なのに、シーズンの出だしがちょっと……僕ばっかり喋ってますね。その辺は野月さんの方が詳しいですね。

——野月先生はゴール裏で観戦を?

野月 そうです。モンテサポの皆さんと一緒にゴール裏で。僕は先月もここへ、札幌と山形の試合の時に来まして。雷で中断した試合です。その試合自体は引き分けでけっこういい試合だったんですけど。

——モンテディオはあの試合から調子がよくなってきました。

野月 じゃあ、札幌のおかげということで(笑)。

——山形のゴール裏の雰囲気はいかがでした?

野月 ゴールデンウイークだったので、お子さん連れも多くて、なごやかでいい雰囲気でしたよ。

——村山先生はいかがでしたか?

村山 渡辺さんと二人で観たんですけど、0−0で終わってしまうかなと思っていたところで、最後に宇佐美選手がビシッと決めて。その時の盛り上がりがすごかったですね。味の素スタジアムだったんですけど、見た感じ、山形のサポーターの方が半分くらい入っていてすごい盛り上がって、すごく面白かったです。興奮しました。

——気になる選手はいましたか?

村山 宇佐美選手、あの背番号4番の方は、ずっと見ていたら要所要所の守りをしっかり詰めているなという印象がありまして、それで得点を決められたので、今日も出場されたら応援したいです。

——やはり守りのところをご覧になるんですね。

村山 そうですね。自分の将棋が受けの棋風というのがあるかもしれないですね。将棋と通じるところがありますからね。

——小村さんは、ここまでの山形をどのようにご覧になっていますか?

小村 今季の全試合を観せていただきましたが、選手が大幅に入れ替わり、チームを作る上で、システムも含めてうまくはまらなかったという所があると思います。でも徐々に、4バックにしてからですか、選手の関係性が非常に良くなっているので、今後に向けてすごくいいなあというふうに思います。で、ひとつ言うと、相手の群馬のクロス数ナンバーワンの選手が出ないんですよね。高瀬選手。なので、山形にとってはそこは有利だと思います。事前の打ち合わせの時に、予想スタメンで注目選手を出させてもらったんですけど、キックオフ3時間前に(笑)。群馬の注目選手は誰ですかって聞かれて、僕は高瀬選手と言っちゃったんですね。そしたら今日スタメンじゃないということが今わかったので、これからもう一回考えます。左サイドバックの高瀬選手は今、J2でクロス数ナンバーワンなんです。そこがいないというのは、山形にとっては有利です。

——ところで、村山先生は明後日がお誕生日だそうですね。

村山 あ、そうですね。5月9日です。(観客から拍手)ありがとうございます。84年生まれで、渡辺竜王と同い年です。

——モンテには3人84年生まれがいるのですが、お客様の中でわかる方はいますか?

村山 あっ、私わかります。選手名鑑で勉強してきました。ディエゴ選手じゃないですか?フォワードの。

——正解です!

村山 あとの二人はわからないです(笑)。

——アルセウ選手が84年生まれで今日が誕生日。それから松岡選手も84年生まれです。同い年選手に、ぜひご注目ください。

村山 応援したいです。

——まもなく群馬戦がキックオフになりますが、どのあたりを楽しみにされていますか?

渡辺 そうですね、まだ(ND)スタジアムはテレビでしか見たことがないので、山を切り拓いた場所にある、自然の中にある……(観客から苦笑が漏れて)失礼なこと言いました? 自然の中でサッカーが見られるということで楽しみにしています。あとは勝ってくれれば。

野月 ホームでまだ勝っていないんですよね。3連勝とホーム初勝利に期待して。特に、林選手のところにボールが集まれば、全体的な流れがいいので、そこにボールをいっぱい入れてもらってバカバカ点を取ってもらうと。

——野月先生の予想は当たるんですよね。村山先生は?

村山 今、いい流れできているので、このまま勝っていただきたいです。素人目戦なんですけど、点がたくさん入る試合が見たいので、点をたくさん取っていただきたいですね。

——今日お越しの皆さんは、帰ってから勝ち試合をスカパー!で確認すると思いますが、解説の聴きどころは?

小村 それはもう、番組を観ていただければ。サポーターの方に、今日の解説ではモンテをよろしくお願いしますと言われたのですが、でも、公平な目で解説させていただきます!辛口あり、甘口ありで。

——そろそろお時間ですが、質問がある方がいらっしゃれば。

女性 サッカーとは関係ない質問なのですが、うちの息子が小学4年生で将棋を指しているのですが、今ちょっと迷走期間に入っているみたいで、なんの勉強をしていいのかわからなくなっているみたいなのですが、小学校の時に一番勉強した、棋譜並べとか詰将棋とか、何の勉強をしたのか教えてください。

渡辺 これは野月先生が詳しいですよね。指導経験が一番おありなので。僕は小学生を教えた経験はほとんどないんですよ。自分が4年生の時はもう奨励会に入っていたので(笑)。人に教えるのと自分が指すのって違うんですよね。ゴルフとかって、レッスンプロとトーナメントプロってはっきり分かれているじゃないですか。将棋は仕組み上は分かれていないんですけど、僕は人に教えるのが向いていないというか。自分の子供ににも教えたんですけど全然ダメで。

野月 息子さんの実力はどれくらい? 1級か初段? 結構強いじゃないですか。詰将棋でも棋譜並べでも実戦でもなんでもいいんですが、4年生で迷走期間に入っていたら、本人が楽しく勉強するのが一番だと思うので、たとえば詰将棋で簡単に解けるのをいっぱいやるのが楽しければそういうのをやる、棋譜並べが楽しければそれをやるという、まず、嫌にならないように、楽しいことをいっぱいやっていれば迷走期間は終わるので。本人がやりたい楽しい勉強方法を選ぶのが一番だと思います。がんばってください。

——小村さんは、いつから将棋を始めたのですか?

小村 小学校低学年ですね。父親が将棋を指していて、習って。強くはなかったんですけど、父親にどうしても勝ちたいと子供心にその一心でがんばって、親父に勝ったら燃え尽きちゃいましたね。

——今の実力は?

野月 三段は楽にありそうですね。(竜王も)頷いています。免状はお持ちなんですよね? 持ってない? じゃあうちでなんとか(笑)。

20分ほどの短い時間でしたが、楽しいトークを披露していただきました。試合の方も、野月先生の予言どおり3−1と山形が珍しく複数得点を獲って快勝しています。モンテディオ山形での将棋×サッカーイベントは9月にも開催予定ですので、詳細発表にご注目ください。

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