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焼き菓子|大切がノワールにつつまれている

これは仏プロバンスの焼き菓子「rocaille(ロカイユ)」。“岩”という意味だそうです。全く名前も知らない存在に、口に入れたくなるほどの興味がわくと、恋に落ちたような気分になるから不思議です。

炎天下のなか、別のお店をさがして反対車線を歩いていたのに、この焼き菓子を遠目に見つけてしまいました。店先に、大きな広告があったからです。横断歩道をわたり眼に飛び込んできたのは、漆喰のような白の塊。くわえて左官職人にぬられたようなシルキーな肌合い。ユトリロの「白の時代」の世界観を彷彿とさせました。このお店が、大好きな餡子の老舗「井村屋」グループに運営されているというのは、私にとっては偶然ではなく、もう必然ですね(餡子のご縁か)。


たしかに、ごつごつとした“岩”のような風貌。

ですが、明らかにメレンゲ菓子。こういうのは全てが軽いでしょう? マカロンよりもプリミティブな、カシュカシュとした音が聞こえてきそうな、いかにもその繊細さが伝わってくる見た目です。

今回手にしたのは、掌に乗るほど大きい「生ロカイユ」。
シトロン風味です。

タマゴの殻を割るときのような気分になります。

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「あ、なにこれ。おいしい」が最初の感想。
とても繊細で美味です。

漆喰のノワールに包まれた中身は、よりブラン。口に含むと思った以上にクリーミーでした。この核心が、このお菓子のミソですね。

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鯛の塩釜焼をご存じなら話しが早いのですが、この手の二重構造で生み出すものはたいてい、間接的に長時間低温で火を入れて作り出した中核の、外皮よりも瑞々しく柔らかいところがメインになる、のではないでしょうか。他にないのはここなので、そう感じました。

ひとたび心を許した屈強男子のように、ナイフを入れるとすべてがホロホロとこぼれおちてしまい、手はベトベトになります。悪くないです。

空気を多く含んでいるだけなので、お腹にたまるほどの分量ではないです。エスプレッソが飲みたくなりました。

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シトロンだと柑橘系濃いレモン味。
夏にふさわしいさっぱり感を伴いつつもしっかりした甘さ。それを、口当たり軽く食べるお菓子です。技術がなせるメリハリがあって、珍しいし、こなれた味(伝統?)です。

定番らしいチョコレート系もよさそうですが、私はフルーツ風味が気に入りました。別の味も食べたいし、何より焼き立てが食べたい!ので、季節をずらして訪れてみたいです。

La maison Jouvaud(ジュヴォ―)
東京広尾店2003
愛知名古屋店2016
京都祇園店2018
京都駅伊勢丹店


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