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おいしさが化学反応するのはキッチンだ
遠い産地からやってきた食材と食材とが出逢う
調味料が触媒になって、それを盛り上げる
油は熱を誘い、塩は甘さを引き立てる

料亭で水菓子としてふるまわれるはずだった
和歌山県の柿は漬物になった
都会のぬか床という宇宙で発酵にさまよい
菌と睦び甘味はコクになった

ぬか床のある私は家を空けられないが
彼らの冒険の果てを見守っている
誰よりも、おいしくなることを祈っている
ブラックホールの胃袋をぽっかり空けて待っている

漬物になった柿の旨味は道しるべ
たどれば太平洋にむかう山の傾斜が見えてくる
太陽のぬくもりが伝わってくる
人の手の、土の匂いが広がってくる


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