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「世界が逆に回ってても」「世界が逆さになっても」
カチガヨにある歌詞。
いままでよくわからなかったけど、ああこういうことなのか、って思った。
のーてぃすから5日間、世界が転覆した。

『星の王子さま』の最後にこんなシーンがある。

王子さまに頼まれてヒツジ(悪い芽を食べてくれるけれど、花も食べてしまう)の絵を書いた「ぼく」は、王子さまに渡したヒツジの絵に、口輪の革ひもをつけることを忘れてしまったことに気づく。(この物語では絵がそのまま実物になる) 革ひもが無かったら口輪は解けてしまうので、王子さまの星でヒツジは、王子さまが愛してやまないたったひとつのバラの花を、食べてしまうかもしれない。

日によると、ぼくは「そんなことがあるものか。王子さまは夜になるといつもたいせつな花に覆いガラスをかけて、ヒツジがよりつかないように、よく目をくばっているのだ…」と思うことがあります。すると、ぼくは安心します。そして空の星がみな、さも楽しそうに笑うのです。

また、日によっては、「1度やそこら、うっかりするときがあるものだが、そしたら、もう、おしまいだ。王子さまは、ある日の晩方、覆いガラスをかけることを忘れたか、そうでなけりゃ、ヒツジが、夜そっと外へ出たのだ…」と思うこともあります。そうなると、鈴がみな、涙になってしまうのです…

まったく不思議なことなのです。あの王子さまを愛しているあなたがたと、ぼくにとっては、ぼくたちの知らない、どこかのヒツジが、どこかに咲いているバラの花を、たべたか、たべなかったかで、この世界にあるものが、なにもかも、ちがってしまうのです…

実際にヒツジがバラの花をたべてしまったのかどうなのかがわからないように、推しがどんな心境でいるのか、私にはわからなかった。【きっと大丈夫だ】と思えば、少し笑えたりもした。でも、【もし苦しかったら】って考えた瞬間に、私の世界は全部が涙になってしまった。本当に【この世界にあるものが、なにもかも、ちがってしまう】。

色んな気持ちになった。形にならない破片の気持ちが心臓にグサグサ刺さって痛かった。いつも私の心を満たしてくれていたlove cloudから雨が降った。行ったことのないところ何処へでも連れ出してくれる彼を、どこかに連れ出してあげたかったのに。私はずっと自分の部屋にいた。明けない夜はないなんて言ったやつに、腹が立った。どうしようって思ったとき、大丈夫にしてくれるのは推しだけだったのに、推しのことでどうしたらいいかわからないときはどうしたらいいのか、私は知らなかった。

物語の中で、「ぼく」と王子さまは1度だけ喧嘩をする。王子さまに出会いたての頃、「ぼく」は王子さまがするバラの話を[ぼくはいま忙しいんだ]と聞き流す。すると王子さまは顔を真っ赤にして、

「だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ。そして《ぼくのすきな花が、どこかにある》と思っているんだ。それで、ヒツジが花をくうのは、その人の星という星が、とつぜん消えてなくなるようなものなんだけど、それもきみは、たいしたことじゃないっていうんだ」
王子さまは、それきり、なにもいえませんでした。そして、にわかに、わっとなきだしてしまいました。

私はこの部分にすごく救われた。代わりに叫んでくれているみたいだった。たいしたことじゃないなんて、そんなはずがないんだよ。私の大事にしているものを同じ温度で一緒に大事にしてくれた。優しかった。救いだった。王子さまのこの涙は、バラへの愛だと思う。私の涙も愛だといいなと祈りながらまた泣いたりした。

ここまでくると好きなんてレベルではない。推しは背骨に留まらず、文字通り私の全部だ。異国の赤の他人にここまで思わせるんだから、アイドルという職業は本当にすごい。

復帰できてよかったなんて、思ったより早くてよかったなんて、全然よくない。こんなことがあったことがよくない。全然よくない。私は怒っている。神さまは大いに反省してほしい。

愛しいバラのために全身全霊で泣いて怒って笑って、王子さまは本当にカッコいい。貫き通すには勇気がいるね。私も勇気を持ってバラを好きでいたい。おとなの顔色をうかがったり、むりにおとなぶったりなんて、しなくていいか。子どもだし、だいじなもののためには、泣いて喚いて叫べる人間でいたいって、わたしは思う。

「人間はみんな、ちがった目で星を見てるんだ。旅行する人の目から見ると、星は案内者なんだ。ちっぽけな光くらいにしか思ってない人もいる。学者の人たちのうちには、星をむずかしい問題にしてる人もいる。ぼくのあった実業屋なんかは、金貨だと思ってた。だけど、あいての星は、みんな、なんにもいわずだまっている。でも、きみにとっては、星が、ほかの人はちがったものになるんだ…」

「それ、どういうこと？」

「ぼくは、あの星のなかの1つに住むんだ。その1つの星のなかで笑うんだ。だから、きみが夜、空をながめたら、星がみんな笑ってるように見えるだろう。すると、きみだけが、笑い上戸の星を見るわけさ。」

この世には、揺るぎない正しいことがひとつあるわけじゃなくて、みんなそれぞれの星を信じて愛でているから、まちがってるなんて、だれにも言えないし、そんなのないや。

今日はバラが笑ってくれたから、全部の星が笑ってる。うれしいよ。