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嗜好拡大法で豊かに生きる(1)

精神障がい者とその支援者の世界にしっかり触れたことが、わたくしの財産になっています。
そこでさまざまな事を学ばせていただきました。
精神障がいのある人の生きるうえの課題は、精神障がいのある人に特有の課題もありますが、多くは万人に共通する課題であり、それが精神障がいのある人に典型的な形で現れているのだなという印象が強くありました。

音楽療法のひとつに「嗜好拡大法」というものがあります。今まで聴いたこともないような音楽を聴くという方法です。これによって、偏って、こり固まって、不健康になっていた心がほぐれるというものです。

人は既に馴染んだものに愛着を持ちやすく、音楽を聴くにしても、どうしても今までに何度も聴いたことのある音楽を聴きがちです。
心が固まっていくと、これがどんどん狭まっていきます。
例えば、フルトベングラーのベートーベン、それも1940年代前半に録音されたものしか聴かない、というような極端な例もあったりします。

わたくしは三十代に諸々の負担が積み重なって、軽いパニック障害を経験しました。その時尊敬する精神科医から勧められたのがジャズでした。
ジャズは、それまで、とくに熱心に聴いたことのないジャンルの音楽でした。
さっそく、スタンダードばかりを集めたCDを買って聴くようにしました。

ジャズを聴いて、楽しいという感じはさほどありませんでしたが、「なるほど、いろいろな責任が重なり、自分をどんどん狭い所に閉じ込めようとしていたなあ。そうしないと片付かないからと思っていたなあ……」と、ゆったり自分を外から見直す時間になりました(笑)。

嗜好拡大法。今までやったことのない事をやってみる。……これは、できる限り変化を避けて心の安定を保とうとする生き方とは正反対の方向のものです。

しかし、「一生に一回だけ」というフレーズは魅力的ですね。軽い氣持ちで飛び込める感じがします。
今まで経験したことのない新しいもの……そこには何か今まで見たことのない大事なもの、美しいもの、面白いものが潜んでいるような、そんな氣になります(笑)。

ただし、薬物等、身を崩す元になることは絶対駄目です。なぜなら、そういうものは、他の一切のものを台無しにしてしまうからです。
薬物等には一切手をつけない人生をやってみるとどうなるかを知ろう、と考えるのが正解ですね。(極意塾投稿No.374)

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