ツイッターで募集した裏話するやつ

ツイッターのタグで募集した今回の〆ギド新刊の裏話です。15ふぁぼ頂いたので15個。普通に内容や装丁について触れているのと、あらゆるネタバレに配慮がないのでご注意ください。

1.出発点
自分は疑似父子という関係性がどうしようもなく好きです。
いきなりすごく邪なことを暴露してしまうのですが、最初は自分の欲を満たすために疑似父子という関係性にアモンとフォラスをキャスティングしていたのだと思います。
同じ追放メギドでありながら、「愛されなかった子」と「愛に満ちた家庭の父」という全く異なる家族像を持った二人の交流を描きたい。フォラスを育てながらそんなことをふっと思ったのが2018年の7月…ちょうど最初の〆チケのあたりですね。なにせその時フォラスを指名しようと思ってたら〆チケ販売開始の直前にふらっとやってきた…という事件があったので、よく覚えています。


2，台本制作
で、早速どんな話にしようかなと考え始めました。そのときは別ジャンルの原稿中でもあったので、もっと短い話で、ネットにアップするだけのつもりで考えていたと思います。
自分はマンガを描く際、まず大まかな話の展開を考えたあと、それに合わせてすべてのセリフを書き起こして「台本」を作ります。いろいろな制作の合間に進めてたので、書き上がったのは18年の10月くらいでした。この時点では冒頭の抜け殻のやりとりやエピローグは存在せず、内容もむしろアモンがフォラスの父性に触れて親の情を受け入れられるようになっていく…という話だったのですが、このあととんでもない事件が起こったのでずいぶん変わりました。はい。後述します。


3.三点バースト
しばらく冬コミの原稿で忙しかったので台本は放置されていました。そしたら始まっちゃった！メギド72一周年記念イベント「BEHEMOTH前後編」！！！！
未プレーの方には何がなんやらで申し訳ないのですが（復刻したら絶対にプレーしてほしい…むしろ常設して…）、その、うん、①内容がね、ヤバかったのです。②Rアモンがガチャに実装されました。③そして💫万円爆死しました（※後の魔吊召喚でお迎えできました）
三点バースト。フォトンバースト。
爆死したことはまあ本の制作にはあまり関係ないのでアレですが、とにかくこのベヒモスイベントの内容があまりにクリティカルに自分のアモン理解を上書きしていきました。
爆死で泣いてる暇もなく…いや泣きましたが…台本の書き直しが始まりました。


4.別の着地点
明かされた新情報とリジェネレイトで前提が崩れた台本はお蔵入り寸前まで追い詰められていました。私自身が「この二人を父子の関係に押し込めてしまって本当にいいのか？」という疑問を持ちはじめたからです。
ベヒイベで語られたアモンの親と子をめぐる物語にはそれこそ寸分の隙もなかった。「親の情を受け入れる」という結末ではもはや自分が納得できないという確信がありました。それではフォラスにもアモンにも申し訳が立たない。
もうこの時点で自分の考えの終着点は「二人は父子にはなれない」でした。ならばそれに向かって書いていこう、と台本を少しずつ書き直しました。それが現行版です。描くのをやめなかったのは意地です。だって二人とも大好きだから…


5.プチへの申込み
で、書き直した台本がかなり長くなって。これ描き上がれば本ができるぞ！？じゃあもう本にしよう！と考えました。
そしたら〆プチが開催されるというではないですか。
ケツに火をつける意味も込めて申し込みました。1月の終わりくらいだったかな。多分プチという締切が無かったら今頃このマンガ描き上がらないまま終わっていたと思うので、本当に感謝しかありません。


紆余曲折編おわり。結果的に1年計画になってた。ネームというか作画関係の作業が始まってからは二ヶ月弱のスピード勝負でしたが、それまでが長かった…
次は今回おそらく一番インパクトがあったであろう全文サンプルの話をします。


6.「この話は全文公開しないといけない」
ネームが終わった時点でそう思いました。
原作と登場キャラ全てに愛とリスペクトを込めて描いたと自信を持って言えますが、題材が題材なこともあり、間違いなく人を選ぶ本だなと思っていました。突飛な行動するところもあるしね…。
読者一人一人に違う読み方、価値観があるので実際どう受け止められているかはわかりませんが、とりあえず「二人は父子にはなれない」「それ以外の支え方もある」という話の軸になる考え方は伝えておきたかった。というか、そのスタンスがはっきりしないまま終わると読み手が不安になるんじゃないかと思いました。これが全文公開を決めた一番の理由です。


7.できるだけ多くの人に読んでもらいたい
全文を公開したのにはもうひとつ大きな理由があります。
自分はどうやら描いたからには一人でも多くの人に読んでもらいたいという考えが強いようです。それって、本を作るという行為と逆を行っているんですよね…（本になると基本的には冊数が最大の読者数になるので…）。
なので必ず見本誌を作るし、当日立ち読みしてもらえるとものすごく嬉しい。読むだけ読んでって〜と思っています。
一方で、本を作るのもたまらなく好きなんです。紙の本って絶対なくならないと思う。
たくさんの人に読んでもらいたいけど、本を作るのもやめたくない…
……じゃあもう全文載せちゃえばいいのでは？
やってみることにしました。


8.とはいえ
やはり非公式の同人誌であるということ、そして大事なこととして物理で買っていただく方もいらっしゃるということから、イベント当日が終わるまでの期間限定公開としました。せっかく記事を作ったので、今後は何か機会があったら公開できればと思っています（次回はアモン転生日に1日だけ公開する予定です）。


9.だからこそ装丁にはこだわりたい
事前に全文公開する以上、物理本は相応の付加価値のあるものに仕上げたい。今回ちょっと張り切って、いろいろオプションを盛りました。
具体的な仕様は以下。
表紙ホワイトポスト180k/ベルベットPP/カレイド印刷/箔押し（ジャングルセレクト透明）
本文用紙はモンテシオン69k、遊び紙にグッピーラップブルー。
派手にすればいいってもんでもないので、意味を持たせられればなあと思いつつ、ちょっとオッと思ってもらえればと考えて決めました。それでああいう仕掛けに。
…こんな贅沢な箔の押し方たぶんもうできないので、そういう意味でも貴重な一冊になったかなと思います…


10.ベルベットPP
これは本来マットPPになる予定でしたが箔との相性が悪いとのことだったので変えてもらいました。思いがけずなんかぺっとりとした感触に。箔部分との質感の違いが面白いです。

全文サンプルと装丁編おわり。
全文事前に上げるのは自分でははじめての試みでしたが、幅広い層の方からご感想を頂けたり、あえて読まずに物理本を楽しみにして下さっている方もいてそれもまた嬉しく思ったり、当日スペースで直接お褒めいただけたりして、自分にとっては良いことしかなかったです。
今後もやるかどうかは内容次第なのでなんとも言えないですが、とにかく今回に限っていえば本当にやってよかったと思います。
本当に、本当にありがとうございました。

最後5つはなんかほんとにちょっとした単発のこぼれ話です。


11.トーン濃度
網点のトーン今回基本的に二種類しか使ってなくて、画面が単調になりすぎてないか多少心配だったのですがまあ大丈夫かな…？
パイモンはマジで出番が祖789を並べたかったがために入れたシーンのみで申しわけなかったのでせめてものお詫びに三種類使ってます。


12.ありがとアリトン
6月のリアイベ会場でノリでサバト回したらずっとずっと来てほしかったアリトンが来たので、感謝の気持ちを込めて出番を無理やりねじ込みました。その影響で夜に女の子にケーキを勧めるソロモンが爆誕してしまった。


13.リュカ
物理本のあとがきと内容が被るのですが…個人的にリュカというヴィータの魂にもきちんと救われてほしいと思っていて、というかそれが成されてはじめてアモンという存在が救われると思っている節があります。リュカを殺して過去を断ち切ったのは、今このとき一歩を踏み出すための選択であって。本当の救いはもっとずっと未来…アモン本人の努力や、フォラスやソロモン、アジトの仲間たちの善意や優しさ、メギドラルとの戦い、ヴィータの社会、営み…そういった様々なものの先にあるのだと思います。いまだ道の途中。何言ってるのか自分でもよくわからなくなってきた…！


14.フォラス
彼に対する理解も原稿中と今で結構変わっていて、今イチから話を考えたら今回とは全然違う話になるんじゃないかと思っています。頭の良いキャラクターなので、動かし方が本当に難しかった…！話の展開上かなり無茶をさせたり同じ姿をした存在に酷い行動をとらせたりしてしまって申し訳なかった…でも全力で描きました。余談ですが初期の台本ではフォラスの家族にアジトの仲間が鉢合ってしまうシーンがありました。時を超えてメギドの日企画の質問箱が更新され、そのまま行かなくてよかった…と心底安心した。


15.主なBGM
作業中BGMは1500曲くらい入ってるウォークマンでランダム再生なので普段曲目を書いたりしない（というより何が流れてきたかとか覚えてない…）ですが、これが流れてる間はノリがよかったとか、やたら何度も流れてきたとか印象に残ってる曲を数曲記しておきます。

トワイライト/memento森
masquerade/TЁЯRA
狂花水月/星のカービィトリプルデラックスBGM
あの娘を返せ/明日、照らす
カゲロウ/Des-ROW組スペシアルr
背水之陣/すわひでお
プレミアムフライデーナイト/ザ・リーサルウェポンズ
迷宮DESTINY/プラズマジカ
やさしくなりたい/斉藤和義

あと俺イケは公式PV投稿されてから狂ったように聞いてました。

全く本の内容と関係がない！！！！！！！！
自分はグルーヴ感重視のようです。


以上！長くなった！蛇足もいいところだと思いますがお楽しみいただけましたら幸いです。