見出し画像

灯都の裏話

「灯都のレグルス」おかげさまで物理版は完売、電子版もたくさんの方にお読みいただいております。本当にありがとうございます!

(これまでのあらすじ)あとがきを書く暇がまるでなかったので本には書いてなかったが、製作中なんか色々あって大変だったので、せっかくだしバーッと書くことにしたのだった。ネタバレは無い。

早めに手を着けた

これは実際マジで偉いんだけど、製作自体は2018年の12月から始まっていた。すげえ!締切5月だって!?超未来じゃん。
あのですね、心の安定性がスゴイ。いや普通はこうなのかもしれないが。とにかく、この時はすべてが順風満帆に進むと信じて疑わなかったし、締切一ヶ月前に入稿し、のせのせキャンペーン(※贔屓の印刷所のサービス。早めに入稿すると箔押しとか無料でやってくれる)のせまくりやな!!などと思っていた。
思っていたのだ…

2つの台本が存在する

自分はまずストーリーの大まかな展開を考えてから、細部を会話劇形式で補完していくという方法で、台本を作る。完全に台詞先行型である。
この台本がプロットの代わりになるので、しっかり固めておけばおくほどその後の作業はスムーズだ。製作の途中でもっといい展開を思いついて部分的に変えたり、言い回しや用語を変更することもあるが、基本的にすべてをとっかえるようなことは起こらない。
…のだが、今回、それが起こった。
まず今回のサークルカットを見てほしい。
(左半分が自分の告知)
ボーイミーツメカガールと書いてありますね。


手前のおなごと奥のゴーグル男が出会ってなんかするのだろうと思いますよね。
次に完成原稿を見てほしい。4コマ目なんですけど。


当然のように隣にいる!!ミーツ済ですが??!!!!

前置きが長すぎたが、つまりこれは一度作成した台本をすべてボツにしたために発生した食い違いである。
最初はこのゴーグル男と絶世の美少女のファースト・コンタクトを主軸に据えたストーリーを考え、台本を作成した。
だがこの台本には…大きな欠陥があったのだ。

おれの海は知られていない

一次創作。それは海のようだ。
どこまでも青く、広く、そして冷たい海。
誰もいない。好きに泳いでいい。底まで潜って宝物を埋めてもいい。見たことのない魚を放ってみてもいい。自分以外の他人の誰にも口を挟む権利などない。フリーダムなブルーオーシャン・プライベートビーチ…
だがそれは同時に、誰にも知られていないということ。

そう、知られていないのだ!!
自分と同じ作品が好きな人に読んでもらうための、あらゆる前提が共通言語として互いにインプット済の二次創作同人誌とはわけが違う。
他人の管理する海に突然連れてこられて、さあどうですかって見せられても「いや、海ですね」としかならないと思いませんか、困りませんか貴方…いや…このたとえ意味不明だなやめよう…忘れてください…

とにかく(今回は事前にプロト版を上げたりしていたとはいえ)何も知らない状態の人に、自分の考えた世界を、たった36ページで説明して、あわよくば楽しんでもらわないといけないのだ。
完全に個人的な持論でしかないがこういう場合、「なんかいいな」とだけ思ってもらうことを優先したほうがいい。理解してもらおうと言葉を尽くせば尽くすほど悪手である。テンポも悪くなり読み味が低下する。長い台詞があまりに続くとパッと見で読む前に面食らってしまう。Twitterでほんとうに軽い気持ちで口に出した疑問に突然早口で回答されるとびっくりしてしまうのと一緒だ(いつも反省している)。とくにマンガはある程度の説明を絵に任せられるのも利点のひとつなので、長い台詞は使い方に気をつけたい(重ねていいますが個人的な考え方です)。

またも前置きが長くなったが、つまり没になった台本は情報量が多すぎた。「主人公とヒロインの出会い」を描くための情報として「世界観の説明」「二人の過去」「取り巻く人々」「敵とのバトル」「メシ」「ちょっとエッチな全年齢シーン」…などなどあれもこれもと欲張りすぎて、これをこのまま描いていたのではページ数もカツカツ、無理にでも収めれば今度は足りない描写を補うためのセリフで溢れかえる(※今回はあらかじめすべての仕様を決めていたので、ページ数を増やせなかった)。
だが。だが!とはいえ主人公とヒロインの出会いというのは手を抜いていい場面ではない。物語の起点として非常に大切だし、自分の考えた展開に思い入れもある。何より、これは面白いはずなのだ。「36ページの同人誌という媒体向きではない台本」だっただけで…
最終的に、一冊で納得の行く形で収拾をつけるのはいまの自分の技量では困難と判断し、今回は保留とした。別の発表の機会をうかがうことにしたのだった。なんと簡単な話だろうか。長々書いたのは何だったんだ?

一度冷静になり、「世界観・主要人物の紹介」に焦点を絞って台本をイチから書き直した。主要人物はそれぞれ独自の「戦う能力」を持っているので、メインのバトルの過程でまんべんなく見せつつ、うるさくなりすぎない程度に専門用語を折り込みながら「この世界に起こっていること」を説明していく構成となった。そして大切なこだわりとして、情報は必要最低限でも構わないと割り切り、「まずは気持ちよく読み切ってもらえるようなマンガにしよう」とつとめた。実際どこまで実践できているかは読者にしかわからないが…。例えば用語+ルビの多用もその工夫の一環だったりする。通常のセリフも含めて、余計な引っかかりは極力作らずに理解してもらえるような言葉の組み合わせにはかなり気を遣った。

台本の書き直し作業の途中で年を越した。予定をすでに1ヶ月押していたが、それでも限りなく無限に近い時間が残っていた…だっていつもは台本から仕上げまで一ヶ月半とかなんだから…
と当時は思っていた。アホだ。
このあと、さらなる悲劇が自分を襲うとも知らずに…

首が爆発した

(※忍殺で推し関連の新たな情報開示があったことのたとえではないです。)
正月休みも開けた1月中旬。
突然、凄まじい頭痛と首・肩の凝りに襲われた。いやあのねえ、本当に突然だった。それも「はあ今日気圧でダメさっさとねよ」「残業は悪、眼精疲労でもうムリ」みたいな、なんとなく重い、じんわり辛い…みたいな感じではなくあからさまな異常だった。立って歩くのもままならない。5分以上縦になれない。あまりの頭痛から吐き気も襲ってくるので毎朝の通勤電車にすら耐えられず、仕事もしばらく休んでいた。正直原稿どころじゃなかった。

本の製作と直接関係ないことを長々と書くのもどうかと思うのでさらっと済ませるが、簡単に言えばいわゆる「スマホ首」の更に悪いやつだった。生活習慣の積み重ねなので、今までいつこうなってもおかしくは無かったのが、なにかの弾みで爆発したのだ。よりによってこんなタイミングで!みなさん、首ね、大事にしてね。
自分はそれなりにメンタル強いほうだと思っていたけれど、昨日までできたことがいきなり出来なくなる絶望ってそこそこヤバくて、一瞬で折れた。痛みと吐き気と、何よりこの先ずっと治らなかったらどうしようという不安で泣く日々だった。
今はこうして原稿も出来るようになったし、ライブで飛んで叫んではしゃいだりもできる。あの時支えてくれたすべての人たちと、トゥルースリーパーの枕に本当に感謝している。

結局まともに原稿作業ができるようになったのは首が爆発して二ヶ月後…3月頭になってからだった。締切まではあと二ヶ月……いい具合に追い詰められてきたな…とやや焦り始めていた…

長くなりすぎて疲れたので、このあたりで一旦区切る。もしかしたらいつか続きが書き足されるかも。されないかも

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?