〇 クロスカントリー:緊急降下
皆様、お疲れ様です。
パラグライダーが趣味のよねけんです。
これからクロスカントリーフライトについて自分の考えを書いていきます。
今回は「緊急降下:ビッグイヤーだけで良いのか」です。今回は無料記事です。
前回から読む:GPSバリオと計器飛行
題名がクロスカントリーから始まっている記事は自分と同じレベルのパラフライヤーを対象としており、マニアックでガチな内容です。
ご承知おきください。
スクーリングで必ず習うであろう翼端折(ビッグイヤー)は、高度が高すぎる場合、特に雲底につけたけど雲の吸い込みで雲に入りそう、あるいは入ったときに、パラグライダーの翼面積を減らして降下する手段です。もちろん、クロスカントリーフライトでも有効なスキルになるでしょう。
降下手段の王道は翼端折 (ビッグイヤー)
JHFの教本を読んでいると、緊急降下手段には下記があります。
両端折 (ビッグイヤー)
スパイラル
Aストール
Bストール
両端折はJHFで言うところのB級生で練習を行います。Aラインの最外側を手で引き込みエアインテークを潰して翼面積を小さくします。揚力を減少させて降下するという考え方です。経験的にはサーマルが無い状態で-3m/sで沈下率が得られます。これにフルアクセルと体重移動によるローリングを入れると更に沈下率が得られますが荒れている中でのローリングはかなり難しいです。
スパイラルはパラグライダーを急速な旋回に入れて機首を下げた状態で降下を行います。3G前後のGが掛かりますが、-7~10m/sで沈下することが可能です。
Aストールは両端折の全翼版で全てのエアインテークを潰して翼の体をなさないようにする方法です。Bストールも翼面下をBラインを引き込むことで変形し揚力を落とすことになりますが、Bラインの引き込みにはかなりの力がいるようです。そもそも、2ライナー(※1)のパラグライダーでは実行できない方法です。
安全性の問題か、難易度のためか、はたまた翼端折で十分に事足りるためか、AストールやBストールをスクーリングでもやったことはありません。(やりたいって言ったらやらせてもらえると思いますが) なので沈下率もよく分からないです。
翼端折の限界
クロスカントリーフライトでは、突き抜ける青空に雲があまりない、あるいは小さな積雲がある場合だけとは限りません。例えば、最高高度があまりとれなくても発達した積雲が広がっていて、その雲の吸い上げで高度を保ちながらグライドするという選択肢もあるはずです。例えば下の写真のようにです。
後日書くつもりの「気象条件1:気象条件が良いかどうかはフライヤー次第」(2023年4月1日にアップ)でこういった話をしようと思っています。
積雲の発達による吸い上げ、強力なサーマルはクロスカントリーフライトにおけるアドバンテージになりますが、雲中フライトになってしまう危険性と表裏一体とも言えます。この時の上昇率が3~6m/sとかになり雲底に近づき高度を落とそうとしても、両翼折では沈下率が追い付かなくなります。しかし、スパイラルを使えば-7m/s以上の沈下率を期待できますから、そこから離脱できる可能性が高いです。
じゃあスパイラルで・・・とはならない
スパイラルを用いた方が有効ならそうすれば良いのですが、なかなかそうはいかないところです。獅子吼高原パラグライダースクールではパイロット証の取得にはスパイラルの実技は必要はないので、やるとしたらパイロット証を取ってから、アシストコース(※1)に入って自己申告による自主的な練習になります。できるようになるにはそれなりの練習が必要です。
また、スパイラルに入ったあと「スパイラルロック」といってその状態から抜け出せずに地面に衝突してしまう事故も過去に起きており、リスクのある降下手段でもあるのです。
実際にスパイラルの練習を行うと、急激な旋回に入った後でピッチダウンした状態が保持され、視線が水平から下をのぞき込むような姿勢になります。そして、これまで感じたことのない風切り音とGに見舞われます。最初は恐怖で1周も回れずブレイクコードを戻してしまいます。簡単に習得はできず、恐怖心を克服しながら回数を重ねるため時間が掛かります。そして、怖いから無理して習得せず翼端折でいいやとなる人もいます。でも、無理に習得するものではないので、それはそれで良いと思います。実際に暫くは自分もそう考えて練習をやめてしまった時期もあります。
もし、スパイラルが出来なかったら、クロスカントリーフライトができないかといえばそんなことはないです。雲底で雲に捕まらないように前もって行動ができるのであれば問題ないです。そういう安全に対するマージンを自分なりに持って行動できれば良いとなります。
結局、自分はスパイラルの練習を再開して、そこそこ出来るようになりました。練習を再開した理由は「自分のパラグライダー操作に余裕を持たせる」というものでした。そのつもりがなくても、フライト中に片翼が潰れるとか、不意に急旋回に入る可能性はゼロではないです。そのため、予めそういう状態を体験しておくことと、コントロールが出来るようにしておきたいという考えからです。
B級生からNPになり機体をBクラスに変えてから割とすぐに片翼潰しのレクチャーを自己申告でやっています。これも同じ理由からです。ノーマルでない状態を経験しておくと安全のマージンはちょっと上がりそうです。
では、スパイラルができることはクロスカントリーフライトに影響するかと言われれれば、それはYesです。先の写真にもあるように、雲底をあえて使ったフライトをするには必要なスキルです。雲に捕まった瞬間にスパイラルを切れば良いと思い、思考にも余裕が生まれます。この差が、クロスカントリーフライトで、より先に進めるかどうかに影響することはありそうです。ですから、スパイラルができるのであれば、それに越したことはないというのが僕の意見です。
今回の記事でクロスカントリーフライトで「必要なスキル」編は終了です。これまでスキルという視点で、自分なりに得た経験や考えを体系立てて文章にしてきました。それが少しでも役にたてばうれしいです。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
今回も長文になりました。
次回からは「フライトプランを考える」編です。
まだまだパラグライダーな日々は続きます。
【注記】
※1:2ライナー
パラグライダーの翼には沢山のラインがついてパイロットに繋がっています。やみくもにセットされてるのではなく、翼の前縁から後縁の掛けて横に3つのラインのグループに分かれているものが多いです。これを3ライナーと呼ぶのですが、真ん中のラインを無くしたものが2ライナーです。無くす理由は空気抵抗を抑えるための様です。複数のラインが張り巡らされているとその分だけ滑空時の抵抗になります。この本数はパラグライダーの進歩とともに減ってきています。初期のパラグライダーは4ライナーだったと聞いていますが、かなりの年代物になるので実物はなかなかお目に掛かれないと思います。
※2:アシストコース
獅子吼高原パラグライダースクールのスクールコースの一つ。パイロット証を取得後に入ることができます。ただし、インストラクターさんから実技課題をやらされたり、手取り足取り指導を受けることはないです。自分で何をしたいかを言わないと始まらないコースです。例えばクロスカントリー証が欲しいとか、タンデムパイロットになりたい、あるいはパイロット証はあるけど実技の指導が欲しいなどの意思表示が必要です。
荒れた条件や緊急事態でインストラクターさんのアドバイスや指示が欲しい人は、保険のように入っている人もいるようです。
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