見出し画像

友達をなくした日

友達、生きてます。
どこで掛け違えたのか、昔は好きだったのにいつしか会うと必ず身体の具合が悪くなるようになった人。霊障とかではない。
昔からの付き合いだし半年に一度くらいなら愚痴を言い合うのもアリかなと、たまに会っていた。彼女の愚痴は聞いているのがしんどかった。何故ならクソつまんないから。
人に聞いてもらうからにはも少し聞き易いように話してくれ。ひとつ聞き返せば謎が四つ増えるんだ。
前回(半年以上は前)とほぼ同じことを言っておいて何故上達しない。登場人物だけが違うのなら予め表にでもしてくれ。
そしてまた前回と同じような解決策を勝手に見出し、よし私明日からこうすると同じ宣言をして、しかもその次のときも同じ愚痴を言うのだからもう怖い。それでまた同じ結論に達して同じ宣言するんだからもう怖い。
たまに関わるのも無理だわと思ったのは、彼女の想像力がお粗末だからだった。常に相手よりも自分の境遇がひどいと思い込んでいて、決まって「いいなあ、よもは私みたいに〇〇じゃなくて」 と言う。いや、私は何も言っとらん。
彼女はメンタルやられ子ちゃんで次々とお医者を変え、薬も飲んでいるので、下手なこと言えば良くないかもと思ったりもした。
実は私も向精神薬にお世話になっていた時期があり、その間迷惑をかけたり振り回した友達を何人かなくしたから、そういう時もあるかもなと考えたりもしたのだ。実際そういう時もあるのだから。
そんな風に25年くらい付かず離れずやってきた。決して私からは連絡を取らず、会おうとも言わなかった。決して会いたいわけではないから。
25年だよ……いつも自分から誘っているという事実に気付かないのが不思議だよ。
同い年なのでお互い年々身体も弱って、ときには人の愚痴を聞き流すことさえも負担になる。
彼女は私の20代の頃からの持病を知っていて「いいなあ元気で」と繰り返し言う。
私にとって彼女はとうの昔に愚痴を言う相手でさえなくなっていた。
だって言っても仕方ないべ。彼女にとって他人の苦しみはとるに足りないことで、こちらが諦めて言わなくなると、すぐになかったことになる。元々頭に入っていなかったのか、見事なまでにきれいに忘れる。
もう数年前のことだが、クソ忙しいときに急に彼女が鬼のようにLINEを寄越して来て、スルーしていると思い出したように「調子どう?」と付け加えてきた。できればこのまま気まずくなってそっちから連絡して来ないようにならないものかとスルーしていたのだ。通じるわけなかった。だから私は
「調子は悪い。癌だから」
と返した。本当に癌だったから。めでたく5年生存し、今も無事だけど、そのときは手術後すぐで気持ちも身体も辛かった。
彼女は驚いて、じゃあ落ち着いたら色々聞かせてと返信して逃げた。私も話す相手は選びたいのでおまえじゃねえよと思いながらそのままにしていた。
そうやって切ったつもりだったんだけど、やっぱり通じてなかった。そういうとこやで。
また最近連絡が来たのだ。
彼女は鬱になったそうだ。(今までは違ったらしい)
お医者は彼女のご両親が原因だと言ったとのこと。引き金はあるかも知れないが原因はひとつではないというのが最近の専門家の見解だったように思うが、彼女が四捨五入すると「両親のせいで鬱になった」という結論になる。
親は認知症の一歩手前で目が離せなくて限界だと。そりゃ大変だ。
だから大変だね、身体を大事にしてねと返信した。
もう無理んぽだった。無理んげだった。返信は「いいなあ、よものご両親はしっかりしてて」続いた。
ウチの親は片やアルツハイマーで片や昨年まで統一教会で今現在もわりと怪しいんだけど、当然彼女にそんなことは言っていない。
壺ぶつけんぞコラ。家にいっぱいあんだぞコラ。
なのでそれをそのまま伝えた。壺ぶつけるとは書かなかったけど。
そして詳しいことは言いたくないし、人の話を聞く余裕もないので、ここまで。元気でいてください。と締めた。
それにも返信が来た。

「了解です。たまにご挨拶にLINEしてもいい?友達だからさ」

それに返信はしていないけど、また数年後何か言ってくるかも。
友達をなくした日、公式記録としてはいつなんだろう。
もうずっと前なのかも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?