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ガチでnoshを2年間食い続けた俺の夕食戦争

 「nosh」というサービスがある。

 いわゆる「宅配弁当」のサービスであり、冷凍された弁当が定期的に届く今流行りのシステムである。

 ネット上の広告ではこれでもかと「定期的にご飯が届くなんて素晴らしい!」「チンするだけで美味しいお弁当が食べられて最高!」などというプロモーションが打たれているので、誰でも一度は見たことがあるのではないだろうか。だが、個人的にあのPR漫画はほぼ嘘じゃないかと思っている。

 私はnoshを2年使い続ける中で、もはや「戦争」とも言えるほどの食で食を洗う戦いを繰り広げてきた。チンするだけで美味しい弁当が食べられる。まぁ、嘘ではない。健康にいい食事が定期的に届く。あながち嘘ではない。ただしこれは、「noshを使いこなすことができれば」の話である。

 人は、noshで失敗すると心が死ぬ。

 これは、私がnoshと繰り広げた「戦い」の歴史。PRでもなんでもなく、2年間に渡ってひたすらnoshを食べ続けた「記録」でもある。結果的に、「人間はnoshを2年使うとどうなるのか」を検証したような記事かもしれない。

 まぁ、暇だったら読んでください。

公式サイトより


戦争編

公式サイトより

 まず、「なぜ私がnoshを使い始めたのか」というところから、順を追って話していこう。これを説明すれば、「なぜこんなにもnoshに対して悪態をついているのか」もなんとなく理解できると思う。

 2022年、春。20歳の私は東京都内に引っ越してきた。
 お仕事をするために、人生初のひとりぐらしを始めた。

 だけど私は、料理が苦手だった。というか、生活の中であまり「食」というものに重きをおいていなかった。だから、「なんとなく健康でいられて、効率的に用意できるものなら何でもいい」という、いかにも効率厨な理由でnoshを使い始めた。とにかく効率がよければ、それでよかった。

 そしてnoshには、「宅配周期」が存在する。
 簡単に言えば、「1週間に〇食」「2週間に〇食」といったように、注文スケジュールとお弁当の発注量をこちら側で選択することができるようになっている。ここで私は、「2週間に10食」を選択した。

 この「2週間に10食」という選択が、ある意味最大のミスだった。

公式サイトより

 noshを使い始めた当初は、「あぁ、そこそこおいしいかな?」というくらいだった。最初は、なんとも思っていなかった。だが、半年くらい使い続けて、徐々に夕食時の精神に異常をきたし始める。

 食事の度に、心が死ぬようになった。

 私は主に、夕食にnoshを食べていた。
 そして2週間に10食プランの場合、14日間のうち10日間は夜にnoshを食べることになる。来る日も来る日も、noshを食べ続ける。最初は特に何も思わなかった。だけど自分でも気づかないうちに、心が壊れていた。

 健康は維持されるけど、明らかに「満たされない」状態が続く。夕食が、何も楽しくない。代り映えしない。『クロノ・トリガー』というゲームに、「HPは回復するが空腹は満たされない」装置があった。あの「エナボックス」と大体同じ状態である。飯のエナボックスである。

 つまり、シンプルに食べ飽きた。

 ここで一応我が仇敵noshの名誉のために言っておくと、お弁当に毒が入ってるとかそういうことではない。これはもう、「冷凍食品」の宿命なのだ。メニューはたくさんあるけど、どうやっても「冷凍食品」の限界を感じる。「効率がいいなら何でもいい」とか言っていたやつが偉そうに……。

 一時期本当に「食事のつまらなさ」に精神が追い詰められ、夏休みに実家のご飯を食べたら、人が作った食事の暖かさに泣きそうになった。

 そしてここから、いよいよこのnoshというシステムとの戦いが始まる。私は料理ができない。だからnoshとは離れられない。生きるために、お前の手を離すことはできない。だけど、コイツと適当に付き合っていると心が死ぬ。私は、お前を攻略してやる。私は、お前と生きる!!

公式サイトより

 まず見直したのは、「食事の周期」について。
 具体的には、注文するお弁当の数を「2週間に10食」から「2週間に8食」に減らした。冷静に考えてみれば、2週間のうちに10回も同じところの冷凍弁当を食っていたら飽きるのは当然である。とにかく、この「周期」を間違えるとマジでヤバい。

 一度頼んでしまうと、どうやっても「10食」を処理する必要がある。下手な外食は許されない。「2週間で10食使いきる」ことを前提に生きる必要がある。なぜ私はnoshの野郎に食事のスケジュールを左右されなければいけない。宅配サービスごときが人間に逆らうな。私はnoshに縛られていたのだ。

 この「2週間に8食」作戦は見事に成功し、少しずつ私の精神は回復していった。空いた日にちは、近所のラーメン屋さんに行ったり定食屋さんに行ったりしたら、みるみる元気になっていた。我ながら単純なヤツだと思う。

 だがしかし、ここで次の壁が立ちはだかる。


デッキ編成編

公式サイトより

 noshは、注文する食事を自分で選択することができる。たとえば8食頼む場合、その8食は自分でカスタマイズできるのだ。しかも「ランキングシステム」が存在しており、どのメニューが人気なのかを、一目で確認することができる。このシステムは結構便利だと思う。

 しかし同時に、「ランキング外のものを選んだ結果、とんでもないものが送られてくる」ことがある。つまり、noshは結構当たり外れがある。

 未だに覚えている。「たまにはランキング外のものでも頼んでみるか」とカレーだかオムライスだかを注文してみたら、よゐこの濱口が無人島で徹夜して作るアレみたいな米が入っていた時の衝撃を。

 ここはハッキリ言っておきたい、noshは、あまり冒険しない方がいい。
 基本的にはランキングTOP10のものを注文した方がいい。たまに当たりも出るけど、外れを引いた時のショックが大きすぎる。冷蔵庫からお弁当を取り出し、チンして、いざ食卓に並べてみたらチネリみたいな米が入っていた時の絶望感なんて、もう自分以外に味わう必要はないのだから。

公式サイトより

 しかし、ランキングTOP10や人気メニューだけで回し続けると、必然的に「同じものを食べ続ける」状態になる。つまり、これはこれで飽きるのだ。考えてみよう、いくら美味しいからといって、3日に1回同じハンバーグを食べ続けられるだろうか。無理である。絶対にいつか、「飽き」が来る。

 難しい! 難しすぎるぞnosh!! 
 いい加減にしろ!!!(アスラン・ザラ)

 そしてここからは、さながらTCGのような「デッキ編成」が重要になってくる。つまり、「そこそこ美味しいメニューを抑えつつ、適度に飽きが来ないような新しいメニューも開拓する」必要がある。本当にカードゲームだよ。なんで食事でメタ環境とか意識しなきゃいけないの。

 一例として、私の現在のデッキ編成を紹介しよう。
 さきほども言った通り、私は「2週間に8食」で組んでいる。だから基本的には、「確実に外さない5食+ちょっと冒険する3食」で編成している。こうすることで、自分好みの美味しい5食を抑えつつ、適度にバラエティ感や目新しさを持たせることができる。ここに辿り着くまでが本当に大変だった。

 ちなみに後者の「ちょっと冒険する3食」は、本当に「ガチャ」である。
 さっきのよゐこ濱口が無人島で徹夜するアレみたいな米が入ってる大ハズレを引くこともあれば、意外とおいしいヤツを引き当てることもある。強いて言えば、この「意外とおいしいヤツ」を引いた時の嬉しさはデカい。

公式サイトより

 そして前者の「確実に外さない5食」は、ランキングTOP10から選ぶのも大いにアリだ。ただ、いくら美味しいからといって、同じ食事が毎週5食届くのも、それはそれでツラい。ていうか、それは当初の目的から外れる。

 そこで私が実践しているのが、「GUNG-HO-GUNS作戦」である。
 つまり、自分なりの「これを注文しておけばとりあえず外しはしない12のメニュー」を結成しておくのだ。別にGUNG-HO-GUNSにこだわらないなら、13品の「護廷十三隊作戦」でもいい。

 鮭のマッシュポテトアヒージョは、ザジ・ザ・ビースト。
 チリハンバーグステーキは、ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク。
 四川風エビのピリ辛は、出オチの味がするからマイン・ザ・EGマイン。

 こんな感じで、自分なりの「定番メニュー」を持っておけば、noshと程よい距離感で付き合うことができる。安心して使い続けられる。この「程よい距離感」こそ、noshと付き合い続けるには最も大切な方針だと思う。

 ハンバーグに飽きたら唐揚げと入れ替えればいいし、唐揚げに飽きたらもつ鍋と入れ替えればいい。ちなみに私の中では「鶏肉の照り焼き」が雷泥・ザ・ブレードに相当する実力者ポジションに座っている。

 しかし……ここまでやって結成したnoshのGUNG-HO-GUNSも、ある日突然瓦解する日がやってくる。次に立ちはだかるのは、最後の壁である。

雷泥・ザ・ブレード


樋口円香脱退編

公式サイトより

 少し前まで、noshには「ロールキャベツのチーズデミ」というメニューが存在していた。しかしnoshには、「メニュー入れ替え」という、おそろしいシステムが存在している。つまり、メニュー調整だかなんだか知らんが、「これまで懇意にしていたメニューが突然消える」ことがある。

 そして「ロールキャベツのチーズデミ」も、ある日を境に突然消滅した。このメニューはランキングTOP10に長いこと居座っていたメニューであり、あの永世王者チリハンバーグステーキとしのぎを削っていた時期もあった。

 あの「ロールキャベツのチーズデミ」が突如メニュー表から消えた時の衝撃を、私はよく「ノクチルから樋口円香が脱退した」と表現している。ヤバくないだろうか。あのトップスターが、noshでは突然姿を消したりする。

 一応他の界隈の方にも伝わりやすいよう、「ロールキャベツのチーズデミが突然なくなった衝撃」を別の表現にも変換してみよう。

・ゴチで国分太一がクビになった
・便利屋68から鬼方カヨコが退職した
・アクタージュが打ち切られた
・「六武の門」が使えなくなった真六武衆
・キメラアント編のパーティーからモラウが脱退
・オールスター後夜祭でハリウッドザコシショウが出禁になった

 結構ヤバくないだろうか。
 とにかく、あの永遠に続けばいいと思った黄金打線も、突如として瓦解することがある。だからnoshと付き合うのは、「戦争」なのである。noshを注文している時の俺は、プロデューサーだ。noshを注文している時の俺は、先生だ。noshを注文している時の俺は、ハンターだ!!

シャニマスのロールキャベツのチーズデミ
noshの樋口円香

 …………何の話してましたっけ?

 一応補足しておくと、現在はメニュー調整後の「ロールキャベツのチーズデミ」が復活している。ただ、明らかに調整前の方がおいしかった。ここもnoshの怖いところだ。調整前後で、ほぼ別人と化すメニューがある。

 今の「ロールキャベツのチーズデミ(調整後)」を初めて食べた時、羂索と対面した五条悟くらい「肉体も呪力も、この目に映る情報はお前をロールキャベツのチーズデミだと言っている。だが俺の魂がそれを否定してんだよ!」と激昂したのを未だに覚えている。絶対調整前の方がおいしかった。

 とにかく、突如としてテンプレメンバーが崩壊する可能性もある。noshを上手く利用し続けるには、こんな壁と何度もぶつからなければならない。私と同じ思いをしているnoshガチ勢は結構いるのだろうか? 私が考えすぎているだけなのだろうか? もしいるなら一度情報交換会でも開いてみたい。


エンドレスバトル編

公式サイトより

 なんか段々話をまとめるのが面倒になってきたので、ここからはザっと自問自答のQ&A形式で、「2年間noshを使い続けたことによって得た知見」を列記していこうと思う。なにかのお役に立てば幸いである。

Q.
実際、サービスとしてのコストパフォーマンスはどうなのか?

A.
普通。
たしかに1品1品は安いし、使えば使うほど安くなっていく仕組みになっている。ただ、結局送料も発生するから、どこまで頑張っても1食500~600円くらいにはなる。そして、noshは基本的に「おかず」が送られてくる。

だから、お米やパンなどの「主食」、追加のサラダや汁物は自分で用意する必要がある。実質的には「500~600円のおかずが送られてくる」システムだと思った方がいいかもしれない。これらを考慮した時、「コストパフォーマンスが圧倒的か」と言われると、「普通」「微妙」と答えざるを得ない。

下手をすればお弁当を買ってきた方が美味しい時もあるし、近くに学生向けの食堂があるなら、そっちの方が安価にお腹いっぱいになれるかもしれない。ただ、「レンジでチンすれば完成する」という手軽さの点で考えると、そこは優秀でもある。やはり、サービスとしては一長一短だと思う。

なんだか話が逸れたが、とにかくコストパフォーマンスは「普通」である。

公式サイトより

Q.
実際、健康にはいいの?

A.
これは結構本当にいいと思う。
ここまで散々noshへの恨み節をぶつけてきたけれど、この「健康面」に関しては本当に配慮されていると思う。実際、2年間利用し続けてあまり体調を崩していない。冷凍でありながらも、主菜のたんぱく質や、副菜のビタミンなどをしっかり摂取できる。ここに関してはかなり良くできている。

実際この「レンジでチンすれば用意できる健康なお弁当」という売り文句にそこまで嘘は含まれていないことに段々と腹が立ってくるくらい、割としっかり健康面には気を遣ってくれていると思う。

公式サイトより

Q.
「おいしいメニュー」は、どう見極めればいいの?

A.
これは私も未だに正解が出ていない。
強いて言えば、「主菜で判断してはいけない」ことが見極め方のひとつでもある。noshのメニューは主に「主菜1品+副菜3品」で構成されており、「主菜はおいしいけど副菜はガッカリ」なパターンが往々にして存在する。

その上厄介なのが、基本的に「メニュー名になっているのは主菜」なところ。たとえば、「チーズハンバーグ」という名前のメニューがあったとしよう。まず、副菜をチェックしてほしい。主菜の名前に釣られてはいけない。主菜のチーズハンバーグに釣られて頼んだが最後、なんだかミスマッチな副菜3品がくっついてきて、モヤモヤした食事を送るハメになる。

わかりやすいよう、「デュエル・マスターズ」でたとえよう。
アナタの目の前に、「悪魔神バロムデッキ」と書かれている構築済みデッキが存在している。デュエリストなら、今すぐ手に取りたくなってしまう気持ちが湧いてくるだろう。しかし待ってほしい。名前に釣られてはいけない。

noshは主菜(切り札)に悪魔神バロムが据えられていたとしても、周りの副菜(サポート)が壊滅的なデッキが存在している。バロムの闇デッキにコッコ・ルピアを4枚積んでも何の意味もないだろう。noshにはそういうデッキが多数存在する。高コストの切り札を据えているくせに、フェアリー・ライフもエナジー・ライトも入れてないようなデッキが多数存在するのだ。

同時に、ランキングTOP10に居座り続けているメニューは、この「主菜と副菜の組み合わせ」の完成度が高いメニューでもある。たとえば永世王者こと「チリハンバーグステーキ」の副菜は、「彩り野菜」「なすのバジルソース」「そら豆のポテトサラダ」の3品である。超、パーフェクトだ。

これはもう、凶戦士ブレイズ・クローを召喚→一撃奪取トップギアを召喚→轟速 ザ・レッドを召喚→轟く侵略レッドゾーン登場……くらいの、無駄のないコンボである。ちょっと喩えが古いな。ポケカで言えば、「しっかりナンジャモが入ってる」くらいの圧倒的安心感だと思ってほしい。

こんな感じで、明確な正解は出ていないものの、「見極める方法」はいくつか発見してきている。とにかく、「副菜を見ろ」!

公式サイトより

 以上、簡単なQ&Aコーナーでした。
 どうか、noshという腐敗したシステムに負けないよう頑張りましょう。

 そして2年間使い続けた私はというと……未だにnoshを使い続けている。もう明らかに「自炊に目覚めました」「料理ができる人とお付き合いを始めました」といったオチを用意しておかないとハッピーエンドにならない流れなのに、私は未だにヤツに依存している。普通にバッドエンドである。

 ただ……あの「2週間に10食で病んだ」時代を乗り越えて、もはや「なんとも思わない」境地に辿り着いてしまった。そう、「無」だ。「無」なのだ。

 もはやnoshが日常の中で「そこにあるもの」として馴染みすぎてしまったがゆえに、「コイツの存在を何とも思わない」状態になった。日々の生活の中で寝たり起きたりお風呂に入ったりするのと同じように、ヤツが日常に馴染みすぎて、もはや嫌悪感すら湧かなくなった。バッドエンドだってこれ。

 俺はコイツと、生き続けるしかない。
 むしろこの「別に好きじゃないけど、ライフラインになっているからnoshと一緒に居続けるしかない」という歪な共存関係……ちょっと「萌え」なのではないか?『ヴェノム』みたいじゃないか?「バディもの」ってやつ?

 まさに、noshとの終わりのない戦い。
 これからも続く「エンドレスバトル」の幕開けだ。

 もう収集がつかないので強引に終わります。
 みなさん、心が死なない程度に良い食生活を。