Sa・Ga2 秘宝伝説はできがいい
「シンプルにできがいい」。
あまりにも簡素で、情緒も何もない褒めフラットな言葉だけど、それしか思いつかない。どこを取っても、よくできている。何を考えても、しっかりと作られている。そんなゲームが、『Sa・Ga2 秘宝伝説』でした。
遊んでる最中、ひたすら「できがいいなぁ」と思わされ続けた。
これって、結構すごいことだと思う。
そんな『Sa・Ga2 秘宝伝説』の「できがよかったところ」を、淡々と書いていこうと思います。いつも以上に落ち着いた内容だと思います。盛り上がりどころとか特にないかもですが、どうぞよろしくお願いします。
あ、一応この前遊んだ『魔界塔士 Sa・Ga』の感想もあります。
お時間あったら、こっちもどうぞ。
システムのできがいい
まず、バトルや育成を中心とした「システム」のできがいい。
前作『魔界塔士』も十分バトルは面白かったけれど、やっぱりいろんな意味で「無骨さ」があったと思う。だけど、サガ2ではそんなシステム周りがしっかりと洗練されている。その上で、「サガっぽさ」もある。
個人的に気に入っているのは、「メカ」のシステム。
具体的には、「宿屋で休むとメカは兵装が回復する」という仕組みが面白いと思う。正直、前作で「デリンジャー」といった近代兵装はあまり目立っていなかった気がする。一応「チェーンソー」という最強武器はあったけど、剣や魔法に比べると汎用性は一歩劣っていたと思う。
ところが、メカの回復システムによって「サブマシンガン」や「44マグナム」といった近代武器が一気に最強格に躍り出た。強力だけど「回数制」が大きなネックとなっていた近代武器が、メカのおかげで大活躍している。この辺、しっかり前作からパワーアップしていて嬉しい。
もっと言うと、「メカのステータスを盛る方法」も好きだったりする。
やり方はシンプルに「強い武器を持たせる」だけ。でもこれが面白い。エクスカリバーを装備させたら攻撃力がとんでもないことになり、よいちのゆみを装備させたら素早さがとんでもないことになったりする。
これもシンプルな仕組みかもしれないけど、「新しい装備が手に入る」ことがイコールで「数値が上昇する」楽しさに繋がっていて楽しい。極論RPGは数値の上昇を楽しむゲームだから、装備の入手がダイレクトに数値上昇の快感に繋がっていると、これが結構どころか相当気持ちいい。
未だに忘れられない。
ゲーム終盤に出てくるオーディンを撃破したら「そいつ確率でグングニル落とすよ」とそそのかされ、30分間必死でオーディンと殴り合った結果手に入れたグングニルのヤリをメカに装備させてみたら、あらゆる敵を貫く無限グングニルが手に入った時の喜びを。メカのシステム、かなり好き。
これも現代RPG基準だと「当たり前」に感じてしまうけれど、個人的には新システム「5人目の仲間」が結構好きでした。序盤から強すぎる「せんせい」とか、何回もそっくりさんが加入するせいで正直どれが本人だったのかよくわからない「ちちおや」とか、ヤケクソ性能の「めがみ」とか……。
今となっては『FF12』のウォースラとかでお馴染みの「ゲスト仲間キャラ」だけど、冷静に考えてみたらゲームボーイのRPGでこの仕組みが出ているのだから結構すごいと思う。ちょっと「特別感」があって、いい。
というか、サガ2は「今となっては当たり前のことだけど、冷静に考えたらゲームボーイでこのシステムが出ているのは結構すごい気がする」が無数に存在していると思う。なんなら私自身サガ2の一番好きなところがここなので、多分これからも何度か話題に出てくると思います。
ストーリーのできがいい
「サガっぽさ」、中々に難しい概念だと思う。
この『サガ』というシリーズは未だに続いている長寿作品だけど、「サガっぽさとは何なのか」と聞かれたら、私も正確な解答は出ない。てか、出せない。サガ2内で挙げるなら、「平然と江戸の越後屋でドイツの第三世代主力戦車とビームライフルが売られている混沌さ」だったりするのだろうか。
ただ、一応私の中で真面目な解答も出ていて……それが、「河津のおっちゃんが直々に書いた、短いながらも絶大なインパクトのテキストと、独特のシーンづくり」です。割とこれ「原理主義」的な考えかもしれないけど、個人的にサガをサガたらしめるのはここだと思ってます。
で、ここから話したいのは「ストーリー」のできのよさについて。
やっぱりサガといえば短いながらも絶大なインパクトを残す「セリフ」だと思っている……けど、サガ2は特に味が濃い。「感動する」とか「カッコいい」とかでなく、とにかく「セリフの味が濃い」。
なんだろうな、テキストでこんなに「こってり感」が出るのだろうか。
たぶん一番有名なのはビーナス戦の「いまのあんたがいちばん みにくいぜ!」なんだと思う。実際、このシーンはめちゃくちゃ熱い。ただそれと同時に、セリフの味も濃厚。天一のこってり、松屋の限定くらい味が濃い。
『魔界塔士』はむしろアッサリさが味わいなテキストだった気がするけど、『秘宝伝説』はやたらとこってりしている。こってりしつつ、河津のおっちゃんの味はしっかり感じる。好きなそば屋が突然家系ラーメンを始めてギョッとしたけど、食ってみたら意外とおいしかったような……。
でも、それと同時にサガの「大人のカッコよさ」も持っている。これは私が勝手に言い続けているだけなのだけど、サガは「大人のゲーム」なのだ。バーに行き、突然スッ……と目の前に置かれるようなゲーム。一杯飲んでみると味のキツさに驚くけど、いつの間にか好きになっている。
サガ2、大人のゲーム。
この「大人なカッコよさ」を昨年遊んだ『サガフロ2』で死ぬほど堪能したのは記憶に新しいけど、ゲームボーイのいろいろと誓約の多そうなメッセージで、まさかここまで大人のカッコよさを出してくるとは。
もう、河津店長<マスター>には毎回惚れ惚れさせられる。
というか、このテキスト周りだって冷静に考えてみると「今となっては当たり前のことだけど、冷静に考えたらゲームボーイでこれが出ているのは結構すごい気がする」の一部じゃないだろうか。
『魔界塔士』では「おい ぜにがたんねーぞ!」を筆頭に、なんかいろいろ事情を感じるセリフが多かった……いや、あれはあれで大好きなんですけど。でも『秘宝伝説』は、ゲームボーイでここまでこってりとしたセリフ回しを展開してくる。1作目と2作目で、味が180度違う気がします。
なんか、今になって「ポケモン赤・緑が作られた背景には魔界塔士Sa・Gaの影響があった(らしい)」という有名な逸話に納得感を感じてくるというか……それくらいサガ2は「GBの到達点」を見せられている気がします。
その上で、「シーンづくり」も上手い。
むしろ、「サガは“シーン”のゲームなのでは?」という気がしてくるくらい、『サガ2』のテキストと音楽が一体となったシーンづくりは完成度が高い。特に越後屋のシーンとか。「なんだ このおんがくは!」じゃない。
ちょっと簡単な誉め言葉すぎるからあまり言いたくなかったけど、個人的に「これをゲームボーイでやってるのか」度が一番高かったのは「シーンづくり」でした。これがスーファミとかなら、まだわかるんです。でも、ゲームボーイでここまでやってしまうのか! ……という驚きです。
キャラのセリフがウィンドウで出る、それに合わせて音楽が展開される、画面上のキャラもそれに合わせて動く……現代RPG基準だと当然も当然だけど、ゲームボーイの画面でこれが出てくるとさすがに驚く。
これはもう私のフェチズムなのかもしれませんが、「その時代の到達点みたいなゲーム」に触れると、なんか無条件で嬉しくなってしまいます。「いまと比べてすごい」とかではなく、どういう原理で動いてるのかわからない神器を発見したようなワクワク感を覚えてしまうんです。
音楽のできがいい
そして、「音楽」のできもいい。
やっぱりなんと言っても「必殺の一撃」でしょう。
わたし、RPGにおいて「通常戦闘曲」ってめちゃくちゃ重要な要素だと思っているんです。定食で言うならAセット、自販機で言うなら天然水、吉野家で言うなら牛丼並。そう、「定番メニュー」なのです。
この「定番メニュー」のできがいいと、それはもうメチャクチャ嬉しい。なんだろうな、日本人って割と毎日お米食べるじゃないですか。で、米がマズいと辛いんです。逆に米がおいしいと、毎日のモチベーションが高くなりませんか? 「RPGの通常戦闘曲」って、そういうものだと思ってます。
だから、「必殺の一撃」は最高だと思います。
ハイテンポなイントロ、バトルを盛り上げる曲展開の気持ち良さ。伊藤賢治、生まれてきてくれてありがとう。もう通常戦闘曲が「必殺の一撃」じゃないサガ2なんて考えられない。イトケン生まれてきてくれてありがとう。
これも私の持論なのですが……『FF13』ってゲームあるじゃないですか。あれ、通常戦闘曲の「閃光」がめちゃくちゃいい曲なんです。どんなにキツイ戦闘でも、「閃光」が流れている限りは結構楽しく戦える。
逆もまた然りで、「通常戦闘曲が閃光じゃなかったら、FF13をリタイアしていたかもしれない」とも思うのです。ずっと流れる通常戦闘曲のできがいいと、これくらいのことが起きる。だから、通常戦闘時に流れる「必殺の一撃」なくして、サガ2というゲームは成立しないと思っています。
「必殺の一撃」があったから一歩エンカウントに耐えられた!
「必殺の一撃」があったからやや理不尽な敵の固さに耐えられた!
「必殺の一撃」があったから、最後まで戦い抜けた!
……通常戦闘曲フェチな自分は、割と誇張抜きでこう思ってます。
そして、最終決戦で流れる「必殺の一撃」。
これよ、これなのよ。
サガ2のラスボス戦はそもそもがメドレー調になっているのが熱い部分ではあるんですけど……私としては、「ラストバトルの大詰めに通常戦闘曲が流れる」ところが一番でしたね。熱い、熱すぎる。
ラスボス戦でメインテーマのアレンジが流れたりするのはよくあるけど、「通常戦闘曲」でここまで盛り上がれるのって……やっぱり「必殺の一撃」単体の完成度が高いからだと思います。伊藤賢治、天才?
あと、ここも「今は当たり前だけど、ゲームボーイでこれやってるのすごくないか」ポイントだと思います。「ボス戦の展開に合わせてBGMが切り替わる」って、RPG的にはまぁ定番も定番だと思うんですけど……やっぱりゲームボーイでこれが出てくると驚きます。サガ2、すごくない?
あと、アポロン戦のBGM切り替わりもその例だと思います。
そう、ここで「死闘の果てに」なんだよ。
この「ラスボス戦の必殺の一撃」と「アポロン戦の死闘の果てに」って、同じ演出なようで、実は微妙に違うものだと思っていて……。前者は、どちらかというと「バトルそのものに対してつけられた演出」だと思います。
要は、「ラスボス戦」という戦いに対してつけられた曲。シチュエーションより、「バトルを盛り上げるために流れる必殺の一撃」だと感じました。
後者のアポロン戦は、「アポロンとの戦い」というシチュエーションに対してつけられた曲。バトル単体ではなく、「アポロンの形態が変わる」というドラマを演出するために流れ出す「死闘の果てに」だと思いました。
どっちも「バトル中に曲が切り替わる」というシンプルな演出なのですが、実は少しニュアンスが違う……ような気がする。実際にどうなのかはわからないけど! でも、このニュアンスの違いを持たせてることがすごい!
ここまで散々言い続けてきた「今となっては当たり前のことだけど、冷静に考えたらゲームボーイでこれが出ているのは結構すごい気がする」という話題は……正直こことラスボス戦の話をしたかっただけですね!
「ボス戦に突入する前に熱いBGMが流れ始める」とか「ボスの形態変化に合わせてBGMが変化する」とか、いまだと割と普通の演出かもしれない。でも、それがゲームボーイの画面上で行われている。これ、さすがにビビる。
サガ2はできがいい
そして、『Sa・Ga2 秘宝伝説』というゲームはできがいい。
「そんなこと知っとるわ!!」とキレたくなる方が大半かもしれないのですが、私がここまで素直に「うっわこれよくできてるなぁ……」と思うのって……中々ないんですよ。でも、素直に「できがいい」と思った。
ものすっっっごい上から目線な言い方で恐縮ですけど、シンプルに「え、ゲームボーイってここまでやれるんだ」と思わされました。それはストーリーだけじゃない。システム、音楽、演出……すべて含めて、「できがいい」ゲームなのです。真正面から、感服させられた感じがします。
『魔界塔士』が新たな地平を切り開いた「怪作」だとするなら、『秘宝伝説』は洗練しつつも到達点を見せた「名作」だと思う。なんなら、「ここまでやっちゃったんだ」度で言えば、『魔界塔士』より上な気がします。
必ず、いつの時代にも「その時代の到達点になってしまった作品」が存在していると思う。客観的な完成度で測れるものではなく、ひとつの「到達点」に踏み込んでしまった作品が、必ず存在している。それはもう、後世では絶対に生み出せない魔力的な「何か」を有している。
個人的に、『サガフロンティア2』は、その一作だと思っていました。「PS期のスクウェア」という黄金時代の、ひとつの頂点たりうる作品だと思っています。もう純粋な完成度では測れない、「極点」を有している。
……で、『Sa・Ga2 秘宝伝説』も、割とそういうタイプのゲームだと思いました。「具体的にどこがそうなのか」は上手く説明できないけど、遊ぶ中で、漠然と「あっ、これその域に行ったゲームなんだ」と思いました。
私にとっては、ある意味『Sa・Ga2 秘宝伝説』というゲーム自体が、その時代に生まれた「秘宝」に見えました。シンプルに、すごく完成度の高いゲームだと思います。そして、この「シンプルに完成度の高いゲーム」がいかに貴重なものなのか、身に染みて理解した気がします。
……よし、言いたいこと大体書いたので、終わります!
いや、本当に淡々としてますね。でも、このゲーム自体がこういう雰囲気だった気がするんです。淡々と、フラットに、「完成度の高さ」をぶつけられる。こっちも、黙々と「できがいい……」と思うしかない。
『Sa・Ga2 秘宝伝説』、できがいい!