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マジでポケスペ初めて読んだ

 『ポケットモンスターSPECIAL』って漫画……読んだことあります?

 ちぢめて『ポケスぺ』。実は私、読んだことなかったんです。ポケモンが結構好きなのに、人生で一度も読んだことがありませんでした。たしか小学生の頃に読んでいた友達はいたけど、私自身は読んでいませんでした。

 だからなんかもう……「え、ポケスペ読んでないの!?」みたいなこと言われることも多くて、いい加減に悔しかったので読みました。

『ポケットモンスターSPECIAL』1巻より

 とりあえず、「出ている分」はおおかた読みました。
 なので、シンプルに「赤緑~SVまで」の感想を書いていきます。

 ゆめと ぼうけんと!
 ポケットモンスター SPECIAL のせかいへ!
 レッツゴー!



第1章:赤・緑・青編

『ポケットモンスターSPECIAL』1巻より

 この漫画、とにかくニョロゾが強い。

 『ポケットモンスター 赤・緑』って、もうあらゆる媒体で翻案がされている原典じゃないですか。だからもう、パターン的に「まぁ相棒ポジションはピカチュウか御三家だよね」と思っていたのですが……まさかのニョロゾ。

 しかも、このニョロゾがめちゃくちゃに強い。
 オニドリルの突撃をかげぶんしんで無力化したり、追い詰められたと思ったら床をれいとうビームで凍らせて脱出したり……もうこれニョロゾだけ呪術廻戦の世界観じゃない? ポケットモンスターニョロゾ始まったわ。

 さらに、すごいスピードでニョロボンに進化してしまう。すでに自分の中では「レッドの相棒と言えばニョロボン」の方程式が完成している。赤緑編は、このスピード感もいい味を出していると思う。ただでさえ強かったニョロゾが、たった1巻のうちにニョロボンになった。ニョロボン最強!

『ポケットモンスターSPECIAL』1巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』2巻より

 ポケスペさ~……ここの「単行本の巻末に現在の手持ちのレベルが載ってる」ページめちゃくちゃ好きなんだよ。絶対みんな好きなやつだと思うけど。この並びでニョロボンが一番レベル高いところまで含めて大好き。

 バトル描写なんかもそうですけど、赤緑編の時点で「ゲームだと表現が難しい部分」を完全にモノにしちゃってるのがポケスペのすごいところですよね。キャラクター性のある主人公、いかにも少年漫画チックなバトル……「ポケモンの漫画」という点において、やはりトップオブトップ。

 あと、このあたりからポケスペのバトルにはポケモンファイト国際条約第一条「戦闘中に気絶したトレーナーは失格となる=ダイレクトアタックも辞さない」みたいな独自のルールが存在していることにも気づいてきた。マルマインをロケットランチャーに装填して発射してくるマチスなんなの。

『ポケットモンスターSPECIAL』3巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』3巻より

オレの、大切な……、仲間だ。

 この中にニョロボンが入ってるのガチで泣いちゃうやつ。

 そうなんだよ、ここでピカとフッシーとニョロなんだよ。もうこれ流石に「原点にして頂点(pixiv user10000入り)」使ってもいいよね? でも、スピード感といい完成度といいポケスペ内においても赤緑編は原点にして頂点だと思う。ええっ、ここまで3巻分しかないんですか!?

 というか、「3巻」自体がすごいんですよね。同じ巻の中に「vsファイヤーサンダーフリーザー」「vsミュウツー」「vsサカキ」「vsグリーン」が全部入ってるの濃密すぎるって。ポケスペ赤緑、原点にして頂点。

何気にブルーのお話もグッとくる……
『ポケットモンスターSPECIAL』3巻より



第2章:イエロー編

『ポケットモンスターSPECIAL』4巻より

 これそろそろ死人出るって。
 
「グボォ!」ちゃうわ。

 赤緑編から地続きで突入したイエロー編。いつの間にか、ダイレクトアタックが前提の環境になっていた。怖っ。ポケスペ怖えよ。もうレッドとシバの戦いだけ「ステージ」がひとつ上に行っちゃってるんだよ。

 赤緑編のvsサカキの「ポケモンを繰り出すまでが何秒~」のくだりもそうでしたが、vsシバの「ヌンチャクにボールを装填しているから通常のトレーナーよりも長いリーチでポケモンを繰り出せる」も大概ヤバい。なぜ「ポケモンをどう繰り出すか」の段階で戦いが始まっているのか。

 ただ、ゲームだとそのままの流れで戦ってしまう「ジムリーダー」→「四天王」の順番を、漫画に落とし込んだ時に「第一部の敵・ジムリーダー」「第二部で現れるさらなる強敵・四天王」として表現してるのがかなり上手いと思う。ポケスペって、この「原作拡張」の技が強い。

『ポケットモンスターSPECIAL』4巻より

 マジで「死」だよ。
 
「今の音!!ろっ骨のひとつも折れたか!?」じゃないって。

 まぁ……やっぱり言わずと知れた「イエロー」ですよね。さすがに私もイエローは知ってました。ハ、ハハハ……イエローちゃんのせいで……イエローちゃんのせいで大変なことになってるんだからね…………。

 個人的にはイエローが「不殺系主人公」的な感じで面白かったです。緋村剣心、ヴァッシュ・ザ・スタンピード、イエロー・デ・トキワグローブ。

『ポケットモンスターSPECIAL』5巻より

 あと、ポケスペってここの「ロジックのつけ方」も特徴的ですよね。進化キャンセルは図鑑から発信される波動によって止められているとか……ここの「ゲームの不思議な要素を漫画化するにあたってロジカルに解釈する」やり方が、かなり『ダイの大冒険』に近い気がします。

 ある意味、「ポケモン版ダイの大冒険」を読んでいる気持ちにもなる。

 なみのりピカチュウを登場させたときの「HPを使って生み出したみがわりをサーブボードにしている」なんてロジックのつけ方もそうですけど……個人的には「クチバ湾の海底には伝説の石としてリーフ・ほのお・みず・かみなりのいしが沈んでおり、レッド編で海に落ちたニョロゾが突然ニョロボンに進化したのはそのため」が一番好きですね。なんやそれ!?

ここ、最高
『ポケットモンスターSPECIAL』5巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』6巻より

 お前……女の子だったのか!?
 お前……女の子だったのか!?!?
 お前……女の子だったのか!?!?!?
 お前……女の子だったのか!?!?!?!?
 お前……女の子だったのか!?!?!?!?!?

 私はイエロー・デ・トキワグローブはCV釘宮理恵しかありえないと思っていますが……お前はトリコ? でも、実際に本編を読むまでイエローのことを「女の子だと思ったら男の子だった」パターンだと勘違いしてました。そうか、逆か。男の子だと思ったら女の子か。だとしたらかわいすぎねえか。

『ポケットモンスターSPECIAL』7巻より

図鑑がなくなってしまった今、キャンセルボタンはもう押せない。
イヤ……、キャンセルボタンはもう……押さない!

 なんか、ここで一度「ポケスペのベンチマーク」が出てしまったような気すらします。何度思い返しても、イエロー編の完成度は異様。

 ここに至るまでにサカキが出てきたり、レッド・グリーン・ブルーが集結する展開も挟んでいるんだからヤバい。「オリジナル主人公の面白さ」がここで頂点に達している。「ポケスペと言えばイエロー」な気持ち、わかる。

 個人的には、カツラvsワタルの「ボールに傷をつけてワタルのポケモンを繰り出せないようにして無力化する」とかいうスーパーラフプレイが好きですね。もうこれ盤外戦術とかでもなく「アウト」じゃん。

 あ、でもレッドのイーブイが「クチバ湾に沈んでいた伝説の石は使ってもなくならない」を盾にブースター・シャワーズ・サンダースを切り替えながら戦うのも捨てがたい! あんな平成ライダーみたいな戦い方許されんて! チクショウ面白いから話したいこと無限にあるな!!

『ポケットモンスターSPECIAL』7巻より



第3章:金銀編

『ポケットモンスターSPECIAL』8巻より

 シルバーがえっちだ。

 ポケスペ金銀編はHGSS世代な自分でもわかるくらい、タマゴ!ラジオ機能!ガンテツボール!道をふさぐウソッキー!ポケギア!とジョウト要素の殴打で畳みかけてくる。でもそんなことよりシルバーがえっちだ。

 なんかもう、小学生の頃にポケスペ金銀編を読んだら確実にシルバーを目指していたと思う。うっかり将来の夢に「シルバー」と書いてしまう世界がどこかにあったかもしれない。そう考えてみると、この歳までポケスペに一度も触れなかったのはある意味幸運か。俺、シルバーになりたい。

『ポケットモンスターSPECIAL』9巻より

 あと、未だレッドに帽子の中の真実を告げていないイエローは何なのか。まだ言ってないの!? なぜレッドとイエローで「何巻も続いているのに一向にくっつかないラブコメ」のダシが取れてしまっているのか。

 そして、金銀編で「ダイ大とポケスペの違い」について真剣に考え始めてしまった。たぶん、最大の違いは「完全オリジナルか、半分オリジナルか」ではないだろうか。前者はあくまで、「土台にドラクエがあるけど、完全オリジナル」の作品になっている。

 でも、ポケスペは「半分オリジナル」。

 要するに、舞台やキャラはガッツリゲーム準拠なのだ。だから、地方が切り替わるたびに「元になっているタイトルをどう料理してくるか」的な面白さが生まれる。ここがポケスペの良いところだと思います。……まぁ、そんなの赤緑あたりで気づけよって感じですが。

ゴールドのトゲピーが親似なの、いいよね
『ポケットモンスターSPECIAL』9巻より



クリスタル編

『ポケットモンスターSPECIAL』10巻より

 チコリータに「小さいけど根性だけはメガトン級だからメガぴょん」は流石に苦しくない!? いや、ヒノアラシに「バクたろう」と名付けられている時点でツッコめよって感じかもしれませんが……にしたって「小さいけど根性だけはメガトン級だからメガぴょん」は流石に苦しくないか!?

 ということで、主人公が一旦クリスに交代。
 当時はここまでにもいろいろあったとはお聞きしてますが……正直、「甲乙つけがたい」という気持ちが真っ先に来ました。

 真斗作画のポップで温かみのあるタッチこそが至高だという方の気持ちもよくわかる一方、クリスの快活でセクシーな主人公像は間違いなく山本サトシ作画だから出せてる味だと思う。うーん、中々に甲乙つけがたい。FFで言うと吉田明彦or野村哲也くらい甲乙つけがたい。

段々感覚が麻痺してきてますが、
「捕獲する時にボール名を叫びながらキックで投擲する」って相当ですよね。
『ポケットモンスターSPECIAL』10巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』11巻より

 イエロー編の終盤で行われた「ポケモンを繰り出される前にボールにダメージを与えて封じる」という技……さすがにダーティすぎるし、「これはワタル相手にミュウツー1匹しか使えなかったカツラ苦肉の策だよね」と納得していました。でも、野生のヨーギラスが平然と使ってきた。

 もう……こんなの修羅の国だよ……。
 なんか段々、『Pokémon LEGENDS アルセウス』が発売された時にみんなこぞって「とうとうゲーム側がポケスペに近づいてきた」と言っていた意味を理解してきた気がする。ポケスペ、常に「死」の間合いである。

 でも、「思いっきりポケスペに寄せたゲーム」もちょっと遊んでみたい気がする。せっかく育てた最初のパートナーも、一度ボール破壊を受けてしまえば容赦なく繰り出せなくなったり、トレーナー側が物理的に骨を折られたらボールを投げられなくなったり……って、これもうエルデンリングでは?

『ポケットモンスターSPECIAL』11巻より



金・銀・クリスタル編

『ポケットモンスターSPECIAL』12巻より

 金銀編のすごいところは、スイクン・エンテイ・ライコウの3匹が「主人公チームの一枠」になっているところだと思う。

 これもなんか当時の掲載誌がどうこうの問題があったらしいけど……ゴールドとシルバーはあんな感じだし、クリスはどっちかっていうと捕獲専門だから「ジョウトのジムリーダーと戦う役目」をスイクンがワンオペで担ってるんですよね。どういう構成?

 しかも、最終的にはレッドとイエローの関係に複雑な気持ちを抱いていたカスミのところに収まるという……スイクンってこんな別れて傷心中の子に滑り込んでくる大学生みたいなムーブするんだ?

 そして、ここでついにゴールド・シルバー・クリスの3人が集結。レッドからイエローまでの4人は割かし「導かれし戦士たち……」みたいな空気出てたけど、この3人の「なんかたまたま集まりました」感もかなりいい。全然ノリが合わないけどたまたま同じクラスだった奴等みたいな。

『ポケットモンスターSPECIAL』12巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』14巻より

 そしてレッドたちカントー勢が再び参戦してから、どんどんスーパー系ポケットモンスターの趣が強くなっていく。暴走してる新幹線をレッドのカビゴンが食い止めるシーンすごすぎない? お前はテリーマンか?

 なんかこのスーパー系の空気感につられて、ゴールドまで「マンタインにくっついた大量のテッポウオのジェット噴射で空を飛ぶ」とかいう技を見せ始めるし。プテラで飛ぶレッド。バタフリーで飛ぶイエロー。マンタインとテッポウオのジェット噴射で飛ぶゴールド。最後だけ絶対おかしい。

『ポケットモンスターSPECIAL』13巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』14巻より

おまえには遊びだったかもしれない。だが、オレにとってこの戦いは自分自身の運命に決着をつける……、すべてだった!!
そのためにポケモンたちと修練してきた!
そしてオレたちの得たものはこれだ!!

 これ泣いちゃうよね。

 ここの少し前にシルバーの世話を焼いていたブルー姉さんとの回想がこれでもかと連打されてからの、これですよ。シルバーの復讐劇の決着ともいえる技が、オーダイルの「おんがえし」。「やつあたり」からの「おんがえし」なんですよ! オレたちの得たものが「おんがえし」なんですよ!!

 ウッ……シルバー……シルバー大好きだ……。

 さらにそこからラジオのFAXに全国の子どもたちからメールが送られてきて、転送システムが復活して、みんなポケモンでホウオウとルギアを止める展開……泣いちゃう! 「ポケットモンスター」なんすよ。ポケットモンスターSPECIAL面白すぎる! ポケットモンスターSPECIAL面白すぎる!!

『ポケットモンスターSPECIAL』14巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』15巻より

さて……
そろそろ きみの なまえを
おしえてもらおう!

 ウワーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!

 赤緑から金銀へと続いてきた物語が、ここで終わってしまった。そしてオーキド博士の旅立ちのセリフをもって、物語を締めくくる。「ポケットモンスター」なんだよね。「たびのまえ、たびのあと」なんすよね。もうこれポケスペ完結してんじゃん。えっ、ここから入れる地方があるんですか!?

 実のところポケスペって、「ゲーム内要素を活かしはするけど、ゲーム的なセリフはそこまで回収しない」印象がありました。表現が難しいけど、「かがくのちからってすげー!」をゴリゴリ擦りにはいかないというか……でも、ここで「みんな知ってるセリフ」を抜刀してくる。伝家の宝刀。

 からの、全員集合絵。
 マジで泣いちゃう!!!!!!!!!!!!

『ポケットモンスターSPECIAL』15巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』14巻より

 ……で、問題のマスクドアイス、みなさんどう思ってました?

 私は、「流石にヤナギはないだろう」と思ってました。いや、だって謎のこおりタイプつかいがそのままヤナギだったら、あまりにもわかりやすすぎるだろうと。そんなに単純なわけがないだろうと。

 私は、割と真剣にマツバあたりなんじゃないかと思ってました。

 そして予想通り、大会中にも「マスクドアイスとヤナギが同時に出現する」描写があった。ほら、やっぱりヤナギじゃないんだよ。あくまで“ひっかけ”のヤナギだったんだね。日下秀憲、俺は信じていたぞ! ……と思ったのにやっぱりヤナギじゃねえか!!!!!!!!!!!!!

 これが、私のマスクドアイス真実リプレイでした。
 みなさん、どう思ってました? 割と普通に、正体はヤナギだと思ってました? ポケスペ全巻読み終わったのに、未だにここだけ引っかかってます。悔しい。ひたすらヤナギに翻弄された読み味だった。

でもこのへん泣けるから悔しい
『ポケットモンスターSPECIAL』15巻より



第4章:ルビサファ編

『ポケットモンスターSPECIAL』15巻より

 ルビーが好みの男すぎる。

 こんなに好みの男でもいいのかというくらい、ルビーが好みの男すぎる。特に序盤に出てくる「ルビーとミツル」の空気感が好きだ。もうミツルとルビーが自分の理想の世界観かもしれない。風が吹けば死にそうな美少年と自意識の強い美少年………何? シルバーといい好みがわかりやすすぎる?

 あと、サファイアが博多弁なのがじわじわくる。
 えっ、ホウエン地方だから…………?

 原作要素の回収や登場人物の動かし方はあれだけキメ細やかなのに、サファイアは博多弁。いくらなんでもそれは安直すぎないか。でも、逆にこの雑味がいい。サファイア博多弁の出オチ感よ。

『ポケットモンスターSPECIAL』15巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』16巻より

 あと、ルビサファ編は「キャラのアレンジ」がいいですよね。

 ヤナギを筆頭にジムリーダーやチャンピオンにも結構大胆なアレンジを入れてくることに定評はあったけど、ルビサファ編は特にそれが強く出ていると思います。それこそダイゴなんか、もう「ポケスペのダイゴ」としか言いようがない感じがする。なんでこんなに目が死んでるんだろう。

 石が好きすぎてダイゴ自身がはがねタイプになってしまったのか。

 それで言うなら「カガリ」もすごい。
 ORASならまだしも、ルビサファのカガリをあそこまで膨らませてくるのか。ちょっと待ってくださいよ……ポケスペは子どもたちも楽しめる漫画じゃないんですか!? カガリ周りだけやたらアダルティでは!?

むしろ、こっちがORASカガリのキャラ造形に影響与えてたりするんでしょうか……
『ポケットモンスターSPECIAL』18巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』21巻より

でも……、今はこの賭けばして本当によかったと思っとるんよ。……だって、この競争のおかげで、あんたの良かところたくさん見れたけんね。
ポケモンと一緒に戦うあんたが好き。気どって気持ちばかくすけど、本当はやさしいところも好き。ポケモンの毛づくろいばするあんたが好き。
こうと決めたら迷わず立ち向かうところも全部、全部好き。

不思議やね。あれほど好きやった思い出の男の子より、今ではあんたのほうが心の中ばいっぱいにしてるんやけ。こん気持ちば伝えられただけでよか。
でも……ただ1コ、かなうんなら……、ここに……おって。

この戦いが終わっても遠くへ行かんで……。もう一度よみがえるホウエンの自然ば、いっぱいいっぱい知ってほしい。……だから……ね?

……一緒に……、ミシロヘ戻ろう?

 いけーっ!!! オダマキの娘!!!!!

 サファイア、いじらしすぎるったい。ちなみに私は「あたし…あんたのことが……好きったい……」より「……一緒に……、ミシロへ戻ろう?」派です。サファイアの誰かを愛する気持ち、あまりにもまぶしすぎるとね。

 しかも、そこからの「ボクもキミが好きだったからさ。小さなころからずっとずっと……思ってた」ですからね。ルビーとサファイア真実…………あ、あぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!

 「それでこそ俺の好きな男~~~!!!!!」とルビーを称賛したい気持ちもありつつ、あんなに快活なサファイアの願いが「戦いが終わっても遠くに行かないでほしい。一緒にいたい」だという……いじらしさが……ね……。
 最初は本当に野生児みたいだったサファイアが「気持ち」を伝えるために、ここまで多くの言葉を尽くすひたむきさが……ね……。

 ポケスペのルビサファ編って、正直序盤あたりは「キャラ造形は好きだけど完成度としては金銀編の方が脂乗ってたかな……いやあっちは文脈が強いからね……」と思いながら読んでました。でもルビーとサファイアの過去エピソード一手で盤面をひっくり返されてしまった。ポケスペ面白すぎる。

『ポケットモンスターSPECIAL』21巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』21巻より

 あと、終盤は「グラードンとカイオーガとの最終決戦」の構図の作り方が鮮やかなんですよね。

 まず「ルビー・サファイアとエメラルドでなんかチャンピオンが違う」というゲーム側の都合を上手く作劇に組み込みつつ、「Wチャンピオンがグラードンとカイオーガを抑え込む」という激熱シチュエーションに持ち込んでいる。さらに、この2人が死ぬ絶望感もある。

 その上で、ルビサファで初登場した「ダブルバトル」の要素も組み込んでいる……要するに、これって最終決戦が「グラードンとカイオーガとのダブルバトル」になってるんですよ。この構図がめちゃくちゃ好き。これを見越してW主人公にしていたなら本当に天才だと思う。

 あ、でもルビーのセレビィだけは本当によくわからなかった。
 
「ルビーの6匹目」とか意識したことなかったけど!?

『ポケットモンスターSPECIAL』22巻より

本当の美しさは心の美しさだ!!
誰かを愛し、想いやる心そのものなんだ!!
強大な力にすべてをのみこまれる前に、そんな気持ちを思い出してくれ!!

 ルビサファ編、大傑作。

 この「本当の美しさは心の美しさだ!!誰かを愛し、想いやる心そのものなんだ!!」というセリフが出てきても何も恥ずかしくないどころか、むしろ納得感がある。もう積み重ねと作風の勝利。愛は、美しさなんだ!!

 ぶっちゃけ、赤緑→金銀までで「ポケモンのコミカライズ」の極地に到達してしまったとは思っていました。だからハードルが上がりまくってたんですけど……なんか別角度で越えられてきてしまった。ポケットモンスターSPECIAL、面白すぎるんだが?

 いま脳内でクラスの友達とポケスペで好きな女子キャラ談議になって「……サファイアかな」とか言い出した友人に「おまっ、お前お前~~~!!」とイジるところまで完全にイメージできているけど、私はもう成人男性だからそんな青春存在しない。

 オレ……みんなと好きなポケスペのキャラ談議したいよ!!!!!!

最後の最後に「ひみつきち」を回収してくるところが好きです。真面目か!?
『ポケットモンスターSPECIAL』22巻より



第5章:FRLG編

『ポケットモンスターSPECIAL』23巻より

 ついに舞台は『ファイアレッド・リーフグリーン』に準拠したお話へ……って、これまず感じたのが「それやっていいんだ!?」という驚きでした。えっ、リメイクに合わせて続編やっていいの!?

 ここも割とポケスペの「半分オリジナル」だからこその面白さだと思っていて……ベースは原作準拠だから、リメイクが発売されたらFRLGの話をする必要があるじゃないですか。でもキャラはオリジナルだから、実質的に仮面ライダーのVシネみたいになってくる。すごいアクロバティックじゃない?

 ちなみに自分はFRLGから微妙に世代がズレていたので……あとから友人に「ポケスペのFRLG編でキワメが仕掛けてくる特訓は全部FRLG内のミニゲーム」と聞いてめちゃくちゃ笑いました。ポケスペ、真面目か!?

『ポケットモンスターSPECIAL』23巻より

 そして、またしてもスーパー系ポケットモンスターの濃度が高まってくる。フォレトスのだいばくはつを真正面から受けたにも関わらず、ベッドで寝たらそこそこ回復して元気にデオキシスと戦い始めているレッドさんが一番おそろしい。「大丈夫さ…、へへ…。」じゃないんだわ。

 なぜ? なぜカントー勢が絡むとこうなってしまうのか!?
 割とルビサファでこの辺は抑え込んだはずじゃないのか!?
 そしてカントー編、まだ面白くなる余地があるのか!?

 あと、イエロー・デ・トキワグローブが明らかに色っぽくなっている気がする。出てくるたびに色っぽくなっている気がする。クソッ、カントー勢に関しては割と真斗作画派の自分でも、この色っぽさを見せられると山本サトシ作画のカントー勢も捨てがたい気がしてくる! イエロー、日々進化中!

『ポケットモンスターSPECIAL』23巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』24巻より

 個人的に、ポケスペは「言われてみれば何となくそんな気がしてくる」ところがすごいと思っている。

 たとえば、このデオキシスとミュウツーの関係性を説いているシーン。

 絶対ゲームフリークはそこまで考えてないのに、いざ「デオキシスの由来はデオキシリボ核酸……つまりDNA!そしてミュウツーもいでんしポケモン!!」「こ、この2匹は惹かれ合う運命だったのかぁっ!!」と言われると、なんだかそんな気がしてくる。実は赤緑でミュウツーを作った時点で、後の作品でデオキシスを出すことを考えていたような気がしてくる。

 い、言われてみればそんな気がしてきた……ポケスペはこの「い、言われてみればそんな気がしてきた……」感を出すのがとにかく上手い。

 しかもこの上で、「レッドとミュウツー」という誰もが考える最強タッグを実現してくれるのが本当にヤバい。もうこれ「原点にして頂点<ユメ>じゃねえんだよな……!?」って言っていいよね? なんか泣きそう。夢。

『ポケットモンスターSPECIAL』24巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』25巻より

その中で“じこさいせい”を……回復をするんだ!!
デオキシスがオレを押さえているうちに!!

オレごと撃てえ!!!

 ポケモンバトルの最中に「オレごと撃てえ!!!」って言うことないだろ。

 なんかもう、レッドとサカキの頂上決戦が苛烈すぎてわけのわからんことになってきている。その前座の「デオキシスがオレを押さえているうちに!!」も大概なに言ってるかわからん。逆だろ。パワーバランスが。

 FRLG編におけるレッドさんのダメージを換算してみると、フォレトスのだいばくはつを真正面から受ける→一度ベッドで寝て元気にデオキシスと戦い始める→デオキシス(アタックフォルム)のサイコブーストを真正面から受ける→根性で戦闘続行……って、この人ハピナスぐらいHPあるんですかね?

 この「もうミュウツーよりレッド本人の方が強くなってないか」感、絶対どっかで見たことあると思ったんですけど……アレですね。「サーヴァントより強いマスター」ってやつですね。なぜポケモンでそれが起きる。

『ポケットモンスターSPECIAL』26巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』26巻より

大きくなったなぁ、シルバー……。
お……父……さん……。

 なんかもう全体的に「横綱相撲」としか言いようのないFRLG編だったけど、最後のサカキとシルバーの描写はやっぱり泣ける。てか、俺がシルバーの話に弱すぎる。いやいや、でもシルバーはみんな大好きでしょう!?

 なんか、我が人生において「サカキで泣く日」が来るとは思いませんでした。サカキには何かしらの黒い野望があってシルバーを利用しているのかと思ったら、その実……息子への愛で動いていた。サカキで泣く日が来るとは思わなかった。シルバー、お前は幸せになるんだ……。



第6章:エメラルド編

『ポケットモンスターSPECIAL』26巻より

 先にハッキリと言っておこうと思うのですが、エメラルド編はあんまり好きじゃなかったです。「エメラルドのクセが強すぎる」とか「なんでラスボスがアオギリとカイオーガやねん」とか言いたいことはいろいろあるのですが……まぁ、そんなことばかり考えても仕方がない。

 キッパリと、「好きじゃなかった」とだけ最初に言っておきます。

 たぶん、個人的に一番引っかかった部分が「ミツルが持っていたキモリ、実は元々エメラルドが手に入れる予定だった」を明かされた時ですかね。あの「ま、マジか〜……俺ミツルとジュプトルのコンビ結構好きだったんだけど……」みたいな気持ち、2024年に味わっていいやつですか?

 いや、そんなことを考えても仕方がない。「よかったところ」の話をしましょう。うーん、エメラルドの持ってるカラカラとエビワラーがクリスのカラぴょんとエビぴょんだと判明するくだりとかは結構良かったんだけどね………3本目の主人公同士で絡むところは割と好きですよ。

『ポケットモンスターSPECIAL』27巻より

 山本サトシ、何しちょる?

 ずーっと思ってた。山本サトシ作画に切り替わってから、「明らかに山本サトシの山本汁が漏れてる瞬間」がちょいちょいある。これ、ダダ洩れや。

 ちなみに僕、このラティアス(人間態)がポケスペで一番えっちなキャラだと思ってます。次いでBW編のやたらと肉感のあるフウロ。次いで大人の色気を携え始めたイエロー・デ・トキワグローブ。これBW編先取りしてまでするような話か? 山本サトシやっぱりすげえよ。アンタは本物の男。

これ、山本汁です(猫猫)
『ポケットモンスターSPECIAL』28巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』29巻より

 ニョロボンとニョロトノォーー!?
 ウッソでしょォォォッッッ
 ニョロボンとニョロトノが闘おうとしているッッ
 今ッ 東京ドームでッッッ

 もうこれ、「レッドとミュウツー」に匹敵する夢のタッグですよね。みんな一度は考えるけど、ついに実現しなかったアレ。読んでいた時は「エメラルド編合わないな……」と思ってたんですが、いま思い返すと「クロスオーバー作品」的な味わいは結構ある気がしますね。ポケスペのスパロボ。

 あと、なんかすごいシレっとゴールドがシルバーのこと「ダチ公」呼びしてるのがマジで気狂う。ダチ公。ダチ公!? シルバーのこと「ダチ公」って呼んだ!? ア、ァァ√﹀\_︿╱﹀╲/╲︿_/︺╲▁︹_/﹀\_︿╱▔︺\/\︹▁╱﹀▔╲︿_/︺▔╲▁︹_/﹀▔\⁄﹀\╱﹀▔︺\︹▁︿╱\╱﹀▔╲︿_/︺▔╲▁︿/\︿╱\︿︹︿╱﹀╲/╲︿_/︺╲▁︹_/﹀\_︿╱▔︺\/\︹▁_/▔﹀

『ポケットモンスターSPECIAL』29巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』29巻より

……まるで……、オレ自身の願いがかなったみたいだよ……。

 読んでいた時にエメラルド編がピンと来ていなかった理由って、この全員集合展開に「えっ、金銀編で1回やったじゃん……」と思っていたところもあるんです。でも、今になると全員集結がこれっきりだったのがちょっと寂しい。なんか、今になるとノスタルジックな気持ちが湧いてくる。

 そう考えると、「……まるで……、オレ自身の願いがかなったみたいだよ……。」も、ちょっとメタ的なセリフとして作用している気がする。ジラーチのように、これっきりの願いが果たされたのかもしれない。あれ? いま思い返すとエメラルド編結構よかった気がしてきたな?

 うーん、やっぱり「みんな揃ってる絵」がこれっきりだったことの寂しさが後追いで来てるんですかね。だいぶ前の親戚の集まりの写真を見て「あ、もうこのメンバーって揃わないんだ……」と思ってしまった瞬間の寂しさというか。後生だ、ルビサファ以降のメンバー集めてもっかいやらんか。



第7章:DP編

『ポケットモンスターSPECIAL』30巻より

 まず、「自分とポケットモンスターの出会い」の話をさせてください。

 僕が人生で初めて遊んだ『ポケットモンスター』は、『ポケットモンスター ダイヤモンド』でした。小学1年生の頃でした。おそらく、人生で初めての「RPG」だったと思います。というか、「ゲームを遊び尽くした」という体験すら、人生初だったかもしれません。

 だから、あのシンオウ地方での冒険が未だに忘れらない。
 『ポケットモンスター』という作品群のおそろしいところは、ここ
にある。多くの少年少女の「初めて」を奪い去り、忘れられない「初めての冒険」を焼き付けてくる。だからもう……どれだけ新作が出ても、自分の中での永世王者はダイパなんです!!!!!ってことですね。

 私のダイパキッズっぷりをひとつ暴露しておくと、「ダイパリメイクを遊んだ時に209番道路のBGMが流れ始めただけで号泣する」レベルだったりします。全国の(元)ダイパキッズ、理解<わか>ってくれるよな。

 パルデア地方から冒険を始めた、けっこう年の離れた弟くんとポケモントークになった時も「好きなポケモン何?」「ドダイトスかなぁ」「どのタイトルが好き?」「ダイパかなぁ」「これまでで誰が一番強かった?」「シロナかなぁ」みたいな話をしたので、どうやら私はダイパキッズから超綺麗にダイパジジイにスライドしたようです。

『ポケットモンスターSPECIAL』30巻より

 だからもう、ポケスペ内で描かれていることが、すべてあの輝かしい冒険とリンクしてしまう。ヒョウタの岩ジムも、ソノオタウンも、何もかも……何もかも、美しい記憶を呼び覚ましてくる。さっきからカッコつけた言い方してるだけで要するに「思い出補正」ってことではあるんですけど。

 ここまでのポケスペは、自分にとっては「世代じゃないポケスペ」でした。でも、とうとう「自分にとってのポケスペ」がやってきた感じがする。「一番思い入れのある地方でポケスペをやってくれてる」嬉しさがすべてを上回ってくる。「ダイパでポケスペをやってる」事実に泣きそう!

 もう……もうね……「女主人公はお嬢様、男主人公とライバルは漫才師」って設定の時点で最高なんです。キャラがとにかくかわいい。この時点で嬉しすぎて、私は“気”を高めるべく209番道路(昼)の音楽を流しながら30巻を読み始めた。Glorious DAY<ユメ>じゃねえんだよな……!?

 そもそも自分がプレイした時に最初に選んだのが、「ナエトル」でした。だから、ダイヤがナエトル持ちでパールがヒコザル持ちなのも余計に感情移入しちゃうんです。俺のダイパはポケモンリーグ直前でライバルが繰り出してくるゴウカザルをドダイトスのじしんでワンパンするまでがワンセットだったから………ウッ、幸せだ……なんて美しい日々だったんだ……………。

『ポケットモンスターSPECIAL』31巻より

 そこに加えて、ダイパ編って結構「原点回帰」の趣がある気がします。

 つまり、「旅」がメインテーマになっている。お嬢様の漫才コンビの珍道中。ずっと、「旅の楽しさ」が描かれている。この雰囲気もめちゃくちゃ刺さってる。なぜなら自分にとってのダイパは、「初めての旅」だったから。そんなダイパで「旅」を描いてくれるとか……泣く!!!!!!!!!!

 ダイヤとパールとお嬢のシンオウ珍道中。
 いつの間にか友情が芽生えてくる3人。 

 そして出てくる「コンテスト」や「サファリパーク(ノモセ大湿原)」といった原作要素。その度に起動する私の思い出補正。「こんなんあった……こんなんあった……!!」と言いながら号泣するダイパジジイ。どうしよう、老人ホームで一生209番道路(夜)の曲流してたら。

博徒お嬢が一番好きです
『ポケットモンスターSPECIAL』32巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』33巻より

 もう、正直序盤あたりからずっと「お嬢の名前絶対プラチナだろ……」「逆にプラチナ以外で引っ張る理由ないだろ……」「もはやプラチナ以外に選択肢があるのか……?」と思っていました。見事的中。我、誉れ高きベルリッツの騎士として「お嬢ーーーーーー!!!!!!」と勝鬨上げました。

 冷静に考えると「もう事前に3本目に対応した主人公をセットしておいて、いい感じのタイミングでプラチナと明かす」って、すさまじくトリッキーな仕掛けですよね。

 あと、この直前にある「笑っていないと言いましたね」「あれはウソです」のくだりがめちゃくちゃ泣けるんだけど……実際に3人が別れてから個人個人で「別れたこと」を実感して泣いてるのが良すぎるんですよね。ストレートに「旅」を描かれると、本当に弱い。泣く!!!!!!!!!!

『ポケットモンスターSPECIAL』34巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』37巻より

 私の「ポケスペ経験値」の低さと鈍感さが露呈してしまうのですが、「ポケモン図鑑を手に入れた少年少女たちは“図鑑所有者”と呼ばれ、なぜか各地方を揺るがす戦いのうずに宿命的に入っていった……」のくだり、普通に「いつの間にかそういうルールになってたんだ……」と思いました。

 いつの間にか「図鑑所有者」という単語が、「運命に導かれし戦士たち」みたいな意味合いのワードになっていた。知らなかった、そんなの……。ゲームを遊んでてそこまで「ポケモン図鑑」というアイテムに特別感を感じたことがなかったから、余計に「そんなに特別なものだったんだ」感もある。

 いや、なんかマジで「ポケスペ独自ルール」って感じですよね。
 この手の「運命に導かれし戦士」や「スタンド使い」的なサムシングって、大体超常的な存在やアイテムが目印になるのに、図鑑所有者に関してはテクノロジーの産物である「ポケモン図鑑」なのが面白い。なんか……勝手にポケモン図鑑って「みんな持ってるもの」だと思ってたよ!?

マッハポケモンとチャリで並走してる人間の絵、ダイパ編で一番面白いと思ってます。
『ポケットモンスターSPECIAL』37巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』38巻より

オイラがパールとお嬢様と過ごした「時間」、旅をして回った「空間」、オイラにとってはなによりも大切な「時間」と「空間」だ。
オイラだけじゃない。この「時間」と「空間」を大切に思っている人とポケモンだから、こうしてみんなここに来たんだ。

あなたたちと旅ができて、本当によかった!

 ダイパ編の「正直長い」という気持ち、よくわかります。でも、最終決戦で出たこのセリフを見た時、「このセリフを言わせるためだったのだ」と納得できた。ポケモンと人間にとっての「時間」と「空間」の大切さを描いた旅路、それがこの物語。

 正直、「ゲームの完成度」で見た時に、ダイパって今はもう大したことはないと思います。ストーリーはSVの方が好きだし、雰囲気はBWの方が好み。デザインのカッコよさはサンムーンや剣盾の方がイカしてると思う。

 でも、ただ一点「初めてのポケモンだったから」という理由で……自分にとっての一番のポケモンは、ダイパなんです。ダイパが原点なんです。

 そんなダイパ編で、「あなたたちと旅ができて、本当によかった!」というセリフが出てくることが、ものすごく嬉しい。こちらこそ、君たちの冒険を見届けることができて、本当によかった!



第8章:プラチナ編

『ポケットモンスターSPECIAL』39巻より

 そして満を持してのプラチナ編で、プラチナ・ベルリッツ嬢が主人公に。何気にダイパ編で「極寒のシンオウ地方を延々と半袖で走り回る主人公」が原作再現されていたのも面白ポイントでしたが、とうとうお嬢もプラチナ仕様の冬服にチェンジ。あと、ハンサムも出てくる。超プラチナだぜ。

 これはもう、正真正銘の「ダイパ完結編」って感じですよね。
 ダイパ編がやたらと「仲間との旅」を推してくるのは、単純にそういう作風なのかと思ってたんですが……最後の最後に、孤独だったアカギと、ダイヤ・パール・プラチナの3人を対比させてくる。

 そしてアカギに抱きしめられたシェイミが、花を咲かせる……って、もう泣く!!! ダイパ編、自分の思い出補正を抜きにしてもかなり「泣き」に振ってないですか!? 俺リアルキッズのころシェイミの映画見に行ったんだよ! 劇場でシェイミ受け取ったんですよ……ウオオオオッ(漢泣き)

『ポケットモンスターSPECIAL』40巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』40巻より

きざむのは、キミたちの名前。
残すのは、ここに来るまでの旅の思い出。
さあ! きびしい戦いを勝ち抜いた、キミとともに戦ったポケモンたちを、シンオウの舞台に記録しましょう。

 号泣。

 今でも思い出す。シロナのガブリアスがあまりにも強すぎて、何度も目の前が真っ暗になったあの日々。なんとか勝利して、あのセリフを聞けた時の喜び。なにもかも初めてで、なにもかも忘れられない思い出になった。

 ダイパに合わせてDS Lite買ってもらったり、アニポケ毎週追ったり、ポケモンサンデーやってる日曜だけ早起きしてみたり、ダークライの映画見に行ったり、ポケカ集めたり、バトリオやってたりしたあの日々……全部、輝かしい思い出だった。うわあああああああダイパ編終わるな!!!!!!!!

 終わるなよ、終わらないでくれよ……ダイパは俺の初めてなんだ……シンオウは俺の実家なんだ……。マジ泣いちゃう。もうこのシロナのセリフだけで泣いちゃう。シンオウ終わらないでくれ!! ポケットモンスターSPECIALありがとう……ポケスペシンオウまでやってくれて本当にありがとう………。

 もうBDSPを遊んだ時の「209番道路の曲が流れただけで泣く」というエピソードで、当時体験したダイパの記憶が自分の脳内で100倍くらい盛られてるのは火を見るより明らかなんだけど……それでも「ポケスペのダイパ編」として最高の仕上がりだと思います。俺、なんで今までポケスペ読んでなかったんですかね? こんなにポケモン好きなのに?

 だから……最後にひとつ。初めてポケモンを遊んだ小1の自分よ、キミは十数年後、最高の漫画に出会うぞ!!

『ポケットモンスターSPECIAL』40巻より



第9章:HGSS編

『ポケットモンスターSPECIAL』41巻より

 なんか、段々自分の「ポケモンというコンテンツへの思い入れ」と「ポケスペへの愛着」が混じり合っておかしなテンションになってきてますね……って、ここからHGSS編に入れるんですか!?!?!?

 HGSS編、とにかくヤバい。
 もう「ヤバい」としか言いようがない。

 まずヤバいのが、ゴールドとシルバーの見た目がちょっと大人っぽくなっているところ。ゴメン、エロすぎる。しかも引き続き「ダチ公」呼びっすからね。気が狂う。打ち解けてからのゴールドとシルバーヤバいって。え、アクスタとか売らないの? なんか……ポケスペのソシャゲとか出してよ!!

『ポケットモンスターSPECIAL』42巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』41巻より

 あと、「ポケスペが積み上げてきた歴史とゲーム側の新展開が思わぬ方向で激突する瞬間に生まれる力場」もなんかすごいことになってきる。

 たとえば、「金銀当時は進化先のなかったシルバーのヤミカラスとニューらが、ドンカラスとマニューラに進化する」とか、「クリスがHGSS仕様の新衣装に着替えたけど、明らかにクリスのキャラにはあってない(ところにクリスが自分で言及する)」とか……。

 その最たる例が、サカキの持っていた「大地の奥義」に、サイドンからドサイドンへの進化方法が載っていたという描写。

 もう究極の後付けなんだけど、ここに「説得力」が乗っているのがすごい。だって……サカキ(ポケスペ)なら赤緑時代にドサイドンへの進化方法を発見していてもおかしくないじゃないか!! なんてことだ、ポケスペはゲームボーイ時代にドサイドンの存在を予見していたんだッ!!

『ポケットモンスターSPECIAL』42巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』42巻より

 そして、まさかのサカキ・ワタル・ヤナギの3ボスそろい踏み。
 ここにヤナギ混じってんのシュールすぎるよな。

 もうね、レッドのニョロボンとまではいかずとも結構印象的だった「シルバーのリングマ」に対してサカキが「当たり前だ。オレの息子が育てた」ってセリフ出してくるのが熱すぎる。ポケットモンスターSPECIAL面白すぎる! ポケットモンスターSPECIAL面白すぎる!!

 しかも、調子に乗ったサカキとワタルとヤナギが「時間と空間と世界、それぞれ私たちが支配しようとしたもの……つまりディアルガとパルキアとギラティナは私たちが相手をしよう!!」とか言い出してんのもヤバい。こんな「言ったもん勝ち」あるか? 別にお前らそこ対応してねえだろ!!

 そこから繰り出される、パルキアを抑え込むワタルのカイリュー・ギラティナを抑え込むサカキのリングマ・ディアルガを抑え込むヤナギのウリムーの絵面。ヤナギは本当に何なの??????????????????

『ポケットモンスターSPECIAL』43巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』43巻より

今さらだがよォ、行ってアルセウスをぶったおしてやれ。
ぜってーだぞ。

 正直、金銀編を読んでた時は特段ゴールドが「好きなキャラ」ってわけでもなかったんですよね。でも、金銀以降のエメラルド編とHGSS編を通して「レジェンド主人公」としての頼もしさがカンストしている感じがする。ポケスペの主人公で一番カッコいいヤツ、ゴールドだと思う。

 だってコイツ、アルセウスに向かえって「なんならおめぇの助けになってやるぜ、アルセウス!!」とか言い出すんですよ? 惚れるって! もう、HGSS編で全主人公ぶち抜いて「最も好きな主人公」になった感じがします。お前が図鑑所有者で最も海賊王に近い男!

 そして、金銀編では進化することのなかったゴールドのトゲピーが……時を超えて進化する! ここも「ポケスペが積み上げてきた歴史とゲーム側の新展開が思わぬ方向で激突する瞬間に生まれる力場」なんだけど……もうここまで来ると「奇跡」だと思う。ゲーフリがポケスペ接待してる。

『ポケットモンスターSPECIAL』43巻より
HGSS編で一番好きなシーンです
『ポケットモンスターSPECIAL』43巻より



第10章:BW編

『ポケットモンスターSPECIAL』43巻より

 「この先、強く大きく進化するんだとしたら、進化前っぽい名前で呼ばれるのってイヤだろ?」って……そんなことがポケスペで許されるのか!?

 BW編主人公の片割れ、ブラック。彼は進化後まで見越した上でニックネームをつけている。しかも、「チャオブーに進化したからチャオだ!!ポカブじゃないのにポカブだったら変だろ?」と、進化前後に合わせてニックネームを変更する。そんなのポケスペでやっていいのか!?

 おい、ブラックくん。先輩の方を見てみろ。
 MIMIと名付けられたヒンバス! 
 バクたろうと名付けられたヒノアラシ!! 
 メガトン級の根性だからメガぴょん!!!

 そんな甘えたネーミング、ポケットモンスターSPECIALじゃ許されないよ!? もっとメガトン級の根性だからメガぴょんしていこうぜ!!

BW編で一番共感したシーンです
『ポケットモンスターSPECIAL』44巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』44巻より

 BW編は、とにかく「ブラックの熱血さ」が印象深いです。
 実は私、結構熱血漢が好きなんですよ。「男ならなんでもいいの?」とか一瞬でも思ったやつ、今すぐムシャーナを派遣します。でも、こういう真っ直ぐでカッコいい主人公像にいつも心を掴まれてしまいます。

 だって、N相手に「こいつらが“オレといて不幸だ”って言ってるように見えるか!?」「ポケモンが大好きなんだからポケモンのこと知りたいって思うのが当たり前だろ!!」ってキッパリ言いきっちゃうなんて……めちゃくちゃカッコいいでしょう!? 熱い、ブラック熱いぜ!!

 さっきのDP編から逆算するとなんとなくわかるかもしれないのですが、BW(ゲーム)も小学生当時にリアタイしていました。そして、子供心に「BWの話は難しい」と思ってたんです。だから、なんというか……「世間のBWの評価と自分の中の思い入れが乖離している」というか……。

 そんなBWに対して、思いっきり「こいつらが“オレといて不幸だ”って言ってるように見えるか!?」を叩きつけるブラック。超カッコいい。むしろ、BWが舞台だからこそ、ストレートな快男児なのかもしれないですね。

 個人的に、「はなれてても、オレはあんたの会社の社員なんだぜ!社長!!」で泣きそうになりました。お前がイッシュいち気持ちのいい男。

『ポケットモンスターSPECIAL』46巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』47巻より

 サトシ、何をしちょる?

 フウロの肉感盛りすぎだって。また山本汁漏れてるよ。
 てか過去最大に山本汁出てるよ。つゆだくじゃん。
 カミツレはまだ我慢できてたよね!?

 ………………………………あ、フウロの話したかっただけです。

『ポケットモンスターSPECIAL』47巻より

 この「“夢”があるから生きていける!人間にとってもポケモンにとっても、“夢”は大事なものなんだ!!」と素面で言ってもめちゃくちゃカッコいい感じ……ブラックって最高。ストレートに「ヒーロー」って感じがする。

 やっぱり、多くの人間の思想と策謀が入り乱れるイッシュ地方だからこそ、このくらいドストレートにカッコいい主人公像がハマっていますね。このノリでホワイト社長を連れ去ろうとするNに「やめろおおおおお!!社長に触んじゃねえ!」とか言い出して取り合うのだから、もう夢小説。

 タグに「※なんでも許せる人向け」「※観覧車からの落下アリ」ってつけてほしい。なんかPixivでBWの二次創作漁ってたの思い出してきた。急な黒歴史の開示。この記事、僕と同世代の人間は全員殺すつもりで書いてます。

『ポケットモンスターSPECIAL』50巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』50巻より

 「オレの幼なじみが、親友がおかしくなっちまったのに30分も待ってられるかよ!!」って……俺がチェレンだったら泣いてますからね。ゴールドもそうだったけど、ポケスペは「男が惚れる男」の描き方が上手い。

 そしてBWと言えば「理想」と「真実」の2大テーマなわけですけど……そこに対して、ブラックの掲げる「夢」を叩きつける構成が好き。理想か? 真実か? いや、そんなことより夢がなくては生きていけない。ポケモンと人間が共存するための、ひとつの道。それが「夢」だ!!

 ……って、BWに対する回答としてかなりカッコいい気がしています。

みんな、一度は「夢」から下りた大人ばかりです。ですが、ある出会いがきっかけで「夢」を……ポケモンとともに見つめ直すことができた。

そのきっかけをくれた少年が「夢」を叶える姿を見ようと、ここに来たってわけさ。

『ポケットモンスターSPECIAL』51巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』51巻より

トーナメントの頂点に立ったあと四天王に挑む時、取材のカメラが一気に増えるって、オレ、調べて知ってたんだ。
だからそのタイミングでバッと上着を脱いでさ、「ドラマ・映画・CM、舞台から印刷物まで、『BWエージェンシー』をよろしくお願いします!!」って叫ぶつもりだったんだ。

しくったなァ……。
オレ……返せたかい?たてかえてもらった機材の代金……。
働いたのか? 社ちょ……。

 そしてブラックが社長の目の前から消え去り、物語はBW2へ……って、ポケスペ全体を見てもここまでゴリゴリに「つづく」で終わったヒキ中々ないですよね。ある意味、ポケスペ的には異質な構成かもしれないです。

 やっぱりブラックの好感度がカンストしてるから、この消滅エンドもインパクトが大きくていいですよね。機材の代金のこと最後まで忘れてないの恩義に厚すぎる。そして私(読者)の気持ち的にも「ブラックくぅぅぅぅん!!!!!」って感じで、BW2編に続く!!!!!!



第11章:BW2編

『ポケットモンスターSPECIAL』52巻より

 ここまでのポケスペの主人公はすべて「タイトル名準拠」の名前だった。しかしついに物語は「BW2」になった。え、どうすんの……と思っていた矢先、現れたのは「ラクツ」と「ファイツ」。クソッ、その手があったか。

 そしてBW2編……………面白すぎる!!!!!!!!!

 色男かと思いきや国際警察のエリート。かわいい転校生かと思いきや元プラズマ団。プラズマ団を憎むライバル。三者の思いが交差するサスペンス。こんなの面白くないわけがない。正直BW編が「いつものポケスペ」に収まってしまった感があったところで、もうゴリゴリに新機軸の面白さ。

 この「お互いがお互いの正体を知らないまま、どんどん状況がこじれていく」という面白さ……もう完全に井上敏樹ですよね? ポケスペの仮面ライダーファイズ。ポケスペの暴太郎戦隊ドンブラザーズ。

『ポケットモンスターSPECIAL』52巻より

 その上で、「国際警察ラクツのポケスペ的ストーリー」「プラズマ団ファイツの少女漫画的ストーリー」「一般トレーナーヒュウの復讐譚」の3つの軸で、それぞれ別作品のようなテイストを持っている。さらに「BW(前編)の続編」という文脈パワーも乗ってくる。ちょっ、面白すぎでは?

 個人的に、「純粋なストーリーの面白さ」では、イエロー編である種のベンチマークが出てしまったと思っていました。そこからは手を変え品を変え、「それまでとは違う面白さ」を提供してきた。でも、BW2編のストーリーは限りなく歴代トップだと思う。すげえよ……まだ、“やれた”んだな!?

 やっぱり、イエロー・クリスタル・エメラルド・プラチナ・BW2あたりのマイナーチェンジ及び続編って、「ゲーム」だから成立する見せ方なんですよね。でも、ポケスペは漫画だから、そこを扱う以上「一度冒険した舞台でもう一度ストーリーを描くダルさ」と戦わなきゃいけない。

 要するに、題材そのものが漫画向きじゃない。
 なのにBW2編は完全に乗りこなしている! カッコいいぜッ!!

ラクツの手持ちにゲノセクトとケルディオいんのカッコよすぎるよね?
『ポケットモンスターSPECIAL』54巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』55巻より

 あと、BW2編って……明らかに対象年齢ちょっと上がってますよね?
 なんか連載中に掲載紙が移動したとかは聞きましたけど、言うてこれまでのポケスペって「子どもたちが読むもの(児童誌で連載されているもの)」としての一線を引いているような感じがしました。

 ただ、BW2編はそこをぶっちぎっている気がします。
 特にアクロマ戦の「アクロマの命令からゲノセクトのわざ発動までラグがあることに気づく」→「オーベムがリモコンの操作可能範囲内でアクロマシーンを持って逃げ回る」→「アクロマはラクツにミスリードを仕掛けるためにわざとリモコンを捨てた」という読み合い合戦なんか、もうハンターハンターじゃん。「手持ちが念能力に直結する異能バトル」とはよくいったもの。

 その表現の枷が取れた代償なのかなんなのかわからないけど、いつもの伝説ポケモン大暴れコーナーでも「キュレムが各地の都市を氷漬けにしていく」という過去最大級の災害が起きる。これ普通にイッシュ滅亡だよね。

『ポケットモンスターSPECIAL』53巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』54巻より

 そして、ブラック・ホワイト・N・ラクツ・ファイツの集結。
 もうここが一番「こんなんやっていいんか?」度がすごい。

 あまりにも色々ありすぎて「前作主人公たちと今作の主人公たち」では括れないような関係性になってるんですけど……実のところ「夢」というテーマが共通している。ここも上手い! BW、やっぱり「夢」なんだよ!!

 あと社長の距離感の近さにブラックがドキドキしちゃってるのが最高……絶対性格的にはブラックの方がリードしそうなのに……ポケスペの「恋愛なのか何なのかよくわからん男女関係」が一番好きや……………

『ポケットモンスターSPECIAL』54巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』55巻より

「なんかよくわかんなくなるから、名前で呼んだ方がいいですよね。
じゃあ、もしいつかどこかで会ったら、名前で呼びますね。」
「もし仮に会ったとしても、ボクはもうラクツという名前ではない。それにきっと、ボクだとはわからないだろう。」
「そ…うなんです…か。」

「いつかじゃなくて、今ここで呼べばいいんじゃない?」
「ファイツちゃん。」

「そうだね、ラクツくん」
「卒業式始まるね。講堂に行こ。」

 そんなに学園要素強くなかった気がするけど、いざ「卒業式」を描かれると……結構グッと来てしまう。もう「ストーリーの完成度」で言えば、間違いなく歴代トップだと思います。ポケスペの「極地」を見てしまった。

 ストーリーの密度が濃密すぎて、なんだかラスト付近の卒業式すらドタバタして終わっていくのがちょっとBW2編っぽさを感じる。実際何年にも渡って連載されていたとは聞いたけど、「よくこれを描き切ったな」という称賛の気持ちが湧いてくる。そういう意味ではポケスペのキメラアント編か?

 そしてあまりにも連載が長引いた弊害なのか、自分の視点ではカロス地方にも突入してないのにアクロマの口から「アローラ地方」の名前が出てくる。いやこれ一足飛びすぎるって! 先取りしすぎじゃない!? 

『ポケットモンスターSPECIAL』55巻より



第12章:XY編

『ポケットモンスターSPECIAL』55巻より

 ごめんなさい、歴代で一番好きな主人公エックスで確定です。

 もうね、こんなん出されたら逆らえんのよ。引きこもりで+100点、性格が終わってるで+100点、その癖ワイちゃんに引っ張られてるだらしなさで+300点、戦闘時だけキレるカッコよさで+500点の、計1億点です。もうこれエックスとワイだけファイナルファンタジーの空気なんよ。

 しかも、ポケスペ恒例の「御三家以外の相棒枠」に来るのがメガガルーラ。「ニョロボンの枠にメガガルーラを持ってくる」を思いついた時点で、ポケットモンスターSPECIALの勝利だと思う。

『ポケットモンスターSPECIAL』55巻より

 あと……正直、ポケスペって「原作がアレになってる時の方が面白い」傾向ありますよね。XY編は、特にその気が強いと思います。あんな感じ(あんな感じ)になっている原作に対して、「天岩戸状態のエックスをみんなで取り囲んで団体行動する」というフォーマットを思いついてくるのがすごい。

 その上で、メガガルーラの圧倒的な強さによって「エックスが出陣すれば勝ち」の水戸黄門的なストーリーも描ける。だからもう、「フォーマットで勝った」感がすごいんですよね。「原作もこうすりゃよかったのに」のオンパレード。日下秀憲、アンタ天才だよ。

 なんか、ここまで来るとシンプルに「次の地方はどういうアプローチで来るんだろう」という大河ドラマ的な楽しみ方になってきました。「XYって原作あんな感じだしどうするんだろう……」「こう来たか!」の楽しさが、完全に「紫式部の大河ってどう調理すんねん……」「こう来たか!」と同じです。

『ポケットモンスターSPECIAL』58巻より

 なんかさっきも似たようなことを言った気がするけど、学生の頃にポケスペを読んだら絶対にエックスになろうとしてたと思う。ポケスペで一番共感できる主人公はエックスです。「エックスになろうとしてたかも」って自分で言って自分で心がザワザワしてきた。

 ただ同時に、エックスは「ワイがいて初めて成立するキャラ」になってるのが良いんですよね。エックスひとりでは、そもそも物語が始まらない。まさに「こういうヤツの隣に置いておくのはこういうキャラ」のド真ん中になっているというか……ポケスペの朝比奈まふゆと東雲絵名っていうか……。

 なんか、この関係なのにエックスはずっとワイのこと「ワイちゃん」って呼んでるのヤバくないですか!? なんなの!? 「ワイちゃん」呼びが一番の“萌え”じゃん!? エッPとワイPの関係が最萌えだよッ!!

『ポケットモンスターSPECIAL』56巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』59巻より

 実のところ、ポケスペには「原作だと描き切れなかったストーリーは、実はこういう感じだったんじゃないかな?」という本来の完成形っぽいものを提示してくれる(ような)魅力があるんじゃないかと思ってます。

 特に、赤緑~金銀はその辺が顕著だった。ゲームでは描き切れなかったストーリーではこんなことが起きていて、実は登場人物はこんなことを考えていた。そんな「補完以上、オリジナル未満」のことをしているのが、ポケスペだと思っていました。そして、XY編はとうとう「完全版」になっている。

 あの幼なじみ5人に好感を持てて、コルニとカルネはしっかり印象的な活躍をして、フレア団の怖さはガッツリと強調され、AZの過去エピソードも上手い具合に絡んでくる……なんかもう、「自分が見たかったXY」がそのまま出てきちゃってるんですよね。俺のXYの思い出が綺麗に舗装されていく。

 だって「スカイバトル」も上手いこと回収してくるんだよ!? すごくない!? 俺が漫画家だったら「スカイバトルをどうにか作劇に組み込んでくれ」って言われたら発狂してるよ!? なんか、レジェンズZ-Aのハードルが勝手に上がってしまうほどの完成度だと思います。

『ポケットモンスターSPECIAL』58巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』59巻より

 あと、XY編って明らかに「鋭さ」が戻ってきてるんですよね。
 全体的に、エゲつない。ドラスティック。そしてなんか暗い。

 ある意味、『ポケットモンスターSPECIAL』という漫画自体、赤緑~ルビサファでいろんな意味で頂点に辿り着いてしまった。そこからはちょっと丸くなった……と思いきや、ベテランになったBW2~XYで逆に全盛期の鋭さを取り戻してきた。李書文と同じタイプのサーヴァントかな?

 特に人間の顔をカイロスで思いっきり挟むシーンなんか……「ヨッ!お家芸!!」って感じですよね。これがポケスペだよ。これが伝家の宝刀だよ。

 この「XY編のエゲつなさ」って、シンプルな描写のハードさだけでなくて、「展開のエグさ」にも繋がってるんじゃないかと思ったりします。

 「ボールを破壊するのではなくそもそもボールをジャックしてポケモンごと強奪する」、「安全地帯だと思われたポケモンセンターに戦闘員を置く」、「山間部一帯にさいみんじゅつを使う広域睡眠」って……もうトラウマもんでしょ。ポケモンというゲームから考えられる一番エグい戦い方を手当り次第やってる感じがします。ジャックナイフ時代のポケスペが帰ってきた。

『ポケットモンスターSPECIAL』60巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』60巻より

 そして現れる俺たちのグリーン。
 えっ、ポケスペ終わらせる気なんですか?

 ゲーム外の派生コンテンツでXY(カロス地方)を扱う時、必ずといっていいほど重要になってくるのが「リザードンのXメガシンカとYメガシンカをどう調理するか」。そしてポケスペでは、「エックスがXリザードン」で「グリーンがYリザードン」という解答を出してきた。もう、パーフェクト。

 どちらかというと「リザードン本来のメガシンカっぽい(赤緑テイスト)」雰囲気のあるYをグリーンに持たせ、新機軸なXをエックスに持たせる。これ以上のベストチョイスがあるか? 何気に、これもかなり「ゴールドのトゲピーがトゲキッスに進化する」に近しい奇跡だと思います。

 これって当たり前のことなのかもしれないけど、XY編って「メガシンカ」という要素の扱い方も上手いんですよね。あの「メガシンカは1人につき1匹まで」というゲーム的な縛りを強調することで、ラストバトルでの5匹同時メガシンカがめちゃくちゃ際立っていると思います。

 あと、フラダリ戦でエッPがガルーラとライボルトとゲンガーを同時に繰り出して「どいつをメガシンカさせる?」的な心理戦を仕掛けた上で、最終的に「メガシンカしても見た目が変わらないメガガルーラで奇襲」戦術を見せてくるのが、もうベテランの職人芸ですよ。一生ポケスペ描いてくれ。

『ポケットモンスターSPECIAL』61巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』61巻より

オレも…、今でもオトナが怖い。知らない人が怖い。
知ってる人だって、今日、親しげだったからって明日もそうとは限らない。だからオレは、家から出られなくなった。

目標もなくなった。夢もなくなった。なにかをがんばる元気もなくなった。
オレにはなんにもない。本気でそう思った。

そうなって5年がたったとき、アサメがゼルネアスとイベルタルに襲われた。出るもんかって決めてたのに、出ざるを得なくなってしまった。旅に出てからはもう、すべてが最悪だった。ずっとフレア団に狙われて、安心して眠ることもできない。それでやっとわかったんだ。

オレには、なんでもあったんだって。
家があった。部屋があった。食事もあった。
友達がいた。そして…ポケモンがいたんだ。

みんな…、こんなオレが外に出てくるのを待っててくれた。
閉じこもる前と変わらず接してくれた。

 エックスには、「こんなキャラの引き出しもあったんだ」という率直な驚きがあります。天才キャラかと思ったら引きこもりで、引きこもってると思ったら意外と頑張り始めて、頑張り始めたと思ったら追い詰められて嘔吐して、マチエールの過去に涙を流すことができる。

 限りなく、人間臭い。しかしそれでも諦められない、人の美醜を持っている。人間のダサさとカッコよさを、これでもかと詰め込んだキャラだと思います。ある意味、ポケスペで全く見たことのないキャラ造形でした。

 このお話は、最初から何もかもが奪われていた。平穏、故郷、友達、家族……何もかも、奪われたところから始まった。しかし実のところ、何も失ってなんかいなかった。文字通り、最初から「なんでもあった」のだと。エックスのそばには、ずっと「ポケモンと友達がいた」のだと。

『ポケットモンスターSPECIAL』61巻より

 XY編のすごいところは、「裏で何が起きようとカロスで暮らしてる人々は割と無関心」を貫き通したところだと思います。エックスたちの戦いは、世界を救ったけど、誰かに讃えられるわけでもない。むしろカロス地方を救って、ようやく「いつも通りの日常」が始まった。

 全部に決着がついて、ようやく「始まる」物語。
 ずっと止まっていたエックスの世界が、ようやく動き始めた。
 すべてが壊され、すべてが奪われたアサメタウン。
 そして物語の最後に、またアサメタウンからすべてが始まる。

 同時に、「みんなが大人になるまでのお話」だったのかなと思ったりしました。旅を終えて、少年はちょっと成長した。忘れられない思い出を携えて、また……これからの旅に向かって進んでいく。いつか背が伸びきっても、いつか大人になっても、きっと君は予想以上の夢に出会う。

 XY編、ポケスペ史上最高傑作だと思います。



第13章:ORAS編

『ポケットモンスターSPECIAL』61巻より

 ……って、ここからORAS編に入れるんですか!?!?!?
 このくだり何回やるんだ?

 実際、ルビサファ~エメラルド編を読んだ時に感じたことは「ルビーとサファイアの関係に決着をつけてから終わるとねーーーーーー‼️‼️‼️‼️‼️‼️」でした。あの気持ち、十数年越しに回収される時が来たのか。

 そして……やっぱり面白い。ポケスペはリメイクが来ると「のびのびやってる感」がすごい。ルビサファ編では作劇上なんとも言えない扱いになってしまったレックウザにフィーチャーしつつ、「世界が終わる」というアルマゲドン的なストーリーを描いてくる。のびのびやってんな!!

メガラティの「おおぞらをとぶ」要素、ポケスペ読むまで完全に忘れてました
『ポケットモンスターSPECIAL』62巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』62巻より

 そして登場、ヒガナ。ポケスペのヒガナ……もう何もかも「後付けの塊」みたいな存在ですごいですよね。「グラードンの目覚めを手引きした女」もそうだけど、個人的にはヒガナのメガボーマンダが「幼少期のルビーと戦ったボーマンダと同じ個体(そしてあの時ヒガナはボーマンダを解放しようとしていた)」だと明かされるのが面白かったです。

 な、なにーっ! ポケスペは10年以上前にORASが発売されるとわかっていたのかぁっ!! やっぱり日下秀憲はすげえや!! もう騙されんぞ?

 からの……溜めて溜めて大ゴマで「想像力が、足りないよ……」。もう読んでて「キタアアアアアア!!!!!」って叫んじゃったけど、実際エピソードデルタのアクの強さを見事に作劇に組み込んでいるのだから恐れ入る。

『ポケットモンスターSPECIAL』64巻より
『ポケットモンスターSPECIAL』63巻より

 「グリーンがカロスに行っているから、俺たちはホウエンに参戦だ」とでも言わんばかりのレッドとブルー参戦、粋すぎるでしょう。流石にもうレッドさん空条承太郎を超えてる気がする。選手人生の長さ的な意味で。

 そして、DP・BW・XYを経て徐々に薄まっていった「図鑑所有者」の概念がORASでまたしても復活している。他のキャラが一般常識のように「フッ、流石は図鑑所有者……」みたいな顔し始めるのやっぱ異様だって。カロス地方にそんなヤツいなかったけど!? 明確に「空気」があるよね!?

 そのままの勢いでサカキも参戦してきて、もうめちゃくちゃ。当然のように「デオキシスと言えば……サカキとレッドだよな?」「そしてエピソードデルタはデオキシスだよな!?」みたいな展開をぶん投げてくるけど、「デオキシス=レッドとサカキ」の方程式が成立するのポケスぺだけだよ。

『ポケットモンスターSPECIAL』64巻より
『ポケットモンスターSPECIAL Ωルビー・αサファイア』3巻より

「ごめん…、ルビー。」
「あたしが預かってた天体ショーのチケット…、海に落ちたり…いろいろしてるうち…ボロボロになってしもて。そやから…、2人で見に行けんように…なった…。」

「……。チケットなんていらないさ」
「ごらんよ。」

「…うれしか。」
「最後の一瞬まで…いっしょにおれて…。」

 「……一緒に……、ミシロへ戻ろう?」でも思ったのですが、サファイアのルビーに対する気持ちって、「好き」とか「愛してる」とかより、もっと純粋な「一緒にいたい」という気持ちが大きい気がします。そもそも大切な人なんて、ただ一緒にいてくれるだけで充分だったりする。

 ORAS編の最初に「もしも10日後、あなたの住む星が星ごと消滅してしまうとしたら。最後の10日間……あなたは誰と何をしますか?」という質問が書かれていた。それに対する答えが、「一緒にいたい」だったのかなと。

 しかもそれは、ルビーも同じ気持ちだった。
 これ、完全に決着がついとるとね~~~~~~~~!?!?!?

ボクと宇宙に行ってくれ!
最後の一瞬までキミといっしょにいたいんだ!

『ポケットモンスターSPECIAL』64巻より



第14章:サンムーン編

『ポケットモンスターSPECIAL サン・ムーン』1巻より

 ここで、ポケスペの独特すぎる「連載形態」に困惑した。

 一度ORAS編に区切りがついたのはいいけど、なんと「64巻」で終わっているではないか。あれ? でもサンムーンと剣盾も出てたよね? よくよく調べてみると、「連載長期化などのいろいろな理由があって、通巻版と各章の単行本は別個になっている」ことが発覚した。そうなんだ………………。

 さすがに不安になり、ポケスペに詳しい友人に「これって続き読みたいなら通巻版と別個の『ポケットモンスターSPECIAL サン・ムーン』を買えばいいんですよね?」と連絡をしたくらい、この独特な連載形態に困惑した。

 まぁ、これも10年くらいしたら「あぁ、この時はまだ通巻版でサンムーンの話始まってなかったんだね」と懐かしくなるエピソードかな。一応、2024年4月頃の話です。いや、65巻出るまで待ってもよかったんだけどね!? もう我慢できなくなってORAS編のラストだけ単行本買ったんだわ!

『ポケットモンスターSPECIAL サン・ムーン』1巻より

 そしてここで明確に感じ始めたのが、「ポケスペの苦戦」

 そもそも、ポケスペは「原作の余白」を上手いこと活かし、ほぼオリジナル作品を作り上げてくるのが面白いところだった。しかし、サンムーンは原作の時点で、キャラも舞台もハッキリと決まっている。

 結果としてポケスペのサンムーン編も、「原作をコミカライズしたもの」以上の印象がない形に仕上がっているように見える。いわゆる「ポケスペ味」が、全然足りない気がする。要するにこれって、原作の段階で「ポケスペ的な改変を挟める余白」が減ってしまったのではないだろうか。

 しかしこれ……「誰も悪くはない」のが頭を抱えるところでもある。

 そもそも、ゲーム及びハードのスペックが進化するにつれて、「ゲームの表現力」は上がってくる。結果として、ゲームの「想像力に委ねる部分」もどんどん少なくなっていく。よりリアルに。よりハッキリと。技術の向上に比例して、ゲームの世界は鮮明になっていく。

 そしてポケモンも、いつの間にかドット絵から脱却した。世界が3Dで描かれるようになったXY。表現力の進化を活かし、キャラクターをアニメのようにしっかりと描いたサンムーン。視点が変わったりオープンワールドになったりした剣盾とSV。その進化に反比例し、余白は減る。

 これでもポケモンはかなり「想像の余地」を残している方だけど、「オリジナル」をやりづらくなっているのは確かだと思う。ポケスペの「実は原作はこうしたかったんじゃないか?」という補足とオリジナルを提示するやり方に対して……そもそも原作の時点で鮮明に描けるようになった。

『ポケットモンスターSPECIAL サン・ムーン』5巻より

 この「ポケスペの苦戦」……原作における余白の減少以外にも、いろいろな理由が考えられる。これはBW以降で顕著なんだけど、明らかに原作の時点で「しっかりキャラクター性が固まっている人物」が多くなっている。

 たとえば、サンムーンを漫画化するにあたって、「リーリエとルザミーネを登場させない」ということは考えられるだろうか? いや、流石にそれはない。そしてアローラ地方を描く以上、ルザミーネを敵対キャラクターとして描く必要がある。こうなると、オリジナルを挟める余地が減ってくる。

 要するに、サンムーンで「実はヤナギがラスボス」は許されないのだ。これは剣盾やSVにも言える。ガラル地方を描くにあたって、「実は黒幕はローズ委員長じゃなくてキバナ」なんてことは、原作から逆算して不可能なのだ。でも、ポケスペのファンとしてはそれを求めてしまう。

 こうなってくると、ポケスペ側で「ポケスペ味」を挟めるポイントが、もう「主人公」くらいになってくる。そして実際、サンムーン編は「舞台がある程度固まっているアローラ地方にオリジナル主人公(PL)を投入する」という、TRPGリプレイ的な面白さはあると思う。

『ポケットモンスターSPECIAL サン・ムーン』6巻より

 あと、「原作のふわっとしている部分を補完する」点は変わらず一級品だと思います。まぁ、ゲームの表現力上がったとはいえ相変わらずポケモンってふわふわしてる部分多いから……。特に、100%ジガルデをXY編と繋げる形で「ジガルデはエネルギーの監視者→UBとカプが激突してエネルギーが集中するアローラにやってきた」と理由付けしてるのはすごい。

 そして、その技術がそのまま活きているのが「原作にはないセリフを使って、キャラクターをさらに深堀りする」という技。原作でガチガチにキャラを固めてきてるなら、もういっそのことポケスペ内で勝手に深堀りしてしまえばいいのでは!? ポケスペ、考えたな?

 個人的にはグズマのエネココアの話が好きですね。このテキスト量でアローラ地方の構造的な問題に切り込めるのは、やっぱりポケスペの強みだと思います。アローラってやっぱ終わってるわ。

「マズいエネココアだ。」
「だが、アローラで飲めるエネココアはこれ一種類だ。アローラにいる限り、このエネココアを飲むしかねえ。」

「おいしいエネココア…、飲んだことあるの?」
「おまえのじいさんによその地方へバトルの練習試合に行かされたときにな。」

「この4つの島ん中で一生が終わんのかって思うとゾッとする。」
「ガキの頃から知った顔ばかりで、そいつらが『ふつう』に暮らしてアローラの『ふつう』を押しつけてきやがる。
そして…、自分の力だけでアローラの『ふつう』にノれねえヤツらはいたらいけねえみたいに扱いやがるんだ。」

『ポケットモンスターSPECIAL サン・ムーン』6巻より
『ポケットモンスターSPECIAL サン・ムーン』4巻より

 あと、リラの「実は国際警察の一員で、ウルトラホールを通って平行世界からやってきた“Fall”でもある」って設定めちゃくちゃポケスペオリジナルっぽいのに……普通に原作準拠なのが面白い。やっぱ原作がポケスペに寄ってきてる節はあるってこれ!!



第15章:剣盾編

『ポケットモンスターSPECIAL ソード・シールド』1巻より

 とうとうラクツとファイツを超える逸材が現れたか。

 「剣創人」は百歩譲ってわかる。「盾シルドミリア」て。
 
これは……「ソード」と「シールド」じゃダメだったの!? えっ、「ソッド」「シルディ」と被るから……? でもシルドミリアはすごいな!!

 でも、しーちゃんメチャクチャかわいいですよね。
 「ポケスペ好きな女子ランキング」を作ったら、普通に盾シルドミリアが1位かもしれません。次いでファイツとイエローかな。未だに人気の根強い剣盾女性主人公に「ひたすら声がデカい」というキャラ付けなのが良い。

『ポケットモンスターSPECIAL ソード・シールド』2巻より
『ポケットモンスターSPECIAL ソード・シールド』2巻より

 ただ……やっぱりサンムーンに引き続き、「どこまで本家に則り、どこまでオリジナルにするのか」の苦戦は感じますね。いや、剣盾は特に難しいと思うんだけどね! 舞台もキャラも一番オリジナルにしづらいよね!!

 だからやっぱり、ガッツリ改変よりかは「オリ主人公で独自の味付けをしつつ原作キャラの補完をする」的な方向性になってる気がします。たしかにこの方が原作ファンを蔑ろにしないから間違っていないんだけど……要は、「俺が見たいのは原作の副読本じゃない、『ポケットモンスターSPECIAL』という本家以上でも以下でもない漫画作品なんだ!!」ということです。

 最初は「人気のポケモン漫画」くらいのノリで読み始めたけど、いつの間にか『ポケスペ』という作品自体のファンになっていた。だからこそ思ってしまう。だからこそ言いたい。俺が見たいのは『ポケスペ』なのだと!!

『ポケットモンスターSPECIAL ソード・シールド』7巻より

 とか言いながら、いざ読み終わったら剣盾編大好きになってました。

 ある意味、自分の中では歴代で一番不思議な読後感なんですよね。どこか明確に「ここが面白い!」と刺さったポイントがあったわけではないのですが、いつの間にか「良かった……」という気持ちにさせられていた。

 エースバーン・インテレオン・ゴリランダーの3匹同時キョダイマックスも熱いし、なによりポケスペ恒例の「主人公やジムリーダーが全員集結するラストバトル」という展開が、ゲーム側の要素であるダイマックスレイドバトルと噛み合ってるんですよね。フッ、ようやくゲームがポケスペに追い付いたか? あと、DLCの合流のさせ方も上手かった。

 なんか……終わってみて初めて「ああ、俺って結構剣盾編気に入ってたんだな……」と気づくようなストーリーだった気がします。

『ポケットモンスターSPECIAL ソード・シールド』7巻より
『ポケットモンスターSPECIAL ソード・シールド』7巻より

みんな、似たようなこと聞くね。
なんで、許せるんだ?とか、なんで、怒らないんだ?とか。

あたしの声、尋常じゃなく大きいでしょ? ちっさいころから親にも「恥ずかしいみっともない」って言われて、でも、生まれつきだし、治せないし。
声のせいで友達もできなくて、できても「家族から、あんな下品な子と遊ぶのはやめなさいって言われたから」って離れてって。

そーちゃんが最初だった。同じ年頃の子で初めて会ってから今まで、あたしの大きい声イヤがらなかったの。生まれつきで、自分でどうにもできないことにひどいこと言ったり、のけ者にするようなこと、そーちゃんはあたしにしなかった。

だから、あたしもしないことに決めた。そーちゃんが他人の気持ちをうまくくめないのも、あたしの声と同じかもしれないから。

 そーちゃんとしーちゃんって、ちょっと変な人なんですよね。
 ちょっと……? いや、だいぶ変な人かも。
 名前も変だし、人としてもかなり変。

 そんなふたりが、夢を叶え、自分なりの居場所を見つけた。そんな落としどころが、なんだかすごく良かった。一見のんびりしてる剣創人と、一見バリバリ元気そうな盾シルドミリア。でも実はそれなりの悩みがあって、それなりの夢と目的があった。それが叶うまでのお話。

 多分そこに英雄とかはあんまり関係なくて……だからこそ、「もう英雄はいらない」ってオチなのかなと。剣盾にこのオチを持ってくるのが、なんかオシャレ。ちょっと大人な感じがする。剣盾編、じわじわいいよね。

『ポケットモンスターSPECIAL ソード・シールド』7巻より



第16章:SV編

『ポケットモンスターSPECIAL スカーレット・バイオレット』1巻より

 とうとう、ここまで来たぞ!!
 
まぁSV編は全然完結してないので、とりあえず「1巻の感想」ですね。

 と、その前に。実は私、ポケスペの「特に大好きな演出」があるんです。それが、「その章の終わりに、次の地方の匂わせをする」という演出。

 多分ルビサファあたりからやってるヤツだとは思うんだけど……剣盾編のラストで、そーちゃんが「別の地方には自分の力で身具を作るポケモンも居るらしい」と言ってカヌチャンのシルエットが出たところで、なんかすごいグッと来ちゃったんですよね。あの「繋がった感」というか。

 これ、ゲームじゃ絶対できない演出だと思う。なんかもう……ポケットモンスターSPECIAL未来永劫続けッッッしか言えない! ポケスペ最高!!

『ポケットモンスターSPECIAL ソード・シールド』7巻より
『ポケットモンスターSPECIAL スカーレット・バイオレット』1巻より

 1巻分しか見てないけど……やっぱりスカーレット・コイトがめちゃくちゃいいですよね。そうだよ、これくらいアクの強い主人公を待ってたんだよ!

 SVも剣盾に負けず劣らず話をイジりづらそうだと思ってたんですけど……バイオレット王子がペパーと組み、スカーレット・コイトがネモと組む前提でキャラを作ってそうなのがポケスペの技巧ですよね。その上で、ボタンは両者に干渉してくる。おい、SV編めちゃくちゃやれてないか!?

 そして、これからは私も「ポケスペをリアタイで追う読者」の1人というわけですね! SV編、めちゃくちゃ楽しみにしとります!! あ、あとできればBDSP編とレジェアル編もやってほしい……日下秀憲と山本サトシそれぞれ3人くらいに分身してポケスペ作ってほしい………………。

『ポケットモンスターSPECIAL スカーレット・バイオレット』1巻より



おわりに

『ポケットモンスターSPECIAL』2巻より

 こんな長い記事、最後まで読んでいただきありがとうございました。
 いや、長すぎますよね。本当はもっとスッキリさせる予定だったのに。

 私、『ポケットモンスター』というコンテンツが大好きなんです。
 だから人生の大目標として、「ポケモンの終焉を見届けたい」というものがあります。まぁポケモンって余裕で100年は続くコンテンツだとと思うんですけど……長生きしたら、ワンチャン「終わり」を見れるかもしれない。

 そういう意味で、「ポケモンとは心中してやろう」と思ってるんです。この「心中したいコンテンツ」って、あればあるほど人生を彩ってくれるものだと思うのですが……ポケモンは、特にそう思ってます。

 そして、ポケスペも「心中したい」と思えました。

 できれば、ポケスペを最後まで見届けたい。この何十年と積み上げてきた物語がどこに向かうのか、見届けなければ自分が死ぬに死ねない。小学生の時に始まった自分のトレーナー人生の中で、「見届けたいもの」がひとつ増えたことが……すごく嬉しい。

 だから、『ポケットモンスターSPECIAL』が未来永劫続き、終わるとしても最高のエンディングを迎えられることを願って、この記事を終わります。『ポケットモンスターSPECIAL』、最高の作品でした。

公式サイトより

 いつか、この感想も加筆したいですね。BDSP編とか、レジェアル編とか、SV編の完全版とか、レジェアル編とか、Z-A編とか、レジェアル編とかレジェアル編とかレジェアル編とかレジェアル編とか……………………。

 では、またいつの日か!
 ゆめと ぼうけんと! 
 これからも続く ポケットモンスター SPECIAL のせかいへ!
 レッツゴー!