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よもぎと小さな友だち 4


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すてきな場所に立ってるね。

そこからは何が見えるんだい?

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「空が星たちでかざられているのと、同じだね。」


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きっとこの場所や生きものが好きなひとが、大切にしてきたものなんだろうね。

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「あの像まで行ってみようよ。」

君はそう言うやいなや、自慢の足で風のように走り出した。

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「飼い慣らすことはできるかな?

 一生のお友だちになれる?」

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ぼくが飼い慣らすってどういうことだろうと
像をじっと見ながら考えていたのだけど、

そんなことはお構いなしに、君の好奇心はどんどん出てくる。

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「しーっ」

周りにあるものを吹き飛ばすくらいの、花火より大きな音。

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君の好奇心が溢れる音じゃないかな。僕はそう思うよ。


そしてまた風になって走り出した。

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これは火山っていうの?

「ぼくは火山を三つ持っていて、毎週すすはらいをするんだ。

 二つは活火山で、一つは休火山なんだけど、

 いつ爆発するか、わからないからね」

君は火山に詳しいんだね。まるで火山の先生だ。

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情熱のこもった講演が終わると、今度は耳を澄ませる。

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どこからかざーざーと聞こえてくるね。

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行こう行こう。滝ならすぐそこだよ。

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「水は、心にもいいものかもしれないな…」

君は火山の先生でもあるし、詩人でもあるのかもしれないね。

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次は近くの洞窟へ。

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風になれる君なら、ここは気にいるかもしれないよ。

洞窟を滑って、

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その先は、白い砂浜に広い海。

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「この島のいちばん高いところまで、つれていってくれる?」

もちろん。

ぼくは君をおんぶするから、しっかりぼくの頭を掴んでね。

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そういえば、ここには大きな鯨がいるのだけど、

今ごろどこを泳いでいるんだろう。

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しゅっぱつ!

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島の周りをまわりながら、

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ぼくのお気に入りの場所に少しだけ寄り道して、

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ほら、ここがてっぺんだよ。

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ぼくらのために用意されたような

ふたり分の椅子に座って、少し休憩。

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波の音をゆったり聞いていると、君がぽつりと話しだした。



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「知ってるかい…?
 『飼い慣らす』ってどういうことか。

 
 それはね『仲良くなることだ』って、
 キツネが教えてくれたんだ。」


そうか、あの時見た大きいお魚さんや、像の生き物と、
君は仲良くなりたかったんだね。


すると君は勢いよく立ち上がって、

海の向こうを指さした。

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島々に響き渡るような歌声が聴こえて、

大きなマンタがぼくらのいる島めがけて飛んできたんだ。

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そしてマンタは、高い高い山の岩肌を滑るように登って、

さらにさらにずーっと空の上へ。

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そしてまた歌いながら海の向こうへ飛んで行った。

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ぼくらはあの時同じ気持ちだったんだ。
何も言わずグータッチするくらいに。

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君は鳥たちを呼んで、

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そしてぼくに大切なことを教えてくれたんだ。

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「仲良くなったら、おたがいに、離れちゃいられなくなるんだ。

 
 十万もの子どもたちの中で…

 ぼくにとって、きみが、この世でたったひとりになって。


 きみにとっては、ぼくが、かけがえのないものになるんだ。」




そう言うと君は、また鳥と一緒に、
ゆっくりと旅に行ってしまった。

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またね。

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バラさん、

あの子はたくさんのすてきなものを知ってるんだね。

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ぼくがバラにそう言うと、得意げにぼくを思い出の光で包んでいく。




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思い出は傷で、

同じ傷でも

疎ましく思ったり、

美しく思えたりする、

きっとそういうものなんだ。






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