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よもぎと小さな友だち 7



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暗闇の中ギラギラと輝いているけれど、
あの光は僕らにとってあまりにも強すぎる。

そして魅力的にさえ見えてしまう。
そのたもとの闇さえ霞めてしまうほどに。

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山から吹き下ろす風は、行く手を阻もうとしているけれど、

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君はあの素早い足で進んでいく。

必死に追いかけたいけど、
ぼくのケープが風を受けてうまく進めない。

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誰かの骨が転がっている。

ぼくは似たような場所を知ってるから、なんだか怖い。

でも、そんなところを君が独りで進んでしまうのがもっと怖い。

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待って、待ってよ。

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やっと、やっと追いついた。

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君はブルブルと寒そうにしていた。
ぼくは大急ぎで誰かが残した焚火にろうそくを近づける。

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しんとした星空の下、寂しい景色の中。

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そんなところだから、君に追いつけていっそう良かったよ。

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「きみに、おくりものを一つあげる…。」

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君はそう言って、ぼくの不安を払うように、

大声で笑ってみせた。

「これが、今言ったおくりものさ。」

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「ぼくは、今夜、うちに帰るよ…。」

君は凍えているのか、疲れているのか、言葉を選んでいるのか、
ともかくゆっくり教えてくれたんだ。


「あの星のなかの、一つに住むんだ。
 その一つの星のなかで、笑うんだ。

 だから、君が夜、星をながめたら、
 星がみんな笑ってるように見えるだろう。」

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「ぼくのうちは、ずっとずっと遠くて…、
 帰るのはとっても大変なんだ…。」

静かな夜の底で、小さな君の声がリンと響く。


「きっと、とっても怖い思いをするだろうな…。」

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「だからね、きみは来ちゃいけないよ。」

君がこんなに強く、はっきり、僕に言うのは初めてだった。

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「夜になったら、星をながめておくれよ。」

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「きみは、星のうちの、どれか一つを、
 ぼくの星だと思ってながめるんだ。

 すると、きみは、どの星をながめるのも好きになるよ…。


 星がみんな、きみの友だちになるわけさ。」

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君は疲れきって寝てしまった。

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一人になると、自分のものに成りきれない考えが頭の中をモヤモヤと歩き回ってしまって、どうにもならない。

ぼくも眠ることにした。

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どれくらい寝たのだろう。

少し寒気がして、僕は目を覚ました。

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その時にはもう、焚べた火も

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君の姿も無くなっていた。

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あの光に向かって行ったんだと思って、

ぼくはまた向かい風の中、一人で君の後を追った。

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遠くに見えたのは、小さな君の姿と、

山の影に溶け込む、暗黒竜。

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それがどれだけ恐ろしいか、懐かせることができないか、

ぼくは知ってるけれど、君は。

必死で君の元へ走る。

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けれど、まるで、当然のようにあの子と話すように、リン、リンと君の声が聞こえてきて。

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君は立ち上がると、スタッと壁から降りて、

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またあの光へ向かって歩き出した。



あそこに何があるのか、その先に何があるのか、

ぼくは最後まで知っている。

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君が心からそうしたいのなら、ぼくは止めることはできない。





でもね、

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君がいつか星のなかで笑ってくれるとしても、



君との約束を守って、
ここで君を見送る自分を許せるほど、

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ぼくは、強くないんだ。


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信じて待ってて。








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