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よもぎと小さな友だち 5





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夜の砂漠の真ん中で、君は困った顔をして座りこんでいて、
そんなふうだから、ぼくはなんだか不安になって駆け寄ったんだ。

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君に手を引かれお庭に入ると、かくれんぼした時には可愛らしく咲いていた花たちが、闇の花に蝕まれ小さくしぼんでしまっていた。

「たいへん、花たちの空気が足りないんだ!」

それじゃ急いで花たちを助けないと!

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ぼくらは闇の花を焼いて回った。
もちろん、可愛い花たちを傷つけないよう一つ一つ丁寧に。

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「いい種とわるい種とがあるんだよ。」

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ぼくらも闇の花は焼くけれど、
それにはちゃんと理由があるけれど、

種類が違うだけで邪魔に思われたり大切にされたり。
植物から見たらぼくらはかなり自分勝手。

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「ここの花たちを見ていると、ぼくのバラを思い出すな。」

闇の花を焼き払い、元気になっていく花たちの笑顔を見ながら、
君は寂しそうに思い出を語っていた。

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「花たちはか弱いから、
 ときどきは、風に当たらないようにしてやらなきゃいけない。」

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「ぼくは、ぼくのバラの不平も、じまん話も聞いてやったんだ…。
 だまっているならいるで、時にはどうしたんだろうと、
 聞き耳もたてたんだよ。」

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「きみがそのバラに水をかけてあげることで、
 きみにとってたった一輪の花になるんだ。」

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お庭の一番奥まで咲いていた闇の花を取り除くと、

パーゴラに巻き付いた木から、
真っ赤なバラがふわりふわりと花開いた。

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これが私のあるべき姿よ、と我先に咲くものだから、
ぼくはただその庭全体の美しさを言葉無く眺めるほかなかった。

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「けれど、ただ咲いてるだけなんだね。」

君はバラを優しく見つめるけど、目の前のバラを通り越して、それよりもずっと遠くを思い返しているみたい。


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そう言って頭上の星空を見渡して、あれだよ、と一つの星を教えてくれた。

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君たちはお互いに初めての友達だったから、


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仲良くなる方法やお互いの気持ちの受け取り方が分からなかったんだね。

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かんじんなことは目には見えない。

心で見ないとものごとはよく見えない。

心の奥に隠されたら、何も見えないよ。

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