蟹面さんの海底探索日記

捨てられた地は資源が少ない。それでいて危険がいっぱいだ。そんな場所だからこそ、俺の腕がぴかりと光る。

モリ1本、それだけで敵が倒せるかだって?
はっはっはっ!舐めんなよ。
資源が少ないからこそ、確実に的確に精細に敵を1発で討ち取る。
もしくはこの卓越した技術で見れば敵も慄いて逃げていくってもんさ。

え?その船酔いしてる状況でもできるのかって?
あっはっはっ!見くびるんじゃねえ。
どんな状況でも、自分が不利でも、この腕が外すことなんざ1度もない!
分かったなら、しばらく話しかけてくるんじゃねえぞ。……うっぷ。


いつのまにか新入りが増えていた。
泳ぎにくそうなふわふわした髪型しやがって。海を舐めてるのか?
まあ、新入りだからな。海のことなんざ何も分かっちゃいねえんだな。俺様の技術を見たら尊敬して髪型すらも真似したくなるさ。
ああ、その道のプロってのは大変だねえ。


新入りにしちゃあ、なかなかいいセンスをしている。
資源1個にしても、海中での体の使い方、息の止め方、資源がありそうな場所を見つける観察眼、これがなきゃ始まらねえからな。
初めてでまず1つ取れたってのは上出来だ。
まあ、俺みたいに熟達すれば、1度でこんなに沢山の資源を取ってこれるんだけどな!
どうだ、新入り。ちょっとは俺を見習ったら、他の仲間にも認められるんじゃねえか?


今日は3つ取ってきやがった。新入りの成長が目まぐるしい、良いことだ。俺の自尊心の高さも影響してるんじゃねえかな。
自信を持つってのはいいことだぜ。競い合う仲間がいるってのもな。
俺はそうやって高みに登れたんだ。
もちろん縁の下の力持ちっての?そういうのも大事だ。支えあって、協力しあってこそ強い力を発揮できるんだ。
お前もそう思うなら、新入り。ちょっとは俺を敬うんだな。もちろん他のスカベンジャーたちもな。
まずは一番成果を上げた俺を褒める練習でもしてみたらどうだ?


やっぱ若いってのは物事の吸収率が高くて良いねえ。今日の新入りは資源を4つも取ってきやがった。ちなみに俺はなんと、1つ多い5個だ。
他の仲間はサッパリみてえで、新入りに抜かされちまった。まあ、そういう日もあるさ。
それに最近採れる資源が減ってきちまったみてえだ。ここもそろそろ終いなんかねえ。
敵も少なくて波も穏やか、こんなに良いところはないんだが。
まあな、穏やかすぎて俺の腕も鈍っちまう。
次の探索で見つからなければ、移動するんだろうか。提督次第だな。



ふざけんな!!!誰だ大扉を開けやがったのは!!!
環礁の外にいた暗黒竜たちが入ってきちまった!仲間たちは怪我がねえみたいで一安心だ…。
こんな時に限ってモリを持っていなかった。穏やかな環礁だから安全だと思い込んじまった…くそ…。
お陰で俺としたことが、暗黒竜に驚いてでっかい資源を落としちまった。
あれさえあれば、新入りの細けえ資源より役に立ったってのに。
くそ…。


誇るべきスカベンジャーの仲間たちへ

実は昨日、でっかい資源を1つ見つけたんだ。みんなが心配で急いで舟に戻ったから、それは置いてきちまったんだが…そこはまだ暗黒竜もいなくて安全で、1つだけだからな。俺1人で採ってくるよ。
環礁内には深い場所だけだとはいえ、暗黒竜がいるからな、絶対潜るんじゃねえぞ。俺以上に武器の扱いが上手い奴なんていないんだから、のんびり安心して舟の上で待っててくれ。
くっくっくっ…あのでかい資源をみんなが見た時の嬉しそうな顔が目に浮かぶぜ。
あと、新入りには念押しで言っておく。
俺の後をついてきて、こっそり資源を横取りしようなんざ辞めとけよ。かっこ悪いからな。
自分の実力だけで(あとまあ仲間のサポートもちゃんと受けられるような人望を持って)物事をこなせるようになれよ!
俺より出来るヤツになれたなんて思い込むんじゃねえぞ!分かったな!

(追伸:誰があの扉を開けたか心当たりはあるんだが、もしみんなも心当たりがあっても黙っててくれ。そんな仲間の名誉を傷つけるような事、かっこ悪いからな。頼むぜ。)


           クソクソかっこいいみんなの憧れ砲手より



かっこ悪い…いや、そんな事思ったらみんなに悪いな。

正直、あの海底でモリも落しちまって、生きた心地はしなかった。
びびっちまったんだ、俺。
あの沢山の赤い目玉、俺のモリなんざ敵うはずないでかい図体。
海水全体を揺らすような、海の波が全部あいつの動きから生まれてるんじゃねえかってくらい…なんつうか、正直怖かったよ。
ああそうだよ、あいつが来てなきゃおれは死んでいた。
あんなちっこい体で、あいつも怖かったろうに、一生懸命俺を抱えてさ。
正直俺の事も憎いだろう、おれの海より深い自尊心を羨んで離れてった奴もこれまでに何人もいたからな。
それでもあいつは勇気振り絞って助けに来てくれた。
感謝してもしきれねえ。ありがとな。
それとみんなに謝らなきゃな。みんなの為とはいえ、自ら危険に合わすような、みんなを心配させるようなことをしちまった。
実は新入りの成長に俺も負けてらんねえ!って焦ってたんだ。
もう少し提督みたいに冷静に考えられる頭を身につけなきゃな。まだまだ俺も成長期ってことだな!
それに一番実力ある俺が焦ってたら、みんな不安がるだろう?

俺を心配してくれる仲間、みんな誇れる大事な仲間だ。
お嬢と新入りは他に役目ができたみてえだからここでさよならだが、離れていても俺らは最強のスカベンジャーだからな。
困ったことがあれば、いつでも俺を呼んでくれ!今度はあのでっかいヤツも怯むほどの、カッコいい砲手さまになって、お前らを助けにいくからな!


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