遥&雫のサイドストーリー後編から考える桐谷遥にとっての白石杏と花里みのり

 現在、桐谷遥のカップリングやコンビとして最も支持を得ているのは花里みのりとの「みのはる」もしくは「遥みの(はるみの)」だと思われる。公式供給の質と量を考慮すればむべなるかな、恋愛に踏み込んだものまで含めて多くの二次創作や空想が繰り広げられている。

 一方で桐谷遥と特別な関係にあるキャラクターがもう1人存在する。幼馴染である白石杏だ。公式供給の量としては「みのはる」には到底及ばないが、エリア会話で語られた過去の関係や、星3カード[アイドルじゃない私]桐谷遥のサイドストーリーで示された白石杏の存在の重要性などから、「杏遥」の関係もまた桐谷遥を語る上で欠かせないものであることがわかる。

 この記事は、ゲーム内イベント「頑張るあなたにBreak Time!」の開催に伴い実装された2つのカードのサイドストーリーを対比させながら、桐谷遥にとっての花里みのりと白石杏がどのような存在かを考えていくものである。

 主に参照するサイドストーリーは[リラックス・タイムのお誘い]日野森雫と[“大好き”を前に]桐谷遥のスキルとステータスである。なお、「頑張るあなたにBreak Time!」のイベントストーリー及び各種サイドストーリーのネタバレについては一切配慮しないため、その点はご留意いただきたい。

[リラックス・タイムのお誘い]日野森雫 サイドストーリー後編

 状況から考えて、[リラックス・タイムのお誘い]日野森雫と[“大好き”を前に]桐谷遥、それぞれの後編はシーンとしてつながっていると思われる。[リラックス・タイムのお誘い]日野森雫の後編は、最初に屋上にやってきた雫と続いてやってきた遥二人の会話。[“大好き”を前に]桐谷遥の後編はそのあとみのりと愛莉がやってきてからのお話、というのが両ストーリーのつながりだ。

 時系列に沿って、まずは[リラックス・タイムのお誘い]日野森雫のサイドストーリー後編について見ていく。

 このストーリーでは遥が雫に対してどうすればリラックスした素の自分を出せるか、という相談を持ちかけているのだが、それに対する雫の答えは「家族や友達の前では素でいられる」というものだった。そして雫は、遥にもそういう存在がいるのではないかと指摘する。雫の口から出たのは一歌、咲希の名前だったが、遥は次のように答えた。

「あのふたりは最初から、私をアイドルとしてじゃなくて、クラスメイトとして見てくれてて、すごく助かってる」
「そういう意味じゃ、杏もかな……」
「実は……この学校じゃないんだけど、親友がいるの」
「その子はアイドルになる前の私を知ってるし、私も昔と変わらない感じで今もつきあえてるかも」

 イベントストーリーの内容から、素の桐谷遥というのは「ペンギンを溺愛する可愛い桐谷遥」であると言ってよいと思われるが、実際一歌や咲希と仲よくなったきっかけもペンギンのマスコットの落とし物を拾ってくれたことだった(星2カード[国民的アイドルだった少女]桐谷遥サイドストーリー前編より)。

 そして[アイドルじゃない私]桐谷遥のサイドストーリー前編でも、遥は「ペンギンのキャラ弁をニヤついた顔で早弁していたことを知ってるのは私くらい」と杏にからかわれている。

 以上からわかるのは、ペンギンを絡めた客観的な描写としても、遥自身の認識としても、杏こそが最も素の桐谷遥を見て聞いて受け止めてきた人物だということである。普段はライバルとして挑発し合う一方で、ペンギンや甘いもの関連では思いのほか頻繁に弱いところを見せたり甘えたりしているのかもしれない

[“大好き”を前に]桐谷遥 サイドストーリー後編

 一方の[“大好き”を前に]桐谷遥の後編で描かれるのは、遥とみのりの関係だ。このストーリーで遥は、イベントストーリーの中で立ち寄ったペンギンカフェでの出来事を回想しながら、ペンギンにはしゃぐ自分の姿を見たみのりに「ファンとして幻滅しなかったか」と尋ねるのである。

 それに対するみのりの答えは以下の通りだ。

「普段はまさに『完璧なアイドルとして、ただそこにいてくれるだけで、キリッとクールに、キラキラしている遥ちゃんですが――」
「ペンギンと甘いものを前にした時に見せてくれる、ふわふわとろ~んとした、女の子としての表情!!」
「もうもうもうっ、ギャップ萌えの塊! かわいい! ただただかわいいー!」

 思わずにやけてしまうような「みのはる」の一幕だが、この一連の発言の中で注目したいのは「ギャップ萌えの塊」という表現である。この表現は、クールな「アイドル・桐谷遥」の存在を前提に、別の一面としての「ペンギンを溺愛する可愛い桐谷遥」を肯定するものだと言える。換言すれば、それは「アイドル・桐谷遥」の存在がなくなった場合成立しなくなる肯定ということになる。

 遥自身、みのりの「アイドル・桐谷遥」のファンとしての側面を尊重し、強く意識しているからこそこのような問いを投げかけたのだろう。つまりみのりにとっての遥はアイドルであり、遥にとってのみのりはファンなのだ。

 もちろん、みのりが遥のことをアイドルとしてしか見ていない、遥がみのりをファンとしてしか見ていないということではないだろう。しかし[リラックス・タイムのお誘い]日野森雫の後編における杏との関係との比較で考えると、やはりアイドルとしての遥を支えているのがみのりで、素の桐谷遥を守り続けてきたのが杏であるという対比構造を読み取るのが自然と言えよう。

最後に

 以上のように、遥にとって杏の存在は公式の描写量にくらべてかなり大きく、逆に盤石の相思相愛とも思える遥とみのりとの間にもまだ、アイドルとファンという、世界の壁は残り続けているのである。

 念のため断っておくが、これは素の遥を受け入れてる杏との関係の方が正しいと主張したり、「みのはる」のより深いつながりへの発展を否定したりするものではない。それぞれの関係が今後どのように変化、進展していくかに期待したい。

 

 ちなみになんですけど、みのりにはしゃぐ自分の姿を見られて幻滅させてしまったんじゃないかって懸念してたってことは、少なくともASRUN時代はそういう可愛いところを公に見せてなかったってことじゃないですか。媚び要素なしの完全クール路線を行きながら、顔の良さと歌とダンスの実力でねじ伏せてトップアイドルに上り詰める女、あまりにかっこよすぎません? 絶対ファン層の大半夢女かカプ厨でしょ……。

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