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翻訳に当たってのまえがき(Preface to the Translations)

 わたしたちの翻訳における第一の焦点は、新・新約聖書に含まれる新しい本にありました。 これまでこうした作品は主に「異端」や「グノーシス主義」のカテゴリーにとして翻訳されてきました。こうした既に確立されたアプローチの方法は、奥義(esoteric)と複雑な用語、すなわち「正統的」キリスト教からの新しい文献を識別し、「正統的」キリスト教を平易な言葉で明確に示すことになるでしょう。しかし、そのようにしてできるこの新しい文書は秘密めいて、はっきりしないものなるでしょう。この翻訳の取り組みにおけるひとつの特徴は「翻字」(すなわち、ギリシアーコプト語)を、わたしたちのローマ式アルファベットで表記しますが、その意味については「翻訳しない」点にあります。
 なぜなら、この翻訳においては、いくらかでも意味の不明瞭な言葉については、あいまいさや不明確さを含めないようにするためです。それによって、これらのテキストの翻訳を通して、わたしたちはすべての単語が確実に英語に変換されるようにし、それらをよりアクセスしやすくし、それらを伝統的な新約聖書の対応部分とより直接的な関係にするよう努めました。また、こうした目的を達成するために、わたしたちは可能な限り、新・新約聖書に含まれるすべての文書で一貫した言葉を使うようにしました。 ただ、特別に1つのケースでは、(通常は)天的被造物の確かな名前の翻訳において、わたしたちは英語への翻訳と同時に、これらの被造物の実際の人格を強調するために翻字と英訳の両方を保持し、英字化されたそれらの名前の動的な意味が保たれるように配慮しました。
 ここで紹介されている、以前の新約聖書のテキストはオープンイングリッシュ・バイブル(Open English Bilbe)のもので、この翻訳は『20世紀・新約聖書』(The Twentieth Century New Testament)によります。わたしたちは、オープンイングリッシュ・バイブルの編集兼、著作権者であるラッセル・アレン(Russell Allen)が行った、革新的で広く一般的であることを志向する慎重な翻訳と法的作業に深く感謝します。出版の権利を制限することなく、新約聖書の著作物をより多くの人に公開することへの彼の献身的努力は英雄的です。さらに、アレン氏とオープンイングリッシュ・バイブルが慎重に共同作業し、この翻訳のユーザーが自分の知恵と翻訳スキルに従って翻訳を変更できるようにすることで、オープンイングリッシュ・バイブルは1世紀以上に渡って最も革新的な聖書翻訳プロジェクトになることでしょう。
 また、わたしたちの主要な翻訳における考慮事項の一つは、これらの古代の文書と現代世界の両方で、どのようにジェンダーに関わる言語を位置づけるかということでした。そこで、わたしたちはこの翻訳事業において二つの価値観を含めることにしました。まず最初に、過去50年間における新約聖書の多くの翻訳における価値観を共有して、これらのテキストにおける女性の経験をより包括的に取り入れ、二つの価値観における創造的な緊張を持たせました。 歴史的に、普遍的な「彼」という語には男性という性が象徴されます、そこで歴史と文章の両方から除かれた、女性の経験の多くを効果的に含める操作をしました。そして、これまで男性の編集者とされていた、すなわち、すべて男性的に見えるように書かれているものについて、そこには男性的だけでなく女性を含んでいたことを認識しました。こうした歴史の中で失われてきた女性たちの存在はもっと目に見えるようになる必要があり、今日に生きている女性たちはこれらの作品に自分自身の姿を見いだすことができるようにしました。しかし、わたしたちは古代の文書に含まれる女性に対する差別のあらゆる場合について、その救済ができたわけではありません。文章の一部が女性を明確に差別する場合(例えば、テモテへの手紙1において、男だけが長老や司教になることができると言った場合)、わたしたちはそこにいくらかでも女性的な面を含める意味の「男」のように翻訳していません。一方、明らかに一般的な言葉やフレーズが男性と女性のグループを特徴付けるために男性的な用語を使用していた多くのケースでは、その用語を人間(human)、人(person(s))、人々(people)などの包括的な言葉に変更しました。 ですから、文章の中で女性を明らかにするための明確な努力をしている間に、わたしたちはまた、初期のキリスト教の運動における言語、経験、そして性別による経験的な表現を示すことが重要であると感じました。これには、これらの人々の言葉をその革新、偏見、妥協の中において生かすための意識的な努力が含まれています。性別との関係における、この複雑で微妙な翻訳は、コプト語、ギリシャ語、およびシリア語の翻訳で、代名詞を使用する方法に影響を及ぼします。そしてわたしたちは、この出版における編集責任者であるジーナ・ジョンソン(Jenna Johnson)との協議の結果、代名詞の翻訳では、男性代名詞と女性代名詞が交互に並ぶような場合において、女性を含むという他の指摘がある場合には、そこに女性も暗黙の内に含まれることを表すことにしました。
 ここに、翻訳者の方々に感謝の意を表します ーカレン・キング(Karen King);ヨハネの黙示録の秘密、 ジャスティン・ラッセル(Justin Lasser);トマスの福音書、そしてエリザベス・ミラグリア(Elizabeth Miraglia);ソロモンの頌歌。
 重ねて感謝を示すのはアレクシス・ウォラー(Alexis Waller);OEB(Open English Bible)の働きのために、特にマルコの福音書と、ヨハネの手紙1~3。ハル・タウズィッヒ(Hal Taussig)、彼はわたしのこのプロジェクトの一員になってくれ、彼の長年にわたる指導、そして対話に対し、わたしは心からの感謝と謝意を表します。 私は彼なしではこの仕事はできなかったでしょう。

 あと、この翻訳におけるもう一つの複雑さについて説明する必要があります。 新約聖書に追加された3つの「新しい」文書について、それ以外の標準的な章と節が付けられた写本が存在しないので、わたしたちはこの版にわたしたち自身の判断で章と節を追加しなければなりませんでした。これらの3つの文書(真実の福音書、雷:完全な心、およびフィリピへのペトロからの手紙)は章や節がなく、さまざまな形式や翻訳で一般に公開されています。こうした原稿のためにこれまでの学術的慣行に沿って、これらの文書を参照するための方法は、一般的にその欄の行番号を伴う古代のテキストの脚注に従っています。例えば「18.36」という表記を「真実の福音書」の引用として示す場合、それは、『ナグ・ハマディ』写本の18ページの36行目を表しています。この新・新約聖書の読者が他の出版物や翻訳の中でこれらの3つの文書を読む機会を持っている可能性が非常に高いと考えるので、わたしたちはこのコラムと行の参照の仕方を、これらの新しい文書の同じページにおいて成功していません。わたしたちは、章と節のシステムがあることは非常に重要だと思います。なぜならそれはテキストを単なるページ/コラムと行ではなく、一緒に属する単位に分割します。 したがって、これら3つの文書では、最初の章と節の参照を優先して、より原始的な列と行の参照のやり方を却下しました。

 セリーヌ・リリー(Celene Lillie)
 翻訳監修
新・新約聖書

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