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小野田實展を見て

こんにちは!陽子絵画制作室です。今日は、姫路市立美術館で開催中の、「小野田實展」を鑑賞しました。

小野田實さん(おのだみのる・1937-2008)は、姫路出身の前衛画家です。具体美術協会の会員で、無数の丸で埋め尽くされた作品がよく知られています。

うかつにも小野田實さんのことは、今回の展示があるまで知りませんでした。具体美術協会のことは、芦屋市立美術館での作品展でよく見ることがあり、知っていたのですが、代表的な作家の吉原治良さんや、白髪一雄さんしか認識していませんでした。

今回、勤務する高校の教頭先生から入場券をいただき、拝見することが出来ました。

具体美術協会の作品は、ほとんど抽象絵画です。私は日本画を描いていて、作品といえば、まずスケッチをしてから描くので、抽象画はほとんど描きません。

抽象画を見るときは、分かる分からないでなく、全体の印象を感じ取るようにしています。

今回作品を鑑賞して、思ったことを3つ挙げてみます。

宇宙的な世界

グラデーションのように大きさや色が有機的に変化する無数の丸と、その丸の層のような線で描かれている空間。

小野田さんの説明によると、「オートメーションの工場で大量生産される真空管のような、同じものが無数に集まっている」状態を見たときの驚きを、増殖する丸で表現し、それで世界を覆いつくしたくなったそうです。

本人は、「大量生産される無機的なもの」と、表現しておられますが、私には、とても有機的な生き物のような作品に感じられました。画面の所々が丘のようになだらかに盛り上がっており、その丘には丸が拡大されて描かれています。また、線の層で区切られた丸は、その層ごとに色が変化しており、背景の色はクリーム色が多かったです。

それらの変化しながら存在する無数の丸を見ていると、宇宙空間の星々や、銀河のようにも感じられました。

具象絵画というと、人物や、風景、動植物という見慣れた形のものが思い浮かべられますが、大きな視点で宇宙を眺めたら、案外このような抽象画の世界に似ているのかも、と思われました。

自然にもある形

小野田さんの作品は、およそ10年ほどでスタイルを変えていたようです。

クリーム色の、所々盛り上がった作品ののち、まるで水面に水滴が落ちて、正円の波紋が広がっていくような作品をたくさん制作されていました。波紋の盛り上がりを、いろいろ変化させた作品を並べ、その表面にも、盛り上がりに合わせて無数の丸が描かれています。背景がいろいろな色の作品もありましたが、青系の色でまとめられた作品は、波紋が様々に変化する水面そのものでした。

また、その後、画面を全く平面にして、エアブラシを使って、青や緑、紫など、寒色系の色を駆使し、微妙な色の変化と、幾何学的な円や線で、水面に広がる波紋のような正円をベースにした、正方形の画面の同じ大きさの作品を数多く制作されていました。

その作品群の前にいると、まるで静かな水のほとりにいるような、涼しい感じがしました。

隙間から見える

また、スタイルの違う作品で、真っ赤な板に穴をあけて、その下に青い色の板を重ねて作った作品もありました。また、板の端に、細長い溝を作り、その隙間から重ねた板の色を見せたり、画面に青い色をへらで塗っておいてから、黒い色を置き、スキージーで広げて、黒い色の隙間から、青い色が見えている作品もありました。

石に穴をあけて、そこから明かりが見える作品も作っておられたようです。

真ん中が抜けている額縁の、隙間にいろいろな色が挟まって出てきているものもありました。

隙間から見せることで、より強い印象を与えられていました。

まとめ

今回の抽象画を見て、自分の世界を存分に表現されていることに感動しました。

自分の世界は、自分が関心を持っているもので成り立っています。たとえ目の前にあるものでも、関心を持っていないと、まったく記憶に残らないもののです。

小野田さんは、関心を持たれたものから発想して、多くのエスキース(アイデアスケッチ)を描かれています。そこからさらに発展して様々な作品が生まれたのです。

自然の中にある美しい形に興味があるので、日頃からアイデアスケッチをして、日本画を描くヒントにしようと思いました。

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