居酒屋🏮2
「ワシ、昨日初めてライブハウスってとこに行ったがな」
「えー!寅がラ、ライブハウスにか!」
「なに驚いてんねん」
「いやあ、イメージが湧かないがな」
「失礼な。これでも上手いんだがな、ワシの歌は」
「ほお。で、何を歌ったんよ」
「ホテルリバーサイドやがな」
「チャレンジャーやがな。難しかったやろ」
「簡単や。歌ってたら昔のことを思い出して懐かしかくなったがな。お湯割り」
「はいよ、お湯割り。懐かしいって、どんな思い出なんや」
「もう20年前になるけど、花枝って子と川沿いのラブホにいったんや」
「ラブホになぁ」
「確か『よねや』ってとこで、川沿いにあったんや。それが汚い川だから臭い臭い」
「寅が話すと、せっかくの歌も台無しになるがな」
「なんでやねん。でもワシの好きな歌なんや」
「それだけ好きなら歌ってるアーティストの名前は知ってるんだろうな?」
「ようせつ、やろ?」
「へ?」
「ようせつや」
「……寅、歌ったのはその一曲だけか?」
「いや、一人、2曲ずつやから、もう一曲歌ったがな」
「それは、何て曲を歌ったんがな?」
「え〜と、そうや、川繋がりで『神田川』を
歌ったんや」
「……寅、帰ったら歌ってる歌手の名前くらい調べるんやで」
「だから、ようせつっだってば」
「店も暇だし、オレも呑むわ、やれやれ」
おしまい
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