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 コードの家

コードだらけの家で小さな頃から私は生活していた。

体中にコードが巻きつき首を絞められ窒素しそうになる事はしょっちゅうだ。

泣きながら神さまに頼んでもコードからは逃げられない。

頭から垂れ下がるコードを掻き分け食事をし、腕にも絡まるコードを気にしながら宿題をした。

朝になれば重たいコードをズルズルたと引きずりながら学校へ行った。

私以外の人にはコードが見えないらしかった。

片手でコードを押さえながら料理の授業に出て、スープに入らないようにしながら給食を食べた。

クタクタになり、こんがらかった家に帰宅すると新たなコードが増えている。

天井から垂れ下がるコード、壁からニョキニョキと生えるコード、床中に這うコード。

コードの先には尖った爪がついていて、私を引っ掻く。

その痛みで私は泣きわめく。

血が吹き出すのを見た母が押さえようとするが、母自体が血だらけなのだ。

コードはその光景に満足して笑う。

いつか、その尖った爪で私の目をグサリと刺す機会を狙っているのが分かった。

あの生活から数十年が経ち、今の自宅にはコードはいない。

でも、姿を変えて案外すぐ近くにいるのかもしれない。

そんな気がしてならない。


      了





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