ISO ISO ISO

こういうご時世でサラリーマンも大変だと思いますが、言われませんか? 「テレワークしないの」みたいなこと。テレワーク出来る職種と出来ない職種の話は以前しましたが、古き良き日本のサラリーマン、言わば真のサラリーマンがテレワークを導入するには、越えるべき高いハードルがあるんですよね。

そう、ISO(あいえすおー)だ。

大企業でかつ製造業の企業はほとんどが取得していると言われる規格である。工場の入り口の看板に「ISO xxxx取得工場」などと掲げられているのを見たことがあるだろうか。

ISOは製造現場だけでなく、オフィスワークのみに従事するサラリーマンにも適用される、全方位規格。管理職はJQAの定期審査におびえ、末端社員は規則にがんじがらめにされる、そう、それがISOだ。

このISO規格のおかげで、テレワークの導入が進まない。そんな話も聞こえてくる。なぜなら、ISOは業務手順の平準化と遵守を強く求める規格であり、書類の保存に関してもいろいろと厳しい。そう、テレワークとは水と油の関係であり、テレワークのことなんて考えずに手順を決めちゃってたわテヘッみたいな事態が、現実に発生している。

業務手順を全部改訂することを考えたら……いや、附則として全体に適用できる手順を新たに作ってだな……そんな風に頭を悩ませている管理職の方もいるだろう。マジおつ。

ここまで書くとISOは何のメリットも無い、ただの拘束具のような印象しかないかもしれない。しかし、ISOは国際標準規格であるため、海外と輸出入のやり取りが発生する企業では、その恩恵を十分に受けることができる。

要するに「お前んとこISO規格の認証受けてんの? やるじゃん、じゃあ輸出(輸入)するときの検査ちょっとまけとくわ」など、世界的に認められるわけ。世界で使える、億単位でお得になるクーポンのようなものだ。

日本の経済を支配する大企業も、サラリーマン人口の占拠率では30%前後しかない。そのうちの更に何パーセントが、ISOの呪縛の内にあるのか、定かではない。人々は口で呪いながら、そのメリットも理解しているため、渋々と従っている。そして今、新型コロナウィルスという疫病がやってきてしまった。

ネットワークのインフラは整っている。ノートパソコンは支給してある。リモートログインも出来る。ただ、業務についての手順書が無い、手順書通りでは作業ができない、つまりテレワークができない! This is a 悲劇。

「田中君、手順書、改訂しといて」

ひとつ言えるのは、テレワークの導入を連呼している政治家、学者、コメンテーター、アナリスト、IT関係の軽そうな人、なんだかよくわからない人たちは、日本の経済を支えてきたサラリーマン・オブ・サラリーマンの苦悩を知らないということ。時代遅れの島耕作おじいちゃんも知らないだろう、この規格のおそろしさを。僕は知っている。なんやねんこの規格、そう思いながら過ごしてきたから。

戦え、コロナに負けるな、サラリーマン! 僕は自宅から応援しています!

※本稿は2020/4/23に執筆されたものです

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