北海道の地図

地震と炎上とジンギスカン

2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震について、ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、Twitterにこの投稿をした。

出典:https://twitter.com/sasakitoshinao/status/1037477477445246978

なお、noteの仕様で、Internet ExploreやFirefoxではTwitterからの引用が見えないこともあるらしい。この上に佐々木俊尚氏のツイートが見えない人は、Google Chromeなどの他のブラウザに切り替えて見てほしい。

さて、私がこのツイートを読んだときには、75件のリプライがついていた。今はもっと多いかもしれない。はっきり言って、地獄だ。その一部を紹介する。

出典:https://twitter.com/harumi19762015/status/1037603040864305152

さらにリプライがあった。

出典:https://twitter.com/cellxlay/status/1037657743644155904

ちなみに私は佐々木俊尚氏の著作『「当事者」の時代』(2012年、光文社)からは多大な影響を受けた。

あの有名な、病理医ヤンデル先生もこう書いていた。

出典:https://twitter.com/Dr_yandel/status/1038162430231080960

「だし」だから「鍋」なのだろうか。

ここから先は、佐々木俊尚氏やヤンデル先生の考えでなく、私の考えを書くことにする。

たしかに、北海道胆振東部地震の後にはTwitterなどのSNSで様々な意見が飛び交っていた。泊原発再稼働の是非や、北海道電力への批判、安倍政権への批判、さらには「2011年の東日本大震災では民主党政権で、今の安倍政権より当時の民主党政権のほうがひどかった」などという投稿もあった。

ただ、中には、「それは今回の地震が起きる前からその人が考えていたことなのでは?もし今回の地震が起きなくても、そういう意見を言うことはできるんじゃ?」と思ってしまった意見もあった。地震を利用していいのだろうか?

佐々木俊尚氏とヤンデル先生は「嫌いなものを攻撃するために北海道の地震を利用すること」や「北海道をだしにすること」を批判した。それはたしかにその通りなのだが、ここで私は「意見や批判を言ってはいけない」と主張するわけではない。貴重な意見や批判がいくつもあり、興味深く拝読した。

北海道で起きた地震をきっかけにして、地震や停電や断水についての知識を増やしたり、今まで不可視化されていた問題が可視化されたりすることは良いことだ。

さて、ここで視点を変え、私はもっと別の現象に注目したい。

Twitterで複数人のユーザーからよく似た内容の投稿があったので、ここに掲載しよう。どれも地震当日と翌日の投稿である。

出典:https://twitter.com/m_molockchi/status/1037603954085978112

出典:https://twitter.com/sekainohajimar5/status/1037856950371794944

出典:https://twitter.com/ota_pan/status/1038034682829389825

なんと、地震をきっかけにして、北海道の人たちの食生活が話題になったのだ。しかも、ポジティブな形で。

地震が起きる以前から、北海道の人たちは冷蔵庫や冷凍庫に肉を蓄え、炭で火を起こし、バーベキューを楽しむ習慣があった。特にラム肉のジンギスカンパーティー、略してジンパだ。地震が起きて、再び燃え上がった。

というわけで私は、こんど北海道に行ったら、ジンギスカンを食べよう。

今回の地震に限ったことでない。大きな事件や事故や災害があると毎回この現象がある。その現象とはつまり、

「あるできごとをきっかけにして、ある人がそれ以前から持っていた知識や感情を他者に伝える」

ということだ。場合によってはそのできごとと無関係のことさえも他者に伝えてしまう。

北海道胆振東部地震をきっかけにして、人々が「北海道胆振東部地震以前から持っていた知識や感情」を他者に伝えるという現象があった。

そして私もまた、北海道胆振東部地震をきっかけにして、私が北海道胆振東部地震以前から持っていた知識である、「あるできごとをきっかけにして、ある人が『それ以前から抱いていた知識や感情』を他者に伝えることがある」ということを、他者に伝えている。

マトリョーシカだ。

以上。

連載企画「街河ヒカリの対話と社会」について

誰もが日常的に体験する悪口、嫌味や皮肉、詭弁、ネットスラングについて考察します。一見すると個人の問題に思えることでも、実はよく考えると社会の問題とつながっているのではないか、との仮説を立て、個別具体的な事柄から普遍性を発見したいと思います。1か月に1回から4回程度の更新です。マガジン「街河ヒカリの対話と社会」にまとめています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?