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針の糸通し

ボタンの取れかかった洋服を直そうと裁縫箱を開ける

針と白い糸を取り出して
左手の親指と人差し指で針を持ち
右手の親指と人差し指で糸の先を
持つ

針穴に糸を通そうと
目の前や
目の斜め下
目の斜め上に
両手を動かすが
なかなか焦点が定まらず
糸は穴をかすってばかり

そんな様子を見ていた娘が
「かしてごらん」と言って
私から針と糸を取っていく

娘はあっという間に針に糸を通し
私に「はいっ」と言って手渡す

当たり前にできていたことが
年齢を重ねるにつれ
すんなりできないことを実感する

そしてそれをいとも簡単にやる娘に
すごいことをしてもらったかのように感謝する


そう言えば
結婚前に一緒に母と暮らしている頃
同じようなことがあったな

なかなか針に糸を通せない母を見て
「かしてごらん」と言って
糸を通してあげたこと

「もうできたの?すごいね!
ありがとう!」
母は大げさに喜んでいた


立場がかわって
全く同じ場面を体験したことで
その時の母の気持ちがよくわかる

そしてあの時
私はいつまでも元気でいると
思っていた母が
やっぱり歳をとっていくんだなと
なんだか寂しい気持ちになった
ことも思い出す


娘も当時の私と同じように
糸通しに苦戦していた私を見て
寂しさを感じたのかな

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