エデン条約編およびゲマトリアおよび聖園ミカおよびその他たくさんのことについて


このメモはサービス開始から対策委員会編、パヴァーヌ1章、エデン条約編1~4章を追った先生の情緒の狂いが記されています。またこのメモには2023年2月18日現在のブルーアーカイブの全てのシナリオに関するネタバレが含まれているおそれがあります。エデンまでしか語らないのに平然と最終編の話題が出てきます。ブルーアーカイブの沼に沈んで悲鳴をあげている人間を観察するゲマトリアめいた楽しみ方で読むことを推奨します。

冒頭

 サービス開始時からブルーアーカイブの物語を追ってきた先生たちはどのように狂ってきたのか――このメモはその一例を残すために作られました。ブルーアーカイブにはオタクを沼の底に沈めるための刃が至るところに潜んでいますが、ズタズタに引き裂かれて虫の息を吐いているややブルーアーカイブが刺さりすぎてしまった哀れな先生のメモとして、決して古参先生はこのような者ばかりではないのだということを念頭に置いてお楽しみください。
 当番の生徒は聖園ミカ。推しの組織はティーパーティー。好きなメインストーリーはエデン条約編第4章。好きなイベントは放課後スイーツ物語。対戦よろしくお願いいたします。

ふたつの沼

ひとつめ。総力戦「ビナー」

遠い昔。キヴォトスの端、誰も足を踏み入れない旧都心のある廃墟で、奇妙な研究が進められていました。神を研究し、その存在を証明できれば、その構造を分析し、再現できるだろう。すなわちこれは、新たな神を創り出す方法である……。

総力戦前口上「ビナー:違いを痛感する静観の理解者」より


 ブルーアーカイブをインストールした動機はよく覚えています。暇だったからです。サブゲーを増やそうと思ったからです。サービス開始当初のメインストーリーを、私はにこにこしながら楽しみました。女の子の汗と匂い、いいよねとか。銀行強盗ってなにしてるの、とか。そんな風に気を抜いて物語を楽しんでいたのです。

 意味深なプロローグこそあれ、ブルーアーカイブの殆ど全てが愉快なギャグで包まれていたところにそれは現れました。

 ゲマトリア――特に黒服を印象づけるあのBGM「Black Suit」とともに語られる遠い昔のキヴォトスの話。旧「ゲマトリア」の支援を受け行われた、最終的には新たなる神を創り出すことを目的としたのであろう、神の存在証明に係る超人工知能「対・絶対者自律型分析システム」の開発。

 時は流れ、都市は破壊され研究所は水底に沈み、それでも任務を遂行し続けたAIは「Q.E.D.」を宣言します。

 デカグラマトン。

 今でもそのショックを覚えています。間違いなく、私がはじめてブルーアーカイブで息を呑んだのは、この神性との出会いでした。

 ブルーアーカイブの敵役といえば、当時の私にとってはコミカルなものだったのです。先生に一目惚れしたワカモ然り、アビドスを襲ったカタカタヘルメット団しかり、カイザーグループですらどこかコミカルな印象を覚えて眺めていました。

 けれどデカグラマトンは違いました。預言者ビナーを通じて突然目の前に立ちはだかってきたその神性はただひたすらに自らの任務を遂行し、やがて自己の存在証明を開始します。

 ブルーアーカイブはギャグを主力とする楽しい学園物語――サブゲーとしてそれを甘受していた私は、突然のよくわからないものにたたきのめされました。

「……先生、あなたは神を目の当たりにしたことはありますか?」

 黒服のこの問いについての先生の反応は、全く描写されません。ただ、この問いと先生の答えを受けての黒服の反応、それが私にはじめて「先生」というキャラクターをいっそ不気味な存在として意識させた瞬間でもありました。

 ブルーアーカイブの世界にはなにかひどく薄気味の悪いものがある。その予感が私をぐっと沼の側まで引き寄せました。

 どきどきするような「Endless Carnival」という総力戦に相応しいBGM、移動をともなうドラマチックな戦闘、そして容赦のないミサイル……ビナーにボコボコにされながら、私は少しずつブルーアーカイブの魅力に気づきつつありました。

 ……脇道に逸れますが。特殊作戦デカグラマトン編を最新話まで読み終えている先生はご存じのことと思います。ここまでの黒服の語った物語は、デカグラマトン本人の言葉と大きく食い違っています。そして、たぶん誤っているのは上の魅力的な物語の方で、けれど新しい物語もまたぞっとするほど魅力的で、デカグラマトンとの出会いの衝撃は、今も私を貫いています。最終編で「名もなき神」の詳細が僅かに語られた今、まるでその対極にあるかのような神性である「デカグラマトン」に、私はとても惹かれています。

ふたつめ。「大人の戦い」

あの子たちの苦しみに対して、責任を取る大人が誰もいなかった。

対策委員会編2章失ったもの、手放さなかったもの「大人の戦い」より

 設定面でブルーアーカイブに何かがあると予感した私は、「大人の戦い」における先生と黒服の対話で物語としての真摯さを強く感じました。

 上で引用した先生の言葉は、プロローグの、そして最近では4thPVで触れられたあの言葉を思い浮かべずにはいられません。

「責任を負う者について、話したことがありましたね」

 私は、ブルーアーカイブのプロローグをはじめて見たとき、うつくしいとは思いつつもなんとなくそれっぽい言葉を並べただけなのではないかという不信も同時に抱いていました。

 大人の責任。大人とはなにか。大人とはどうあるべきか。それに真正面からぶつかろうとするような対話に、ひどく心を打たれたのを覚えています。

 それだけではありません。先生と黒服というふたりの大人そのものについても、個としても関係性としても大きな魅力を感じました。

 キヴォトスの全てを掌握したにもかかわらず、それをあっさりと手放して生徒に寄り添うことを選んだ先生。自らを悪であるとしながらルールの範疇を決して逸脱しようとしない黒服。

 銃口を向け合う生徒たちの戦いと違って、先生と黒服の戦いは手続き上の瑕疵の指摘という極めて事務的なレベルで行われました。契約、約束事を武器とする――きっとエデン条約編まで読了した先生なら、これがまさに大人の戦いであったことに何の疑いもないだろうと思います。

 ひどく淡々とした先生と黒服の戦いと、その後に続く黒服の説得と先生の拒絶。取り出された「大人のカード」があそこまで暴力的な力を持っていたとは、このときの私は知るよしもありません。

 ルールを武器に子供たちを苦しめる大人と、この世界に対して黒服曰くとる必要のない責任を取ろうとする大人。黒服が先生を嘲笑しなかったことが、彼を私の目にどうしようもなく魅力的なものとしてうつらせました。

 今でこそ先生大好きクラブと名高いゲマトリアの男3人衆ですが、相容れないにもかかわらず、最も大切なところについては理解すらできていないにもかかわらず、好意を示して、丁寧に戦う。そして、その黒服の好意的なありかたにも関わらず、断固とした拒絶の姿勢を崩さない先生。生徒と先生の間では絶対に見る事のできないその関係性には、とても魅力的なものがありました。

 ブルーアーカイブは、とても真摯な話をしようとしている。追いかけよう。間違いなく、この話を読み終えたそのときに私はブルーアーカイブの沼に沈みました。そしてそれが間違いではなかったことが、2ndPVで予告されることになります。このときの私の発狂具合については割愛することとしましょう。この素晴らしい話をしたあとイオリの足を舐めだした先生の奇行についての感想も。

見落としたもの、学園生活の輝きについて

「『ファイナルファンタジア』、『ドラゴンテスト』、『トールズ・オブ・フェイト』、『竜騎伝統』、『英雄神話』、『アイズエターナル』……そして『テイルズ・サガ・クロニクル』……。」
「どんなゲームの中でも、主人公たちは……」
「決して、仲間のことを諦めたりしませんでした。」
「なので、アリスもそうします。」

時計仕掛けの花のパヴァーヌ編1章レトロチック・ロマン「忍び寄る危機」より

 おそらく、勘の良い先生なら気づいていらっしゃると思います。私をブルーアーカイブの沼に落としたふたつの対話は、いずれも大人同士、先生と黒服のやりとりでした。

 その後も、メンテ明けを深夜まで待って突撃して、こんなイベントを続けられたら生徒の魅力で破産してしまうと思いながら読んだ「桜花爛漫お祭り騒ぎ」など間違いなく楽しんではいたのですが、私の沼り方の主要素は大人との会話でした。

 これも、きっと看破されていると思いますが総力戦シロ&クロでマエストロが登場したとき、私は狂ってはしゃぎ回っていました。ギリシャ哲学に関する岩波文庫の青ラベル本が私の本棚には並んでいるのですが、そんな人間に彼の語りが刺さらないわけがありません(記号論もテクスト論も嗜んでいますので、ゴルコンダ&デカルコマニーも無事ぶっささって死んだのですが涙をのんで割愛しましょう。ペロロジラにゲマトリアが出てきたら死ぬほど笑う、などと言っていたくせに本当に出てきたら心臓止まって死んだゴミが私です)。

 時計仕掛けの花のパヴァーヌ編第1章の魅力に、だから正直に告白します。このときの私は気づいていませんでした。パヴァーヌ2章でミドリが同じように語り出して私の涙腺をゴミにした作品列挙も、パヴァーヌ1章の頃は青春いいね! と普通に楽しむ程度の波で読み通していたと思います。

 先生はアビドス編の大人の戦いのときみたいに前に出るより、こうやって空気になって見守ってる方が良い空気吸ってて幸せそうだなあ、などと余裕をもって彼女たちの物語を追っていました。

 こういった変な刺さり方をしてしまった人間も、ちゃんと丁寧に学園と青春の物語で殴り倒してくれるのがブルーアーカイブなのですが、それについてはエデン条約編第2章を待つことになりました。

 ちゃんとチューニングを受けて読み返したパヴァーヌ1章で、存在しないミレニアムサイエンススクールタオルを振り回す限界プレイヤーとなった私のミレニアム最推し生徒は才羽モモイです。モモイなしで初期実装任務駆け抜けた先生いらっしゃいますか? 我々最初期先生です……モモイの姉みを思うと心臓がどきどきして死にそうになります。あの栗みたいな口した一年生、ナチュラルにお姉ちゃんなので狂うんですよね。あと意識不明モモイえっちです。

 ゲーム開発部は可愛い1年集団に見えますがセミナーは勿論古代史研究会なんかはまるで美食研究会に襲われる給食部のような理不尽極まりない被害を被っているので、あの子たちアウトローですよね。そんなところも好きですよ。でも古代史研究会が実装されてゲーム開発部許せね~! って会員たちがぷんすかしてる姿も見てみたくあります!

エデン条約編

1章

「キヴォトスの、「七つの古則」はご存じかい?」
「その五つ目は、正に「楽園」に関する質問だったね。」
「楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか」
「他の古則もまたそうであるように、少々理解に困る言葉の羅列だ――

エデン条約編1章補習授業、スタート!「プロローグ」

 このオタク、エデン条約編とか好きそうだなと思った先生は多いと思います。2ndPVから期待に期待を重ねてハードルがバカみたいなことになっていましたが、無事に突き刺さりました。百合園セイアが実装された暁にはプロローグ朗読動画を公開する義務が運営開発にはあると私は確信しています。本当にすばらしいプロローグです。

 そんな先生にとって、特にリアルタイムで追ってきた先生にとって、この「1章」という纏め方は思うところがたくさんあると思います。私もあります。

「次回、合宿、スタート!」

 ……わかります。ですが措きましょう。

 この話に至って、私はようやく自覚したことがあります。私、どの人物にもヘイトを向けていないな……という事実です。ブルーアーカイブはヘイトコントロールが巧いとよく語られますが、それとはまた別種、私に関しては相性の問題だと思っています。コントロールもなにもヘイトの感情がブルーアーカイブのキャラクターに対してわき上がったことが一度としてないのですから、コントロールもなにもありません。最終的に好きにさせる必要すらなく、最初からどの人物も好きでした。ゲマトリアやカイザー、ニャン天丸といった悪い大人たちさえ含めた誰に対しても、私は憎悪や不快感を抱きませんでした。ブルーアーカイブの世界が恐ろしく肌に合っていると気づいたのはこのエデン条約編1章前半で、桐藤ナギサ――あるいはナギちゃんと呼ばれる女の子と正式に出会ったときでした。

 補習授業部に寄り添うことを決めた先生と、ナギサはどうしても対立してしまいます。対立してしまっても、先生は決してナギサに心ない言葉をかけることはなく、やんわりと対応しました。この柔らかな対立の中で、私はすごくナギサのことを知りたいと思いました。できることならナギサにも寄り添えたらいいなとさえ思いました。そんな感情を否定しないストーリーと先生がすごく心地良かったのです。エデン条約の1章の段階で、生徒全員の味方というスタンスの先生の在り方を(このスタンスは特にエデン2章1話で明示されますが)一人物として本当に嬉しいと思いました。私を沼に落とした「大人の戦い」での責任の在り方がそこにあるように思いました。

 けれどやっぱり、私には気づけていないことがありました。パヴァーヌ1章を見落としてしまったように、私は子供という部分についてあまりにも頓着せずに読んでいました。百合園セイアは賢者だし、桐藤ナギサは政治屋である。そんな風に見て、賢い女の子が大好きな私はきゃっきゃしていました。彼女らの苦しみについて、全く寄り添えていなかったと思います。そのことに気づくのは、もう少しあとのことです。

2章前半

「それで……ナギちゃんが推進している「エデン条約」、あれはさっき話してた「第一回公会議」の再現なの。」
「エデン条約……大きな二つの学園が、これからは仲良くしようねって約束。」
「なんだか、良いお話に聞こえるよね? でも本当のところはどうだろ。だってその核心は、ゲヘナとトリニティの武力を合わせたエデン条約機構、通称「ETO」と呼ばれる全く新しい武力集団を作ることなのに。」

エデン条約編2章不可能な証明「巨大な怪物」

 リヴァイアサンは有名でしょう。ホッブズとルソーの考え方は進化論関係の概説書なんかでもたまに引かれますから、哲学に興味のない人でもそれなりに触れた方も多いのではないでしょうか。岩波文庫では白ラベルだったでしょうか。青赤白のラインがたまにわからなくなります。閑話休題。

 当時、私の属するコミュニティでは積極的に犯人当ての議論がなされていました。エデン条約編に関する黒幕については既に周知の事実で、知った上で読むという人も多いでしょうが2章後半が公開される前のこの時期、少なくとも私のコミュニティでは大勢を決する意見は出ていませんでした。

 事実、私も彼女――聖園ミカが黒幕だとは考えていませんでした。ETOは桐藤ナギサ単身で統制できるものではない。空崎ヒナのその指摘があってなお、聖園ミカが誤っていることはありえても、嘘を吐いているとは考えなかったのです。

 この当時は、空崎ヒナの指摘があってなお桐藤ナギサ個人が目的を遂げるおそれは排除できていないと考えていました。何かしらのそれらしいお題目を立ててゲヘナとトリニティの合意さえとることができれば、ETOに暴走の可能性はあると思っていたのです。

 マコトちゃんの厄介さと(万魔殿の他のメンバーにもETOの権利はあるのですから、聡いイロハもアレであることが露見したサツキも厄介です)トリニティのドロドロ政争具合を見るに本当にそれは難しいのだと後に思いましたが、それでもなおれっきとした平和条約のための機関であるETOという組織自体の危険性は今ももし成立していたら怖いところもあるな、と思っています。

 後に公開される話ですが、カルバノグの兎編で月雪ミヤコが各学園の正義は歪曲されたものであると語っています。その歪曲は、ETOについてもきっと例外ではないと思ってしまうのです。もちろん――ミヤコの信じるSRTについても。ブルーアーカイブが正義をどう語るのか、すごく気になっています。私個人の願望を少しだけ仄めかすならば。私は、月雪ミヤコの正義に関する精神をとても尊く思っており、彼女が語るような穢れない正義についてうつくしいものだと、心の底から思っています。それが子供の、生徒の夢見るものなら尚更です。

 さて。今更明言する必要のある話ではありませんが、私は設定大好き人間です。設定開示がなされると美味しい美味しいと狂喜する類のオタクです。エデン条約編2章1話がどれだけ美味しかったか、ETOまわりの上の話だけでもおわかりいただけるかと思います。

 パテル、フィリウス、サンクトゥス、三位一体を匂わせる三派も気になります。パテルが聖園ミカで、フィリウスとサンクトゥスはどっちにどっちが入るのか、とか。

 「第一回公会議」、わくわくしますよね。そもそも経典が気になります。クリスマスボイスでスミレが「救世主」について語っていますが、トリニティにおける「救世主」とは何者なのか……

 アリウス、今のアリウス分校が少し詳しく触れられるのもここです。それはもう何度読み返したかしれません。そして、読み返すたびに魔性の魅力に取り憑かれていきました。言うまでもありません、聖園ミカのことです。彼女のことについては、もうどれだけ言葉を尽くしても足りませんので2章前半における彼女の印象を。私は、彼女をとても賢く慎重な女の子だと思っていました。

 こうした世界の魅力と知的な言葉を放つティーパーティーの生徒会長たちに導かれながら、同時に私は少しずつ別の魅力に冒されていました。水着パーティーをしたり、深夜に出歩いたり……ひとつの目標に向けて学園生活を楽しむ、透き通るような日常の魅力です。ようやくでした。

2章後半

「……いや、うん。」
「……そうかもしれないな。」
「何かを学ぶということ、みんなで何かをするということ……。」
「その楽しい時間を、私は手放せなかった……。」

エデン条約編2章不可能な証明「こくはく」

 エデン条約編第2章の化け物じみているところは、不信と裏切りの政争劇が「みんなテストで合格する」で幕を下ろすところです。たぶん、この構造のうつくしさは何百回も語られていることでしょう。ここに至ってようやく、私は大人の戦いでも、何か厄ネタが埋まっていそうな世界でも、知的で政治的な争いでもない「学園と青春の物語」に心から撃ち抜かれました。ブルーアーカイブにドハマリしている人間としては、遅いと思います。遅すぎると思います。ですが、私についてはこれでよかったのだと思っています。

 私にとってキヴォトスは知れば知るほど魅力溢れる世界でした。どんなにキヴォトスが魅力溢れる世界で、私がそれに溺れてきたのかは前述のとおりです。たぶん、エデン条約編2章前半頃の段階でその魅力をじゅうぶんすぎるほど信頼できるようになったからこそ、そんな素晴らしい世界で過ごす日常の価値を2章後半で衝撃的に味わうことになりました。

 ゲマトリアが暗躍していて、廃墟にディビジョンシステムがあって、デカグラマトンが自己を証明しようとしていて、虐げられていたアリウスの襲来が間近に迫り、トリニティとゲヘナの平和条約はまるで虚しいもののようで。そんな世界で友達といっしょに頑張って、テストで良い点をとる! そのことに不思議なくらい強く心を揺さぶられました。アビドス編でのユメ先輩の奇跡についての言葉が、パヴァーヌ編でのゲーム開発部の奮闘が思い出されて、情緒がグチャグチャになりました。

 好きなメインストーリーはエデン条約編4章だと冒頭で語りましたが、次に好きな話がこのエデン条約編2章です。このストーリーにおいて、やっと私は本当にブルーアーカイブの一番魅力的な部分に触れる資格を得たのだと思います。私のような変な刺さり方をしてしまった人間にも手厚い誘導をしてくれるブルーアーカイブのストーリー構築、化け物としか言いようがありません。ケンシロウみたいな顔をしたピカチュウのライター、あのひとおかしいです。どうかしてます。私はなぜ韓国にいるあのピカチュウが統括するシナリオを日本先行で、星0加藤さんたちの最高の翻訳で読めているんでしょうね? 前世で徳を積みすぎたのでしょうか。よくやりました私。

 聖園ミカの話は、本当に長大になってしまいますので、面白いなと思った話をします。私は2章後半の黒幕ムーブで聖園ミカに対する好感度が天井を突き抜けて青空の向こうに飛んでいきました。この後ポストモーテムやらエデン4章やらを経て大気圏外にすっ飛んでいくことになる私から聖園ミカへの好感度なのですが、全く違う現象も最近わりと目にします。2章で聖園株が暴落して、4章で急騰するのです。そういうのもあるのか! と新鮮な思いがしました。私の属するコミュニティでは聖園! 聖園!! だったのでやはり外に目を向けるのは、とってもたいせつなことですね。楽しみ方無限大すぎます、このシナリオ。全肯定オタクです。

 このときの聖園とナギちゃんについては、本当に精神がボロボロでつらいので読み返す度に支えたい、味方になりたいと思ってしまいます。でも温泉開発部を使って会場爆破したときのナギちゃんはちょっと楽しくなってたと思います。次章でゲヘナ飛行船落としたニヤッとしていた錠前サオリもです。追い詰められて精神的に限界を迎えた果てのことなので、深く考えるとやっぱり可哀想なのですが……

3章前半(調印式爆破まで)

「もう会えないんじゃないかって、そう思ってた。」
「……まさか。私とミカさんの仲ですよ?」
「ふふっ、それもそうだね。幼馴染みなんだし?」

エデン条約編3章私たちの物語「ポストモーテム(3)」

 聖園ミカ単体を推す先生については断言できないのですが、聖園ミカ×桐藤ナギサを愛していたり、ティーパーティー箱推しだったりする先生については断言できることがあります。エデン条約編3章前半「ポストモーテム(3)」は私たちにとっての聖典のひとつであると。

 痛いくらいに幼馴染みの聖園ミカを想い続ける桐藤ナギサと、それを拒絶する聖園ミカの間にあるふたりの大切な幼馴染み関係と、どうしても理解しあえない壁。「不可能な証明」と「五番目の古則」の関係性は、たくさんの感想で語られてきましたので割愛しましょう。私も本当に愛おしく思っているくだりです。ひとつの壁として描かれた1~2章での桐藤ナギサが「優しい優しいナギちゃん」と聖園ミカに呼ばれていること、そして実際に次は自分だと命の危機を悟ったナギサがその恐怖の中で聖園ミカが怪我をせずに済むよう時間切れまでに犯人を探そうと疑心暗鬼の闇の中に堕ちてまで必死に孤独に戦ったこと。たびたび「愛」を語る桐藤ナギサの幼馴染みへの愛情をどうしようもなく強く感じて、私はこの話が大好きです。何度読み返したかしれません。

 聖園ミカの純粋な戦闘力が剣先ツルギに並ぶと語られた衝撃の話もここでしたね。結構強いとは言っていましたが、そこまで強いとは思っていませんでした。私の大好きな生徒、ハチャメチャに強いぞ!

 あと、浦和ハナコです。わりと頭に血が上りやすい性格してるのが好きポイントです。お友達ごっこもそうですし、このポストモーテムでの聖園とのレスバはほんとうにもう。私が学園生活に着目できていなかった先生なので、学園生活おもしろい!! ってなったハナコがそれを尊く思って、それを阻害するものに怒りを顕わにするのをみて、ハナコの気持ちも尊いものだと思っていました。弱音を吐いた下江コハルを見ての100点連打、100万回語られている完璧なくだりです。

 なんなんでしょうねこの補習授業部のピンクどもは。実装前、下江コハルとかいうエロ本収拾クソバカ女がいると教えられていた私は絶対引こうと石を貯めていたのですが、浦和ハナコとかいう不意打ちピンクに何度も不意打ちを食らいました。んもーこのどうしようもないエロは、って思いながら最後の浦和の絆でボコボコにされたり。超かっこいい参謀としての活躍を見せつけられたり。それでも浦和ハナコはトリニティ総合学園クソだなーと思いながら友達と仲良く日常を謳歌していて、しあわせになってくれー! と祈ることしきりです。下江コハルという正義実現委員会の誇りについては――ここで語るのは早すぎるようです。ただ、ハスミの可愛がりようを見ていると、たぶんエデン1章や絆ストーリーのほんとうにもうって感じの女の子の頃から、コハルの心の奥底にはあの何よりも尊ばれるべき正義の心の種は確かにあったのだと私は思っています。

 最近は「覚悟」を触れられがちな「聖徒会」の名前が本格的に出てきたのも3章前半でした。爪剥ぎまでしていたらしい壮絶な集団。「第一回公会議」当時のトリニティはきっと今とはまるで違った空気に包まれていたことだろうと思います。そんなトリニティの弾圧を、特に聖徒会が先陣に立ってのそれを受けたアリウスのことを思うと心が痛みます。ユスティナ聖徒会、その歴史が語られることを私は望んでやみません。というかブルーアーカイブ第一回公会議編スピンオフゲームとか超やりたいです。パテル、フィリウス、サンクトゥス、ヨハネ、ユスティナ、アリウス――陰謀渦巻く各派閥のどこかに属して物語を追っていこう! みたいなやつ。妄想が捗りますね。

3章後半(調印式爆破以後)

「誤解もあるだろう、信じられないこともあるだろう。たとえどこにも到達できないとしても……それでも、他者の心という証明不可能な問題に向かうしかない。」
「私たちは皆、進まねばならない。その宿題をずっと背負いながら、それでもこの闇の中を……ただ、その先を目指して。」
「……ですね。」
「うん、それはすごく同感……だけど、相変わらず難しいことばっかり。セイアちゃん、だから友達がいないんでしょ? ちょっとは自覚してる?」
「……」
「……先ずミカはその良く鳴りそうな頭に、教養と品格を入れてもらった法が良さそうだね?」
「あの、お二人とも……」

エデン条約編3章私たちの物語「エピローグ」

 ブルーアーカイブのメインストーリーについては、本当にたくさんの受容のされ方があります。その中で、特に新規の先生は大量の物語をいっぺんに浴びることになり、量が……量がすごい! となっているのをよく見ます。

 更新されるたびにその当日にメインストーリーを読んできた私の感想はだいぶ違います。「物凄く濃厚な話を味わえる」「なのに読むのにかかる時間はとても短い」、というのが私の感想でした。メインストーリーの1回の更新分を読み切るのに2時間半以上かかったことはなかったと思います。その半分くらいの時間で、だいたいいつも読み切っていました。19時に更新が来たとして、20時半くらいには感想や考察を気が狂ったように語り合っていました。どこかのインタビューでケンシロウの顔をしたピカチュウが言っていたと思うのですが、プレイヤーの集中できる時間は限られていて、彼らはそれを念頭に置いてシナリオを組んでいるそうです。短いのはわかるのですが、それでこの情報量はどういうことなんでしょうね。サクッと読めてあの情報量のエデン条約3章後半、バグです。

 短いくせに情報量がえげつない。と先述したとおり、エデン条約3章後半は何から語ったものか、あまりにもトピックが多すぎて悩んでしまいます。エデン条約どころか3章後半だけでメモを作ってもいいくらいです。エデンまでとしてもブルーアーカイブのシナリオ全体の感想を書くのはバカのすることです。私のことです。

 まず、私の認識がまたたたき直されたことを話しましょう。賢者百合園セイア、政治屋桐藤ナギサ、といった完成された存在として生徒を見ていた私ですが、エデン条約編3章後半で、取りこぼしていたのだと思い知らされました。

 たとえば――ここで引っ張ってくるべきエピソードは、やはり空崎ヒナなのでしょう。最初期先生の例に漏れず、私のシャーレ勤務は☆3空崎ヒナとともにはじまりました。とても聡明で、そのうえ強い。先生に頼られて政治的な問題にも冷静な意見を述べることができる。名もなき司祭の技術が使われたミサイルを受け、ユスティナ聖徒会のミメシスを振り切り、先生を守り切ったヒナ委員長の株はどこまで上がり続ければよいのだろうかとお腹に穴を空けたままワクワクして3章後半を待っていたのをよく覚えています。

 だからパジャマ姿で弱り切ったヒナの姿を見たとき、私は心底自分を愚かだと思いました。彼女のかっこいいところばかりを見てきたのです。「ヒナ委員長のなつやすみっ!」で幾度も仄めかされていた姿を、まるで見なかったようにしていました(話はそれますが、夏イベといえばエデン条約で何があってもウィッシュリストに繋がるから大丈夫と余裕ぶっていた私たちリアルタイム先生の姿はお笑いでしたね。エデン3章前半の時系列開示による地獄の顕現はよく覚えています。ウィッシュリスト常設、きっともうすぐですね)。

 当番としてオフィスに招いたときも、モモトークでも、彼女はずっと自分の辛さを仄めかしていました。エデン条約編の中でも、肩の荷を降ろしたいとずっと言っていたのです。自分が主導した平和のための条約、それが血と灰に染まって、大切な人達が傷ついて、先生も撃たれて。大丈夫なはずがないのです。このヒナの苦しみに、私は全く無頓着でした。

 「先生」とはどうあるべきか。そのあるべき姿勢のひとつを、このエデン条約編3章後半で私は示されたように思いました。先生はずっとその苦しみについて、それに寄り添うことについて口にしていたのに、それこそ私が沼に落ちた大人の戦いでそのことを明言していたのに、気づいたのはやっと、ここでした。

 アビドスの副委員長。ホシノの強さについても語られましたが、彼女の傷から目を背けずにいたいと思いました。ユメ先輩は既に亡くなっていたことが語られたのも、この時点でしたね。たのむ小鳥遊ホシノ、幸福であってくれ。あと小鳥遊ホシノ×空崎ヒナの供給はいくらあっても満足するということはないので、何卒よろしくお願いいたします。

 エデン条約編3章後半といえば、下江コハルの正義が示された場面でもあります。この少女は物語の一番の本筋からいつもちょっと外れた場所にいるのですが、中心人物と先生の情緒をめちゃくちゃにする確かな正義の持ち主です。怖かったでしょうに、状況もよく理解できていなかったでしょうに、それでも寄って集って暴力を振るってはいけないという当たり前の正義を当たり前に貫いた彼女の姿は間違いなく正義を実現していました。ブルーアーカイブのプロローグを見たとき、ハスミの所属する「正義実現委員会」という組織名に胡散臭い!!! と思っていた私ですが、今ではそれをとてもかっこいいと思っています。ミカコハの幻覚を見始めた先生も、多かったですね。私もです。このときの私は公式からミカコハの完璧供給がくるとは夢にも思っていなかったのだ――

 青春宣言。今読み返すと、本当に心が辛くなる場面でもあります。白洲アズサを殺人者にはさせない、青春の物語を終わりにさせないと宣言した光輝く阿慈谷ヒフミの姿。彼女がハッピーエンドを掴んだ先には、アリウススクワッドの任務失敗と、姫を含む自分たちの死という終わりが待っています。水底の貝のように心を閉ざしていたように見えた白洲アズサが、友達と青空の下に向かっていく、そんな姿も見せつけられることになります。まるでそれを肯定するように空は青く晴れ上がって、歪曲されたエデン条約は更にねじ曲げられました。この青春宣言が影を落とす光として汚されることはありませんでした。先生が、桐藤ナギサが、百合園セイアが、アリウススクワット自身が、聖園ミカが、そしてトリニティのたくさんの生徒たちが奈落に落ちるスクワッドの手を掴みました。このハッピーエンドと青春の宣言は、道を誤った生徒すら取りこぼしません。ただ、そのことをこのときの錠前サオリが知るはずもありませんから――やっぱり、彼女の心を思うと、胸が張り裂けそうな思いがするのです。この場面にはたくさんの想いが詰め込まれていて、だからこそ、私の大好きな場面です。

 覆面水着団――アビドス。彼女たちの登場は、私の属するコミュニティでは半分ネタとしてですが結構な頻度で予想されていました。私の立場は、そんなはずないじゃん! でした。尺もないし、来るならツルギ級の実力者として巡航ミサイルのダメージも受けていない聖園ミカだろうと踏んでいました。だから、完全な心の空隙を突かれました。私はいつだってあのピカチュウの掌の上です。「Signal of Abydos」とともに現れたアビドス廃校対策委員会のみんな。どれだけ興奮したかしれません。頭がおかしくなるかと思いました。小鳥遊ホシノかっこよすぎ問題で頭が空崎ヒナになりそうでした。

「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く」

 銀行強盗の際に目をキラキラさせたアルちゃんに覆面水着団が語った言葉です。そして、対策委員会の危機に真のアウトローであるアル社長が語った言葉でもあり、そのフレーズがここでも繰り返されたことに情緒がバグりました。雑に作られたよくわかんない文言がかっこよすぎる文脈を帯びる瞬間は私の大好物です。たぶんオタクみんな好きだと思います。パヴァーヌ1章で行ったアリスのタイトル列挙を2章でミドリが拾ったことは先述のとおりですが、この拾い方の巧さ、ブルーアーカイブの100億あるシナリオ必殺術のひとつです。私の情緒を絶対に狂わせるパワーがあります。

 ティーパーティーについて。あえて割愛させてください。このとき抱いていた私の感情はエデン条約編4章前編で破壊されました。このエピローグと3rdPVをもっての私の狂喜を綴ってそこからの地獄を見ていただくことも考えたのですが、私が可哀想です。ただ、エデン条約編3章エピローグで3人が集って確かめ合ったことを否定するものではまったくありません。むしろ、ここがあったからこそ、彼女たちは死力を尽くしました。特に、桐藤ナギサと百合園セイア。私はこのふたりを心から尊敬します。ティーパーティーのエピローグ引用しといて割愛することある? あります。

 地味に、浦和ハナコすごいとなったシーン。彼女が次々に状況をつなぎ合わせて絶望の結論に至った箇所です。彼女はスランピアをピースのひとつとして挙げました。エデン2章の水着パーティーでも語られましたが、何のことだ? となった先生もいらっしゃるのではないでしょうか。ここできっと彼女は「ミメシス」に思い至ったのでしょう。マエストロによる前口上で語られたとおり、スランピアに潜むシロ&クロは恐怖の属性をもった歓喜のレプリカ。根源の感情のミメシスです。どこから情報仕入れてきたんですか。こわ……

 エデン条約4章で詳しく触れられますが、どういうことだとなったシーン。ロイヤルブラッドをマエストロが戒律を守護せし者の血統と呼んだこと。だいぶ頭が混乱しました。姫はアリウス分校の子で、けれど戒律の守護者の血を引くならばユスティナ聖徒会に連なるもののはずで……最も強くアリウスを排撃したユスティナが、アリウスのエクソダスと再建を主導した。これにまつわる物語、本当に詳しく教えてください。古代史研究会のみなさん、何かしりませんか。古書館の魔術師さんでもいいです。アイスアメリカーノ持っていきますから。

 ウィッシュリスト常設しろ小学校歌の場面、笑ったあと笑顔が凍ったペロロ爆弾、なんなんだお前羽沼マコト、氷室セナ好きになっちゃう、ツルギ正義実現員会長の超かっこいいところ&完治した、など本当に語っていたら枚挙に暇がないので割愛します。ブルーアーカイブのエデンまでをサクサク振り返ってみようとか考えたバカはどいつだ。不可能であることを今頃理解しました。だから動画があるんですね。なるほどなあ。

4章

「……セイアちゃん、相変わらず何言ってるのか分かんないよ。本当に偉そうだし、心底ムカつく。」
「何度も懲らしめたいと思ってた。」
「――それでも大好き、セイアちゃん。」
「……え?」
「ナギちゃんはヒステリーがひどすぎ! っていうかこんな所まで紅茶を手放せないのはちょっとどうかと思うよ?」
「カフェイン中毒? それとも強迫症?」
「――でも、そんなナギちゃんが大好き。」
「い、いえ、これは……緊張してしまって……。」
「……えっ?」
「うん……二人とも、大好きだよ。」

エデン条約編4章忘れられた神々のためのキリエ「これからの私たち」

 実装順を飛ばしてエデン4章の話をしましょう。突然告知されたエデン4章のお知らせ。事前にあのピカチュウのインタビューで聖園ミカの話は終わっていないと知らされてはいましたが、予想外の方向から顔面をぶん殴られました。あの完璧に終わったエデン条約編に蛇足をつけることにならないだろうか――? そんな恐怖も、ありました。ぜんぶ杞憂でした。エデン2章の頃にはティーパーティー大好き人間だった私は、完全に壊れてしまいました。ブルーアーカイブのせいです。

 本当に、本当に、本当につらかったことの話からします。エデン条約編3章後半と3rdPVの楽しそうな聖園とナギちゃんを見て、私はこれから希望の未来へレッツゴーだぜ!!!! と確信していました。メル先生ナギちゃん総受け本よろしくお願いします! とへらへらしていました。

 百合園セイアは逃げずに戦うことを選び、その心身はひどく傷つきました。聖園ミカは百合園セイアに謝ろうと思い、その想いは届きませんでした。桐藤ナギサはカタコンベの構造とアリウス分校の所在についての問いに対し、聖園ミカを信じ――聖園ミカは当然のようにスクワッドのただ一つの選択肢となる地点を襲撃しました。3人ともに、学んだことを生かし、一歩を踏み出したにもかかわらず。それでも待っていたのは悲惨な結果でした。どうしてこんなことするんだよぉ! と泣き喚きました。本当に、死ぬほど辛かったです。マジであの電気鼠人の心ないです。ペロロ爆弾でわかっていたことではあるのですが……。

 前半の、とてもうつくしいシーン。檻の中のお姫様。あそこで賛美歌を聴くシーンのBGMの旋律が、アリウスで流れた「Kyrie Eleison」とは若干異なることをご存じでしょうか。ご存じなかったら今すぐ「Kaphar」と「Kyrie Eleison」を聴き比べてください。どちらもサントラ収録済です。どちらも、です。「Kaphar」はゲームでは僅かな部分しか聴くことができませんでしたが、そのすべてを聴くことができます。聴くんだよ。聖性に溺れろ。

 塔の中のお姫様とそれに会いに来た運命の人に自分たちを喩えるミカ、このたとえはラプンツェルを思わせます。聖園ミカは本当に童話のお姫様が好き。本当に参ります。好きにさせないでほしいです。もうどうしようもないくらい聖園ミカが好きなのに。さらっと流した先生は本当にえらいです。

 聖園ミカの受ける「私刑」については、自分の中でどう片付ければいいか判じかねています。私は先述のとおり哲学を囓っていて、その関係で法哲や倫理にも少しだけ触れました。一番簡単なのは、「私刑」は駄目。法に則ってください、と言うことでしょう。でも、それだと私の中で筋が通らないのです。

 他でもないエデン条約編4章の最後はブラックマーケットに対する便利屋68の私的報復でした。私はこの場面を大笑いして見ていました。首尾一貫するなら、ブラックマーケットの人が錠前サオリに言っていたように、ヴァルキューレに任せるべきなのです。

 装備が貧弱で練度の低いヴァルキューレに任せて解決するかどうかは問題ではありません。ブラックマーケットという学園自治区の外で起きた事件に対してはヴァルキューレ警察学校があたるのがルールです。それが規範です。ルールに基づけと言うなら、解決しようがしまいがヴァルキューレに頼るべきなのです。そしてヴァルキューレが頼りないなら、行うべきは私的報復ではなくヴァルキューレやそれを統括する防衛室、ひいては連邦生徒会の行政に意見することなのです。断じて、ブラックマーケットに乗り込んで弾丸をばらまくことは許してはいけないはずです。法を守るなら。

 私は便利屋68による報復に、キヴォトスかくあるべしと思いました。子供だから仕方ないね、とかではなく学園都市キヴォトスはずっとこういう滅茶苦茶な世界であってほしいと思ったのです。だから、便利屋の行いとトリニティの生徒たちによる「私刑」についての私の考えは法を持ち出すなら首尾一貫していません。

 その点、先生は悠々と乗り越えていきます。彼または彼女には独自の倫理があります。それは法の縛りをほとんど受けません。不正を暴くために銀行を襲撃しますし、ヴァルキューレ警察学校の文書だって盗み出します。なんなら、ゲーム開発部によるセミナー襲撃は先の2例のような大義すらありません。さらに先生本人もイオリの足を舐めたり生徒と混浴したりサキの整備にちょっと物凄すぎる言動をとったりと……こういったハチャメチャを許容しながら、先生は子供のやることであっても、ミカに対する暴力などはやめてほしいと述べています。先生のハチャメチャぶりには毎度驚かされるのですが、それでも先生はごく自然に振る舞っています。

 私は、まだあの境地に至れていません。聖園ミカを「私刑」から庇おうとするとき、明晰に明文化され、規範化された哲学をもって彼女を守れていません。お前の言っていることは矛盾していると言われたときに、今の私は自己を正当化できません。ただ、やめてほしいと願うことしかできないのです。

 他の観点からは、少しだけ言えることがあるかもしれません。つまり聖園ミカの犯した罪を「外患誘致」や「クーデター」や「当時のティーパーティーホストへの暴力の教唆」として見た場合の弁護です。

 キヴォトスの学園自治区はよく国家にたとえられます。そのため、「外患誘致」や「クーデター」を現実の国家にあてはめて本来ならば死に値すると見る考え方により、聖園ミカへの扱いは軽すぎるという意見です。ただ、この現実における罪の重さがキヴォトスで通用する見方かというと疑問が残ります。

 外患誘致によるクーデターならば池倉マリナがレッドウィンター連邦学園で行っており、それに対する罰は「旧校舎での清掃活動等」のようです。「特権を取り上げたうえ屋根裏暮らしで奉仕活動」の聖園ミカよりは軽く、死が見えるほどの扱いではありません。レッドウィンター連邦学園は広大な面積と生徒、そして空港をも備えた学園自治区です。レッドウィンターが国に値しないというならばキヴォトス数千の学園自治区の大多数は国に値しないことになるでしょう。そのレッドウィンターを参考とした上で、ミカに対する罪はキヴォトス的な見方をすればさして軽くもない、というのが私の考えです。

 いや、でもレッドウィンターだし……というお考えはよくわかります。たいへんわかります。ですから、もうひとつ。今度はトリニティ内部を論拠にしましょう。聖園ミカの一番の罪はなんでしょうか。「外患誘致」と「クーデター」と「当時のティーパーティーホストへの暴力の教唆」の3つのうち、どれが一番重い罪になるでしょうか。普通に考えれば外患誘致によるクーデターが最も注目されるべき罪です。切り分けるにしろいずれかでしょう。少なくとも現実、たとえば日本においてはそうです。たとえセイアちゃんをやっつけようというミカの教唆を、ミカはそこまで言っていない「殺人」教唆に置き換えてすら、現実ならば外患誘致を超える罪にはなりえません。ですが、トリニティ総合学園では違います。これはエデン条約編4章4話において、ティーパーティーで最も賢い百合園セイアにより明言されています。

「ミカの罪状の中で最も重いのは、私に危害を加えたこと」

 これはミカ自身の罪の意識に関する直観にも合っていることが、この少し前の発言としてセイアにより語られています。トリニティの転覆はミカがセイアに危害を加えようとしたことに比べれば下なのです。トリニティ総合学園における罪の形が現実と明らかに違うことの、これは証左でしょう。

 ただし、弁護がなければミカの罪は「退学」に値することについては注意が必要です。これはナギサにより語られていました。「退学」についても現実と同じものの見方をしてはいけません。このことについては「どたばたシスターと古書館の魔術師」が復刻されたばかりの今なら、多くの先生が了承されていることと思います。学校に所属しないことは、社会的な庇護をほとんど受けられないことを意味します。これは「退学」というワードが現実に比して数段上の危機的な取扱となることを示しています。最も重い罪が百合園セイアへの危害なのですから、これがたいへん重要なのでしょう。

 生徒が生徒に銃火を浴びせることはなんら珍しいことではありません。生徒会の権限を持つ人間に対して、学園自治区の存続を脅かす効果のある攻撃を行ったとしても、大罪として処理されないことがあります。たとえば便利屋68によるアビドス襲撃がそうです。対策委員会は当時でも小鳥遊ホシノが生徒会権限を保持、しかも唯一の生徒会役員として保持していますから、学園自治区と生徒会という観点で見るならこのときの便利屋はとんでもないことをしています。しかし、これはたいした問題にはなっていません。少なくとも、便利屋の退学云々に関わるレベルで深刻な問題ではありません。

 あるいは生徒会という観点ではなく、病弱でまともに反撃できない人間に攻撃を行ったことが問題だったのでしょうか? いずれにせよ現実の物差しをキヴォトスの学園自治区に当て嵌めることが極めて難しいことだけはおわかりいただけるかと思います。

 聖園ミカに対する「私刑」から彼女を守る適切な言葉をまだ持たない私ですが、彼女の受けた罰そのものが軽すぎるのではないかという考えについては、軽いと結論づけるだけの根拠はないのではないか、少なくともキヴォトスと現実の罪の捉え方があまりにも違うので、軽重の適否については判断保留すべきでは、という立場です。ただし、聖園ミカを弁護する言葉の中でナギちゃんと先生の彼女を思うそれは除いておきましょう。このふたりはたいへん心優しいので、ミカはじゅうぶん罰を受けている、という旨の言葉については適当な法の裁きに照らして妥当なことを言っているか微妙なところですから……なんなら法とは違う感覚の点で彼女たちは語っているように思います。そういうことを言えてしまう二人のことが、私はとても好きです。本当に先生は甘いですし、ナギサは優しい優しいナギちゃんです。

 さて、聖園ミカに対して甘すぎ人間の私ですが、アリウススクワッドに対しても甘すぎ人間です。青春宣言に対して錠前サオリ辛かったろうなあ……などと述べているあたりから察せられると思いますが、彼女たちにも私は同情的でした。これについてはあまり言葉はいりませんね。洗脳を受けた少年兵を厳しく責めるのはちょっと私には無理です。少しずつ日の当たるところに歩いていけるといいですね……。ちなみに。錠前サオリを矯正局に送らなかったことや、ワカモに対してもバレンタインを除いてはあまり檻にぶち込もうとしていないところに先生の特異な性格をまた見ることができますよね。面白い人だと思います。

 ゲマトリアについて。先生大好きクラブと先生絶対消すウーマンとなったゲマトリア4人はたいへん楽しくて好きです。ゲマ先で沼った人間なので当然ですね。黒服が先生を仲間と認識している云々のくだり、最高です。ベアトリーチェが地雷を踏むたびに「……」ってなる男共可愛すぎます。いえ、黒服はホシノに生きたまま恐怖を適用しようとし、マエストロは聖徒会をミメシスしアンブロジウスとヒエロニムスの人工天使シリーズを差し向け、ゴルコンダ&デカルコマニーに至ってはヘイロー破壊爆弾なのですから本当たいへん邪悪なのですが、好きです。申し訳ありません……。

 特に面白い! となったのは「色彩」に関するくだりでした。ゲマトリアの「宿敵」が語られることになるとは思っていなかったので、ぐっと引き込まれるものを感じました。キヴォトスに魅力を感じていた私ですが、キヴォトスの外についても物凄く気になるようになりましたね。ベアトリーチェが崇高に至って行いたいことも、全てを救うこと(大嘘かもしれませんが)らしくて、そのあたりもたいへん気になりました。 「色彩」、まさか最終編であんなにがっつり語られるとは思いませんでした。呆然としてしまいましたね……。

 「色彩」といえば「神秘」と「恐怖」です。ヒエロニムスの前口上にて、神秘と恐怖はコインの表裏のようなもので、いずれか一面の形で崇高は顕現すると語られています(例外はペロロジラです。こいつ神秘も恐怖も持たない崇高のくせに虚妄のサンクトゥムで何が反転したんです? あとシロ&クロは「恐怖」の属性を持つことが語られていましたが、色彩シロ&クロはあのとき「神秘」を示していたのでしょうか。私めちゃくちゃ気になります! マエストロ、あいつらどうなってるの? あと無事だよね……?)この神秘と恐怖については崇高とあわせてよく語られますが、神秘が何か、恐怖が何かという定義については詳細は伏せられています。本当に気になって気になって仕方ないです。誰か教えてください。教えてはいただきたいのですが姫の命とは引き換えにしたくありません。

 アリウススクワッドについて。チャーミングお姫様秤アツコの魅力には本当に参ってしまいます。ちゃっかりさん過ぎて好きになってしまいます。ミサキは本当につらかろうと思います。スクワッドを託された彼女がすごく仲間想いなのが嬉しいです。体弱いのが心配でもあります。おくすりのめたね……えらい……。ヒヨリは無限に甘やかしたいです。迎えに行ったときのサオリとのやりとりにスクワッドのギャグ適性の高さを見ました。最終編でも笑わせてくれて、本当に好きです。

 錠前サオリが自分を厄病神として否定するのは、きつかったです。本当にきつかった……。かつての彼女がミサキに希望を示せなかったことも、ミカとの対話の中で僅かに希望を見てしまったことも、それが潰えていったことも。アズサが友達と光の中へ進んでいったことも。何もかもが辛かったです。

 この子は本当に仲間を守るために頑張ったと思います。アリウススクワッドとして失敗したあと、姫の命の危機を思ってすぐ先生に連絡をいれたのは本当に偉いです。仲間を守るためならなんだってする彼女の精神を強く感じました。ベアトリーチェの教育下で、あれだけ仲間への深い愛情を保ち続けてきたのは、本当に。先生の才能があるとしか言えません。

 白洲アズサ。お前はなんなんだ。彼女のコンクリートに咲く花のような気高い精神は、サオリの庇護を受ける前から貫かれていました。それに殉じてヘイローが砕かれようとしていたほどです。彼女が最終編でトリニティとアリウスを結ぶ和解の象徴になっていたのを見たとき、ちょっと泣きそうになりました。その涙は覚悟で吹っ飛びました。サクラコ様……いやでもあのハナコの言葉、ユスティナとシスターフッドを深刻に結びつけようとするサクラコ様を思ってギャグ主体の学園青春物語に晴らしてあげようとするハナコの優しさもあったと思うんです……! 考えすぎかもしれません!!! 頼むー!! アズサがスクワッドを家族でもあったと思っていたことがスクワッドの錠前サオリに伝わってくれー!!!!

 ティーパーティーの話をします。運命に翻弄された3人の生徒会長の話です。誰がそこまで苦しめろと言ったトリオです。メンバーのうち悪役2名なのですがおかしいですね、愛おしいですね……。

 百合園セイア。彼女は頑張りすぎです。エデン条約編3章を読み返すとわかると思うのですが、先生は百合園セイアが結末のその先から目を背けたことに対して一度も怒っていません。悪いことだとも言っていません。ただその辛さに共感しただけです。

 彼女は、それでも本当の危機に直面したときもう逃げませんでした。ボロボロになりながら立ち向かおうとしました。過去現在未来すらあやふやになって、なんとか情報を掴もうと、道を見つけようと躍起になっていました。そんな生真面目に頑張る百合園セイアなのですが、彼女はタイミングの神様にたぶん恐ろしく嫌われているのでしょう、最悪のタイミングでやらかします。

 頭が滅茶苦茶いいのでやらかしたことにすぐ気づくのがまた悲しいです。過去現在未来が混濁し、神秘が恐怖に反転し、器が崩壊し、先生が命の危機に瀕している状態でそれでもセイアはミカのことをずっと気にかけていました。最終編で語られましたが、預言の大天使としての本質を、セイアは一切の躊躇なくミカを救うために手放しました。生きるためではなく友のためだったと、会ったばかりのクズノハですらわかってしまうほどの潔さでした。

 全てが終わったあと、百合園セイアが語ったふたつの言葉が印象に残っています。

「私たちも、先生の力を借り続けていてはならない。彼の人の道先に光を灯せてこそ、理想的な関係足り得るからね」
「今までのように力を合わせ――努力を重ねて、その試練を乗り越えるから」

 百合園セイアは目をそらして、立ち上がって、ボロボロになって、本質をひとつ失って、それでも頑張って、なお甘えきることをよしとしません。先生が手を差し伸べてくれるのをよしとせず、もたれ掛かり続けることを肯定せず、自分たちで力をあわせて、先生の道先に光を灯す。そんな生徒であろうとします。

 百合園セイアはただの賢者ではないということを痛いほど知りました。まだ未熟なところも見ましたし、弱っているところも、失敗したところも見て来ました。だからこそ、彼女の見せたこの姿勢に胸を貫かれました。3章後半の引用部でも、百合園セイアは先生の語った宿題、不可能な証明に向かうことを決意しています。たぶんこのときから、タイミングの神様に邪魔をされながらも百合園セイアは一生懸命走り続けました。ゴルコンダの語る文学的な結末に陥りそうになっても、絶対に諦めませんでした。

 私にとっての今の百合園セイアのイメージは、だから、とてもかっこいい人です。なんだか、どんどん大人になっていきそうで、寂しい気すらするほどに。ティーパーティーで最初に好きになったのが、百合園セイアでした。たぶん、そのときの何百倍も何千倍も、私は今百合園セイアが好きです。

 桐藤ナギサは愛情に包まれてほしい人です。彼女の優しいところは、先に語ったポストモーテムだけでも語り尽くせないほどあるのですが、この人の聖園ミカへの愛情の深さといったら……。この愛の人である桐藤ナギサが疑心暗鬼の闇の中で悪役になっていたエデン条約2章、つらすぎです。阿慈谷ヒフミのピックアップタイトルは「ひたむきな愛を紡いで」ですが、そんなところもきっとナギサは好きだったんだろうなと思います。似たところだと思います、ふたりの。公式のティーパーティー3人勢揃いピースのイラスト、ありますよね。あれで一番情緒を乱してきたのがナギサでした。ミカとセイアと一緒に、3人でピースする。そんな未来にナギちゃんが辿り着けたこと、本当に嬉しく思います。こんな優しい人がゲヘナで温泉開発部使って会場爆破するんですから、人の精神を追い詰めるというのはやってはいけないことだと思います。レッドウィンターが誇る同人作家姫木メル先生、ティーパーティー桐藤ナギサ総受けは解釈一致です。どうやったらコミセンに行けますか? どうやったらその本買えますでしょうか……。助けてほしいのですが。ティーパーティーが3人でいるとき、ナギちゃんが幸せそうだと私がしあわせです。

 聖園ミカ。どうにかなりそうなくらい彼女を思ってきました。プールサイドでのあの語らいを何度読み返したかしれません。最初は聡明で慎重な人だと思いました。裏切りを見てその悪逆にテンションが上がりました。ポストモーテム3で、自傷的な一面を見て更に狂い、たしか3章後編ではすぐに彼女の弱った姿を受け止められませんでした。生徒にはそういう一面もあるとわかっていながら、聖園ミカがそうなるなんて、という動揺がすごくあったと思います。そして3章でいっしょになった三人を喜んで、3rdPVでのミカっぷりに笑って。

 4章では心をへしおられそうになりました。心をへし折られるのは大好きなので幸福な体験だったのですが、つらかったです。3章後半でうまく消化できなかった聖園ミカの弱い部分をこれでもかと理解させられました。強い部分もです。強い部分といえばやっぱり戦闘面が思い浮かびますが、特に咄嗟の場面における頭の回転に彼女はたいへん優れていると思います。色んな人から愚かだと言われる彼女なのですが、その判断に感心することが多かったように思います。それと浅慮だったりお花畑だったりする部分は両立するのですが。たくさんの意味で行動が読めないので絶対に敵対したくないです。

 下江コハルとの関係性はどきどきさせてくれます。ミカからコハルへの最初の印象は、ただのおバカさんでした。確かにちょっとどうしようもないところがあるそんなコハルが、一生懸命ミカを暴力から守りました。きっとナギサとの思い出などが詰まっているであろう私物も、一部ではありますが守ってくれました。彼女をヒーローではなくて、彼女こそが自分が理想とするお姫様だという風に見ていたのがエデン4章、少女たちのためのキリエで明示されたとき、そうだったのか、となんだか腑に落ちるような思いがありました。下江コハルこそ子供っぽくて夢にあふれて素敵で胸がときめくようなお伽噺の主役に相応しいとミカは心から思っていたのです。そんなミカが下江コハルの危機に駆けつけた最終編2章――ミカコハは、ありました。コハルがミカの想いの重さをよくわかっていないところを含めて、あれで完璧でした。

 スクワッド、錠前サオリとの関係性がまさかこれほど素敵なものになるとは思ってもみませんでした。最初は仲良くしようとしたミカと、狼狽えたサオリ。便利に使おうとしたミカと、利用したサオリ。最終的には魔女と猟犬となり、サオリはミカの気持ちを当然だと受け入れて、ミカもまたサオリは自分だと思うに至りました。二人が互いの疵痕を語るシーン、あの痛みはたぶんあの二人でないとわかり合えないのだろうと思います。ミカとサオリがお互いに通じ合えてよかったと思います。滅茶苦茶仲良くなってほしいです。聖園に錠前サオリをとられてブチギレヒートアップしている戒野ミサキがどうしても見たいです。できれば気づいた聖園にミサキを煽ってもらいたいです。知識解放戦線にお願いすれば一冊いただけるでしょうか。

 ナギちゃんとの関係についてはたくさん語りましたのでひとつだけ。もっとナギちゃん大好き、とべたべたしてくれるとナギちゃん嬉しいと思います。私も嬉しいです。でも幼馴染みでそういうの恥ずかしいですよね……わかります。ナギちゃんあんまり困らせちゃだめだぞ!!!

 百合園セイアに初手煽りから入る女、聖園ミカ。気に入らないってずっと思っていたのだろうし、セイア側も好きではなかったのだろうと言っていました。そんな二人の今の関係が私は滅茶苦茶好きです。百合園セイアへの罪の気持ちと百合園セイアを思う気持ちが4章のミカの心にずっと溢れていました。先述のとおり、セイアはミカのために自分の本質すら手放して、ミカは万魔殿がセイアちゃんの話をまともに聞かないだけでブチギレそうになるほどになります。いいぞもっとやれと姫木メル先生もたぶん仰っています。時々本気でカチンときて口喧嘩しつつ、それでも好きだと思い合う二人であってほしいです。ティーパーティーのイベントまだですか!? 気が狂いそうなんですけど!!!

 先生とミカの関係について。私は確信を持って例の選択肢で下を先生に選んでもらったプレイヤーです。まず、先生にとって生徒というだけで特別な存在であることは言うまでもありません。「大切な生徒」であるというのが、何にも代えがたいあの人からの特別視なのです。それを前提として、私は下を選んでいます。すごく単純に、あの人は生徒が喜びそうな言葉を喜びそうなタイミングで言う人だからだと思ったからです。お姫様呼びしてそのように扱うことは、エデン4章以前にセリカに対して行っていますし、エデン4章以後の時系列と思われる姫のバレンタインについてもそうです。あの人はそういう人、というのが私の考えでした。

 上もあり得るぞ、と思ったのは聖園ミカが実装されたときです。彼女の絆ストーリーでのすごく距離感に気を遣った先生の振る舞いを見ると、責任をもって末永く聖園ミカと付き合うという覚悟のもと、自分とミカが深く繋がりすぎないように、傷を癒やすのが遅くなったとしても上を選ぶ、という形があり得るのかなと思うようになりました。

 それでも私は下を先生に選んでもらったプレイヤーで、今ではそれを自信満々というよりは罪深いことをしてしまった気持ちで甘いような苦しいような思い出として抱いています。いずれにせよ、ミカの心を罪深くもぶち抜いてしまったかそうでないかだけで、彼女を救った言葉は4thPVが示すように、きっとあれだったのだと思います。

"ミカは魔女じゃないよ。"
"ミカは、人の言う事を聞かないだけの不良生徒だ"

エデン条約4章忘れられた神々のためのキリエ「無限の可能性」


 最後に。聖園ミカを思って徹夜で書いたSSは、私のなかで最高の出来になりました。下を選んだ先生と聖園ミカを、青空の下に導く物語です。感想を書くのもすごく楽しいですが、ぜひ好きな関係性について怪文書を書き殴ってみませんか。エディタを開いてキーボード叩くだけなのですぐできますよ! 私は今、たいへんミカセイSSを読みたいです。何卒よろしくお願いいたします。

聖園ミカへと堕ちていく。 | 与吉 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19237591

対戦、ありがとうございました。

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