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親愛なる友へ、その箱は危険だ。『The Room』

謎の箱と探求の始まり

 『The Room(以下本ゲーム)』はsteam及びGoogle playストア、Appストアで販売中のパズルゲームだ。定価はsteamのストアでは日本円で498円。本ゲームは全部で4+エピローグの計5つのチャプターで構成されている。


 注意事項として、本ゲーム及び続編の『The Room two』のsteam版は日本語に正式対応しておらず、今回紹介するスクリーンショットでは非公式日本語化パッチを導入している状態である事、また紹介にあたりネタバレを多分に含む事の2点をあらかじめご了承いただきたい。

 まずはチュートリアルだ。ゲームを開始した時、プレイヤーは薄暗い部屋の中に一つの巨大な金属製の箱が鎮座しているのが見えるだろう。

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 この金庫を開ける事がチュートリアル及びチャプター1のゴールだ。見るからに頑丈そうで力づくでは壊せそうにない。金庫の上で見つけた封筒によると、開けるにはこの金庫に施された仕掛けの数々を解かなくてはならないのだという。そして手紙の主はそれを助ける為のアイテムを用意してくれた。それが封筒の傍に置かれている箱だ。手紙に接着されていた鍵を使いそれを開けると、中には一つの奇妙な片眼鏡が入っていた。それには肝心のレンズが入っておらず、ただの丸い筒を覗くのと同義。プレイヤーの最初の目的は、この片眼鏡に合うレンズを見つける事だ。

 謎を解いた事で金庫からレンズを見つけ、眼鏡に装着する。そして再度眼鏡を覗き込んだ直後、視界が一変した。

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 プレイヤーの視界の先に映るのは、淡く光る水色の魔法陣。そう、この眼鏡を覗く事でプレイヤーは箱に記された奇妙な模様や文字を視認できるのだ。この眼鏡を用いる事で金庫に施された最後の仕掛けの解き方もわかり、金庫の扉が開かれる。


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 開かれた金庫の中には、これまでとは別の仕掛けの金庫が収められていた。

 ここでチュートリアルとチャプター1は終わり、チャプター2へと続く。

美麗で不思議な箱の世界

 これまでは世界観に合わせた説明をしたが、ここからはゲームシステム面についてのレビューをさせていただく。

 評価点はやはり一番は世界観だろう。一見すると次々に現れる不可思議なギミックの箱を開けるだけのパズルに思える本ゲーム。しかし、その箱のギミックその物が一種の世界観を構築している。例えば、チャプター1の金庫。様々な仕掛けによって厳重に守られた「何か」をプレイヤーに認識させ、それが何なのかという想像を掻き立てるものとして位置づけられている。

 個人的にはチャプター3からチャプター4に移行する際のギミックが特にいい意味で印象に残る物であった。世界観ががらりと変わるあの瞬間は是非これからプレイする人達に味わってもらいたい。

 また、ギミックが箱ごとの世界観を壊さずにしっかりと意味のある存在として確立している事も見逃せない。この手の仕掛けを解くパズルゲームでは、時折そのゲームの世界観に合致しない解き方を要求してくる事があり、それに納得がいかずプレイングへのやる気が削がれてしまうという経験が少なくなかった。しかし本ゲームのギミックは、チャプターごとに大きく異なる雰囲気と解き方を上手く調和させたものとなっており、そういった印象は全く感じさせなかった。

 また、綺麗なグラフィックと光のコントラストが一種の芸術作品として本ゲームを成り立たせているのも魅力だ。パズルゲームというのはいかにパズルを見事に解体していくか、あるいは組み上げていくかという点に楽しさがあると筆者は考えている。本ゲームのそれは筆者の欲求を十分に満たしてくれるものだった。チャプター1の薄暗い部屋にわずかに差し込む光、そこに鎮座する巨大な金庫、初めて眼鏡を通してみる異質な世界……。それらが鮮やかなグラフィックと陰影で見事に描かれていることに感動すら覚えた。

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 ↑謎解き用の望遠鏡。色合いや質感、細かな傷などもはっきりと表現されている。


 反面、残念に思ったことも少なからず存在している。まずは操作性だ。このゲームはスマートフォンでもアプリとして配信されており、シリーズの展開も現在はそちらがメインとなっている。その影響なのか、steam版のマウス操作もそちらに引っ張られているように感じられた。例えばアイテムを使ったり鍵を回したりするときのドラッグ操作、チャプター2でのある仕掛けの解き方が該当する。マウス操作だと判定の関係なのか操作し辛い場面がしばしば起こり、ストレス要素となってしまっている。

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 ↑チュートリアルの鍵。マウスドラッグで先端を回転させることができる。これの操作が少々癖がある。ビジュアル面ではやはり錆び具合の表現が見事

 もう一つは判定のシビアさだ。これは上述したスマートフォンでの操作をマウス操作に持ってきた事も少なからず影響しているのだが、このゲームではしばしばマウスドラッグによる絵柄合わせを要求される。これが非常に判定が厳しく繊細な動きが必要になってしまう。再度プレイした時には慣れて感じなかったが、当時はかなりストレス要素になってしまっていた。

 しかし、これらの難点を考慮してもビジュアル、ゲームデザインの鮮烈さは見事としか言えない。本ゲームは間違いなく良作だと思う。惜しむべくは、ゲームの魅力を直に体験してもらいたいがために自分の最も見せたい場面を伝えられないという事だ。

 steam版は最初から買い切りだが、アプリ版はGoogle playストア、Appストア共に序盤は無料でプレイできるため、興味をお持ちの方はそちらで雰囲気を味わってから購入を検討してほしい。


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