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日本酒「鶴齢」の青木酒造さん訪問記

銘柄「鶴齢」「雪男」「牧之(ぼくし)」でお馴染みの酒蔵
新潟県南魚沼市塩沢にある青木酒造さんを見学してきました。

創業は1717年。
なんと今年で305年目!
魚沼地域では最も古い酒蔵です。
蔵の佇まいも素敵✨ 
ここ塩沢宿牧之通りは、18年ほど前に街づくりの見直しをして 風情ある雁木造りの家屋に統一した
美観地区の中にあります。

美しい牧之通り


専務の阿部さんに詳しくお話を聞き、蔵内を案内していただいたら 色々と目から鱗なお話が聞けたのでご紹介しますね!

阿部さんにご案内いただきました



【まずは水】
蔵の中には3つの井戸があり、
日本百名山のひとつ巻機山の伏流水が豊富にわき出ています。

地下80メートルからの井戸は軟水で仕込み水用。
地下100メートルからの井戸は外の雪を溶かす水として利用。
地下160メートルの井戸もありこれは超軟水。
これは日本酒のアルコール度数調整のための割り水に使用しています。


【米】
新潟県のみで栽培される酒造好適米「越淡麗」を県内では一番多く使用している蔵です。
他、山田錦は兵庫県産・雄町は岡山県産など、各地の契約農家さんにお願いしています。
収穫時などには各地に出向き手伝います。


【酒質について】
新潟県の日本酒といえば淡麗辛口。
一方、鶴齢はさらりとしつつも米の旨味が味わえる酒。しいて言うなら「あっさり旨口」かな。
香りは立ちすぎず穏やかに。
優しい米の甘みで飲み飽きすることがない、私も以前から大好きなお酒です。
まわりにも好きな人は多い鶴齢。

オカン「昔から酒質は変えたんですか?」
阿部さん「いえ、鶴齢は昔からこの味なんです」
オカン「ええ〜っ!びっくり」

なんで淡麗辛口じゃないの?
その秘密にせまります。

【新潟県は長いのです】
新潟県は南北に長くて、端から端まで約250キロ。九州の縦の長さと一緒なんです!
それだけ広いなら地域によって味の傾向や好みが変わって当たり前。

新潟は長い!


「新潟のお酒は淡麗辛口」とひとくくりにできないのです。
ちなみに魚沼地区は米で有名なほか 大変な豪雪地帯なので干物や漬物などの保存がきく食べ物が多いです。
田んぼ仕事をしてきて漬物や味噌、干物をアテに日本酒を…となると 合うお酒は「白米のように優しい甘さとホッとするまろやかさ」のある味。

まさに鶴齢の味ってこの地方の地酒なんですね。

【淡麗辛口ブーム到来】
1980年頃に訪れた日本酒の「淡麗辛口ブーム」。
久保田、〆張鶴、越乃寒梅…etc.
良い酒と言えば新潟の淡麗辛口!となった時代です。

同じ魚沼地区でも八海山がどーんと売れ、さらに大変なブームになったのが上善如水(じょうぜんみずのごとし)。私も25年前飲みました!

どちらも生産が追いつかず地元では一切手に入らなくなりました。
そんな中でも鶴齢は淡麗辛口に切り替えることなく昔からの味を守り、人気の酒が新潟から消え全て東京向けに出荷されたときに、越後の地酒として地元の人々が飲んでいたのが鶴齢です。


【通年お酒造りができる設備】
ひと昔前までは 酒蔵といえば杜氏さんも出稼ぎ、蔵人は季節雇用、でしたが冷蔵設備やタンクの温度制御ができる設備を入れることで通年お酒造りができ、結果働くひとたちも全員社員として保証のある雇用ができるようになりました。
青木酒造さんでも9月から酒造りをスタートし、翌6月でいったん終了。7〜8月で蔵内のメンテナンスをするという3季醸造を行っています。

発酵中のお酒、良い香り



【鈴木牧之が命名】
鈴木牧之は明治7年にこの塩沢で生まれた商人であり随筆家。
代表作は『北越雪譜』。
この作品は雪の結晶、雪国独特の習俗・行事・遊び・伝承や、大雪災害の記事、雪国ならではの苦悩など、地方発信の科学・民俗学上の貴重な資料となりました。
また画も巧みで、馬琴に『南総里見八犬伝』の挿絵の元絵を依頼されるなど。
家業の小千谷縮にも商才を発揮し、財を築いただけでなく貧しい人への救済も行ったりと頼れる地元の有力者的存在でした。

牧之の次男が青木酒造(当時の平野屋)の七代目として婿入りしたという縁から、牧之が酒の名前を「鶴齢」と命名。
そして全国鑑評会等に出品する特別な日本酒は「牧之」という銘柄になっています。


【薄荷屋さんもやっていました】
塩沢では昔から薄荷草(和ハッカ、和製ミント)が自然によく採れたようで、1830年(天保元年)頃からハッカを蒸留して精油を抽出し、薬として売っていました。
頭痛、足の疲れ、咳止め、かご酔い(江戸時代も乗り物酔いがあったんですね!)、気つけ、暑気払いに効果があると大流行し、海外にも渡ったそう。

平野屋(現青木酒造)で薄荷油を製造販売していた記録も残っていて、当時の看板の一部は大切に保存されています。
また当時のパッケージを忠実に再現した薄荷油も買うことができますよ。

私はアロマテラピストを長いことしていましたので、江戸時代に精油(要はアロマオイル)蒸留が行われていたこと、薄荷の薬効が正確に広まっていることに驚きました。

昔のままの薄荷油
残っている看板の一部



そんな素敵な酒蔵 青木酒造さんの鶴齢。

限定品も含めてたくさん仕入れてきましたので、飲みたい方は是非いらしてくださいね。


2月にはご案内してくださった阿部専務をお迎えして六本木で「鶴齢の会」を開催しまーす♪

今後も応援し続けたい素敵な酒蔵さんでした!

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