要約②登山家たちを陥れた小さな罠~無意識のうちにリーダーを決めてしまう罠

・1996年、登山史上極めて悪名高い「エベレスト大量遭難事件」が起きた。当時の状況を生存者の多くが自分なりに語っているが、事故の原因やそこから学ぶ点において意見の一致はない。責任の所在を明らかにしたいという心情が働きやすい出来事において、当事者間で激しく異なる証言が出てくるケースはよくある。

・登山の場合、自分や仲間の消耗状態や直面している状態、雲の厚さもみな異なる。
登山はいわゆるVUCAな環境で行う活動だ。
様々な視点から有益な情報や視点の共有が大事。また、最終判断を誰が下すのかも大事。

・序列・ヒエラルキーは霊長類だけでなくロブスターにも存在する。支配者は威圧し恐怖で支配してまわりを動かそうとする。威圧環境では、異議の言いにくい、多様な意見が出にくくなる。ヒエラルキーがコミュニケーションの邪魔をする。飛行機残燃料が足りない時も、機長に燃料が足りません!とは言えないクルー。この心理状態は特別なものでない。30件以上の墜落事故が進言できなかったことに起因するとされる。わざわざ自分が言わなくても、リーダーなら知っているだろう、という従属者心理がプログラミングされている?

・エベレスト登頂事故。過去4回登頂成功しているリーダーのチームは、エベレストへの思いを些細なことまでみんなで共有し団結力を高めることに重きを置いた。そして、登頂直前にメンバーへ伝えた。「山での反論は一切認めない。私の言葉が法律だ。申し立ては認めない。私の判断が気に入らなければ、後でいくらでも話し合うが、山の上では受け付けない、とリーダーに追従することが大切である」と。積乱雲発生の異変に気付いていたパイロットは、些細なこととして、一切伝えなかった。パイロットは積乱雲はとにかく回避するべき、と叩き込まれていたのに。

・事故が発生した。大半が死亡。この事故から見えたものは「団結力が必要なことはチームにとって重要であることは疑いがないが、それだけでは足らない。複雑な状況ではお互い献身的なチームであっても、多様な視点や意見が押しつぶされている限りあるいは重要な情報が共有されない限り適切な意思決定はなされない。
これは、会議が無駄である、という事と同じ現象だ。
順位がある限り、一人二人が主導権を握るとその集団の視点や意見は抑圧される。


・一般的に4人のグループであればそのうちの2名が66%の発話、6人なら3名が70%。しかし、話している当事者は全員が平等に話をしていると感じている。それは、自己認識不足が原因。
同調は他の人が正しいと思うというよりは輪を乱す人間と思われたくないと考えるから。だから、リーダーに反論するのは難しい。
集団の失敗は「会議をしたにもかかわらず」ではなく「会議をしたから」失敗した。特定の人しか話をしていないにもかかわらずみんなで話したと思い、そして、みんな同調しているから正しい判断である、と間違える。

・Googleは、完全にフラットな組織作りを目指して、管理職の廃止を決定したことがあったが、失敗に終わった。方向性を定め、円滑な協力体制を促す管理職は必要で、リーダーが複数いると責任の所在が曖昧になる
・ヒエラルキーvs情報共有、決断力vs多様性のバランス要
・2つのヒエラルキー:支配型vs尊敬型

・集団の表情やしぐさで誰がリーダーかわかる
・支配型:アイコンタクトを避け、距離をとる
・尊敬型:じっと注意を向け、話をよく聞こうとし、近づく
・ゼロサム(支配型)vsポジティブサム(尊敬型)
・尊敬型リーダーは、仲間がそれぞれ柔軟に判断し、実行してくれると信じているから、考えを集団に丹念に伝える
・誰もが自由に意見を出し合える「心理的安全性」

・計画を実行するには支配型、イノベーションなど多様な視点が必要なときは尊敬型、両方が必要だし、バランスが鍵
・Amazonの「黄金の沈黙」で、客観的に議題を見る
・「ブレインライティング」で、匿名化した多様性を確保
・従属者が木を見てくれるから、リーダーは森を見れる
・状況が複雑で不確かなときほど、支配型リーダーが求められるが、こういうときこそ多様性が必要と言う矛盾



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