マガジンのカバー画像

短編小説

34
noteで公開している短編小説のまとめです。 ファンタジー・童話・不思議な感じのものが多いかと思います。
運営しているクリエイター

#現代ファンタジー

処方妖精【短編小説】

 真面目に働かなくちゃいけなかった。失敗もしないで、完璧にこなさなくちゃいけなかった。  でも最近、それができなくなった。ミスばかり。焦ってばかり。  いままでできていたのに。だから病気を疑った。病院で薬をもらえば、また元のように頑張って働けると思った。 「働きすぎ、頑張りすぎですね。きっと見えるでしょうから、妖精を処方しましょう」  妖精? そういう名前の薬があるのかと思ったら、本当に「妖精」が処方された。 「やはり妖精が見えますね。この妖精は基本的に二週間ほどあ

深夜のコンビニ、狐面と【短編小説・後編】

「夜中に子供が出歩いちゃあ、まずいよ」  狐面はコンビニを出てすぐのベンチに腰を下ろした。隣に袋を置いて、自分のお酒を取り出す。レモンの絵が描いてある。プシュッ、と音がして缶が開けられる。それを狐面は、その狐面を外すことなく、飲む。まるでお面が顔そのものみたいに。 「特に今日は特別な日で、あちらとこちらが混ざり気味だからなぁ」  狐面は空を指さす。今になって僕は気付いたものの、空は真っ黒だった。月も星もない。 「お財布返して」  僕はすぐにそう言った。狐面は「そうだ

深夜のコンビニ、狐面と【短編小説・前編】

 時計を見ると「0:00」と出ていた。今日だと思っていた日付は昨日になって、新しい日付が時間の下に表示されている。  なんとなく学校に行けなくなって、ついに一か月が経ったのだと、僕は気が付いた。  行った方がいいのはわかってる。中学校。小学校の頃みたいに、あまり遊んではいられないと、わかっている。  でも、なんとなく行きたくなくて、僕は結局どうしていいかわからずに、ベッドの上で、炒められている野菜みたいに転がる。  もう深夜。本当なら寝なくちゃいけないけれど、学校にも行か