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幸せとは


最近社内で「幸せアンケート」なるものが回ってきて、結構な圧で回答を強いられる。ここ一ヶ月で幸せを感じた時の画像を提出しなければならないのだけれど、私はこのアンケートに対して必要以上に憤りを感じてしまっている。
「自分にとっての本当の幸せ」を深掘りしはじめると、字数制限を設けられた回答欄ではとても答えきれないし、簡単に人に話せるものでもない。
こんなアンケートひとつをばかみたいに重く捉える人間も少なかろうが、長いことひとりで考えていた題でもあるので、憤りをエネルギーに少し言語化してみることにする。


そういえば、作品と呼べるものをつくらなくなってから平気で一年以上が経った。多分私は「絵を描かなくても生きていける」側なので、それなりに楽しみもあり日々充実している。ただ描かなくても生きてはいけるけど、幸福に生きるには描くことが必要な条件なんだろうということは、うっすらと分かってきた。
とはいえ何も描けていない今がまったく幸福でないかというとそうではなく、見出そうとすれば日々いくらでも幸せはある。ただそれは限りなく表層的なもので、「カメラを向けられたからとりあえず笑っている」ような精神状態が近いかもしれない。

欲求の段階をピラミッドで表現するのに対して、幸福は底に向かって深まっていくイメージが自分の中にはある。最初は地層の断面図のような縦に長い形状を思い描いていたけど、考えていくうちに三層くらいの円がしっくりきた。内に向かうほど本質的に必要としている幸せだとすると、私にとっての核は圧倒的に「ひとり」だ。

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〈外側〉

気心の知れた人との対話
受動的に得る情報

興味関心のために行動をおこす
欲しいと思えるものを自分で選んで集める

好きなものを自分なりに表現する
思考を何らかの形で外に出す
(今これを打っている時間も、ちょっと気持ち悪いくらい楽しい)

〈内側〉
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幸せの核は最深部にあるので、それを得ようとすると相当に潜り込まなければならず、しばらく浮上できない(したくない)状態になり、外側の幸福をたくさん諦めざるをえなくなる。
外側だけでも生きてはいけるが、常に自分の中央に空虚を抱えることになる。(これが今の状態)
どちらかしか選べないのに、内外全てが揃うまで幸せが完成しない。我ながら欲が深い。

こんな「いかにも陰の者である」といった性質のわりに外向きの時はかなり溌剌としているので、内側との温度差に驚かれることも少なくない。
不思議なことに、無理をして明るく振る舞っているわけではなくあれはあれで本来の自分で、内も外も合わせて一つの個体という感じがしている。
だからこそ、内面を出力した作品を前にしながら見に来てくれた方と話をする「展覧会」という場は、内外の乖離がほぼなくなる稀有な時間だったんだと今になって分かる。間違いなく本来の自分が最もよろこんでいたと思う。

それなのに、今となっては絵を頑張っていた当時の自分を恥ずかしいとさえ感じる。何だったらこんなに拙いのに絵を描くのが好きだとまだ思いたがっている自分が丸ごと恥ずかしい。
にも関わらず、この一言でまとまりきらない思考を前向きに出力する手段はやっぱり絵がいいみたいで、私の言いたいことを託せるモチーフをいつも探している。今特に興味があるのは、脳内の状態を何かに例えることだろうか。

こうやって文字を打っている時特有の、暴走する自意識を一回原っぱに放牧して宥めてから整列させるような感覚をどうにかして描けないか、とか
絡まったまま放置してる思考をちょっとずつほどいて編む、みたいなことを説明的になりすぎないように形にできないか、とか
こんなことを考えている時の自分が一番自然体で喜んでいる。他者との関わりの中で得るものも勿論あるが、圧倒的に消耗することの方が多い。

今後どんな転機があったとしても、外向より内向、享受より出力に強い幸福を見出す性分は変わらないだろうし、少なからずこれに近い感性を持っている…もしくは理解した上で尊重してくれている人との縁が、今でも切れずに続いている。

人によって何に幸せを感じるかは当たり前に違って、自分のような性質が多くの人に理解されないことも分かっているので、波長の合う貴重な人たちをできる限り大事にしたい。それと同じくらい自分の意思も殺さずにいたい。私だって大事にされたいと、最近やっと言えるようになってきた。この歳になっても未だに周囲の誰かによる救済を期待してしまうけど、結局何をもって幸せとするかは自分にしか分からないということを度々痛感する。

潜る気力も時間も本当はもっとほしい。潜水士にならなくても、潜るのを楽しんでいいと思いたい。潜って何も得るものがなくても、潜ること自体が自分に必要なことだと言えたらいい。

なんにせよ、こんな呑気なことで悩めるのは幸せでしかないわね。

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佳
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