見出し画像

VFからの波形変化は神経予後に関連するか?


はじめに

院外心停止の患者の中で、救急隊接触時の波形がVF(Ventricular fibrillation)やpulseless VT (ventricular tachycardia)の患者は特に重要です。

これらの不整脈は除細動により洞調律に復帰し自己心拍が再開する可能性があり、予後良好であることが期待されるからです。

では自己心拍が再開しない場合は?

VFが継続する場合、難治性VFとしてECPR(体外循環を用いた蘇生)の治療適応と考えられます。

では、VFがPEA(Pulseless electrical activity)や心静止に波形変化してしまった場合は?予後はよいのか?ECPRをするべきなのか?後輩の救急医が疑問に思っていました。

これらの疑問の解決の一助となる研究を後輩が実施してくれましたので紹介します。本記事は下記の論文の要約と紹介です。

Association between cardiac rhythm conversion and neurological outcome among cardiac arrest patients with initial shockable rhythm: a nationwide prospective study in Japan
Kenji Kandori, Yohei Okada(corresponding), et al. European Heart Journal. Acute Cardiovascular Care, 2020

本文リンク

研究の要約

目的
本研究の目的は,現場で初期波形がVF/VTの除細動適応波形の院外心停止患者における病院到着時の波形変化と神経学的予後との関連を明らかにすることであった。

方法
研究デザインとセッティング:
日本救急医学会主導の院外心停止の多施設前向きコホート研究
(JAAM-OHCAレジストリ2014-2017)

対象患者:
初期波形がVF/VTの内因性院外心停止の成人患者で病院到着時に心停止が継続している患者

解析方法:
ロジスティック回帰分析を用いて病院到着時PEAと心静止の 1 ヵ月後の良好な神経学的予後の調整オッズ比と 95%信頼区間を推定した。

交絡として年齢、性別、目撃の有無、バイスタンダーCPRの有無、病院搬入前のアドレナリン投与、病院搬入前の高度な気道確保、病院搬入までの時間を調整した。

結果
34754人の患者のうち1880人が解析に含まれた。

病院到着時の波形別の1ヶ月神経予後良好の割合は、
VF/VTが継続: 17.4%(137/789例)
PEAに変化: 3.6%(18/507例)
心静止に変化: 1.5%(9/584例)
であった。

VF継続と比較して神経予後良好の調整オッズ比は
PEA: 0.19(95%CI、0.11-0.32)
心静止: 0.08(95%CI、0.04-0.16)

であった。

結論

初期波形がVF/VTの院外心停止患者の中で、病院到着時の波形がPEAや心静止に変化していた症例は神経予後不良と関連している。

まとめ

この研究からVFからPEAや心静止に移行している場合は神経予後不良と関連している事がわかりました。
この結果から病院到着時の波形はECPR実施の意思決定など一助になる可能性があると思われます。


ECPRに興味があれば、よければ下記の記事もご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?