記事一覧
カフカ『雑種』で比べる版と訳のちがい その2
マックス・ブロート版の加筆
『雑種』では、大きな違いがいくつかあります。
語り手は、日曜の午前(集英社版は午後)に限って子供たちに羊猫を見せている。その際、子供たちからさまざまな質問が飛んできます。
批判版では質問の描写はありませんでした。
ところが史的批判版には質問が飛び交っています。
犬にもなろうとしている羊猫
マックス・ブロート版はさらに長い加筆がされています。
話は進み、半分羊と
カフカ『雑種』で比べる版と訳のちがい その1
カフカの小説は、版によって内容が少々違う
カフカが1924年に亡くなった後、友人のマックス・ブロートがカフカの遺稿の管理人となりました。
カフカ自身は遺言で、すべての遺稿を焼却するように、友人のマックス・ブロートに頼んでいましたが、ブロートは自己の信念に従い、生前未発表であった長編『審判』、『城』、『アメリカ(失踪者)』を始めとするカフカの遺稿を次々と公刊していきました。
ブロートによるカフカの
2022年読んだ本ベスト10
1.『秘密の知識―巨匠も用いた知られざる技術の解明―』 ディヴィッド・ホックニー 青幻舎
『いい絵だな』で紹介されていて、あまりにも衝撃的だったので、いったん、読むのをやめて本書を借りて読んだ。
ルネサンス以降の絵画が光学機器を使ってトレースしていたという説をあらゆる角度から論証していった本である。
以下はこちら
2.『プロジェクト・ヘイル・メアリー』アンディ ウィアー 早川書房
あ
2022年に観た映画ベスト10
1.リーマン・トリロジー
正確には映画ではなく、ナショナルシアターの芝居動画なのですが、すばらしすぎて今年の1位。
演出はサム・メンデスで、これまでの最高傑作の呼び声も高く、実際、監督の中で一番好きな作品となりました。
1884年に米国移民としてやってきたリーマン家の男たちが、綿花仲介業から米国有数の投資銀行になり、リーマンショックを引き起こすまでの124年を、おじさん3人の俳優が演じます
『においが心を動かす ヒトは嗅覚の動物である』 第3章までのまとめ
『においが心を動かす ヒトは嗅覚の動物である』を読んでいる。
第3章になって、ようやくおもしろくなってきたので、メモ。
1991年に嗅覚受容体遺伝子が発見されたことで、嗅覚の研究は一気に神経科学の主流に躍り出ることになった。これまで容易でなかった研究に、突然に資金が集まり、研究者の数も激増していく。そして観察できないものを視覚化し、不確かなものを測定できるツールが開発されたようになった。つまり、
2021年の読んだ本のこと
2020年に読んだ本で圧倒的に面白かったのが、ベン・マッキンタイアー『KGBの男』だった。(ちなみに2020年愛すべき本は内澤旬子『着せる女』)
2021年は82冊読んだが、昨年ほど強い思い入れはないので、図書館で借りた本を含む13冊をざっと紹介する。本の内容はリンク先の出版社サイトを参照ください。
呉 明益/小栗山 智 訳『複眼人』2015年6月に『歩道橋の魔術師』刊行イベントの際に、著者がパ
今年のベスト1は『KGBの男:冷戦史上最大の二重スパイ』。
さて、今年のベスト1は『KGBの男:冷戦史上最大の二重スパイ』。
名作映画『裏切りのサーカス』の原作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』は、MI6の中にKGBに情報を流しているスパイを探す話ですが、これには実在のモデルがいました。この男によりMI6は壊滅的なダメージを受けたのですが、本作はその後の話で、KGBにいながらMI6に情報を流し、KGBに相当のダメージを与えたスパイの話です。
主