2020年3月のこと
長い間堰き止められ淀んでいた水が、急激に流れ出すようなことが自分の人生に起こるなんて想像したこともなかった。
2020年3月末で満24年勤めた会社を退職しました。
ここ数年、このままのペースでいたらどこかに歪みが来るという自覚はあったものの、今まで通りその気持ちをなだめながら、生活を変えることなどできないと思っていた。
年末に体調を目に見えて壊し、心療内科に通いながら「でも働けているし」と過ごしていたのだけど、朝起きたら体調がいつもより悪いので珍しく休んだのが3月始め。
その日「会社も休めないのに、会社を辞められるわけがない」と一瞬思ったのは事実だが、午前中にゆっくり眠ったらいつも通りの体調に戻ったので次の日に「昨日はありがとうございました〜」と出勤したら、上司に開口一番、
「体調どうなん?」
と聞かれ、辞めることを視野に入れてたのか、そうなってもいいように、
「体調いいときがわかりませんね〜」
と無意識ながら答えたら、私が休んだことにより社長と上司が私が心療内科に通っていることや、私の体調を踏まえた今後の会社の方向性について相談していたらしく(前々からしているようだったけれど)、急に賑々しくなり詳しくは書けないが、私の進退が決まらないと会社のこれからも決まらないので、結論として
1.もう一人雇って私の業務を減らすか?(あなたの給料も減るよ)
2.辞めるか?(もちろん無給になる)
という二択みたいな感じになり(こう書くと乱暴ですがもっとオブラードに包まれています)、早口でまくしたてられるのが嫌いで、正直もういっぱいいっぱいで考えるのも嫌だったので、
このまま続けていくイメージが浮かばないし、体がもつかわからないし、給料減って副業も禁止だとやってらんないな〜
とその場で思ってしまった。
帰宅して母に相談したら、「体も心配だし、辞めたら?」と反対されなかったので、辞めることにした。年末から体調を崩してから考えていることを吐露しだした私のことを、母が心配しているのは明らかだった。
私は絶対に責められると思っていた母が1度も反対しなかったことに正直驚いていた。甘えられないと思っていた人に甘えていいとわかったことが、辞める決断の背中を押してくれた。
なんで母に甘えられないと思っていたのだろうか。そういう余裕すらなかったのかもしれない。
会社に伝えるなら早いほうがいいなと思ってはいたものの、次の日に出勤しても言い出すタイミンがなく1時間も過ぎてぼんやりしていた頃、上司が「4月に開催されるコミュニケーションの講習に行かないか?」と誘ってきたので、4月までいないかもしれないなと思い、
「辞めようと思ってるんですよね」
と告げた。
上司はその答えを予想していたのかいなかったのか表情からは読めなかったが、
「昨日は言いすぎたかなと家に帰ってから考えたけど、ヨチコさんがそう決めたのならそれでいいよ。タイミングを見て社長に言ってね」
と彼女に言われ、まぁ言ったことは消えないからな、と思いながら、この勢いを逃すまい(自分の)と、その足で社長に退職の意を伝えに行った。
社長は強く引きとめたりはしなかったが、詳しくは書けないが1時間半ほど話し「1、2週間くらい休んで気晴らしをしてみたら?」と考える猶予とお心遣いをいただいた。
休めって言われても…と思い次の日は出勤したけれど、結局言葉に甘えて1週間休むことにした。
もともと私がしていた業務の大部分を別に人に引き継ぎできていたことと、体調を崩した頃からもしものことを考えて、さらに細かい部分を引き継しやすいようにメモしたり整理していたりしたので、すんなり休めたし、休養中会社から連絡が来ることもなかった。
休養中は温泉に泊まりに行ったり、友人に話を聞いてもらったりしてゆっくり過ごしたが、後半になるにつれ会社に行かなければならないことをストレスに感じるようになって、再度勤務し頑張ろうとはどうしても思えなかった。
休み明けに出勤し、朝一で上司に辞めると伝え、そのまま社長にも辞めると伝え、今月末まで在籍したいが勤務は今週で終わりたいという希望を全部受け入れてもらった。
最後の1週間は、大それたことをしてしまったという気持ちと、楽になれるという気持ちが入り混じり、さすがに辞めると伝えた日は帰って丸くなって泣いたけど、自分の頭と体の中がぱんぱんに膨れ上がりもう少しで破裂しそうなことに気づき「これでいいんだ。この仕事以外だってやれることがある」と思えるようになって、最後の出勤日には晴れ晴れとした気持ちで、去年入ったばかりの同僚が拍子抜けするくらいあっさりと終わった。
しかも前夜友人に誘ってもらい日を跨ぐまで遊んだのでぐでぐでだった。まじめすぎるから業務が合わなかったと言われた私の最後が夜遊びでぐでぐでか、と思ったらおかしくなった。
出勤しなくなって最初の3日くらいは就職活動をする夢をみたが今はみないし、会社に行かなきゃ!という気にもならない。執着する性格だけど、もういらないと思ったらあっさり手放せる性格なのがいいのかも。
何もしなくていい日々が始まり、とにかく眠くて眠くて食事をしていても眠くて目があかないようになり、ちょっとしたことに過剰に反応して緊張するんだ、とカウンセラーのW女史と担当医に言ったら「会社で働くためにつけていた鎧がとれていってるんだろうね」と言われた。
今は体調と心を回復させることが最優先で、働くことをあまり考えないように、まじめ過ぎないように、頑張りすぎないように、と意識して生活しているけど、やはり働くことについて「働けるのかな?働きたいと思った時に職につけるのかな?」と不安になることは正直言ってある。
でも今はどうにもならないし、ネガティブになってもポジティブになっても時間は同じように流れるから、結局自分の気持ちの持ちようでこの先どうにでもなるのかもしれない、と思う訓練をしている。全部訓練。再度生き直している感じで、何気ないことを、ああ、これはこうなんだ、そうだったんだと思うことが増え(熱いお茶を魔法瓶に入れるといつまでも熱い、とか)、今まではそれを感じる余裕もなかったんだなと思うと、先が見えなくても辞めたのは間違っていなかったと思うのです。
この1ヶ月で経験したことや大きく動いた感情のことはきっとずっと忘れないな。今も守られ甘やかされて夢の中にいるみたい。
そのうち自分にあった働き方ができるようになった時にはこの経験がプラスになると信じて、励ましてくれたり付き合ってくれる周りの人にお返しができるように、同じように疲れてしまった人の支えになれるようになりたいなと思うし、できると思うのです。
元に戻りたいとは思わない。
新しい生き方をする私になりたい。