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6帖の宇宙

この春、私は一人暮らしを始めることになった。

1K6帖。
この部屋の支配者は私だ。

私は部屋を作る。

薄いグレーのラグに、まっさらな白地のローテーブル。グレーのゆったりとした座椅子。
白地のテレビ台の上に、小型のテレビ。
このテレビは社会を映し出すし、また、私の好きなアニメを映すこともできる。
もちろん、YouCubeやNetflexも。
リラックススペース(天国)ができたところで、次に背後のスペースを整える。

言うまでもなく、寝る場所は大事だ。
眠る環境によって、翌日の体調に大きく影響が出てしまう。
だから、ここだけは安心感のある場所にしたい。
ベッドを前に、私はうなずく。

白いベッドフレームには、白いマットレス。
更にこれまた白いシーツと、白いレース地のカバーをかけておく。
やはり、白は部屋全体を清潔感のある印象にしてくれる。
ふーっと息を吐いて、私は束の間ベッドへ倒れ込む。しばし休憩。
満足すると、そこへ星型のクッションを2つ投げ込んだ。これで、私は星を抱いて眠りにつくことができるのだ。

さて、最後に。
私は、日の光の差す方へ向き直る。
ここは、時を司る場所だ。

ふと、
「ああ、私が神だった頃、こんな風に時間や宇宙を創ったものだなあ」
と、思い出に浸ったのであった。

紺地に、星座柄のカーテン。
これで光を遮断することができる。
内側のレースカーテンは、白い雲の柄。
お気に入りの柄を買うことができたので、満足だ。

紺地のカーテンを開けると、光が差し込み、雲の柄が浮かび上がる。
私はこの6帖の朝を創り出すことができる。

紺地のカーテンを閉めると、光は遮断され、星座が浮かび上がる。
私は、この6帖の夜を作り出すことができる。

光と闇に支配された6帖。
光が差すと、1日が始まる。
闇に包まれると、1日が終わる。
その間に食事をする。働く。眠る。
私はこれから、この部屋と共に時を刻む。
この部屋と一体となる。
宇宙に溶ける。
時間に溶ける。

ここにいる間だけは、人間だということを忘れられる。

6帖の、果てしない宇宙に漂う。
6帖の、自分だけの世界。


星を抱く。


しかし、6帖という狭い空間とはいえ、こんな簡単に宇宙が作れるなんて。

ベッドの上でゴロゴロしながら、「お値段以上、と言うだけあるのだなあ」なーんて思ったりした。




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