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日本ではあまり馴染みのないMIX・Masteringの手法【Brauerize】

Brauerizeってなに?

Brauerizeとは、Michael Brauerさんが行っていたMIX・Masteringの手法で、結論から言うと『マルチBussマスタリング』という考え方です。
通常音圧を稼ぐためには、とりあえず2-mixを整えてからマキシマイザーやEQをStereo outにかけていくのが一般的だと思いますが、Brauerizeでは、一定のルールで4つ前後のバスに各トラックをまとめ、それぞれにコンプ・EQをかけ、それらをMIXすることで音圧とダイナミクス、豊かなローエンドを得ることができます。

何故今Brauerize?

このBrauerizeという手法は結構昔のアナログオンリーな環境で生まれており、『あれ?これってマルチバンドコンプあれば一発では?』と思われる方もいるかもしれません。
しかし、音圧戦争によって磨き抜かれた高い音圧に加え、豊かなローエンドやドラム・ボーカルなどのダイナミクスを損なわない、より高度なMIX・Mastering技術が求められる今、再度注目を集めています。
自分も色々勉強中ですが、そんな中Brauerizeに出会い、実践していく中で確かな手ごたえを感じました。
しかし日本語で解説しているものが見当たらなかったのでここで解説しようと思います。
個人的によくまとってると感じた以下のサイトを翻訳・要約しています。
以下のサイトには、Brauerさんが使用していた機材の代替プラグインのオススメセッティングや、オススメ無料プラグインとかも載ってますので、もしよかったら参考にしてみてください。
https://www.sonarworks.com/blog/learn/reaper-tip-michael-brauers-brauerize-mixing-technique

どうしてBrauerizeは生まれたか

もっとローを出してくださいという要望に応えようとすると、リードボーカルが隠れていってしまうという問題が発生します。
逆に言うと、ボーカルを目立たせようとすると、ローが薄れていきます。
最近よく話題になっている、しっかりとした『ローエンド』と『ボーカル』の共存は結構難しいのです。
そこでBrauerさんは、帯域ごとにセクション分けし4つ程度のバスにまとめ、それぞれコンプ・EQで処理することで目立つボーカルと豊かなローエンドを
共存させることができる手法を編み出しました。

Brauerizeの手法

①ルールに従って各トラックをを4つ※のバスにまとめる。
②各バスにそれぞれコンプ・EQをかける
③ボーカルにパラレルコンプする
④マスタートラックにまとめる
※4つじゃない時もあります。

当時BrauerさんはこれをSSL9000というコンソールでやってました。
(SSL9000はもういろんなプラグインメーカーがモデリングしているモンスターコンソールですね)
SSL9000には4つのステレオMIXグループがあり、これを活用してBrauerizeが生み出されたということです。
ではどんなルールでバスはまとめられていたのでしょう?

①のルールについて

Bus A:中域より上の楽器(keys,synths,percなど)

Bus B:曲の基礎になるような楽器(drum,bass,celloなど)

Bus C:MIDにパワーを供給してくれて、かつ音量をオートメーションでめっちゃ調整される楽器(ギターなど)

Bus D:白玉系を奏でる楽器(ambience,strings,pads,backing vocalなど)

②のコンプEQについて

それぞれのbusにコンプやEQをかけますが、BrauerさんはそれぞれのbusにかけるコンプやEQをあらかじめ決めていたようです。
()内にプラグインで代用できるものを記載しておきます。

Bus A:Neve 33609+Pultec EQP-1a3
(IK multimedia Precision Comp/Lim、Softube Tube -Tech PE1C)

Bus B:Emperical Labs Distressor
(Slate Digital FG-Stress)※MixRack内のモジュールです
※BrauerさんのDistressorにはBritishモードという歪ませモードがついていたようですが、FG-Stressにはないため、別のSaturate系プラグインをかませるといいと思います。

Bus C:Pendulum ES-8(真空管リミッター)
(Slate Digital FG-MU)Fairchild660/670の系譜で代用できるかと

Bus D:TFPro Edward the Compressor(VCAモード)
※これはStereo-width enhancerがついてるので別プラグインで対応
(Softube VCA compressor + stereo widener)

Master Bus:SSL Master Bus Compressor
(Plugin alliance bx_townhouse)

マルチバンドコンプでは得られない立体感

ここまで読んでくださった優しい皆さんの中には
帯域別のBusにコンプ・EQをかける…
マルチバンドコンプでいけるやん!!
と思われる方もいると思いますが、やってみると分かる通り、それぞれの帯域に合った個性あるコンプ・EQを使用していますので、ただマルチバンドコンプで潰すよりも立体感・ダイナミクスを感じられるMIXができます。
曲で使用される楽器数が少ないときは、より効果を実感しやすいと思います。
私は楽器数の多い曲で実践してみましたが、音圧を稼ぐと埋もれがちだったkickの革鳴りや、スネアの音がグっと前に出てきて、非常に迫力あるMIXにできたと感じています。

現代のMIX・Masteringに活かすには

この手法は先述のとおり、純アナログ時代の手法です。
今ではより洗練されたMIXをされている方も多いですが、中にはこのBrauerizeをよりブラッシュアップしている方も多くいらっしゃるように感じています。
特に生楽器系が多い曲に関しては、Brauerizeは優先順位の高い選択肢になると思っています。
Brauerizeで言うところの各Busを、コンプやEQはもちろん、マキシマイザーやエンハンサーなどであらかじめ音圧を稼いでおくことで、Master Busでより容易に音圧を稼ぎながら、立体感を残しておくことが可能になるのではないかと思います。
(まだあまり試せてないですが…)

私自身勉強中の身ですので、これが正解!というものが打ち出せなくて申し訳ございませんが、MIXで行き詰った方の選択肢の一つになれば幸いです。


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