アメリカのミリタリーバンドを追って(2)
さて、前回は概要的な案内に終始しましたが、今回からは各バンドにスポットを当ててみましょう。
まずはエアフォースバンド。
指揮を務める大佐のカラーが良くも悪くも出るバンドです。
歴代の大佐の年表から記載してみましょう。
Date Name
1941–1944 Alf Heiberg
1944–1963 George S. Howard
1963–1964 Harry H. Meuser
1964–1985 Arnald D. Gabriel
1985–1990 James M. Bankhead
1990–1991 Amy R. Mills
1991–1995 Alan R. Bonner
January – May 1995 Mark R. Peterson
1995–2002 Lowell E. Graham
2002–2009 Dennis M. Layendecker
2009–2010 Alan C. Sierichs
2010 – January 2012 A. Philip Waite
2012 - January 2019 Larry H. Lang
January 2019 – Don Schofield
上手くいくと20年なんて言う方や、短命で終わる方も。
まあ、色々この世界でもあるのでしょうね。
さて、それぞれの時代にわたる録音ですが、すべてを紹介するには
世界が広すぎるので、歴代を彩った音盤路を紹介していきましょう。
録音の歴史は最も古く、ジョージ・ハワード大佐の時代から歴史を遡ります。国内流通でもRCAから当時の録音が販売されたり、来日も果たし、当時のEP盤でその来日時の演奏が販売されました。
とはいえ本国でのレパートリーは愛国心を示す音盤がほとんど。NMLにてそのLP時代の録音が聞く事が可能です。
続いて長きに渡り、エアフォースバンドの隊長に君臨したアーノルド・ゲイブリエル大佐。第一次黄金時代と言って差し支えがないほど、その演奏は際だっておりました。クラシック編曲から近代オリジナルまで、幅広いレパートリーを持ち、脇を支えるスタッフも、ハープ奏者兼アレンジャーであったローレンス・オドムや演奏面でもユーフォニアムのブライアン・ボーマンなどのちのレガシーとも言える面々が並ぶまさにオールスターキャスト。それにしても就任中、21年で84のレコーディングはすごいの一言。
所謂この辺りの作品が吹奏楽では古くからあるレパートリーとして存在していましたね。こちらはmarkから復刻盤が出ました。ゲイブリエル大佐が力強いポーズのこちらは写真バージョン
ニールセンの仮面舞踏会がなかなか強烈な出来。
今尚語り継がれるフェスバリです。LPとんでもない音してます。語り継がれると言われる所謂が納得です。このフェスバリが凄いのですが、シンフォニックレクイエムも凄い。この音だけ未だに復刻されてないのです。はよ復刻して!
2016年、エアフォースバンドが60周年を迎え歴代の指揮者の録音を並べる音盤と共にリリースされたのがこのCD。いかにゲイブリエル大佐が歴代の大佐の中でも精力的に活躍をしていたかを物語るCD。前述のスミスも当然含まれていますが、スペシャルゲストとの共演がまた凄い面々。演奏面だけでなく、このようなパイプがあるのもこの方の凄さが伺い知れますね。
永年のゲイブリエル体制から続いたのがバンクヘッド大佐。録音数は少ないですが、カンサス大学バンドの初稿版CDに入ってしまっていたのがバンクへット大佐の華麗なる舞曲。フェスバリに比べるとバンドに落ち着きがあるのはおそらく指揮者のカラーと見受けられます。
そのバンクヘッド時代は一つのアルバムにまとまった音源が残されています。華麗なる舞曲のほかに、ボーマン兄弟が演奏したバーンズ: デュオ・コンチェルタンテやリードの交響曲第三番の好演も光ります。
90年代に入り、エアフォースの地方隊などで、積極的な録音をしてきたボナー大佐がその任にあたりました。
地方隊の録音はまた後の話題に譲りますが、サドラー賞を受賞したデメイの指輪物語のでアメリカ軍楽隊の初録音など、充実の90年代のきっかけとなる録音を残してくれました。
The lord of Rings
前項で取り上げたアメリカの軍楽隊の初録音となる指輪物語に、加え、それで終わらないのが軍楽隊バンド。戦後アメリカでクラシック音楽にポピュラー要素を交え、いかにもアメリカ的な受ける作品を残したドン=ギリス。オリジナル曲であるタルサの底抜けに明るい演奏も聴きどころ。
50周年を記念したメモリアルアルバム。
50周年記念の委嘱作品、交響的序曲をメインにすえ、エアフォースバンドの日頃の活動がみえる。50年間変わらずだよ。とも言わんばかりのアルバム。
惜しむらくが残響のないスタジオ録音のおかげでえらく硬めな響きとなってしまっています。バーンズもやや残念な感じに。
ベトナム戦争を題材としたジェイガーのジ・ウォール。人の盾が何重にも張り巡らせる人の壁という何とも許容できない光景を描いたジェイガーの中でも異色の作品。その経緯からほとんど取り上げられない作品ですが、リアリズムを追求するそのバンドの演奏に深い思いが突き刺さるディスクです。
そしてグラハム大佐。ゲイブリエル大佐に続いての黄金時代を築きました。
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